「仮想通貨の伝道者」ロジャー・バー氏によれば、ビットコインキャッシュ(BCH)はダークウェブで広く利用されている唯一の「最新」コインである。「その他にダークネットマーケットで使われているコインは、当然ながらビットコイン、その次にモネロといった昔からあるコインだけだ」と、バー氏は述べた。

コインテレグラフの調査では、BCHはダークウェブにまで及んでいるものの、そこでトップの仮想通貨であると言うにはほど遠いようだ。これは驚くべきことである。モネロのようなプライバシーに重点を置く仮想通貨は一般に、ダークネットの売り手と買い手両方の身元情報を同じように守るが、ビットコインキャッシュには、プライバシーのレベルを同じ土俵に持ち込むことのできるいくつかの技術的特徴があるからだ。それらのプライバシー機能がBCHの有名な取引スピードと結びつけば、技術的に有効化されたダークマーケットを推進するためにこの通貨が選択されるのは、自然なことのように思われる。

では、なぜ未だにそれが起こっていないのか?

今のところダークウェブにBCHはほとんどない

Bitcoin.comのレポートでは、BCHがダークウェブでの取引量全体の10%以上を占めていると述べている。プライバシーアフェアーズで調査責任者を務めるミゲル・ゴメス氏はコインテレグラフに対し、BCHがダークウェブで最も人気のあるコインの1つであることを認めた。「仮想通貨としての役割に関しては、主要コイン(ビットコイン、BCH、モネロ)が最も普及している」という。

コインテレグラフは、デフォルトの決済方法としてBCHを受け入れているシングルオペレーションのダークウェブマーケットを見つけることができなかった。ベットフィクスド(BetFixed)の顧客サポートは、Bitcoin.comが最近導入したサービスのように電子メール経由でBCHを受け入れる用意があったが、これは標準的な方法に対する例外的なものだった。

またコインテレグラフは、ダークウェブに多数存在するヒットマンサービスの1つがBCH決済を受け入れる用意があるものの、彼らはBTCを優先していることも見つけた。この殺人依頼サービスの代表者は、プライバシーに関する顧客からの問い合わせに対し、コインを2度にわたってミックスすると答えた。彼らはまた、これまでにBCHを使ったことがないことも示した。

我々の調査によれば、ビットコインが依然としてこの世界で最も幅広く受け入れられている通貨であり、モネロが僅差の2位となっている。「ホワイトハウスマーケット(White House Market)」と呼ばれるダークウェブは、モネロを受け入れており、ビットコインには対応していないことを明確にしている。

我々の観察はチェイナリシス(Chainalysis)によって確認された。同社の広報担当者はコインテレグラフに対して次のように話した:

「ダークネットマーケットで意味のあるBCHの活動は見つけていない。彼らは2020年において、これまでに260ドルをBCHで受け取った。今後BCHを導入する計画があると述べているマーケットプレイスが1つあるが、大手ダークネットマーケットでBCHを利用しているところはない」

シュノア署名とBCH

ロジャー・バー氏はコインテレグラフの取材の中で、BCHユーザーの多くがビットコインキャッシュの実装した高度なプライバシー機能を知らないことを嘆いた。その一例が、取引が複数の署名を1つの署名に統合することのできるシュノア署名だ。この機能は、プライバシーの強化と拡張性の増加の両方に役立てることができる。

「ビットコインキャッシュはすでに、現在のチェーン上にシュノア署名を備えている。多くのウォレットがそれに対応しており、ビットコインキャッシュはすでに、プライバシーツールを持っている。事実、私がここに座ってあなたと話している間に、私のウォレットは忙しく新たな56ビットコインキャッシュをシャッフルしている」

シュノア署名の特許は2008年に有効期限が切れているものの、サトシ・ナカモトはなぜかビットコインのコードの中でそれらを使わないことを選んだ。しかし、この機能やその他のプライバシー強化機能は、間もなくビットコインにも搭載されようとしている。ビットコインコア開発者のウラディミール・ファン・デル・ラーン氏はコインテレグラフに対し、それらの機能が安全に実装できるようになるまでには、もっと多くの作業が行われる必要があると語った。

「進展は続いている(例えば、次は必要なパーツがsecp256k1ライブラリに統合される)ものの、全体としては、安全にコンセンサスルールに含めることが可能と見なせるようになるまでには、もっと多くのレビューとテストが必要だと思う。これを正しく行うチャンスは1回限りではなく、急ぐ必要はない」

BCHはもっと古くからあるコインよりもユーザーに対して優れたプライバシーを提供しているものの、裏社会のやり手たちの間で人気のある選択肢にはまだなっていないようだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン