「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第5回)議事録

  • 1.日時:

    令和4年6月6日(月曜)9時00分~11時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第一特別会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第5回)
令和4年6月6日
  
【神田座長】

おはようございます。皆様方おそろいでございますので、予定の時間より多少早いかもしれませんけれども、始めさせていただきます。

ただいまからデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第5回目の会合を開催させていただきます。皆様方には本日も大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

本日の会合でございますが、前回に引き続きオンラインの開催とさせていただきます。

さて、この研究会ですけれども、昨年の7月に設置されまして、4回にわたってメンバーの皆様方にいろいろと御議論をいただきました。昨年の11月には送金・資金決済分野についての議論を整理していただき、中間論点整理として取りまとめを行いました。

今後の会合ですけれども、送金・資金決済分野に関する具体的な課題やそれ以外の分野について引き続き御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

それから、次にオブザーバーについて御紹介させていただきます。本日は、ステーブルコインについて具体的な規律などを取り上げますので、テーマに応じたオブザーバーといたしまして次の方々に御参加いただいております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の方々にオブザーバーとして御参加いただいております。

それでは、早速ですが、本日の議事に移らせていただきます。本日の流れというか、予定でございますけれども、まず事務局からこの研究会におけるステーブルコインに関する議論や中間論点整理を振り返っていただき、先般成立いたしました改正資金決済法等の概要、そのほか、暗号資産やステーブルコインをめぐる諸外国の動向などについて説明をしていただきます。

続きまして、事務局資料に対する御意見などにつきまして、日本暗号資産取引業協会とFintech協会から御意見をいただきます。

その後、参考人として御出席いただいております三菱UFJ銀行の齊藤様から「信託受益権における対抗要件具備等の方法」についてお話をいただき、同じく参考人として御出席いただいておりますSecuritize Japanの森田様から「パーミッションレス型のブロックチェーンを活用したセキュリティトークンにおける本人確認等の方法」について御説明をいただけるということでございます。

これら全てが済んだ後でメンバーの皆様方に討議をお願いするという流れで進めさせていただきます。

なお、皆様方に討議をしていただくに当たりましては、お手元資料2に本日討議いただきたい事項をまとめておりますので、適宜御参照いただければありがたく存じます。

それでは、まず事務局からの説明からお願いいたします。端本さん、よろしくお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料1に沿って御説明いたします。

1ページ、目次になりますけれども、まず1ポツとしまして、「本研究会における検討経緯と資金決済法等の改正案」、それから2といたしまして、「暗号資産・ステーブルコインを取り巻く国際的状況」等について御説明させていただきます。

それでは3ページ、4ページ、まずデジタル分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の昨年の実績ということで、4ページですか、4回ほど議論していただいております。その中で、とりわけ第3回、「パーミッションレス型の分散台帳を利用した金融サービスに関する基本的な課題、ステーブルコインを巡る諸課題」ということで御議論いただきまして、本日はここの部分についてより深掘りした議論をお願いできればということでございます。

続きまして5ページでございます。昨年秋の中間論点整理の「パーミッションレス型の分散台帳等を利用した金融サービスに関する基本的な課題」ということで、1つ目の丸のところにございます。①権利移転に係る明確なルールがあること、②AML/CFTの観点からの要請に確実に応えられること、③発行者も仲介者等の破綻時や、技術的な不具合や問題が生じた場合等において、取引の巻き戻しや損失の補償等、利用者の権利が適切に保護されることが必要と考えられると。

2つ目の丸ですけれども、これらの要件のうち、特にAML/CFTの観点からの要請につきましては、システム仕様等、技術的に対応することが重要であると。そのための水準を満たす方法については、現時点においては、例えばシステム仕様等で本人確認されてない利用者への移転を防止する、本人確認されてない利用者に移転した残高については凍結処理を行うといった事項を求めることが考えられるということが昨年秋の議論でございました。

続きまして、7ページ以降で、改正資金決済法、先週の金曜日に成立したものについて御説明いたします。大きく分けて中身3つあるわけですけれども、赤に囲ってあるとおり、その中の1つの大きな柱は、海外におけるいわゆるステーブルコインの発行・流通の増加ということで、その下を見ていただきますと、電子決済手段等取引業の創設ということで、適切な利用者保護等を確保するとともに、分散台帳技術を利用した金融イノベーションに向けた取組等を促進していこうということで、電子決済手段の発行者と利用者との間に立ち、売買の媒介等を行う仲介者について登録制を導入するということでございます。

続きまして8ページでございます。電子決済手段等への制度的対応ですけれども、いわゆるステーブルコイン、非常に幅広いものがございます。そういう中で、左側の①デジタルマネー類似型、それから、右側②それ以外ということで分けております。

まず左側、デジタルマネー類似型ですけれども、法定通貨の価値と連動した価格、例えば1コイン=1円、1ドルといったもので発行され、発行価格と同額での償還を約するもの、及びこれに準ずるものということでございます。

こうしたものにつきましてはデジタルマネーとしての規律を適用していこうということで、本日議論いただきますのは、ここについて念頭に置いて議論するということで、それ以外のステーブルコインである右側のものではございません。左側について議論していただきたいということでございます。

そして、その下を見ていただきますと、デジタルマネー類似型ということですけれども、まず発行者、銀行・資金移動業者ということで、資金を保全するということに加えまして、法改正では、信託会社が発行者になるということを創設しております。信託会社が発行者となり、利用者から預かったお金を全額預金で管理する。要求払預金で管理する場合には、金融商品取引法等に基づくディスクロージャー規制等を適用しないということをその内容としております。

併せまして、その下にありますとおり、発行者と仲介者、別々の独立した法的責任を持ってスキームを運用できるような柔軟な枠組みへの対応が可能となるように措置してございます。

以上が改正資金決済法の内容ということでございます。

続きまして、それとの関連で、11ページ以降、アメリカにおけるステーブルコイン規制と実態ということで、金融庁のほうで委託調査しているものの報告書がまとまりましたので、これは金融庁のホームページに公表しておりますけれども、その概要について御説明したいと思います。

11ページでございます。米国連邦法・ニューヨーク州法におけるステーブルコインに関連する現行規制ということで、まず連邦レベルで見ていただきますと、今議会でステーブルコインへの対応というのは検討中ですけれども、それがまだ成立しておりませんので、現行法ということですと、まず連邦レベルで、1つ目のポツですが、連邦銀行機密法のMoney Transmitterとして、AML/CFT規制がある。

それから、その下ですけれども、スキームによりましては証券法等が適用されるということでございます。

その下、州レベルということでございますけれども、1つ目のポツのところにございますが、ステーブルコインの発行・移転等を含む事業について、BitLicenseを取得すると。日本でいうと暗号資産交換業というものを取得するということに加えまして、現行の送金・銀行規制ということで、一番下のところにありますとおり、ニューヨーク州のMoney Transmitterのライセンスを取得するか、あるいは、その上でございます、ニューヨーク州の銀行法上の銀行信託会社として承認を受けるかということが必要だということでございます。

12ページ、それを図示したものでございます。一番上が連邦レベル、それからその下、青以下が州レベルということですけれども、送金・銀行規制、それから暗号資産としての規制、青色が送金・銀行規制、それから、暗号資産としての規制が緑色ということでございます。

続きまして、17ページでございます。その制度に基づきまして、実際どういう形で、すいません、13ページですね、失礼しました、サービス提供されているかということですが、A、B見ていただきますと、先ほど見ていただきましたとおり、まずAとしてMoney Transmitter、ニューヨーク州の銀行法に基づくMoney Transmitter免許、それからBitLicenseを取得してステーブルコインを発行し送金業等を行う場合と、Bといたしまして、銀行法に基づく限定目的信託会社としてステーブルコインを発行等しているという、2つのパターンがあるということが確認されております。

続きまして、14ページでございます。これを図示したものですけれども、まず、Money Transmitter側が一番左になります。その上の図を見ていただきますと、Circle社、発行者となりまして、預かったお金を銀行預金あるいは米国債等で管理すると。それから、その右側でございますけれども、限定目的信託会社が発行者となりまして、限定目的信託会社自ら金銭の貸出し等をすることが認められておりませんので、預かったお金は全額預金するか、あるいは米国債等で保有するという形で事業が展開されております。

ちなみに、一番右側でございますけれども、USD Tether、これはニューヨーク州において営業を認められてないスキームということになっております。

それから、最後15ページでございます。預金保険との関係についてもヒアリングしていただきました。FDIC等にヒアリングした結果ということですが、一番頭の丸のところにございますとおり、ステーブルコインが預金債権に該当し、一定の要件を満たす限り、預金保険の対象と理論上はなり得るということでございます。これは銀行が発行者の場合、あるいは限定目的信託会社を通じて銀行に預金をしている場合、いずれもこういうことになるということでございますけれども、一番下のところにございますとおり、いずれの場合も、預金保険制度による補償を受けるためには、被保険銀行等においてステーブルコインの所有者を認識し得る状態に置かれていることが求められるということで、現状はこうした状態にないのではないかということでございます。

続きまして、17ページ以降で、暗号資産・ステーブルコインをめぐる状況について御説明させていただきます。まず18ページですが、左側を見ていただきますと、5月末現在、主な暗号資産・ステーブルコインの市場規模、1.2兆ドルということで、昨年の10月末現在ですと2.6兆ドル程度でございました。半分以下に市場規模を縮小しているということでございます。

そうした中で、19ページでございます。5月上旬、先ほど見ていただいたステーブルコインの右側のアルゴリズム型、法定通貨で償還を約しているものでないステーブルコインのTerra USDというものですけれども、暗号資産との、真ん中のところにございますとおり、LUNAということと常に交換可能ということで価格を安定させようとしていたものですけれども、暗号資産全般の市場動向が急速に厳しくなる中で動きを止めてしまったという事例があったということを御紹介させていただきたいと思います。

それから、21ページ以降は国際的な金融制裁の動向ということで、御承知のとおり、21ページですけれども、今流通しておりますパーミッションレス型分散台帳、左側でございますけれども、基づくステーブルコイン、事業者が管理するプラットフォームの下での管理はきちんと本人確認されているわけですけれども、本人確認されてない利用者間でのP2P取引が許容されているという状況でございます。

そうしたものにつきまして、22ページでございます。ロシアに対する金融制裁、G7中心に行っているところでございますけれども、例えば3月11日の首脳声明ですと、線を引いてあるところでございます、国際的な制裁の影響を回避するための手段としてデジタル資産を活用することができないことを確保するということをコミットしているということでございます。

続きまして、23ページ、それに基づく各国の取組ということで紹介させていただきます。その中で、アメリカが比較的執行レベルでいろいろな取組を行っていますので、以下、説明させていただきます。

まず24ページでございます。まず、アメリカ財務省OFACによる暗号資産ウォレットアドレスの制裁指定ということで、制裁対象者リストを公表する際に、氏名、生年月日、住所、出生地等を判明した範囲で公表しているわけですけれども、2つ目のところにありますとおり、制裁指定理由が暗号資産に関わり、かつウォレットアドレスが特定された場合には、ウォレットアドレスも併せ公表するような取組が始まっているということでございます。

それから、25ページでございます。ミキシングサービス、暗号資産の移転経路を秘匿する匿名化を増すものとして一般にサービス利用が増えていると指摘されているわけでございますけれども、2つ目の丸のところにございます、5月にミキシングサービスの提供者に対して制裁措置を初めて発動していると。そうした動きがあるということでございます。

それから、最後、27ページ以降、制裁以外、幅広い関係の政策動向等を御紹介させていただきたいと思います。まず27ページ、アメリカですけれども、デジタル資産の責任ある開発を確保するための大統領令が3月に出ております。この大統領令、デジタル資産に関連する部署が非常に多いものですから、関連部署が連携して半年あるいは10か月程度で報告書をまとめてホワイトハウスのほうに報告するようにということが指示されております。

中身について見ていただきますと、まず左側、a、利用者・投資家・保護、それから、b、金融安定の保護、軽減といったものに加えまして、c、不正金融と国家安全保障上のリスクの軽減ということで、不正金融のリスクの軽減と併せまして国家安全保障上のリスクが強調されているということがございます。

それから、右側見ていただきますと、併せまして、dですけれども、技術・経済競争力における米国のリーダーシップの強化、それから、fのところですけれども、技術進歩の支援ということで、イノベーションの促進とマネーロンダリングあるいは制裁の迂回回避、あるいは利用者保護というものを両立させていこうという姿勢が見て取れるところでございます。

28ページはイギリスでございます。イギリスの施策の公表ということにつきましては、暗号資産技術をイギリス・ロンドンでもう少し活用できるようにしていきたいということで、イノベーション促進、あるいは産業育成的な色彩が強いものが出されているということでございます。

最後、29ページでございます。各国における暗号資産の販売勧誘規制。これはステーブルコインに限らない幅広い暗号資産ということでございますけれども、1点、シンガポールでございます。その一番下のところにありますけれども、暗号資産につきましては、取引のリスクが高く、一般公衆には適さないということで、一般公衆に対する広告宣伝等を禁止しているということで、諸外国の中でも厳しめの規制が入っているのかなということでございます。

各国の動向は以上でございます。続きまして、資料2に沿いまして、簡単に本日討議いただきたい事項について御説明させていただきたいと思います。

まず1ポツといたしまして、AML/CFTや利用者保護等の観点からの電子決済手段に求められる規律ということでございますけれども、注のところにございます、ステーブルコイン、幅広いものでございますけれども、先ほど見ていただきましたとおり、左側の法定通貨の価値の連動した価格で発行され、発行価格と同額償還を約するもの及びこれに準ずるものということで、いわゆるデジタルマネー類似型の暗号資産についての規律ということで御意見賜れればということでございます。

これにつきましては、その下のところにございます技術中立という観点に配意することが重要ですので、こうした観点から既存の金融サービスにおいて利用されておりますパーミッション型の分散台帳だけでなく、パーミッションレス型の分散台帳において流通する場合について、中間論点整理で示された①~③の要件をどのように満たすか検討する必要があるということでございます。

2ページ目にいきまして、先ほど御紹介いたしました昨今の諸情勢等を踏まえまして、論点1でございます。電子決済手段の発行者及び電子決済手段等取引業者の体制整備の内容として、上記①から③、先ほど見ていただいた①から③でございます、の規律を求めることが考えられる。こうした規律は足元の国際的な情勢等を踏まえて十分と考えられるか。

それから、2といたしまして、具体的な方策でございます。(1)、(2)、2つございますけれども、まず(1)、①の体制整備、権利移転の明確化ということですけれども、法律上の権利移転に係るルールが明確であることに加えまして、分散台帳上の記録との不整合が生じないよう、適切な運用を図ることが必要なのではないかと。この辺りにつきまして御意見賜れればというのが(1)。

それから、(2)といたしまして、3ページの冒頭ですけれども、②、③に係る体制整備ということで、いわゆるパーミッションレス型の分散台帳であっても、本人確認されてない利用者間でのP2P取引の防止や技術的な不具合や問題が生じた場合の対応等を含め、発行者等の判断におきまして、アプリケーションレイヤーにおいてスマートコントラクト等で実装することが可能と考えられる。

これが昨年の秋の議論でございました。後ほど御説明もあろうかと思いますけれども、実際にセキュリティトークンの分野におきましてこうした本人確認や管理者権限の付与等をパーミッションレス型の分散台帳で実現している例があることも踏まえて、この点どう考えるかということでございます。

繰り返しになりますけれども、P2P取引全般を禁止するものではございません。本人確認されたアドレス間での取引は当然問題ないわけでございますけれども、本人確認されてない利用者間でのP2P取引のリスクをどうコントロールするか、そういう観点から御議論いただければということでございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、今いただきました事務局の説明に関する御意見だと思いますけれども、日本暗号資産取引業協会の千野様から御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【日本暗号資産取引業協会(千野)】

おはようございます。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の千野でございます。本日はよろしくお願いいたします。

既に意見書ということで共有させていただいておりますけれども、弊協会といたしましては、まずもって暗号資産の業界においてこうしたステーブルコインの法制化に向けた試みが行われていることということを評価をしておる次第でございます。

一方で、今、こちらで議論がされようとしております具体的な規制要件等々によっては、海外で広く流通しているステーブルコインの取扱いが本邦においては事実上困難になる、あるいは不可能になるという事態も想定されますので、慎重な検討が必要ではないかと考えております。

そうした観点におきまして、御討議いただきたい事項の②のAML/CFTにつきまして中心的にコメントさせていただきたいと思っております。海外、特にアメリカ、イギリスといった国においては、こうしたAML/CFTに関する論点と同時に、国家戦略としてイノベーションをいかに促進していくかというような観点も同時に議論をされていると認識をしてございます。とりわけアメリカのバイデン大統領の発令しました大統領令におきましては、各規制当局に対して、統合的な規制のフレームワーク、そして米国が国際競争力を維持するために必要な施策というものの検討を命じておりますので、規制の面とイノベーションの促進という両面について現在検討がなされていると認識をしてございます。

本邦におきましても、先般、自民党のほうから、ブロックチェーン、そしてWeb3.0に関する意見が出されておりますことから、本邦としても、こうした新しい流れというものを国家レベルで捉えて促進していくということについて今動き出したということかなと認識をしてございます。

その反面、ステーブルコインというものは、ブロックチェーン、そしてWeb3.0の経済圏におきましては、ある種潤滑油的な機能を果たす、決済機能を果たすというような理解をしてございますので、こちらに過度な規制を課してしまいますと、こうした国家戦略においても影響が出てくるのではないかなと認識をしてございます。

したがいまして、守りと攻めのバランスをいかに取っていくかという観点で、ぜひ御議論、御検討いただきたいなと考えてございます。

続きまして、P2P取引に対するリスクベースのアプローチでございますけれども、私どもの認識ですと、FATFのガイダンスにおきましては、基本的にはリスクベース・アプローチ、リスクに応じて対応を検討するということを各国の当局に求めていると認識をしてございます。

したがいまして、まずもって重要なのは、ステーブルコイン、本邦において取扱いを認める想定のステーブルコインに関するリスク認識を共有をするということが一番必要ではないかなと思います。このリスク認識がないままに、個別具体的な施策を検討するというのは少し本末転倒なのかなと思ってございますので、まず、私ども、この検討体で、どういった商品、ステーブルコインを検討するのか。その商品についてどのようなリスクが想定されるのかという検討を十分に踏まえた上で、具体的なリスク削減対応というものを検討すべきではないかなと思ってございます。

私どもの認識ですと、現在、ステーブルコイン、海外で広く流通しているものにつきましては、ブロックチェーン経済圏、デジタル資産の決済といったものが主な用途でございますので、FATFが言及しておりますようないわゆる日常決済でも使われるようなマスアダプションの状況にはない。とりわけ本邦のような先進国におきましては、デジタル決済の手段というのは非常に高度化されておりますので、そうしたものに代わっていわゆる暗号資産のようなステーブルコインが広く決済手段として受け入れられるということは非常に可能性が低いのかなと認識をしてございます。

こうした点も踏まえて、リスク認識を共有をした上で、個別具体的なリスク削減措置についての検討を深めていくというのがよろしいのではないかなと思ってございます。

甚だ簡単ではございますけれども、私のコメントとさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きましては、Fintech協会の落合様から御発言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【Fintech協会(落合)】

ありがとうございます。それでは、Fintech協会の落合のほうからも意見を述べさせていただければと思います。

まず最初に、今回の検討会、資金決済法等を含めた法改正において、ステーブルコインについて、世界に先駆けて議論を行い、整備を進めているということは、金融分野の中でも、ほかの論点に比べてより進んだ取組をされていると思っております。その点については感謝を申し上げるとともに、この法整備の機会がよい形でステーブルコイン等も含めた金融関係の取引の発展につながればと思っております。

では、次のスライドをお願いいたします。まず論点1、2とございまして、論点1が総論的な点ということになると認識しております。論点1については、やはり全体として重要な点としまして、政府全体で、Web3推進の文脈を踏まえたこういった取組がされているということを踏まえて、ステーブルコインについても、関係する施策と整合性を取るような形で利用ができるような形を御検討いただければと思っております。

まだ最終的に確定はしてないものと理解しておりますが、新しい資本主義実現会議の中でも、一極集中管理の活動空間から多極化された仮想空間へということで、その中で社会活動のデジタル化が進む中で、デジタル空間の中央集権型から分散型への移行ということを踏まえて、信頼性を確保したインターネットの推進やブロックチェーンでのデジタル資産の普及拡大等、ユーザーが自らのデータの管理や活用を行うことで新しい価値を創出する動きが広がっており、こうした分散型のデジタル社会の実現に向けて必要な環境整備を図っていくということが言われておりますので、こういった全体の取組ということも意識しなかじら御議論いただければと思っております。

また、新しい資本主義実現会議での議論の背景として、自民党のほうでも類似の議論がされているところと承知をしております。

では、次のスライドをお願いいたします。1つが、やはりステーブルコインにつきましては、安全性というものが非常に重要になってまいります。金融庁のほうでも諸外国の状況も御検討いただいて、先ほどの資料でも米国を中心にまとめていただいていたと思いました。必要な安全対策を行った上で、一方で日本だけが世界で流通しているものが利用できないようになるということを避けるような形で議論を進めていただけるとありがたいと思っております。これは先に議論を進めるということは、もちろん先導することによって世界的な議論を引っ張るという部分もございますけど、一方で、過度に規制を日本だけが引いてしまうということにつながる可能性も一方でありますので、こういった諸外国の情勢も見ながらしっかり議論を進めていただけるとありがたいなと思っています。

続きまして、ステーブルコインについて、社会経済で広く使われる可能性がある送金決済手段に求められる水準についてどう考えるかという部分があるかと思います。従来の銀行預金や資金移動業の電子マネーそのものと必ずしも同じものなのかということはあると思っております。ステーブルコインについては、新たな類型を設けるということは、必ずしも既存のものとそのまま同じ整理ではないということで、分散型システムの中でも有用かつプログラマブルな取引に用いることができるような新しい送金決済手段としてどう整理できるかと言う視点で議論頂ければと思います。これはあくまでリスクベースであるとは思いますが、そういった形で、今回の目的としている用途を踏まえて議論いただけるといいのかなと思っております。

そして、リスクの点については、やはりステーブルコインの中でも様々な類型があるかとは思っておりまして、金融庁のほうでも既に昨年の検討会からも区別して議論していただいているとは思いますが、法定通貨の裏付型と暗号資産型、これでそれぞれ社会的な期待であったりですとか利用者の認識も大きく異なるとは思いますので、それぞれ分けて議論していただくということも重要ではないかと思っております。

一方で、法定通貨の裏付型においても、もともと銀行が発行しているものなのか、それとも資金移動業者が関わっているものなのか、こういったことによって、制度上、そもそも許される用途や範囲が異なるということがあって、それによって当然ながらリスクの範囲も異なると思いますし、また、社会から見た場合の期待も必ずしも同一ではない場合もあろうかとは思います。

こういったリスクであったり、社会的な期待を踏まえた制度設計をしていただくということが重要ではないかと思っております。

リスクベースでの整理というのは、必ずしもステーブルコインという言い方をしない場合には、金融庁での御検討の中では基本的に一般的に採用されているような方針であると考えております。

では、次のスライドお願いいたします。論点2において、個別の、先ほど暗号資産取引業協会様のほうからAML/CFTについては議論ありましたが、ほかの点も、論点が設定されておりますので、Fintech協会としても意見を述べさせていただきたいと思います。

1つが、まず、権利移転の確実性ということについてでございます。この点については、海外においても制度整備を行うことがステーブルコインの利用にとって必須の要件とはされていないのではないかということがあると思っております。この点、既にブロックチェーン上の記録を正としてステーブルコインの移転が行われるという実務があるようにも認識しております。記録と権利移転が分かれることを前提とした議論をする必要は必ずしもないのではないかとも考えております。

続きまして、AML/CFTの観点についてです。この点については、やはりこの点が整備が必要ということは疑いがないところであろうとは思っております。

一方で、業者を介さずに利用できる範囲というのは現実としては限定的であるとは考えられますので、やはり業者を経由する取引を中心とした対応となるのではないかと思います。

AML/CFTについては、これまでの取引の状況からしても、実際に利用されることがあると思われる暗号資産でも同様の整理がされているかと思っております。

ステーブルコインと法定通貨との交換において適切なゲートウェイを設けるということが最も重要な点であると思っております。一方で、こういったステーブルコインを使う際に、自己ウォレットでの保有であったりですとか、PtoP取引を否定するということは暗号資産と比べるとやや過剰になってしまうのではないかと思っております。

第3点として、取引の巻き戻し、損失の補償であったりですとか、利用者の権利が適切に保護されることについてということで、これについては類型ごとに議論がされるべきではないかと思われます。

この点、決済インフラの安定性から巻き戻しについては適切ではないケースもあるとは思われますので、類型や用途・インフラごとに考慮していただくということも必要ではないかと思っております。

その次のページ以降については、金融審議会で以前提出させていただいた資料を参考として掲載させていただいたものになりますので、以上でございます。どうもありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、三菱UFJ信託銀行の齊藤様からお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【三菱UFJ信託銀行(齊藤)】

スピーカー替わりまして、三菱UFJ信託銀行の齊藤から御説明いたします。

2ページ目まで進んでいただいてよろしいでしょうか。すいません、事務局の方、2ページ目まで進んでいただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。

今日、まず、ステーブルコインの話の前提として、今セキュリティトークンでどうやっているかというところを中心に御説明した後に、ステーブルコインにどう応用しているかというお話を差し上げたいと思っております。

では、次、進んでいただいてよろしいでしょうか。4ページ目です。今、三菱UFJ信託銀行のほうでやっておりますこと、簡単に第1章で御説明しておりますが、まず、このProgmatというのが今我々がつくっておりますプラットフォームでございまして、図表左下のプラットフォームの拡張、いわゆるブロックチェーンのオープン化を含めた話と、図表右下の市場・決済機能の拡張ということで、これは取引所ではなくてPTSの形でのセカンダリーをつくって、そこに連携するといった話は、今日の中心であるステーブルコインとの連携によって、いわゆるDVP、行く行くはP2Pまで効率的にインフラをつくっていくというところをやりながら、図表上側の長期の資産形成に資する新しいセキュリティトークン対象商品をつくるというところをやっております。

次のスライドです。拡張するエコシステムということで、セキュリティトークンから始めたのですが、現状では、図表真ん中の左のほうにありますProgmat UTという利用権領域、あとはProgmat Coin というステーブルコイン領域、これら3つのネットワークを総称してProgmatという、現時点ではパーミッション型のブロックチェーン上で実装しているというところです。

図表真ん中下にクロスチェーンとありますとおり、特にProgmat Coinについては、デジタルアセット領域の決済の利用用途を想定しておりますので、Progmat内だけではなくて、その他ほかのチェーンとの連携というふうなところもまさに検討しているという状況でございます。

次の6ページ目は、セキュリティトークンにおきましては、実は法律施行してからしばらく案件がなかったのですが、昨年度、2021年度に4件ほどやらせていただいておりまして、運用総額でいえば100億を突破しているぐらい出ているという状況で、御覧の不動産のセキュリティトークンというのが御好評いただいているという状況でございます。

以上前置きでございまして、7ページ目から、セキュリティトークンにおいて権利移転・対抗要件をどうしているかを御説明いたします。

まず、セキュリティトークンにおいての権利移転・対抗要件ですけども、図表左のほうに器がありまして、左下の受益証券発行信託というのが、我々が使っている器でございます。この中にデジタル証券対象の原資産が入っておりまして、バランスシート右方にデジタル受益権とあって、つまり、受益証券発行信託の受益権をブロックチェーン上で表示することによって、セキュリティトークン、いわゆる電子記録移転有価証券表示権利等という形で規定されているというものでございます。

信託は器ですので、倒産隔離がなされているというところは所与として、右側にネットワークとのつながりが書いておりますけども、図表真ん中の下のネットワーク図、これがいわゆるブロックチェーンを含むProgmatでございまして、Progmatシステムがイコール、受益権原簿の電磁的記録となっております。つまり、これが受益証券発行信託における対抗要件になっているということです。

もう一つ、図表上吹き出しが2つほどありますけども、まず原簿管理者のNode②と書いてある吹き出しですが、Progmat上のトランザクションが取り込まれることが信託契約上の譲渡の有効成立条件としております。譲渡制限によって、受託者がProgmat上に取り込むことが原簿の書換えであるということになり、原簿の書換えイコール対抗要件でもあるので、権利の移転と対抗要件の具備が一律で整備されるというところです。

さらに図表右上に投資家Bの吹き出しがありますけども、譲渡制限ですね、これが善意取得されてしまうと、我々が疎明しないといけませんので、善意取得の回避のために受益権名称に「譲渡制限付」をつけて、信託契約上の譲渡制限があり手続が必要という規定だけではなく、投資家も善意で譲渡制限がついていたことは分かりませんでしたということにはならないわけですね。こういった工夫もしているところです。

次のページが、少しブレークダウンしたものでございまして、信託上、記名受益権じゃないと受益権原簿を対抗要件に使えないということで、記名受益権で受益証券発行信託のうち券面不発行の受益権というものを使ってセキュリティトークン化しています。

こちらについては、券面不発行の受益権については、譲渡効力が受益証券の交付ではありません。その次のところで、譲渡自体は信託行為で制限が可能であるというところがありますので、先ほども申し上げたような、譲渡に受託者の承諾が要るということと、承諾というのはProgmat上の書換えを承諾だとみなすという規定をしております。

善意の主張者に対しては立証責任を我々は負っていますので、これを回避すべく、信託契約の中で受益権名称に「譲渡制限付」ということを明記しているということです。

下のほうで、195条2項のところの対抗要件については、受益証券発行信託は原簿の記録が対抗要件ですので、また、電磁的記録をもって作成も可能ということで、Progmatの記録が受益権原簿になり、それが対抗要件になるという構成を取っております。

次の10ページ目です。構成概要ということで、システムのあらましですけども、上のほうに、受託者、カストディアン(MUTB/MTBJ)とありますが、我々が一例として利用しているという前提で、まずこのシステムが、右下のアイコンのとおり、AWS、クラウド上にあります。つまり、トランザクションの数が膨れ上がってもスケーリングが可能というところです。量をさばけるというところですね。

また、マスターの情報ですね、つまり、投資家の情報とか、いわゆる忘れられる権利の対象になるような情報、これをブロックチェーン上に書き込んでしまうと後々不都合が起き得るというところですので、図表上灰色のボックスにRDBと書いていますけども、投資家情報をはじめとしたマスターの情報はProgmatのシステムの中でオフチェーンで管理していまして、オンチェーン上ではいわゆるトランザクションの移転の取り回しのところ、秘密鍵の管理を含めた取り回しのところをブロックチェーンで処理しているという構成になっております。

次のページが有事対応ということで、正常時はAのとおりですが、横軸がプロセスでして、約定を受け付けてから、受益権原簿の移転指図が証券会社からカストディアンに出されて、カストディアン、受託者の間で原簿書換え請求があり、受託者と原簿の間で譲渡承諾と原簿書換えがなされると。こちらについて、システムが止まってしまった場合、プロセス1、2、3というのが、オフチェーン上というか、アナログで処理する必要があります。プロセス4についても、システムが止まっているので、アナログで処理する必要がありまして、法律構成上、ブロックチェーンの記録がなければ譲渡できないというものではなくて、譲渡承諾ができれば譲渡ができるというところと、原簿もProgmat以外で原簿を記録すれば、対抗要件としてはしのげますので、そういったオフチェーン処理をした後に、図表上の行CのProgmatが復旧した後に強制移転のオペレーションというのが各受託者の権限の中で定められておりますので、これによって正常化するというオペレーションになります。

最後、ステーブルコインということで、13ページ目、そもそもなぜやるかというところにつきましては、セキュリティトークンは、中央集権者がいない、つまり保振とか、クリアリング、日銀ネットみたいなものがありませんので、このままいくと、セカンダリー取引が集中型になっても、資金決済を証券会社間で相対でやる必要があり、かなり非効率です。これを効率化するためにブロックチェーン上で資金決済手段も含めて完結するようにつくっているというのがそもそもの起こりでございました。

14ページ目がスキームの概要でございまして、真ん中下に受益証券発行信託とありますが、先ほどのセキュリティトークンで使っているのと同じ器で、バランスシートの左側に円貨を銀行預金の形で入れて、これが1円=1受益権。この1円受益権がセキュリティトークンと同じようにProgmat上でトークン化することによって、ステーブルコインとして出回るという構成を取っております。

図表左上、右上の「委託者」兼「当初受益者」兼「仲介者」というのは証券会社を指していまして、証券会社さんがフェースしている投資家さんというのがセキュリティトークンの購入者でありステーブルコインの保有者であるというふうな構成をとっていますので、AML/CFTについても、セキュリティトークンと同様に、証券会社によるKYC等をやって、受託者としてはAML/CFTのスクリーニングを二重でやっていくという状況でございます。

15ページ目は簡単な主要プロセスということで、換金及び発行のときは円が動くのですが、ステーブルコインの移転自体、左のところですが、これは受益証券発行信託の中の円は動かずに原簿の持ち主情報だけが書き換わるということでございますので、これによって移転に関して銀行の送金インフラを使う必要がなく、コストも下げられるというものでございます。

16ページ目、展望でございます。幾つかがポイントありますけども、2023年度のところで、2行目、3行目の資金決済手段としてのステーブルコインが施行され、セカンダリーとしては場ができますので、ここでセキュリティトークン市場の課題とされてきたものが一定解決すると思います。

また、4行目の対象アセットのところで、社債の事例がすでに沢山出ていますけども、やはり銀行送金型でやると利払いが非効率であるという声が多く聞かれますので、ステーブルコインができれば、利払いの自動化みたいなところもあり、社債型セキュリティトークンのマーケットも大きくなるかなと考えております。

最後、17ページ目、展望として、パーミッションレス型をどう捉えるかというところでございます。現状、パーミッションドでやっておりますので、図表左3つのST、UT、CoinというものをProgmatでやっておりますけども、パーミッションレス上でステーブルコインが求められるということは当然認識しておりまして、我々としては、まず今のクリプトに対してカストディの文脈で入り、いろいろな論点をどう整理するかというところをやりながら、パーミッションドのステーブルコインとパーミッションレス上にある様々なトークンとのクロスチェーンの決済をやることによっても、各種の論点をどうするかという整理も並行してやっていった上で、パーミッションレス上でもProgmatでステーブルコインを出すというアプローチになるかなと考えております。比較的中長期で考えているというところでございます。

手短ですが、私からの御説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、続きまして、Securitize Japanの森田様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【Securitize Japan(森田)】

よろしくお願いします。Securitize Japanの森田と申します。

今回、パブリックブロックチェーンを活用したセキュリティトークンの実例ということで、我々、ステーブルコインを発行はしておりませんが、セキュリティトークンでの事例ということで御紹介させていただきます。

次のページ、会社の御説明をさせていただきますと、セキュリティトークンという言葉が知られるようになってきた2017年からSTOの関連の事業をやっている米国の会社のSecuritizeといいまして、当初はSTOのテクノロジーを提供する企業でしたが、だんだんと金融のライセンスを取得して、エコシステム全体をカバーする企業に発展してきているという状況です。

次のページをお願いします。我々の提供しているプラットフォームとしては、図に簡単に3つ書いておりますが、投資家向けの投資家ダッシュボードという画面と、あと発行体や証券会社等が使うような管理者コントロールパネルという管理用画面、そして、ブロックチェーン上に流通するセキュリティトークンを表すスマートコントラクトというような、こういう3つの部品から構成されているような形になっております。

次のページをお願いします。これらのプラットフォーム上の構造を簡単に図にしたのがこの右側の図になっておりまして、一番上に投資家向けの画面、発行体や管理者向けの画面のボックスがありますが、ここからのインターフェース、及び、あと右側にありますパブリックAPI等ありますが、外部のシステムからのAPI入力等も許しているような形になっています。

この図で御注目いただきたいのが、今回のテーマでもありますブロックチェーンのところが赤枠で囲っておりまして、いろいろと下にロゴが並んでおりますが、我々のプラットフォームは、セキュリタイズプラットフォームといったらこのブロックチェーンみたいな形で1個に決まっているものではなく、選んで使えるようになっているというのが特徴になっております。セキュリティトークンの発行体によって、私はこのプライベートチェーンで選択して発行します、私はこのパブリックブロックチェーンを選択して発行します、ということが選べるようになっております。

日本では現在、有価証券の発行ではプライベートブロックチェーンを利用しているというのが現状になりますので、パブリックブロックチェーンの事例があるわけではないんですけれども、米国では結構パブリックブロックチェーンを使って発行する事例が多くございますので、そちらの例を今回御紹介させていただく形になります。

次のページをお願いいたします。ここで簡単に5つほどパブリックブロックチェーンを利用してセキュリティトークンを発行するときに考慮していることを並べております。一つ一つ御紹介させていただければと思います。

まず1つ目が、スマートコントラクトへの攻撃対策になります。パブリッブロックチェーンは公開されているものになりますので、透明性がある一方、攻撃対象にも容易になり得るという懸念があります。なので、スマートコントラクトは基本的に一度インストールというか、使い始めると、中身を書き換えることは基本的にはできないようになっておりますので、事前にセキュリティーを専門にするような会社等と連携し、スマートコントラクトの監査を受けるということを事前に行った上で、スマートコントラクトのデプロイというのを行っております。

さらに、スマートコントラクトの実装についても、一度展開したものは書き換えられないんですけれども、それを部品部品にして入れ替える、差し替えるという形でアップグレード性を持たせるということをやっております。たとえ監査をしていたとしても、バグが入り込んでいる可能性を確実にゼロにするということはなかなか難しいものですので、後から、パブリックブロックチェーン上であってもロジックの部分を入れ替えるような、そういうアップグレード性がある形で構築するというのが重要になってきます。

これによって、バグの対応というのを先ほど言及しましたが、規制の変化によってロジックを変更しなければいけないときも対応できるようになっているというものになります。

2項目以降は個別のスライドで御説明させていただければと思います。次のページをお願いします。

2つ目が、右上にボックスで書いておりますが、意図しない流通への対応になります。よく暗号資産のイメージから、パブリックブロックチェーンですと勝手に転々流通していってしまって、マネーロンダリング等に使われてしまうという懸念を聞きますが、そういったことが起こらないように、移転に関してコンプライアンスに準拠するために様々な制御が可能になっております。

この右側の図で表しているんですけれども、ウォレットの絵で、上から下にトークンが移転するというのを表していて、右下のボックスがセキュリティトークンのスマートコントラクト、その上にコンプライアンスサービスというコンプライアンス用のスマートコントラクト、その2つを用意しているような形になっていて、上のウォレットから下のウォレットにセキュリティトークンを移転するためにトランスファーという命令をセキュリティトークンのスマートコントラクトに送っています。暗号資産等ですと、ここのタイミングで数値が移転して終わりになることが一般的なんですけれども、弊社のセキュリティトークンの場合は、その間に必ずコンプライアンスサービスというのを呼び出すような仕掛けになっておりまして、このコンプライアンスサービスで確実に問題ない取引であるということを確認した上で、それからようやく移転処理が行われるといった、そういった仕組みになっております。

ここで何をやっているかというと、一番基本的な話としては、ホワイトリスト型のウォレットアドレスの制御というのを行っておりまして、具体的には、発行体やもしくは証券会社などがきちんとユーザーのKYCを行った上で、そのユーザーのウォレットをコンプライアンスサービスのスマートコントラクトにセットするというようなことを事前に行わないと、そのウォレットに対して移転は行えないという、そういった制御が入っています。

さらに、ロックアップ期間等が1年設定されている場合は、どんなウォレット宛てであっても移転が絶対成立しないようになっていたりとか、あとは人数制限、数量制限など、そういった細々した制限もかかっておりますので、例えば49人制限の中、50人目に送ろうとすると、その時点で移転が必ず失敗するようになっていると、そういった制御が可能です。こういったルールが、いろいろなアセットを発行する中で、各トークンごとに個別にルールが設定されて動いているといった形になっております。

次のページをお願いします。そして、こちら、プライバシー対応の例になります。パブリックブロックチェーンは、文字どおり公開されている情報のため、個人情報など、秘匿性の高い情報をブロックチェーン上に記録することはしておりません。具体的にはデータベース上に管理される個人情報とブロックチェーン上に管理される情報というのが匿名のIDで紐づけられて、オンチェーン上、ブロックチェーン上で権利の移転、数量の変化というのがあった場合は、画面を通じて見たときには、オフチェーン、データベース上の個人情報と数量というのが併せて画面上から見えるような形になっております。

次のページをお願いいたします。そして、特権機能の管理ということで、これ、ちょっと細かい話にだんだんなってくるんですけれども、セキュリティトークンには、発行とか、償還、または間違えて送ってしまったときの逆移転の処理ですとか、秘密鍵を紛失してしまった投資家さんのために救済措置を行うなど、そういった特権的な機能が必要になってきまして、そういったものを機能としては具備しております。

パブリックブロックチェーンの場合は、このような特権的な操作も公開されたパブリックになっている関数を呼び出すことで実行することになりますので、その関数を呼び出したところで、呼出しが正常に終了するためには、きちんと権限を持った主体が呼び出しているかを確認する必要があります。そのため、その呼び出せる権限管理というのが非常に重要になってきます。

具体的には、特権機能を利用する、呼び出すために署名をするんですけれども、その署名に使う特権鍵、秘密鍵ですね、そちらをきちんと管理するということになります。

ここで書いているのは、特権的な秘密鍵というのもいろいろレベル分けをして管理できるように我々のプラットフォームではなっておりまして、例えば最高権限を持つマスター鍵というのは、基本的には全く取り出さないで厳重に保管しておいて、本当に何かあったときだけ取り出すといったものになっております。

その隣の左から2個目の管理者鍵というのは、普段のオペレーションで使っていくようなもので、発行を行う、償還を行うといったときに使っていくものなんですけれども、これは複数登録することができて、2つ例えば登録して、片一方をなくしてしまったり、紛失してしまった、流出してしまったとなったら、もう1個の鍵でそれを無効化したり、また新しいものを登録したりという相互牽制ができるような形になっています。

さらに1個1個の鍵も、1つの署名だけで特権処理が成立する形ではなく、マルチシグとして3つの秘密鍵を登録しておいて、そのうちの2つの署名が集まったときだけ特権の操作が発動するといった、そういった制御もできるようになっております。

このような形で、管理者鍵を厳重に管理することができるんですけれども、さらにそれらの管理者鍵を全てなくしてしまったら、上のマスター鍵を使って管理者鍵を復活させるといった、そういったことも可能です。

さらに管理者鍵自身も、下に管理方法のところに小さく書いているんですけれども、ハードウエアウォレット、ソフトウエアウォレットといった既存製品のウォレットで管理もできますし、あとペーパーウォレットなど、そういったコピーアンドペーストのような形もできます。さらに、Securitizeのプラットフォーム上ではハードウエアセキュリティーモジュールというものを用意しておりまして、そこに安全管理された鍵を使うといった、そういったオプションも用意しております。

これらの管理方法から、どうやってマスター鍵、管理者鍵の管理体制をつくっていくかというところも、発行体、証券会社、そういった管理者側がどのような体制にするかというのを選択できるような、そういった仕組みになっております。

すいません、次のページをお願いします。最後はガスやフォーク対策ということで、これもパブリックブロックチェーン特有の話なんですけれども、パブリックブロックチェーンはフォークする可能性があるので、フォーク対策として、確率的ファイナリティのチェーン情報はデータベースへ同期するのを、複数ブロックの待ち時間を設けるような仕組みですとか、不整合が発生していないかのチェック、不整合が発生したときにはアラートや同期を緊急停止するといった、そういった仕組みを設けております。

さらに、パブリックブロックチェーンは手数料の高騰が問題になってくることがありますので、そういった手数料負担を考慮して、ここに書いているような投資家のセキュリティトークンの管理方法も複数のオプションを用意しております。

一番左側の図は、合同口のような形で、1つのウォレットに全員分のセキュリティトークンを格納して、一人一人の割当てというのはデータベース上で分けるといったものになっておりまして、こうするとウォレットとしては1個だけに発行するという形になり、管理者側で負担するガス代が節約できます。

一番右の形は、一人一人にウォレットを設けて、その一人一人のウォレットにセキュリティトークンを配るという形なります。発行の際にいきなり一番右側の形にトークンを配布すると、発行体の方が非常に高額のガス代を支払うことになってしまいますので、この対策で用意しているオプションが、一番左の形で一旦発行して、オンチェーン上でカウンター等を用意して、人数制限等の制御はオンチェーン上でしっかりできるようにしつつ、投資家の希望によって、合同口のような形で用意されているウォレットから、投資家が自分自身の手数料を支払って自分のウォレットに引き出すといった、そういった仕組みでガス対策ができる選択肢を用意しており、これも自由に発行体が選べるような形になっております。

すいません、ちょっと飛ばしてしまいましたが、以上で御説明としては以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。今、Webexの画面を拝見しますと、三菱UFJ信託の齊藤さんから挙手が出ているのですが、御発言等ございますでしょうか。

【三菱UFJ信託銀行(齊藤)】

申し訳ございません。事務局の方にあらかじめお伝えしていたのですが、私が10時まででございまして、チャット機能でコメントしようと思ったところ使えませんでしたので、すいません、挙手させていただきました。申し訳ございませんが、抜けさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。齊藤さん、今日10時までということですので、この後、メンバーの皆様方等から御質問が出た場合には、事務局から後日お伝えをして、また回答なりお答えを伺って、皆様に還元させていただきたいと思います。

それでは、ありがとうございました。これまでの説明等を踏まえまして、メンバーの皆様方から御意見等をお出しいただく討議の時間とさせていただきます。

まずメンバーの皆様方から御質問、御意見をお出しいただき、その後オブザーバーの皆様方にも御発言の機会を提供させていただきたいと思いますので、そういう順番で行きたいと思います。

御発言いただける方には、まずメンバーの方々ですが、チャット欄に全員宛てに一行入れていただければと思います。既に岩下先生、松尾先生からいただいておりますので、チャットの順番で、岩下さん、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】

御指名ありがとうございます。岩下でございます。今日の論点1の議論についてなんですけれども、そもそも今日のこの議論をするタイミングというのが、去年の第4回から第5回の間に大分時間がたちまして、その間にいろいろ情勢変化があったので、その情勢変化を踏まえた議論である必要があると考えています。

その観点から言うと、事務局資料の19ページ、Terra USD、USTですね、この事件が発生した後で、我々は改めてステーブルコインというものについてどう考えるかということをきちんと考えなければいけないと思います。何となく今日の議論、特に事務局の後にお三方の意見表明があったわけですが、いずれのお話を聞いても、ステーブルコインというのはとても美しいものであって、それを何とか世の中に広めていきたいようなお気持ちがあるように思ったんですけど、私の実感は、USTの事件にはしなくも現れているように、ステーブルコインというのは実はあまりよいものではないのではないかと思うわけですね。

したがって、ステーブルコインを積極的にこれから拡大していこうとか、そういうことを考える必要は全然ないというのが私の主張であります。それについて若干申し述べさせていただきたいと思いますが、ステーブルコインって何で発生したかということ、多分USDT、Tetherが始まりです。Tether自体が生まれたのは結構古いんですが、活発に取引されるようになったのは2017年ぐらいからです。2017年から急に拡大をし始めたというところは有名なんですけれども、なぜTetherが必要だったかというと、暗号資産の取引が拡大して、決済のための言ってみれば業界内通貨みたいなものが必要になったわけですね。先ほどもどなたかの御発表に、DVPをやるためにステーブルコインで決済のツールをSTOの世界に導入したいという話がありましたけど、それと同じことが2017年にビットコインが高騰したときに起こったわけで、そのときにTetherが拡大しました。そのときからTetherというもの、あるいはTetherに似たような暗号資産が銀行の規制と真っ向から対立するものであるということはある意味で自明だったわけですね。

なぜかというと、もし決済のための資金が必要なのだったら銀行の預金を使えばいいわけですよね。そういう意味では、銀行預金じゃなくて、わざわざなぜステーブルコインなどという預金もどきをつくるのかというと、それは既存の銀行預金と暗号資産との間に大きな壁があって、これは主にAML/CFTの観点からの壁が大きいと思いますが、その他にも幾つか事務手続上の、あるいはシステムが連動しない等の問題があって、結局暗号資産で決済をした資金を安定資産であるところのドルとか円とかの預金に換えちゃうと、次に暗号資産を買うのにまた時間がかかる。証券会社への預け金のような形で個々の暗号資産会社に預けるよりは、ステーブルコインと交換するという形のほうがよいだろうという形で自然発生的に生まれてきたのがTetherだと言われています。

ただ、その後、テキサス大学のグリフィンとシャムズの論文などによって、実はTetherというものが、ドルでステーブルコインという形で短期の負債を発行して、それをビットコインに投資をするという一種の投資信託のようなものであったという実態が暴かれてしまい、それに対する信認がかなり落ちてきたというところで、米国のニューヨーク州の司法当局がかなりそれに対して牽制的な行動を行ったということは、過去に様々な事件があったことからも明らかなんですが、それがまさに今回端的に起こってしまったのがUSTでありまして、この首謀者である韓国人のドゥ・クォンさんという人は今集団訴訟の対象になっているそうですが、いずれにせよ、これ自体は、これまで発展を遂げてきた銀行の預金とか金融商品というものの過去の伝統をある意味でゼロからもう1回学習し直しているみたいなもので、こういうものがまともに機能するはずがないとずっと言ってきたんですが、USTで実証されてよかったなと思っています。

USTの事件が起こったときに、直後に、資料でいくと18ページですか、Tetherの発行残高が急に減りました。実はUST事件が起こった後でTetherの価格も一時的に1ドルからかなり下落しましたよね。5%ぐらい乖離したのかな。その意味では、それまでの発行額、850億ドルを維持することができないということで、今、720億ドルに減っているという状況だと思います。

そういう意味から考えると、既存の暗号資産を取引するためステーブルコインというのができて、それが何となく一般の社会にしみ出してきているような議論があるんですけども、実際には全くしみ出してきていません。海外でもしみ出してきていない。単に暗号資産がいかに上手に取引できるかということだけのために使われるものなので、それは積極的日本の国内でこれを推奨するようなものではないと思います。日本では一般社会でも使われてないし、また日本の国内の暗号資産取引でもほとんど使われていませんので、そういう意味から、決してここでステーブルコインを何かしないとWeb3時代に乗り遅れるとか、そんな不思議なロジックを展開する必要はありません。そもそもWeb3時代に乗り遅れるなどということを心配する必要性は全くないと私は思っていますが、いずれにせよ、ステーブルコインの議論を、今の既存のステーブルコインを前提とする限りは、これを何かよいものとしてより実現するための工夫をどうしていくかということを考える必要はない。あえて言うならば、その害悪をどうやって日本の国内の他の金融市場に持ち込ませないようにするかという視点が大事なのではないかと私は考えております。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】

松尾でございます。ステーブルコインそのものについて、岩下先生の意見に付け加えることはあまりないのですけども、この会のもともとの設立趣旨もそうですし、先ほど落合様から発言あったように、アメリカの大統領令が責任ある開発ということで、イノベーションと責任というところを両立するというところで、これは世界的な潮流だと思います。

一方で、イノベーションと責任というのを両立するために、落合さんがおっしゃったように、リスクベース・アプローチというのは1つのアプローチなのだろうと思います。岩下さんが先ほど情勢変化をおっしゃっていただいていましたけども、別の情勢変化がございまして、それは今年になって100億単位、場合によっては800億円単位の流出事件が起きているということですね。これはやっぱりブロックチェーンとか、その周りの技術の取扱いの難しさというのを改めてこれも立証されてきているということなんだと思います。

だからこそリスクベース・アプローチはやっぱり重要なのだと思うわけです。ちょうど実は私、イタリアのジェノバというところにいまして、明日開催される、SSR、セキュリティースタンダライゼーションリサーチというセキュリティーの標準化のための学術会議の場所にいるんですけど、まさにこの学会が、リスク分析のためのいろんなことを議論しているところです。このデジタル・分散型金融分野でのリスク分析というのは、技術と金銭的な金融サービスにとってのリスクの両方を議論されると思うんですけども、まさにこれはデジタル研究会なので、情報システムとしてのリスクが金融リスクにつながるというところで両方を見る必要があるのだと思います。

私と岩下先生はちょうどコインチェック事件が起きた直後にCGTFという団体を立ち上げて、取引上あるいはカストディのセキュリティー対策というのをISOの27000シリーズに則って極めて地道にドキュメントをつくり、それをISOのTR、テクニカルレポート23576というISOのドキュメントにもして、あるいは私がやっているBGINの会議関連のドキュメントにもしているというところで、こういう実は昔ながらの情報システムのお作法によるリスク分析を改めてここでちゃんとしなきゃいけないということを落合さんにまた提起していただいたのだと思います。

27000シリーズでは、これは栗田さんのほうが詳しいのだと思いますけども、やはりシステムが安全であるということは、システム提供側が挙証していく責任がございまして、それはいろんなアスペクトになります。

なので、例えばコードの監査をしていればよいというだけでも駄目ですし、それはセキュティマネジメントサイクル全体から見ると、全体のごく一部分であって、もっといろんなことを確認していかなきゃいけないですし、先ほどアップグレード性という単語も出たんですけども、アップグレード性を持ちながらセキュアにシステムをつくるなんていうのは我々の百年来の夢でして、そんな簡単にはできないだろうと思うんですね。

先ほど申し上げたとおり、リスク分析のプロセスや結果というのはシステム提供側が示すものなので、前回コインチェック事件の後に、我々、CGTFという、完全にボランティアの団体でやったときには、事業者からの協力が少し得られた部分もありますが、全体としてはなかなか得られなかったし、無報酬でやったという状況がありました。ただ、それは長続きしないし、今回いろいろ分散型金融、DeFi、いわゆるWeb3みたいなものが盛り上がってきている中ですので、できればFintech協会様の御協力をいただきながら、こういう新しいリスク分析ができると、建設的な議論がこの研究会でもできるんじゃないかなと思いました。

本来であれば、コモンクライテリアで規定されているようなセキュリティーターゲットとかプロテクションプロファイルみたいなのを決めると、すごい建設的に、まさにイノベーションの促進の基礎になると思うので、そういうところはポイントになるかなと思います。

やはりアメリカの大統領が責任ある開発としたのはとても賢い単語の選び方だと思っていまして、イノベーションの促進ということも書かれているんですけど、タイトルは責任なんですね。やっぱりイノベーション無罪ということはあり得ないので、まさに落合さんから提案いただいたように、リスクベース・アプローチを真面目にこれからやるということが重要なのかなと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、野田さん、どうぞお願いいたします。

【野田メンバー】

東京大学経済学部の野田です。よろしくお願いします。

まず最初に岩下先生のコメントに対する意見なんですけど、私はステーブルコインが今までの預金などと同じ機能しか果たせないものと理解するべきだとは思っていなくて、潜在的には実質的に有用であり得る性質を持っていると考えています。第2回のときに説明した内容と少し重なるところがあるんですけれども、ブロックチェーン上に載っていることによってプログラマブルだという性質が加わり、今までとは違う取引の仕方が可能になるという点が違いになると考えています。それがいいことなのかどうなのか、目指しているものが本当に達成できるのかという論点はありますが、従来の法定資産、ブロックチェーン以前ではスマートコントラクトは利用不能だったので、ステーブルコインは潜在的には今までより便利なものになり得ます。一方で、犯罪者にとっても便利であり得るので、危険である可能性があるものだと意識して考えるべきだと思います。なので、詐欺的な、何の価値もないのに誇大広告として広がっているものというよりは、便利で危険であり得るものだというイメージで分析するべきものなんじゃないかなと考えています。

法定通貨で裏づけられたステーブルコインのオフチェーンの部分について、これについての規制を進めているというのが1つの論点だったと思います。分散型金融のように全体がブロックチェーンの上に載っているようなものと違って、法定通貨で裏付けられたステーブルコインはコードを読むことで利用者が自身で安全性を検証したりできない部分を含んでいるというサービスです。これは従来の金融と同じように、監視などの規制が行われなければ、モラルハザードや逆淘汰の問題が発生してしまいます。裏づけ資産の管理体制などの部分については規制をかけていくことで社会構成が改善されるんじゃないかなと思っています。

それ以外の部分については、法律的な部分、そして工学的な技術的な部分が大きくて、経済学者として私が専門的に研究している部分とは少し内容が異なっているので、あまり深いコメントはできないなと感じながら資料を読ませていただきました。幾つかコメントしたいポイントがあります。AML/CFTは、法定通貨だけではなくて、価値の移転全てに関わる話です。従来の金融システムでは送金の手段として使い得る流動資産は法定通貨しかなかったので、法定通貨のみを対象としていたのだと理解しているのですが、暗号資産でも価値の移転は可能です。こうして規制をかいくぐって価値の移転できるなら規制の意味が薄れてしまうことに気をつけないといけないのかなと思っています。

理想的には暗号資産による価値の移転なども併せて規制をして、ちゃんと実効性のあるシステムをつくるということだと思うのですが、法定通貨でバックアップされたタイプのステーブルコイン以外のものに対する規制は実効性の意味で難しいところがありますので、可能かどうかはちょっとわかりません。

実効性がない規制をつくってしまうと、真っ当な利用者が不便を感じてコストがかかる一方で、悪意がある人たちは抜け道を探せるため、セキュリティーが高まっていないという状態になりかねないことには注意が必要です。それについては警戒をして、ちゃんと実効性がある規制をやるか、いっそやっても意味がないのなら規制をやらないか、どちらかにしないといけない。まずは実効性がある規制が可能かちゃんと検討するということだと思います。

最後のコメントとしては、これも第2回の発表で少し述べたことなんですけれども、暗号資産を使った悪用の手段は、価値の移転だけではなくて、拘束力のある契約を結べるということ自体が犯罪者にとって有利になる可能性があります。特にステーブルコインを使えるならこういう契約のやりやすさが増していくと考えられます。この辺りのことも考えながら、ブロックチェーンがあることによって犯罪者がこれまで不可能だったどういうことができるようになったのかというのを注意深く考えていかなければいけないのかなと考えております。

以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、坂さん、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】

ありがとうございます。私のほうからは、総論的な意見と、項目的になると思いますけども、論点について何点か申し上げたいと思います。

まず論点1に関して、総論的な意見ですけども、体制整備の内容として①から③に挙げられている要件は、中間論点整理後の事態の変化を適切に反映して具体化する必要があると思います。この間の事態の変化として3点指摘したいと思います。

第1に、国際情勢が劇的に変化し、ロシア・ウクライナ戦争に対し、金融にも事態の解決に向けた対応が求められていると思います。国際的な金融制裁の枠組み、取組とステーブルコインを含む暗号資産が金融制裁の抜け道として利用されることへの対応は重要な課題となってきていると思います。

第2に、暗号資産の犯罪等への利用が深刻化しています。ランサムウエア攻撃が増加しており、身の代金要求に暗号資産が要求される、あるいはマッチングアプリ等から暗号資産取引に誘導される詐欺被害が後を絶たない状況にあります。

第3に、NFTやメタバース等の新しいサービスが拡大しております。新たな分野として期待されるとともに、リスク対応を検討すべきフィールドが広がっている面もあると思います。

金融システムは社会経済活動のインフラとして、国内的にも国際的にも比較的堅牢な制度的枠組みが構築されてきました。金融システムの管理が十分に及んでいないところでは問題が起こり得るし、また新たな事態への対応にも支障が生じ得ます。事は戦争・平和に関係することにも及んでいます。金融システム全体を適切に管理することの重要性がより高まっていると思います。

次に、業界団体の皆様からの御報告に触発されて4点ほど各論的に述べたいと思います。

第1に、自民党デジタル社会推進本部の報告案にも現れております責任あるイノベーションという視点が重要だと思います。規制が解決しようとする課題解決のためのイノベーションを期待したいと思います。

第2に、世界で流通しているものについて、そのよしあしを的確に見極めるとともに、現在世界で流通しているものが今後も同じように流通するのかはよくよく考える必要があろうかと思います。安全性や、特に経済合理性の観点から検討が必要です。

第3に、規制枠組みに関する御意見については、同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用するという原則が重要です。業務内容やリスクの差異に応じて内容を調整することがあり得るとしても、機能に応じた横断的な規律という原則が堅持される必要があります。

第4に、法定通貨裏付型と暗号資産型について、両者の期待が異なるか否かについては、実態に即した検証が必要です。なお、暗号資産型も広く送金決済手段として用いられる場合には、今回の改正法の規制対象になるものと認識しております。

次に、論点2についてですけども、まず②について3点ほど。第1に、仲介者については、本人確認や送金元・送金先情報を共有するトラベルルールの体制の確立が重要です。

第2に、PtoP取引については、マネーロンダリングや金融制裁の回避等に利用されやすい点が問題であり、これを制度または技術により実効的に解決できるかが課題です。

金融制裁回避の防止やマネーロンダリング対策の重要性に鑑みますと、実効的な解決策が見出せない場合には、かかる部分については禁止をするほかないのではないかと考えます。

