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「超」メモ革命                                            ―個人用クラウドで、仕事と生活を一変させる:全文公開 第1部第1-2章の1

『「超」メモ革命』(中公新書ラクレ)が刊行されます。
5月7日から都心の書店で、5月10日から全国の書店で発売予定です。
これは、第1部第1-2章の1全文公開です。

第1―2章 「超」メモはどんな役に立つか


1 「超」メモは仕事を進める上で不可欠

どんな情報を保存すればよいか?
 どのような事項についてメモが必要かは、もちろん、人によって違います。
 しかし、多くの人が共通に必要とすることもあります。図表1―1―4で示した「インデックスページ」には、そのような事項を示しています。これを出発点として、あなた自身の体系を作ってください。
 これらの事項についてどのような内容のメモが必要かは、将来の自分がどのような情報を必要としているかによります。ところが、それは予測しがたいものです。ですから、「メモで保存したのに使わない」、あるいは逆に、「必要なのに保存していない」という事態が頻繁に発生します。
 それはやむをえないことです。いったん作った体系をいつまでも続けるのではなく、状況の変化に応じて自由に作り替えていってください。「超」メモは、こうした要請に柔軟に対応することができます。

「データドリブン」な仕事体系を作る
 毎日同じことを繰り返すだけのルーチンワークに従事している人であれば、「超」メモは必要とされないかもしれません。
 しかし、現代社会のほとんどの仕事では、多くの情報を捉え、それに応じて仕事の中身を変化させる必要があります。状況が変化すれば、これまでやってきた仕事の中身ややり方を変える必要があります。そのためには、世の中にある膨大な情報の中から、仕事に必要なものをピックアップし、記録していく必要があります。
データドリブン経営」が必要と言われます。世の中の状況を的確に把握するデータシステムを作り、それに応じて経営方針をつねに修正していくということです。これが必要なのは、企業経営に限ったことではありません。企業の中で仕事をしている個人個人についても必要なことです。
 企画部門や調査・研究部門の仕事では、もちろんこうしたことが必要です。営業の仕事をしている人も、多数の取引先や顧客の情報を管理しなければなりません。また、個人で仕事をしている場合にも、同じことが求められます。
 変化する複数の仕事を同時並行的に進める場合には、とくに必要です(多数の仕事を関連付けながら進めることについては、第3―2章で述べます)。

会社の仕事で必要になるメモ
 会社に勤めている人は、様々な機会にメモを書く必要があります。
 具体的には、次のような情報の記録が必要でしょう。
 まず、会議のメモ。会議中はPCやスマートフォンに入力するのが難しい場合が多いでしょう。そこで、紙に手書きでメモを残すことになります。それを写真にとっておけば、「超」メモのシステムに取り入れることができます(写真メモの整理については、第3―3章、第3―4章を参照してください)。
 記憶が新しいうちに、写真メモを参照しながら、音声入力で記録をデジタル化することをお勧めします。
 なお、会議のたびにファイルを改めるのが普通でしょうが、そうすると、あとから見い出しにくくなります。このために、第1―1章で述べた多層ファイリングの体系を作っておきます。
 この他に、つぎのようなメモが必要になるでしょう。

・新事業についての提案アイディア
・上司から言われていた問題に対しての解決アイディア
・会議で行なう予定のプレゼンテーションのメモ
・役に立ちそうな新聞記事
取引先相手に関するメモ

業務日誌用に最適
 私の場合には、業務日誌に付けるようなことはほとんどありません。しかし、多くの人は、業務上の約束事などをメモしておくことが重要な場合が多いでしょう。
 メールのやりとりで仕事をしている場合には、メールを参照すれば約束したことは見い出せます。しかし、相手には伝達していないことで、こちらが記録しておくべきものもあります。
 こうした場合の一つの対処法は、自分宛てにメールを送って、こうした事項をメモしておくことです。ただし、あまりに多数のメールがあると、見い出しにくくなります。したがって、重要な案件については、「超」メモに残しておくのがよいでしょう。
 仕事の進捗記録を残しておくことが必要な場合もあります。
「超」メモは、営業関係の仕事などで、必要な資料を相手に見せる必要がある場合にも活用できます。

執筆のためにアイディアを捉え、成長させる仕組み
「超」メモが一番活躍するのは、原稿書きの仕事においてでしょう。私は「超」メモを、連載原稿や書籍などの執筆のために使っています。書籍や連載ごとに目次ページがあり、ここから個々の章、あるいは回の原稿にリンクが貼ってあります。
 考えついたアイディアを逃さないように捉え、それを成長させていくために、「超」メモの仕組みは、不可欠です。頭の中で考えているだけでは、アイディアは成長しません。バラバラでとりとめもなく、体系もないからです。しかし、それを音声入力でテキスト化すれば、目に見える形になります。
 原稿を書く場合に一番難しいのは、出発することです。非常につたないものであっても、何か下書きがあれば、それを直すことによって完成させていくことができます。「とにかく何か書いておく」のが重要なのです。
 重要なのは、思いついたアイディアを、いつでもどこでも書き留めておけること。そして、それをどんなときにでも引き出せる状態にしておくことです。それができれば、アイディアを成長させていくことができます。
 このようにして書籍を書き上げていくプロセスとそのための仕組みを、『書くことについて』(角川新書、2020年)で述べました。私は、このシステムがあるために仕事を続けることができています。
 本書では、アイディアメモについて、第2―3章の3で述べています。
 この方法は、報告書や課題レポートなどを書く場合においても、大きな力を発揮するでしょう。

「やり方」をメモしておく
 仕事のやり方で、細かい点などを忘れてしまうことがあります。これらはメモしておく必要があります。
 PCやスマートフォンの操作法やウエブの作業などで、いくつかの(簡単ではない)方法が必要なときに、作業手順をメモとして残し、後で作業の際に参照します。
 とくに画像ファイルについては、特殊な手続きが必要となることが多く、またあまり頻繁には使わないため、メモしておかないと、やり方を忘れてしまいます。こまめにメモしておきましょう。
 毎回同じことが必要であるにもかかわらず、忘れてしまうことが多いものです。こうした事項は、「超」メモに書き出しておきます。
 例えば、ビデオ会議の準備メモがあります。ミーティングが始まると、席を外すことができません。友人たちとの会合なら席を立つこともありますが、セミナーや講演などで講師役を務めているときには、その場を離れられません。
 そこで、事前準備が必要です。室温の設定は大丈夫か? インターフォンチャイムを鳴らさぬようにとの警告板を玄関に出したか? 緊急連絡用のスマートフォンを持ち、相手先電話番号をメモしたか? 等々です。

仕事の「取り掛かり」を作る
 もう一つ「超」メモが威力を発揮するのは、メールの下書きです。
 出さなければならないが、なかなか書く気にならないメールというものがあります。とくに、謝罪や断りのメールがそうです。書かないでいると、ますます壁が高くなり、書きにくくなります。
 しかし、先に述べたように、こうしたものであっても、下書きがあれば、それを修正していくことによって、書くことができます。
 何も書いていないのと、何か手掛かりが作ってあるのとでは、非常に大きな差があるのです。何か書いてあれば、それがつたない文章であっても、修正して完成させるのは容易です。
 この方法が有効なのは、メールに限ったことではありません。あらゆる仕事について、言えることです。すでに述べたように、書籍を書く場合にも、「取り掛かり」を作ることが最も重要なのです。



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