見出し画像

イスラエルで進むパスワードレスの技術開発と新しい取り組みが生まれるその背景とは?

イスラエルではコンピューターサイエンスとセキュリティ関連の技術開発が進んでいます。

今回はセキュリティ、暗号分野で数多くの書物を発行されてきたDolev教授にイスラエルの教育と新しい技術的な取り組みをお伺いしました。

全二回で、第二回は新しい技術や取り組みの開発とこれまでの背景に関して紹介したいと思います。

ネゲヴ・ベン=グリオン大学コンピューターサイエンス学部主任教授   Shlomi Dolev氏                            ネゲヴ・ベン=グリオン大学ではコンピューターサイエンス学部の立ち上げから教授として教壇に立つ。主にセキュリティや暗号、分散コンピューティング分野で研究結果を発表し、MITプレスなどにも寄稿。イスラエル教育省のコンピューターサイエンス委員長、過去にはイスラエル大学間計算センター代表も務めたセキュリティ専門家。

Kohei: それは素晴らしいですね。そのまま次の質問に移りたいと思うのですが、先ほど紹介頂いたマルチパーティ計算に関しては。利用者のデータプライバシーを保護する側面でも重要な技術ポイントだと思っています。特にIoTを始めとしたデバイスからは多種のデータが収集されるので、一つ一つ利用者から承諾を得てデータを集める事が難しいだろうと考えています。

実際にこういった技術はイスラエルの企業や政府で利用は進んでいるのでしょうか?

信頼できるネットワークとビジネス活用の可能性

Shlomi:こういった技術は銀行などが注目している分野の一つですね。いわゆる金融取引で利用が進んでいます。ビットコインを考えてみてもらえると良いのですが、量子コンピューターの開発が進めばビットコインのセキュリティにとっては非常に脅威になると思います。

そのため、耐量子ブロックチェーンを検討することは重要で、イーサリアムや他の仮想通貨も必要な技術になってくると思います。

既にいくつか関心を持ってくれているプロジェクトはあるので、興味のある方とはご一緒できるといいですね。

Kohei: ありがとうございます。ここからはデータ共有のお話をできればと思います。複数の企業やクラウドサービスでデータを共有するときに、共有さきが信頼できるネットワークかどうかは非常に重要な問題になっていると思います。

例えば、オープンネットワークであれば、その参加者の信頼性というは非常に大きなテーマになると思うのですが、こういった信頼性を担保するために将来技術的な解決策は何かあるのでしょうか?

Shlomi: そうですね。コンソーシアムなどはその要素になり得ると考えていまして、EYやマイクソフトなどの既存企業に加えて、Facebookが取り組むLibra、R3などはその代表例になると思います。こういったコンソーシアムは全て私たちの技術要素を活用することで実現できる範囲が広がっていくと考えています。

ネットワークの信頼を担保するという視点では、信頼できるパーティ(ここでは大手企業など特定の管理者)によって担保されるというのが良いのではないかと思っています。

スクリーンショット 0002-10-24 10.46.35

そして、初期は許可制のネットワークで始めつつ、徐々に許可を必要としない形のネットワーク形成がより信頼を担保できるのではないかと思っています。.

ネットワーク内で記録を削除できないように設計することで、記録は残り続けトレースする事ができるようになります。多くのケースでは特定の管理者が利益を享受する設計となっているため(ハイパーレジャーもその一つ)、そういった点を見直すことも必要かと思います。

ウォールマートはサプライチェーンで生産品の追跡を行っていると思うのですが、こういったコンソーシアムで利用していくのは方法として考えられると思います。最終的には許可を必要としないネットワークという話をしたのですが、ビットコインやイーサリアムなどは私たちの技術(SodsBC)を活用するとよりよくなると思いますね。

パスワードを必要としない新しい取り組み

Kohei: なるほど。信頼できるネットワークに関しては今様々な角度から議論されていたので非常に参考になりました。ブロックチェーンに限らず、分散ネットワークでは必ず議論になる問題なのでネットワークに参加するステークホルダー間で解決したい課題の一つですね。次の質問は現在別に関わられているSecret Double Octopusというプロジェクトに関してです。

(動画:Welcome to the Passwordless Enterprise - Secret Double Octopus)

こちらはパスワードを必要としな新しい仕組みで、日本からもいくつかのCVCが投資されている取り組みですよね。日本国内での展開も実施されているプロジェクトだと思います。このプロジェクトに関して、利用者の確認と認証を同時に実施する点が非常に興味を持ってみています。というのもわざわざ銀行の視点に行って本人確認を行う必要もなくなるわけです。

現在Fintech系の企業がアプリを展開していますが、日本国内でもいくつか脆弱性の問題を指摘されたりしており開発されているソリューションが一つの解決策になるかと思っていたのですが、いかがでしょうか?

Shlomi: プロジェクトに関して説明すると2015年に共同創業者として参画していて、パスワードを必要としないセキュリティソリューションとして提供しています。

最近はパスワードを盗まれたり、使い回して居るので複数で勝手に侵入されたりなどパスワードに関する被害も多く報告されていて非常に危険です。パスワードを盗まれて管理者を特定されるとシステムに簡単に侵入する事ができます。

私たちはパスワードレスの考えを広げていきたいと思っています。例えば、新しい会社に配属された際にもキーカードを持ち歩く必要もないですし、パスワードを設定する必要もありません。

鍵自体は企業が管理者として保管し安全に管理すれば良い状況を設計しています。ここでも量子安全性の技術を活用していて、DH法やRSA方式に変わる仕組みとして複数の場面で独立して導入できるように取り組みを進めています。

Kohei: それは面白いですね。日本の企業から出資を受けた理由は何かあるのでしょうか?

Shlomi: この問題は日本だけでなく世界全体で起きていて、アメリカを始めとして多国への展開を既に始めています。その中で、日本は技術的にも先進的な国の一つなので日本企業と連携できることは素晴らしいことだと思っています。.

Kohei: なるほど。それは嬉しいお話です。次のテーマに移りたいのですが、ここからは教育に関するお話をできればと思っています。

イスラエルのテクノロジー教育の裏側

これまで日本のメディアではイスラエルのテクノロジー教育に関する話が色々とと入りあげられていました。日本から見ると特に起業家やスタートアップ教育が盛んに行われていて、新しい技術やサービスがゼロから次々と生まれる環境が非常に若い起業家にとって刺激になっていると思います。

Shlomiさんも実際にスタートアップのアクセラレーションプログラムに関わって居ると思うのですが、イスラエルのスタートアップ教育の原点はどこから生まれてくるのでしょうか?

Shlomi: 主に2つのトピックがありまして、一つは教育です。実は私たちの活動は日本から学んでいることもたくさんあり、ロボットに関する教育などはまさにその一つです。

日本に訪れた際に至るお店にロボットがあることを知り、日本のロボットへの考え方を小学校の4年目で取り入れようと思いました。学生はロボットとコンピューターサイエンスを学びゲーム感覚で取り入れる事ができるプログラムです。コンピューターサイエンスに加えて論理思考や計画が必要なため新しい考え方を生み出すきっかけになっています。

運良くこのプログラム設計に関わる事ができたのですが、こういった教育プログラムとは別に学部のスタートアップアクセラレータプログラムにも関わっています。

部門を立ち上げる際にスタンフォードの教授に来てもらって、コンピューターサイエンス学部では全ての学部でスタートアップを始めることを進められた事がきっかけですね。

スターンフォード流に彼がやっていることに倣うと書物の発表や教育、トレーニングをPhDやマスターの学生さんには受けてもらうだけでなく、実際に起きている問題を解決するために新しく取り組みをスタートする重要性を学ぶということです。

あと、私たちの大学は”シリコン・ワディ”と呼ばれるIBMやドイツテレコム、Dell EMCなどを始めとしたハイテク企業が拠点を置いている地域にあり、Avishay Braverman学長が当初考えていたような環境づくりができつつあります。

(動画:East Jerusalem Town to Transform into High-Tech Hub, 'Silicon Wadi')

こういった環境づくりはコンピューターサイエンスを学ぶ機会を実現できなければ達成できなかったことに加えて、私は現在他の学部にも働きかけてスタートアップを立ち上げるような取り組みを始めています。

これは私たちベエルシェバ地域にとってもIT教育が非常に重要であることの一つだと思い活動しています。IBMやGoogleを始めとした業界をリードする企業に学生が関わることは非常に誇らしいことだと思っています。

Kohei: それは素晴らしいですね。国からは戦略的にそういった取り組みを支援する動きは始まっているのでしょうか?補助金や施設、もしくは国の要職に就くなど政府との連携に関してお伺いできると嬉しいです。

Shlomi: 政府は新しいスタートアップの支援を既に始めていて、VCとのマッチングや大学での研究プログラムをスタートアップにつなげるような取り組みも始めています。特にハイテクと呼ばれる分野は成長著しいので重要項目としていて、IT企業が成長することで税収が大きくなる点も応援する一つの要因になっています。

個人の力はイスラエルで非常に重要な要素になるので、他の国と比較すると金やダイヤモンド、オイルなどの資源がない国では教育に注力していく事がより重要になります。それ以外にも戦闘で新しいテクノロジーの活用は非常に重要なポイントとなるためサイバーセキュリティ分野などはコンピューターサイエンスでも重要なテーマです。

Kohei: ありがとうございます。最後に視聴者の肩に向けてメッセージをお願いしてもよろしいでしょうか?日本の方も読まれている方がいらっしゃると思います。

Shlomi: もちろんです。ブロックチェーン技術に関しては特にセキュリティの視点からインターネットの次の技術要素を考える上でも可能性のある技術ではないかと思います。ぜひ、こういった新しい分野に取り組んでいる人たちとはお話ししてみたいですね。

ビジネス的な話だけでなく新しい分野に取り組んでいる人と話をすることは非常に楽しいんで、深い数学の問題やアルゴリズムの議論は是非やってみたいです。

日本人の同僚や企業ともいくつかプロジェクトを進めていたりするので、次の革新的なステップには色々と取り組んでみたいと思います。コロナ後には日本に訪れる機会もあると思うので、その時は宜しくお願い致します。

Kohei: ありがとうございました。Shlomiさん。今回インタビューでお話しできたのは非常に光栄です。是非、何か新しい行動が生まれるきっかけになれば嬉しいです。

Shlomi: ありがとうございました。

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

データプライバシーに関するトレンドや今後の動きが気になる方は、Facebookに気軽にメッセージ頂ければお答えさせて頂きます!

プライバシーに関して語るコミュニティを運営しています!是非ご興味ある方はご参加ください!

「Privacy by Design Labコミュニティ」↓


ブロックチェーン技術は世界中の人たちが注目している新しいビジネスのタネの一つです!気になったら気軽にメッセージください!