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『83歳、いま何より勉強が楽しい』  全文公開:第1章の3

『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)が4月5日に刊行されました。
これは、第1章の3全文公開です。

3.人生100年時代:セカンドライフは人生の黄金期

  退職後は「余生」ではない

 本書が対象としている「シニア」がどんな人たちかを、ここではっきりさせておきましょう。
 これは、大まかに言えば、日本の年功序列的雇用体制の中で、「最初の段階」を終えた人々のことです。具体的には60~65歳程度以上の人々です。
 ここで「最初の段階」とは、「小中高校→大学→新規採用→定年」までの期間を指します。従来は、これだけが人生の重要な期間であり、あとは「余生」と考えられていました。
 しかし、いまは「人生100年時代」です。期間の長さからしても、「最初の段階」とそれ以降の段階とがあまり変わらなくなってしまったのです。シニアの期間は余生ではなく、人生の重要な期間となりました。

  退職後の期間が長くなった

 20代以降(つまり、学齢期を終えて以降)の人生を、つぎの2つの期間に区別してみましょう。
 第1期は、20代後半~60歳頃までの約35年間です。これは、仕事の期間です。「子育てをしながら、あるいは親の介護をしながら」働く期間です。そして、第2期が60歳頃からの期間です。これは、自分のために使える期間です。
 人生100年時代においては、これらの2つが、ほとんど同じ長さになったのです。もう少し詳しく言うと、60歳時点における男性の平均余命は、1965年には15・26年でした。それが、2015年においては、23・51年になっています。ですから、第1期と第2期の長さの比は、35対23・5で、依然として第1期のほうが長いことは事実です。しかし、ほぼ同じになったといってもよいでしょう。少なくとも、第2期の生き方を真剣に考えなければならないことに、間違いはありません。

  セカンドライフ、セカンドステージならではの生き方

 最近では、「セカンドライフ」とか「セカンドキャリア」という言葉も使われるようになっています。
 セカンドライフとは、定年後の第二の人生を指す言葉で、「セカンドステージ」と呼ばれることもあります。生活水準の向上や医療技術の発展によって、日本人の平均寿命は急激に延びました。60歳や65歳で定年を迎えても、さらに20~25年ほどの長い人生を送ることになります。
 人生の「第2段階」は、余生ではありません。本当に自分の目的を追求できる時代なのです。

  高齢人口が増える

 2023年において、日本の65歳以上の人口は、全人口の29・2%を占めています。つまり、約3人に一人が65歳です。
 この比率は、将来上昇すると予測されています。国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計では、2040年には34・8%に、2060年には37・9%に上昇するとされています。さらに、2070年には38・7%になり、2085年には40・1%になると推計されています(出生中位、死亡中位推計)。つまり、人口の4割以上が65歳以上人口になるのです。
 この比率は、1960年には5・7%、1980年には9・1%でした。日本の人口構成は、その時とは全く違うものになったことが、はっきりと分かります。65歳以上年齢階層の人々(私もその一人ですが)がどのようにして充実した生き方を実現できるかは、現在の日本で最大の課題の一つになったのです。
「加齢学」(gerontology)という学問分野もあります。これは、加齢に伴う心身の変化を研究し、高齢社会における個人と社会のさまざまな課題を解決することを目的とした学問です。本書では、そうした研究の成果を参照し、また、私自身の経験も顧みて、高齢者の生きかたという問題を考えることにします。

  平均寿命、健康寿命が延びた

 日本の平均寿命は、世界的にみても高水準です。厚生労働省の「令和3年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81・47年、女性の平均寿命は87・57年であり、新型コロナウイルスなどの影響で前年をやや下回ったものの、高い水準を維持しています。60歳もしくは65歳で定年を迎えたとすると、20年ほど定年後の生活を送る可能性があります。
 平均寿命と関係のある指標が、健康寿命です。健康寿命とは、病気などによる制限を受けず、健康な日常生活を送ることができる期間を指します。
 内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、令和元年時点の健康寿命は、男性が72・68年、女性が75・38年です。平均寿命と比較すると、健康寿命が平均寿命を下回っていることが分かります。
 健康なセカンドライフを送るためには、平均寿命だけでなく、健康寿命を延ばすことが大切です。最近は、健康意識の高まりによって、健康寿命は、平均寿命を上回る勢いで延びつづけています。
 本章の1で述べた『戦争と平和』のボルコンスキイは退職後の人で、これを読んだ時(50年以上前)には随分、年寄りのように思っていたのですが、実際の年齢からいうと、多分、50代だと思います(第10章の6参照)。つまり、今の高齢者は、これまでの人類の経験からいうと、とんでもなく年寄りなのです。
 これは、医学の発達があるからです。だから、体が不自由になっても勉強できます。体が悪くなっていっても、デジタルツールがそれを助けてくれます(これについては、第8章で詳述します)。

  勉強は、40、 50代の人々にとっても重要

 本書が対象としているのは、退職後の人々です。ただし、ここで述べている勉強法は、40、 50代の人々にとっても重要なものです。後者の年齢層の人々にとっては、リスキリングや資格取得のための勉強が重要だからです。
 また、専業主婦も、60代から黄金期が始まります。勉強が重要ということは、専業主婦の人たちにも当てはまります。どんな人にも当てはまるものです。


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