2020年5月の半減期時には、多くの人が仮想通貨(暗号資産)ビットコイン(BTC)の「死のスパイラル」を予言していた。

「死のスパイラル」は、半減期によってブロック報酬が半分になったことで、マイニング活動の収益性が急激に低下し、マイナーが撤退することで起こるとされている。マイナーの撤退によってネットワークの健全性を示すハッシュレートが急落。ブロック作成時間が長くなりネットワークで渋滞が起きることによって、取引時間を待ちたくない参加者がビットコイン取引から離れる。ビットコインの価格に下押し圧力になり、さらにマイナーが退場する…というように、ビットコインのネットワークが死ぬまでこのプロセスが繰り返される「スパイラル」が起こるというものだ。

今回のビットコイン急落で、こうした疑念は再び出てくるだろうか。

(出典:グラスノード「ビットコインの難易度」)

一方でビットコインは20日、2020年6月17日以来、約3ヶ月ぶりとなる2桁を超える難化となった採掘難易度調整を終えた。2週間前と比べて11.35%のプラスだ。これは「死のスパイラル」にとって何を意味するのだろうか。

(出典:グラスノード「ビットコインのハッシュレートとブロックタイム(14日平均)」)

この疑問について答えるには、難易度調整がどのような仕組みになっているかを理解すればわかる。

すべてのビットコインマイナーは、ブロックを承認するために計算競争をしている。ネットワークが享受しているハッシュパワーが多ければ多いほど、承認は早くなる。サトシ・ナカモトは、1ブロックあたり10分間隔で承認率が維持されるようにするために、約2週間ごとに難易度を調整する機能をプロトコルに組み込んだ。この間にブロック間の時間がそのマークを下回ると、難易度が上向きに調整される。ブロック間の時間がその数値を超えた場合は、その逆に軟化される。

半減期後の2回にわたる二桁調整は、ハッシュパワーの大幅な増加に伴って行われた。今回の難易度調整時でも平均ハッシュレートは過去最高の138.09EH/sとなった。ハッシュレートは順調に右肩上がりを続けている。

そのため、ハッシュパワーの急落によって起こるという死のスパイラルのシナリオとは異なっている。ハッシュパワーが増加したことはマイナーの活動が活発になっていることを示しており、ビットコインネットワークは優れた健全性を維持していると言えるからだ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン