イングランド銀行(中央銀行)は、同行の即時グロス決済(RTGS)システムを民間企業のプラットフォームと連動させるため、分散型台帳テクノロジー(DLT)を利用したシステムの再構築を計画している。同行のマーク・カーニー総裁が21日、ロンドン市長官邸でのスピーチで明らかにした。

 RTGSは、銀行間で多額の資金を送金するために通常利用されるシステム。カーニー総裁によると、イギリスでのすべての決済の主軸となっているRTGSシステムを、「大掛かりに再構築」する。

 同行は、民間の決済プラットフォームが同行のシステムに直接接続できるようにすることを検討している。「我々の新しいハードインフラは、想像を尽くし、将来において使い続けられるように考えられたもので、卸売市場、コーポレート・バンキング、小売サービスにおいて様々なイノベーションの可能性を開くことになる」と、カーニー総裁は述べた。また、銀行間の国境を超えた決済を改良するために、同行がカナダ銀行、シンガポール金融管理局、民間の企業との連携を開始したことにも言及し、次のように述べた。

「潜在的な利益は大きい。現状では、国境を超えた決済には国内決済の10倍のコストがかかっている。イギリスだけでも、年間6億ポンド(約874億2000万円)を超えた節約を実現する余地があると推定している。根本的には、グローバルおよび国内の決済が、よりシームレスであればあるほど、イギリスの家庭や企業が新しいグローバル経済による恩恵をより受けることになる」

 カーニー総裁は、新システムがマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金対策になり、国内や国際金融システムへのアクセスを向上させるのにも役立つと述べた。RTGS刷新の概念実証(PoC)は、17年の5月に最初に提案された。その後同行は、DLTが「次世代のRTGSの核となるほどにまだ十分に成熟していない」と結論づけたが、RTGSの機能性向上においては、DLTとの連動が可能になるようにすることに高い優先順位を与えた。

 イングランド銀行は4月、参加者間のプライバシーを維持しつつ、ネットワーク内でのデータを共有し、規制当局がすべての取引を管轄できるようにする分散型台帳システムを構成する方法を検討するPoC報告書を発表した。中央当局が、資産の新しい単位を発行、回収し、参加者に対しアクセス許可を与える権限を持つことになる。規制当局以外の参加者は、参加していない取引についての詳細を見ることはできない。