『仮想通貨ビジネスにおける監査の概要』
『暗号通貨の経済性とイノベーションのための公正な課税政策の必要性について~主に Staking における報酬の捉え方と税制に関して~』

カリキュラム及び概要

  • 日時:2020年2月19日(水) 17時00分~19時30分
  • 場所:AP新橋 ROOM-D

※第二部の議事録はございません。

 


『仮想通貨ビジネスにおける監査の概要』

有限責任監査法人トーマツ シニアマネージャー/公認会計士 齊藤 洸氏

齊藤氏
 有限責任監査法人トーマツの齊藤と申します。今回、『仮想通貨ビジネスにおける監査の概要』ということでお話しをいただきましたが、監査を一般的な方たちに向けて解説をすることは、珍しいことで、大変貴重な機会をいただいていると思っております。監査特有の用語もありますので、今回はなるべく分かりやすく解説しながら進めたいと思います。
 私は、元々は金融機関に対する監査をやっていましたが、アドバイザリーにシフトし、最近では、ブロックチェーン活用の戦略策定等のアドバイザリーもやっております。私が、最初に仮想通貨交換業に仕事として直接関わったのは、2016年、日本公認会計士協会に仮想通貨対応専門部会ができ、監査の実務指針を作成する作業を担当したときからになります。
 本日、目次がシンプルで『監査の概要』と『仮想通貨の監査』とで、二つに分けております。会計士向けに話をする場合には、この監査の概要という項目は省いていますが、後の説明をするためにも、まず監査がどういうものなのかを簡単にお伝えしたいと思い、ここに設けております。

 それでは監査の概要からお伝えしたいと思っております。監査とは、ある対象物に対して、独立の第三者が行う保証業務となっています。法的に監査を要求するための制度は様々あるのですが、ここは1番一般的な金融商品取引法(以下、金商法)における、監査の制度を通じて、ご説明します。
 この図の左側が企業となっていますが、この企業活動の中で、研究開発、広告宣伝、営業・販売と、さまざまな活動を行っています。そして、当然そこには資金需要が生じてきます。金融機関から借り入れるという間接金融のパターンもありますが、金商法においては、この資本市場から直接的に資金調達をします。そのために、企業が自社の株式を供給して、それを買ってもらうプライマリーの市場があります。そして、金融商品取引所で、資産運用をしたい投資家とマッチングを図り、日々、株価が値動きしている資本市場があり、金商法がこの資本市場の健全な発展を非常に重要な意義としているので、これをどう制度的に担保するかといったときに、課題が二つあります。

 企業活動の情報は企業の方にあって、投資家には見えませんし、直接そこにアクセスすることができません。投資家は、投資の結果に関して自己責任を負うというのが大原則ですが、投資判断をする情報がないと、その判断ができないことになりますので、その情報が非常に重要になります。この情報が重要ですが、これは企業の方に情報があるのであって、このままでは投資家は判断する情報がない状態になります。これを『情報の非対称性』と呼び、一つ目の課題です。
そこで、この企業内容開示制度、いわゆるディスクロージャー制度があります。これは、企業の方から有価証券報告書や届出書という形で報告させることによって情報を供給し、情報の非対称性を緩和させる制度です。この制度では、会計情報以外にもいろいろと開示していますが、コアな情報は、やはり会計の情報です。会計の情報は財務諸表という形で提供されます。図の左側に企業活動とありますが、そこには契約書とか請求書といった証憑が溜まってきて、これを一般に公正妥当と認められる会計原則というフィルターを通して、会計記録を作ります。これは日々の経理の活動でやっていく作業ですが、これを財務諸表という形でまとめて、四半期だとか年次で報告していることになります・・・


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 次にこちらの図は、基本的な財務諸表の構成で、それぞれどういうリスクがあるのかを、イメージしやすいレベルで書いたものです。『B/S』と『P/L』は先ほどの貸借対照表と損益計算書になります。グレーの矢印の部分については、ブロックチェーンと一致(オンチェーン)することになりますので、仮想通貨(顧客口)と預り仮想通貨に関しては、監査人自らその一致を確かめる手続きをしています。ここでは実際にその資産があるのかどうかという実在性を重要な検証項目としています。
 資産の方はこのようになりますが、次は負債の方です。負債の方は、預かっている記録なので、これは預かっているものが網羅的に記録されているかが非常に重要になります。お客さんの口座を、オフバランスをする、要するに簿外処理をすると、その部分が収益等にヒットする可能性があるので、お客さんから預かったものは全て記録されているかどうかを見る必要があります。実在性と網羅性と図に書いていますが、負債の方は網羅性が特に重要で、これは例えば口座情報が登録されたマスター情報が改ざんされていないかどうかなどを検証しております。

 次からのスライドは、話をより具体的にしたもので、仮想通貨の実在性についてです。例えば、横領した事実を隠ぺいして財務諸表を改ざんするケースで、これは想定される虚偽表示のリスクの例です。例えば、隠ぺいするために、内部統制を無効化し、期末直前に仮想通貨を借りて穴埋めをしてしまうリスクが想定されます。これは、内部統制自体の限界ではありますが、これに対する内部統制の例示としては、やはりそれができないような仕組みがまずあることが重要です。
 あとは、このブロックチェーンのアドレスは無尽蔵に作れますが、それが簡単に生成できるものではなくて、一定のプロセスを経た上で作られているかどうかを内部統制で検証するような、そういった内部統制があるかどうかという例です。
 あとは、実証手続きの例示としては、監査人がやっている手続きの例になっています。これは実際にそのブロックチェーンのデータを入手して、帳簿と照合する手続きをしております。

 そのようなところが、大まかに暗号資産の実在性について説明した内容です。顧客の負債を簿外処理に関しては、やはり第一義的にはトレーディングシステム、会社の帳簿が、漏れなく記帳されているかどうかを検証することが非常に重要になります。最後、駆け足になりましたが、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

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『暗号通貨の経済性とイノベーションのための公正な課税政策の必要性について~主に Staking における報酬の捉え方と税制に関して~』

バージニア大学法学部助教授 企業家/弁護士 Abraham Sutherland氏

※第二部の議事録はございません。



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