第3に、ステーブルコイン取引の大半がブロックチェーン経済圏での利用にとどまっているという御指摘がありました。しかし、金融制裁の抜け道としての利用、あるいは犯罪における利用が起こっているということを見ますと、問題がブロックチェーン経済圏にとどまっているのではなく、その影響が社会に広がっているということを見る必要があると思います。

次に、論点2の③について、利用者の権利に関しては、不正利用の防止について、デジタル化の進展、利用の拡大とともに、攻撃がますます高度化、巧妙化しており、セキュリティーの高度化とセキュリティーの高度化を促す補償のルールの確立がより重要になってきているように思われます。

また、これは暗号資産一般の問題かとも思いますけども、御紹介のありましたシンガポールのような広告規制については、我が国でも検討すべきと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】

ありがとうございます。株式会社Layer Xの松本と申します。

本日の論点2つについて、まとめてお話をさせていただくんですけども、特に私はソフトウエアエンジニアというか、この中で開発側を担当させていただいておりますので、その視点のお話をさせてください。

1つは、まずイノベーションだ、イノベーションだというのは、これは大事なことだとは思うんですけども、そのために大事なのって、いきなり臭いものに蓋をしない規制の在り方かなとは思っておりまして、とはいえ、もちろん犯罪に活用されている、先ほど坂先生もおっしゃっておりましたけども、例えばUSDCのようなステーブルコインであっても、実際の取引に使われるということは多々おっておるわけです。

そういったこともあることも考えて、適切なサンドボックスをどう設けていくかということは重要なのかなと思っております。その上で、今回上がってきた1から3の規律を求めること、これについては十分適切なものかなと私は考えておりまして、この範囲内でどれだけ活用を見出していこうとすることが重要かなと思っております。

特に規制つくるときというのは、生かしていきたいのか、そもそも最初から蓋をしたいのかというところで、これはソフトウエアエンジニアの身としては、こちらをきちんと生かしていくというか、そもそもよいか悪いか、私はまだ判断がついていない状況だと考えておりまして、その状態で蓋をするというよりも、多少の余白を設けてこちらを生かしていくことができないのかなと考えていくことが重要かなと思っております。

その中で、①から③までの論点の話をさせていただくと、ステーブルコイン等を生かしていくためのこれまでにない仕組みだと捉えたときに何を考えていくかですけども、例えば決済、こちらの権利移転というものがどのように完了するかというものが、実は総論、ブロックチェーン全体として今語っておりますけれども、物によってはアルゴリズムが全然違うわけです。確率的ファイナリティのあるビットコインのようなプロダクトだったり、一方である程度ファイナリティが確定させやすいものというものもあります。

こういったものを工学的に踏まえて、どのチェーンにおいてどのようなファイナリティを設けていくべきか、それによって権利移転というものをどのように判断していくかというのは、各論それぞれ議論されるべきものなのかなと考えておりまして、こちらを当局として判断できるかどうか、それをどのように判断していける体制をつくるかというほうが重要かなと思っております。

②、決済に限らず、この上でDeFi等の証券をやり取りする等々考えますと、結局価値の移転というのは本人の認証が重要なものだと考えておりまして、その上で、本人がAML等々の問題に引っかかるものなのかどうなのか、考えなきゃなりません。

ブロックチェーンはこれがさらにグローバルで行われるものということで、ここの難しさはあるんですけども、Securitizeさんの資料にもありましたとおり、私もやり方については非常に賛同するところなんですが、スマートコントラクトで取引を記録するという段になって、コンプライアンスを守るための別途の基準がコントラクト上で同じく設けられている、こういった、どのような規制基準、どのような基準を準拠したものであれば、ノンカストディアルウォレットであろうが、取引所ウォレットであろうが、取引してよいよと。その基準を明示的に我々が示していくことというのが重要なのかなと考えております。

これが例えば将来的に規制当局、ないしこれはグローバルで合意された仕組みとして、こういったこの基準に合致したこのウォレットであれば、ないし、このKYCされた人に対して、こういった基準によって検証されたアドレスである、ウォレットアドレスであるということを示す、そういった中央の1つの規定に準拠したコントラクトがあることで、それによってどのコントラクトとDeFiやステーブルコインといったコントラクトというのをやり取りしていいよ。そういった基準があると、実は開発者としては非常にありがたいものとなります。

というのも、開発者として、今、簡単に、言ってしまえば、今、私がここでささっとコードを書きまして、それをイーサリアム上にリリースすることができるわけです。なんですけども、これが例えば意図せず、例えば私が今レンディングのスマートコントラクトをつくりましたと。リリースしたところ、意図せずマネーロンダリングに加担してしまうということも当然あり得るわけですけども、この中で、先ほどあったようなコンプライアンス確保のためのコントラクトがあり、協調していくことでそういった危険から避けられるというのは、実はこれイノベーションを促進する上でも非常に取り組みやすくなるなと感じておりまして、そういったエコシステムをどのようにつくっていくか、全体感を持って取り組んでいくことが重要なのかなと思っております。

もう一つは、取引も大小様々あります。ちょっとしたゲームの課金から大きな証券の取引まで、これが一緒くたに取引されてしまうのがブロックチェーンだと考えておりまして、金額の大小に応じてどのような色づけをしていくのか。例えば金額が小さい場合に、ある程度基準を緩めるのか。前払い式というような仕組みと同等ぐらいの基準に考えていくのかなどなどのグラデーションも設けていくことが重要かなと思っております。

③の観点については、私はこちら、システム的というよりも運用面での補てんのほうが重要と考えておりまして、システム面で触れることはしません。

結論は、私としては、普及するかどうかは置いといて、こういった仕組みというのが実験される環境を我が国としてどういうふうに設けていくかということが一番重要な論点かなと思っておりまして、それが可能なある種サンドボックスといいますか、砂場といいますか、遊べる環境というのがあることで、そこで初めてより実効的な安心・安全を担保するための仕組みというものが見えてくるものだと思っております。そういった整備された環境が、日本の発展ないし金融の発展に資する仕組みとなればよいなと考えております。

私からの発言は以上となります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、加藤さん、どうぞお願いいたします。

【加藤メンバー】

加藤です。よろしくお願いします。まず資料2の論点2の(1)についてです。資料の5で御紹介していただいたように、受益証券を発行しない受益証券発行信託には、意思表示のみで譲渡可能、譲渡制限の効果が第三者に及ぶ範囲が広い、信託受益権原簿の記録の更新が受益権を譲渡によって取得したことを受託者及び第三者に対抗するための要件とされているという特徴が存在するため、分散台帳の記録の更新と信託受益権原簿の記録の更新の同期が可能になっていると思います。

資料の4の4ページにおいて、既にブロックチェーン上の権利を正としてステーブルコインの移転が行われる実務があり、記録と権利移転が分かれることを前提として議論する必要はないとの記載がありますけれども、資料2の論点2の(1)における①の体制整備というのは、ブロックチェーン上の記録を正とできるような仕組みを構築することを求めるということであって、その1つの手法が受益証券を発行しない受益証券発行信託であると思います。

実際にはブロックチェーン上の記録を正とすることへの様々な法的な障害が存在し、その代表例が権利の譲渡の対抗要件を具備するために確定日付のある証書を要求するという仕組みであると考えております。ステーブルコインというか、電子決済手段との関係ではあまり関係ないかもしれませんけれども、セキュリティトークンには関連がありまして、譲渡の対抗要件具備に確定日付のある証書が必要である権利のトークン化については、産業競争力強化法による第三者対抗移行要件特例の意義が認められる可能性があります。

次に、資料5の14ページの記載についてです。直接的には三菱UFJ信託銀行の方への質問になってしまうかもしれないのですけれども、この図における仲介者が行っている行為は電子決済手段取引業の何に該当するのかということです。電子決済手段の売買を行っているということは明らかですけれども、仲介者はそのほかに受益者のために信託受益権原簿の書換え手続を代理していると思います。分散台帳やブロックチェーンに一旦記録された情報は一定の改ざん耐性が認められると言われておりますけれども、正しい情報が記録される仕組みは別に用意する必要があると理解しております。

資料5の14ページでは、正しい情報が分散台帳なり信託受益権原簿に記録されるために仲介者というものが重要な役割を果たしていると思いますが、このような役割が電子決済手段取引業の何に該当するのかということについて確認する必要があると考えます。私の考えでは、他人のために電子決済手段の管理をすることに該当し、それに属する行為の中に信託受益権原簿の書換えに関する行為が含まれると考えています。

ただ、この仲介者が信託受益権、電子決済手段の管理をしていると言えるのかということについては、たとえば有価証券の管理とは別の観点からの整理が妥当であるように思います。なぜかというと、受益権原簿には仲介者ではなく受益者の名前が記録されているからです。他人に権利の管理を委託した真の権利者が発行者及び第三者に対する対抗要件を充足した地位を継続できていることは望ましいことですが、他の場合、たとえば有価証券の管理を他人に委託する場合と異なりますので指摘させていただきました。

なお、資料5の8ページの右上で「善意取得の回避」という表現がされておりますが、受益証券が発行されていない場合には信託法の善意取得に関する規定の適用はないはずです。そのため、むしろ譲渡制限の効力が制限されないようにと表現したほうが適切なのではないかと思います。

最後に、資料1の25ページ、ミキシングサービスとAML/CFTについてです。ミキシングサービスは、私の理解が不正確かもしれませんけれども、現行法においてミキシングサービスは暗号資産交換業に該当しないと整理されているのではないかと思います。

ただ、ミキシングサービスは、利用者の指図に従って第三者に暗号資産を移転するサービスの一類型と整理できます。このような利用者の指図に従って第三者に暗号資産を移転するサービスというのは暗号資産交換業者が現に提供しているサービスではないかと思います。これは暗号資産交換業そのものではなくて、例えば暗号資産の管理に付随して提供されるサービスなのかと思いますが、そのような整理で正しいのか確認したいと考えます。

仮に利用者の指図に従って第三者に暗号資産を移転するサービスが暗号資産交換業には該当しないというのであれば、このような整理には見直しの余地があるのではないかと思います。

その主たる理由としましては、本年度に出されました外為法の改正により、外為法16条の2の対象に銀行や資金移動業者が行う為替取引に加えて、暗号資産交換業者が行う暗号資産の移転が含まれることが明文化されたことが挙げられます。

このような最近の改正を踏まえますと、暗号資産交換業者が利用者の指示に従って暗号資産を第三者に移転すること自体を暗号資産交換業に該当すると整理した上で、それを対象とする規制の中でミキシングサービスを制限していくことを検討することが考えられます。

私からは以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。御質問がありまして、1つは、三菱UFJ信託銀行様に御質問なので、事務局から聞いていただくということかと思いますけれども、あるいは事務局でも何かお答えいただけるかもしれません。

それから、もう一つは、最後のほうの交換業者、ミキシングサービスの取扱いについては、恐らく事務局からもし何かあればお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。まず1点目の御指摘は、確認させていただいた上で、後日御連絡させていただきたいと思います。

2点目につきましても、加藤委員御指摘のとおり、暗号資産交換業の行為の中でも、例えば媒介に当たるのか、あるいはその管理に当たるのか。これは個別具体的に判断する必要があろうかと思うんですけれども、どこまでが適用範囲なのか、これは、例えば同じような問題は、事務局説明資料ですと5ページの4つ目の丸にありますけれども、例えば利用者にアプリケーションを提供してP2P取引における取引のマッチング等を行う者、これは媒介をしているということになるのか、ならないのか。具体的に多分どこまでサービスを提供しているかということと併せて検討する必要があろうかなと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、先に進ませていただきます。次は神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】

御指名ありがとうございます。資料2に基づいて御指摘いただいている要件の①から③について一言ずつコメントさせていただければと思います。

まず①の権利移転に係る明確なルールがあることでございますけれども、これは決済手段として使われるためには大変重要なことで、ルールが明確であるだけではなくて、実効性があるということがさらに重要だと思います。そのためには、台帳に閉じられた世界をつくることがポイントになると思います。そのような閉じられた世界をつくるためには、基礎となっている権利の性質毎に検討する必要があるように思います。

