米国を拠点とする大手仮想通貨(暗号資産)取引所クラーケンの日本法人Payward Asiaが18日、サービス提供開始を発表した

Payward Asiaは、9月8日に金融庁から暗号資産交換業者としての登録を完了しており、今回はサイト上での口座開設手続きを開始した。実際の取引開始は、9月下旬または10月初旬になる見込みという。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、XRP、ビットコインキャッシュ(BCH)、ライトコイン(LTC)の5通貨で、スポット取引サービスを提供していく。

日本でのサービス提供は「更なる成長に不可欠のステップ」

コインテレグラフジャパンは、Payward Asiaの代表を務める千野剛司氏に、日本市場の開拓に向けたクラーケンの取り組みやその意義について聞いた。

千野氏は、日本の仮想通貨市場について世界に先駆けて様々なルール整備を進めていると評価。「日本の健全な市場環境」でのサービス提供が、クラーケンの更なる成長にとって不可欠であると述べている。

「2017年4月の改正資金決済法の施行によって、日本は世界に先駆けて、利用者財産の分別管理をはじめとして、諸々のルールを制度化してきました。そして現在も、当局、業界、専門家等々幅広いステークホルダーを巻き込んで、より望ましいマーケット環境についての議論が活発に行われています」

「Krakenにとって、こうした日本の健全な市場環境でのサービス提供の開始は、グループの更なる成長に欠かせないステップとして位置付けており、2018年の日本でのサービス中止後も、当社を設立したうえで、日本市場でのサービス再開に向けた検討を継続してまいりました。2020年は、サービスの再開にとって最適なタイミングであると感じております」。

成熟化する日本の仮想通貨市場

さらに千野氏は、日本の仮想通貨を取り巻く環境変化も指摘する。2017年の熱狂を経てた市場環境の変化と、日本における利用者保護などのルール整備により、「暗号資産の本質的価値」を追求していく素地が整ったとみている。

「日本の暗号資産を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化したと感じております。とりわけ、2017-18年のビットコイン価格の高騰時の熱狂は価格の推移のとともに落ち着き、それと当時に当局によって様々な規制が導入されました」。

「こうした落ち着いた市場環境と利用者保護を含むルールの整備は、ボラティリティによる収益機会が注目されがちな日本の暗号資産市場において、Krakenのミッションである、暗号資産の本質的価値を正しい形で広めることにポジティブに働くものと理解しております」。

セキュリティとグローバルな流動性を武器に

既に国内では複数の暗号資産交換業者がサービスを展開している。日本でのサービス展開が後発となったクラーケンは、どのような点で差別化を図るのか。千野氏は、クラーケンが持つ「セキュリティとグローバルな流動性」をもとに、日本のユーザーに訴求していく考えを示した。

「日本市場でのサービスを再開するにあたって、Krakenの誇る、1) セキュリティと2) グローバルの流動性をもとに、日本のお客様に訴求していきたいと考えております」。

セキュリティについては、米国のクラーケンで蓄積したノウハウを日本での事業運営にも生かしていく考えだ。

「セキュリティについては、様々な取引所が言及していますが、Krakenは日本のみならず、世界でも最も厳しく進んだ管理体制をとっている取引所であると考えます。サイバーセキュリティ対応は様々な観点がありますが、Krakenでは、従業員の利用する機器からオフィスの物理セキュリティにいたるまで、徹底的なリスク評価と対策が実施されています」

またグローバルな流動性として、全世界で400万人のユーザーを抱えている点を強調。厚みのある流動性を提供できることが、競合との差別化要因になると述べている。

「グローバルの流動性については、Krakenの持つもう一つの差別化要因だと考えております。Krakenは全世界で400万人を超える投資家にご利用いただいており、多様なリスクプロファイルを背景に厚みのある流動性と競争的な価格により提供しております。今回の日本での暗号資産交換業の登録によって、日本のお客様もこうしたKrakenのグローバルの流動性へのアクセスを提供することが可能となりました」。

技術革新と規制のバランスが重要に

千野氏に今後の日本市場での課題について聞いた。千野氏は、分散型金融(DeFi)の台頭をはじめとして仮想通貨・ブロックチェーンでの技術革新のスピードの速さに、規制やその運用レベルが追いつく点が重要だと語った。

「日本では規制の枠組みが整えられましたが、その一方で、直近のDeFiの動きが好例ですが、暗号資産の技術を取り巻く環境は常時猛スピードで変化しており、このスピード感に規制の枠組みがどのように対応していくのか、という点が非常に重要だと感じております」

「規制やその運用レベルの各種取り決めが障害となり、日本のマーケットが世界の技術革新から遅れたり、成長を取りこぼすようなことはあってはならないと思います」