イーサリアム2.0の最初の段階となるフェーズ0が、12月1日から始動することになる。果たしてこれは、仮想通貨イーサ(ETH)の価格にどのような影響を及ぼすことになるのか?アナリストらは、イーサリアムのスケーラビリティ問題の解消は中長的にはポジティブな影響があるとみている。

イーサリアム2.0は、イーサリアムのスケーラビリティ改善を目的とした大規模なアップグレードだ。イーサリアムは2.0への移行を通じて、コンセンサスメカニズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に切り替える。PoSはネットワーク参加者が仮想通貨の保有することで報酬を受け取る仕組みだ(ステーキングとも呼ばれる)。

イーサリアム2.0への移行フェーズは4段階に分かれており、今回のフェーズ0は一番最初の段階となる。今回のフェーズ0では「ビーコンチェーン」を実装する。このフェーズ0の段階でも、事前のデポジットに参加したステーキング参加者に報酬を支払うことになる(ただし参加者は次のフェーズまでETHを引き出すことはできない)。

一般投資家にまで浸透できるか

FXコインのシニアストラテジスト、松田康生氏は、「ワールドコンピューターとしてイーサリアムのアキレス腱だったスケーラビリティの解決策として期待が膨らむだろう」と予想する。

「スマートコントラクトやワールドコンピューターとしてのETHの地位は不動である一方、アキレス腱ともいえるスケーラビリティの解決策として期待が膨らむと思います」

ただ、現在の仮想通貨市場の買いの主体の1つとなっているウォール街の投資家からみれば、ETH2.0というテーマの複雑さが投資を敬遠してしまう懸念もあると指摘する。

「足元の買いの主体は米投資家。購入理由はインフレヘッジ。そうした中、BTCに対する分散投資先として時価総額2位のETHも連れ高になっている状況ですが、回りくどく、複雑なプロセスは敬遠される要因となります。特に、なぜ時価総額2位だから買われるのかと言えば、いざという時に換金しやすいからで、デポジットしたETHが動かせないと言った話が広まると投資家に敬遠されがちです」

松田氏はイーサリアム2.0の構想が、一部の開発者や仮想通貨ファンの間だけでなく、金融関係者や一般投資家にまでその価値が浸透していくかが将来的に重要になるだろうと話す。また足元ではセル・オン・ザ・ファクト(事実で売る)になる可能性にも注意が必要だという。

「先日、定足数を満たしてETH2.0ローンチが12/1に決まった時にETHは上がれませんでした。むしろ、若干売られた感じでした。12/1直後はSell on the Factが出る可能性があると思います。今の暗号資産ブームは、暗号資産に興味があるファンだけでなく、アメリカを中心に一般投資家に広がっていく過程だと考えていて、そうした人にどこまで訴求できるのか見ものだと思っています」

「ガス代高騰」のボトルネック解消に期待

bitbankでマーケットアナリストを務める長谷川友哉氏は、ビーコンチェーンのリリースは既に市場に織り込まれていると指摘。ただ、将来的なメインネットへのドッキングは、「より実質的な改善策として注目されるイベントになるだろう」と予測する。

「フェーズゼロのビーコンチェーンリリースは既に折り込まれていると思いますが、この先のアップデートであるシャードチェーンや、メインネットへのドッキングは、より実質的な改善策となるため注目されるイベントかと思いま。ただ、こうしたアップデートがいつ実装されるかはまだわからないので、価格へは段階的な影響をイメージしています」

またガス代高騰というイーサリアムが長年抱えてきたボトルネックが解消されていくことになれば、ETH価格にも影響はあるだろうと、長谷川氏は指摘している。将来的には相場の上昇がより持続可能なものになる可能性もあるとみる。

「確かにイーサリアム2.0への完全移行は2年ほどかかると言われている上、依然としてセレニティーの全工程が確定している訳でもないですが、ガス代高騰というボトルネックが解消されることはETH価格にも影響はあると思います。この問題は今年のDe-Fiブームに限らず、2018年のCryptoKitties流行でも問題となってましたが、これが相場にとっても上昇の障壁となっていました(スマコンへの送金手数料が高くなり需要を抑える)。よって、単純にこの問題が緩和されれば、将来的に(移行後は)より持続可能な相場の上昇が見込めるではないでしょうか」