信託受益権の場合には、先ほどProgmatの説明においても言及されましたけれども、そもそも受益権に譲渡制限をかけた上で、受益証券発行信託を使ってさらに受益権原簿制度を利用するといったような様々な工夫がなされていたと思います。これに対して預金の場合には、これは既に判例、学説上、預金について、いわゆる「発生―消滅」構成が確立していると思われますので、あまりこういった問題はないかと思います。これに対し、資金移動業者が行う場合には、基礎となる権利の性質によって、加藤先生も先ほど御指摘されましたけれども、第三者対抗要件をどのようにクリアするか、といった問題があり、基礎となっている権利の性質が何かによって類型的に検討する必要があると考えます。

②のAML/CFT対応でございますけれども、中間整理が出された後、さらに規制の強化と申しますか、厳格化が進んでいる分野であると思われます。この点については、坂委員も先ほど御指摘されたと思いますけれども、規制のループホールを塞ぐ必要性がとりわけ大きいと思います。

したがって、仮に暗号資産型のステーブルコインが電子決済手段として定められた場合には、当然のことながらAML/CFT対応については他の電子決済手段と同等の規律に服していただく必要があると考えられます。本人確認がされていない利用者への移転の禁止等のための体制整備は必須のルールであろうと思います。

それから、最後の③でございますけれども、利用者の権利が適切に保護されるためのシチュエーションとして、発行者や仲介者等が破綻する場合ですとか、技術的な不具合や問題が生じた場合が挙げられておりますけれども、例えば秘密鍵を不正に取得して不正な移転がなされた場合ですとか、あるいは差押えですとか相続によって、台帳の記載と、真の権利者というのでしょうか、のずれが生じる場合は、どうしても生じ得ると思います。このような場合について、特にパーミッションレス型の場合にどのように対応するかについて、きちんと体制をつくるとともに、それを常時見直し、是正するという体制整備義務を、少なくとも発行者と仲介者で過不足がないように課すことが望まれていると思われます。

私からは、以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、森下さん、どうぞお願いいたします。

【森下メンバー】

ありがとうございます。私からは5点申し上げたいと思います。

まず1点目ですけれども、ウェブ上で信頼できて非常に使い勝手のよい決済手段が欲しいというようなことというのは本当そのとおりなのかなと思います。そのために何が守られなければいけないかといったときに、資料にある3点はいずれも大事なことなのかなとは思いますけれども、プラスアルファで、ステーブルコインであるという以上は価値がステーブルであるということが大事なのではないかと思います。

今回の資料の中でも御紹介があった事例というのは、ステーブルだと思っていたものが実はステーブルでなかったというようなことなのかなと思いますけれども、そういったようなことがしっかりと仕組みの上でも、かつ法的にもセキュアなものであるというようなことが信頼できる決済手段として大事な要素ではないかと思います。

2点目ですけれども、リスクベースというようなお話がありました。これは確かにそうで、リスクベースの規制というのは至るところに採用されていると思います。ただ、この暗号資産との関係、あるいはステーブルコインとの関係でちょっと難しいのは、リスクが分かっているのかというようなことかと思います。幾つか最近こういった事件があって、やはりリスクが大きいことが分かってきたというようなお話が先ほどありましたけれども、リスクは本当どうなんだろうかというようなところが詰められないと、なかなかリスクベースでの話も難しく、実効的な規制やルールを考えるのがやりにくいというのが現状ではないかと思います。

さはさりながら、2点、ちょっとこういった視点はどうなんだろうかと思うことですけれども、お話の中で、マス取引ではないという、閉じた空間での取引が主体なので、比較的その分リスクを低く見積もることができるのではないかといったようなお話があったと思いますけれども、それを本当にそう考えるのかどうなのかというようなことが1点。

あとは、通貨単体での取引というよりも、必ず実取引に伴う決済で使われるので、トータルとして考えて何らかの形でのリスクコントロールができるかといったような視点もあるかと思いますので、そういった点も考慮しながらリスクの在り方というのをしっかりと深めていく必要があるのではないかというのは既にほかの委員もおっしゃられたとおりかと思います。

3点目です。権利移転とか破綻した場合の問題ということですけれども、これも既に委員がお話になられたところと重なるところあると思うのですけれども、仕組みの上でしっかりとそういったようなことが記録できる、あるいはオペレーションがしっかりと回るようなシステムになっているということは大事だと思いますけれども、例えば権利移転の仕組みですとか、破綻したときに個々の権利者がどのような取戻しをできるかというのは、システムだけではなくて、やはり法が、特に私法がどのような規律をしているかということに関わると思います。

この点、日本はやはりちょっといまひとつ不明確ではないかというようなことが言われてきていて、それが現在も存在するということはあるのではないかと思います。私自身は解釈論で結構何とかなるのではないかということを書いたりしたこともありますけれども、ただ、既に海外では、立法例ですとか、あるいは立法に向けた具体的な案というものも出てきていますので、我が国としてもそういったようなことをしっかりとスピード感を持って進めるべきであると思います。

4点目ですけれども、チェーンがパブリックかどうかということと、あとは、上部レイヤーも含めて、例えばスマートコントラクトなどの利用も含めて、全体として適切なリスク管理ができているかどうかというような問題があると思うんですけれども、やはり大事なのは、一番下のチェーンがパブリックかどうかということだけではなくて、トータルとしてしっかりとしたリスク管理ができているかどうかということだと思います。

ただ、その際にレイヤーが重なっていった中で、誰が何について責任を負うのかということが分かりやすくなっていること、利用者にも分かりやすくなっているというようなことが大事なのではないかと思います。そういう意味で、資料の中でスマートコントラクトを使って対応されているというようなことですとか、今日もそういったようなリスク管理あるいはコンプライアンス管理のお話がありましたけれども、そういったようなことも有効であって、ただ、それがしっかりと分かりやすく、かつ具体的な責任分界などもクリアになっているということであればなおいいのではないかと思います。

最後に、暗号資産ですとかステーブルコインはどうしてもやっぱり国境を越えやすいということもありますので、グローバルな連携というものが非常に重要になってきていると思います。これは金融庁さんも既にいろいろ取り組まれているところだと思いますけれども、1国で完結しないこういった取引について、それぞれの国がそれぞれの規制を持つということは重要だと思いますけれども、その執行、エンフォースなどにおいて協力をしていくということも決定的に必要ですので、そういった方向性での取組もこれからますます強めていく必要があるのではないかと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、井上さん、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】

井上です。本日は、御説明どうもありがとうございました。とりわけ三菱UFJ信託の齊藤様とSecuritize Japanの森田様の御説明は、非常に具体的だったので、考えが深まったといいますか、具体的に考える参考になりました。ありがとうございます。

皆様がおっしゃっているように、イノベーションの促進と顧客保護あるいは犯罪等の防止とのバランスが大事だということは、私もそのとおりだと思いますけれども、本日お話を聞いておりますと、その中には厳しい意見もあれば期待する意見もあるということで、私自身はどの辺りかというのをもう少し考えてみたいと思っておりますけれども、資料の2の論点1について小さな御質問を1つ、論点2について1つコメントを差し上げたいと思います。重複があるかもしれませんけれども、御容赦ください。

1つ目について、論点1は、海外、国際的な情勢等を踏まえて十分と考えられるかということでございますが、本日、事務局の説明資料の14ページ、あるいは15ページの辺りによると、マネートランスミッター型、限定目的信託会社型といったものがある中で、例えばマネートランスミッター型は、裏づけ資産が銀行預金ないし米国債によって保全されているということですけれども、あくまでも名義は発行社名義なので、普通に考えれば、発行者が破綻すれば保護は不十分ということになると思いますが、それについては、15ページにありますように、一定の要件を満たしている限り、預金保険の保護対象となるということのようです。しかし、御説明にもあったように、一定の要件が必ずしも満たされている場合ばかりじゃないと思います。こういった必ずしも保護要件が満たされている場合ばかりではないという状況について、米国ではそれを何とかしようという動きがあるのか、あるいは、そうでもないのかといった辺りについて、最近の国際的な情勢等を踏まえた議論があれば教えていただければと思います。これが1点目です。

2点目は、論点2についてですが、権利移転に関し、ルールが明確であることに加えて、分散台帳上の記録との不整合が生じないようにすることが重要だというのは、そのとおりだと思います。

その目的のために、1つには、ブロックチェーン上で譲渡と対抗要件の具備が完結されることが必要です。確かに、システムダウンしたときなど、先ほどの齊藤様の御説明のように、アナログで対応する場合が例外的に生ずることはあるかも分かりませんが、原則としては、ブロックチェーン上の処理で譲渡と対抗要件の具備が完了するというのは非常に重要なことだと思います。

ただ、それに加えてもう1つ、ブロックチェーン外での譲渡あるいは対抗要件具備が行われないようにすることも同じように必要でございまして、ブロックチェーン上で譲渡あるいは対抗要件具備が完結できても、それに先行して、そういったシステムの外で譲渡されたり対抗要件が具備されたりするようなことが起こってしまうと、うまくいかないということです。

その観点でも、権利対象がどうなのかによって現行法の取扱いは様々に異なっておりますので、検討が必要だろうと思います。

齊藤様の御説明してくださったProgmatについては、受益証券発行信託を使うということですので、この双方の観点からの検討が恐らくなされた結果だと思います。しかし、例えば先ほどから話が出ているような、債務者に対する確定日付ある通知または承諾で対抗要件を具備するというタイプの権利については、例えばこの資料にもありますような産業競争力強化法による第三者対抗要件の特例を利用すれば、1つ目の観点、すなわちブロックチェーン上でのシステムとリンクさせて、債権譲渡と対抗要件の具備を完了することまではできると思いますが、この特例を使ったからといって、それに先行して他人がそのシステムの外でこの特例を使わずに譲渡したり対抗要件を具備したりすることまでも自動的に禁じられるわけではないと思いますので、権利対象次第では、そういった2つ目の観点からの検討が必要だろうと思っております。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。御質問があったかと思いますが、いかがでしょうか。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。1点目の御質問の件ですけれども、アメリカでは連邦レベルでステーブルコインの対応案というものを政府レベルでまず提案したものがございます。その中では預金保険が具体的にどう適用されるかということは明示されてないわけですけれども、預金保険が適用される金融機関に発行者を限るという記述があることからすると、預金保険が適用され得るということを前提に考えていると考えられるのかなと思います。

それから、政府案につきまして、現在議会で検討されている過程と承知しております。その中で、修正案といたしまして、発行者を銀行に限らない、ノンバンクの発行を認めるという案が出ているわけですけれども、ノンバンクについては、預金保険と同じようなセーフティーネットに加入することを条件とするというような議論がされていることからいたしましても、預金保険の適用という、あるいは、それに類似したセーフティーネットの適用ということは可能性としては考えられているのかなと思います。

さらに、なぜそういう議論をされているかということを申し上げますと、アメリカのステーブルコイン対応案の中にもございますけれども、バンクラン、いわゆる危機時に資金が急激に流出する取付け騒ぎ、バンクランへの対応というものが非常に意識されております。こうしたものに対応するためには、預金保険等がないと、本当の危機時にバンクランを防げるのかと。そういう問題意識も背景としてあるということかと思います。

ただ、いずれにしても、どういう形で預金保険を適用するかというのは、我が国におきましても、破綻時の名寄せをどうするかだとか、実務上の取組を相当進めてまいりました。そういう意味で、制度的な話に加えまして、実務でどういう形で名寄せしていくかと、そのためにどういう制度をつくるかと、そうした観点からの検討も必要なのかということかと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に進ませていただきます。チッャト上では松尾先生から一言いただいていますけれども、1周したらと書いていただいていますので、1周目の方を優先させていただいて、栗田さん、翁さんに先にお願いいたします。栗田さん、どうぞお願いいたします。

【栗田メンバー】

栗田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私も松本さんと同様に、ソフトウエア開発者の立場からお話しさせていただきます。

4点あります。1点目は言葉の重要性についてです。ソフトウエア開発において、システム、ソフトウエアは目に見えないものなので、いかにして言葉を紡いでお互いにコミュニケーションを図って作っていくのか、あるいは運用していくのかということが非常に重要になります。

例えば先ほど「ステーブルコイン」という言葉について何々型があるというお話がありましたけれども、そもそも「ステーブル」とはどのようなことを表すのかということも含めて、「ステーブルコイン」という言葉で全てを表すのではなく、言葉を変えて、あるいは、補ってコミュニケートするとか、そういったことが重要なのではないかと考えます。

それから、例えば「アルゴリズム」という言葉も出てきますけれども、こちらも分類していく必要があると思います。確実にどのようなことが起こるのかということを認識できるような形で説明できるようなアルゴリズムであるのか、あるいは、必ずしも正しい答えを導くことができるとは限らず、試してみないと分からないようなアルゴリズムであるのか、あるいは、AIのように入力データを用いてコンピューターに学習をさせたブラックボックスとして説明ができない、説明が難しいものであるとか、さまざまなアルゴリズムの種類がありますが、それらのものを一くくりに「アルゴリズム」とは言わずに説明を加えながら表現していくことが重要です。

そしてこれは、開発対象であるシステムを明確に捉えて議論するために必要であるということと同時に、利用者を守っていく、利用者が対象を理解する上で必要な情報を提供するという意味でも重要なことになります。

2つ目は、開発の型についてです。システム開発、ソフトウエア開発のやり方はさまざまありますが、大きくは計画駆動型と、繰り返し型・アジャイル型というものに分かれます。これは議論があるところなのですけれども、計画駆動型に関しては、プロジェクト管理のような形で、いつまでにこういうことをしますと計画を立てて、そのとおり実行していこうということになるのですが、現実の実行においては不測の事態が生じるので、それを予測して、リスク対応を計画に織り込んでいくことが重要であるとされています。

この時に、どのようなものを作るのかということについて、その方法論も含めて、過去に経験があればリスクも分かりますので、そのリスクをあらかじめ予測して、対応策も検討しておくことが可能になるわけです。

一方で、繰り返し型・アジャイル型に関しては、利用者が試しに利用してみないと分からないであるとか、あるいは、解決策を知り得ない非常に複雑な問題に対応するので、解決案を適用してみた結果のフィードバックを得て、これを反映してまた次のサイクルに進んでいくというような形で、計画が立てづらいものに対して、タイムボックスを決めて、その中で少しずつ前進していくようなやり方になります。つまり、試行してみて検証していくということになるのですけれども、そうすると、やってみないとどんなことが起こるか分からないということで、リスク対応が非常に難しくなるという課題があります。ですから、タイムボックスを短期間にしたり、リスクが分からないので、少しずつ進めながらリスクの有無やある場合の深刻度を確かめていったりしていくことになります。

いずれの型を用いるとしても、システムやソフトウエアが社会に対して何らかの影響を与えた結果、何か起きたときに、どのような対応ができるということについて考えておくということは非常に重要だと考えます。これが巻き戻しというところに関係すると思います。

3点目が、以上も踏まえて、先ほど松尾先生もおっしゃっていた説明責任という話になります。従来のシステム開発、特に金融システムのような大きな開発に関しては、計画駆動型で開発と運用をしていくという中で、リスクベースの議論もしやすかったでしょうし、計画の範囲内で何かをしていくとか、そういったことが行いやすかったと思いますが、その大きさが手に負えなくなる、あるいは、小さなシステムやソフトウエアを組み合わせてシステムを作っていくので、先ほど松本さんが、さっと作ってすぐリリースできますみたいなお話をなさっていましたけれども、そういったものも含めて、さまざまなものとその組合せが繰り返し型のプロセスの中に含まれる時に、どのようにして説明責任を果たしていくのかというのが重要な論点になってくると思います。

特にアルゴリズムが動的に変わっていく中で、そこをどう評価していくかということが重要になると思います。こんなものを作りますということを客観的に評価する、評価をしてもらう、その結果、説明責任を果たしていくということに加えて、動的に変わっていくアルゴリズムについてどのように説明をしていくのかということが非常に重要になっていくと思いますし、それを社会がどのように受容するのか、しないのかで、何が起きたときにどうやって巻き戻しをするのか、あるいはしないのかというようなことについて考えていく必要があります。

例えば先般話題になりました誤送金問題みたいなものについて、今回の解決は、ウルトラC的なところがあったようですが、ああいったことが発生し得るとしたときに、発生したらどうするのかということについて、システムの運用とはまた別の次元で考えるべきなのではないかと考えます。

以上も含めて、グローバルの視点ということについてなのですけれども、日本が置いていかれないために、規制を国内だけに課すことはしないということについては私も賛成ですが、そのことについては、私たちが先導して何か新しいサービスやシステムをつくって世界に打って出ていくのか、あるいは利用者として使っていくにすぎないのかということについて、どちらもあると思うのですけども、これも分けてしっかり議論するべきであると思います。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、翁さん、どうぞお願いします。

【翁メンバー】

御説明、大変ありがとうございました。アメリカの大統領令でデジタル資産の責任ある開発の確保ということで様々な政策目標が整理されていましたけれども、日本でも同じようにやはりイノベーションとこういった政策目標をうまく両立していくという考え方はとても大事だと思います。新しい資本主義実現会議のほうでもメタバースやWeb3.0の広がりについて多く書き込まれておりまして、どうやってそういう環境整備を考えていくかということが大事になっているかと思います。

フィンテックに関わるこういった分野については、アメリカでも議論がありますけれども、明確なルールを提供することと市場の健全性を維持することとイノベーションの促進という3つの目標を一気に3つとも満たすことは難しいと、マックス2つだというような議論がございますが、それでもやはりこういったバランスを探していくことを考えていくことが大事かなと思っております。

そして、論点1につきましては、特に国際的な連携や国際的な整合性ということが、特にAML/CFTについては大事だと思っておりまして、経済安全保障とも関わる論点なので、それも含めて検討していく必要があるかと思っております。

論点2につきましては、今日、Securitize Japanの森田様からも御説明ありましたけれども、パーミッションレス型分散台帳を使う場合でも、スマートコントラクトなどにいろいろ実装して公益への貢献を求めることができるというところがあるというお話を伺い、大変勉強になりまして、こういったことが責任あるイノベーションにつながるのかと感じました。

その上で、もちろんリスクベースで考えていくということがあるんですが、森下先生もおっしゃいましたように、やっぱりリスクがなかなか分からないということが問題で、ここをしっかりと見ていき、どこまで制御できるのかということを検討していくことが大事かと思いました。

先ほど19ページで、アメリカのUSTのTerraの御紹介ございましたけれども、仮想通貨または通貨バスケットなども含めて、一定価値を保って法定通貨を交換できるアルゴリズムでステーブルを約束しようというものがありまして、今まさに栗田様がおっしゃったんですけれども、こういったものでもリスクは必ず存在するし、どういうアルゴリズムになっているのかということで、どういうリスクがあるのかということがやはり違ってくると思うので、それを見極める必要があると思います。その上で、ステーブルコインと名乗ってネットワークを大きくしようとそのエンティティなり参加者なりが考えるのであれば、そうした価値がステーブルとならない場合のリスクをどう制御できるのか、そういう制御できる仕組みがビルトインできるのかというようなことが大事かなと思っております。そういったことから見ていくことがそれぞれ必要なのかなと考えていて、リスクベースといっても、やっぱりこういった点を研究していくことが大事かなと感じました。

また、責任あるイノベーションといいましても、責任を考える際、今日お話があったところは、しっかりと管理者がいらっしゃる既存の株式会社などでこういったステーブルコインをやっていこうという試みですけれども、暗号資産型などを考えていきますと、DAOといった組織がその役割を担うようになってきておりまして、その組織設計が株式会社から大きく異なるものに変化していると思っております。その上で、やはり同じ機能別アプローチをというご指摘はあるんですけれども、全く新しい革新的な組織になっていて、そういう公益を守ることにしっかりと対応できるのか、新しい考え方も検討していくことが必要なのかもしれないと思っており、この研究会で勉強をしていけたらと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。あっという間に予定の時間が来ているのですが、少しだけ延長をお認めいただければありがたく思います。今、佐古さんからチャットをいただいていて、森田さんへの御質問ということで記録にとどめたいと思いますけれども、できればちょっと一言御発言いただければと思います。佐古先生、いかがでしょうか。

【佐古メンバー】

すいません。もうお時間ということと皆様がおっしゃられたこと、特に言葉が大事だというところにはすごく感銘を受けて聞いておりました。

それで、翁様もおっしゃられたとおり、イノベーションの1つであるスマートコントラクトがアップデートできるというところについて詳細をちゃんと理解しておきたいなと思いましたので、このお時間じゃなくてもまた別途教えていただけるようでしたら大変勉強になってありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

【Securitize Japan(森田)】

では、簡単にお答えしてしまってよろしいでしょうか。こちら、特に我々のイノベーションというわけではなくて、一般のプロダクトでもよく使われている技術ではあるんですけれども、呼び出される処理をスマートコントラクト間の呼出しのような形で、紐づけるような形にしておいて、呼出先のスマートコントラクトのアドレスを呼び出し元の変数にしておきます。そうして、処理を呼び出すときには、どこのスマートコントラクトの処理を呼び出してくださいというのを変数から取ってきて呼出しに行くという形に全体的な設計をします。呼出先の処理、ロジックに不具合があった場合は、スマートコントラクト全体の変更はできないんですけれども、新しい変更済みの呼び出し先のスマートコントラクトを部品としてインストールした上で、呼び出し元の変数を、その新しい呼出先のアドレスに特権の権限で差し替えて、次からは新しいほうを呼び出すという形になるという、そういうのがアップグレーダビリティの実装の一例になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございました。それでは、松尾さんから、今チャットをいただいておりますけど、もしせっかくですので、論点2について簡潔に御発言いただけませんでしょうか。

【松尾メンバー】

すいません。時間超過して大変申し訳ないです。1点だけ。これ実際次回以降で詳細の議論ができればなと思っているんだけども、今回の議論もAML/KYC、あるいはCFTのところが、結局はスタートアップであるとか、イノベーションを起こしたいスタートアップ企業にとっては結構重荷になるというところが各論としては出てこようかと思います。金融庁さんが既に取り組まれている共同化みたいな話は1つの解になると思うんですけども、一方で、このようなAML/KYCの話はステーブルコインだけではなくて、例えばCBDCのようなものにとっても、CBDCでもし2層モデルになったときに中間機関みたいなものがあって、そこがAML/KYCのコストをどう負担するのかということが多分問題になって、コストをどう負担するのか。そこに関わる、そこに入っている例えばネガティブリストのようなものというのは、サイバーアタックを受けてはいけないので、そこが単一障害点にならないようにどうするのかとか、それをどう持続的にビジネスを構築するかみたいなもの、ある種のコモンズをつくるようなものになると思うので、ビジネスモデルとサイバーセキュリティーとそれに対する持続性みたいなところがある種のイノベーションのポイントにもなり得ると思いますと。

なので、そこに対してどういう技術をつくっていくのか、どういう座組みつくっていくのかということが、逆にこの場でいろいろ研究していくのかなと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ちょっと時間を超過しておりますが、オブザーバーの皆様方からもし御発言があれば、ごく簡単にお願いしたいと思いますけれども、チャット欄に入れていただければと思います。新経済連盟さん、どうぞ。今、チャットいただきまして、ありがとうございました。

【新経済連盟(坂本)】

新経済連盟としても、JVCEAさんやFintech協会さんの御意見に賛同しております。

まず、イコールフッティングの観点で、趣旨も含めてアメリカやFATFガイダンスと真に同等である、というレベルに持っていっていただきたいと考えております。

その上で、リスクの把握といったお話も先生方からございましたが、USDCでしたら例えばCircleであったり、そういった海外事業者にも直接ヒアリングする機会を設けてはいかがでしょうか。私どもとしても最大限協力させていただきたいと考えております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方々で御発言等ございますでしょうか。

それでは、ちょっと今日、時間が大分超過してしまいましたので、大変恐縮ですけれども、お気づきの点、御意見等ございましたら、事務局のほうまでぜひメールとか電話とか、適宜の方法でお知らせいただければと思います。また、メンバーの皆様方のおかれましても、追加でお気づきの点等ございましたら、ぜひ事務局までお知らせいただければありがたく存じます。

本日は、私の不手際もありまして、時間を、七、八分でしょうか、超過してしまいまして、大変申し訳ありませんでした。この辺りとさせていただきたいと思います。

皆様方から大変活発な御議論を多数いただきました。貴重な御指摘も多数いただきまして、大変ありがとうございました。

そこで、本日いただきました御説明や御意見等も踏まえ、さらに皆様方に御議論を深めていただきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

最後に事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。次回の日程、皆様の御都合踏まえた上で御連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

それでは、以上をもちまして本日の研究会を終了とさせていただきます。どうも長時間、ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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