「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第3回)議事録

平成30年5月22日(火)

【神田座長】
 おはようございます。時間になりましたので始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第3回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 これまで、この研究会では、仮想通貨交換業に関する現在の制度や、これまでの監督上の対応、そして仮想通貨やICO、イニシャル・コイン・オファリングに関する取引の状況や、国際的な議論、そして各国の対応の状況等について説明をしていただいた上で、メンバーの皆様方から幅広い観点からのご意見をお伺いしてまいりました。

 本日でございますが、事務局からお手元の資料2に沿って、第1に仮想通貨と仮想通貨取引をめぐるプレイヤー、そして第2に仮想通貨やそれに関連する技術についての各国当局者等による指摘等についてご説明をいただきます。

 続きまして、三宅メンバーから、お手元の資料3に沿って、銀行によるデジタル通貨に関する取組みや今後の展望等についてご説明をいただきます。

 その後で、ご説明いただいた内容を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いいたしたく存じます。

 以上のような流れで進めさせていただきます。

 後ほど討議をしていただくに際しては、お手元に資料4というものをお配りしておりまして、討議いただきたい事項というものを整理させていただいておりますので、適宜ご参照いただければと思います。

 なお、本日ご欠席の中島メンバーから、予め討議事項に関してご意見をいただきましたので、皆様方のお手元にお配りしております。

 それでは、早速ですが、まず事務局からのご説明をお願いいたします。

【廣川信用制度企画室長】
 信用制度企画室長の廣川でございます。私の方から、お手元の資料2の事務局説明資料に沿いまして、仮想通貨・仮想通貨取引をめぐるプレイヤー、そして仮想通貨やそれに関連する技術についての各国当局者等による指摘について、ご説明をさせていただきます。

 まず、仮想通貨・仮想通貨取引をめぐるプレイヤーについてですが、2ページから5ページまでの計4ページでございます。本日、討議のために仮想通貨・仮想通貨をめぐるプレイヤーのイメージを参考資料として作成したものでございます。必ずしも記載内容の全て、特にデータ自体の正確性等を金融庁が保証するものではないということを、予めお断りをさせていただきたく存じます。

 それでは、2ページをご覧ください。仮想通貨交換業者につきましては、これまで2回の研究会において説明がございましたし、ご議論もいただいたところですが、仮想通貨・仮想通貨取引をめぐるプレイヤー全体の図の中では、2ページの図の赤い枠囲いの部分で入れさせていただいております。

 プレイヤーとしては、この仮想通貨交換業者とその利用者に加えまして、上の方、図の黄色い部分にございます、新たな仮想通貨の考案者・開発者、そして図の左の方、緑色の部分にございます、仮想通貨の取引記録を確定させるための計算を行う、いわゆるマイナーなど、グローバルに様々なプレイヤーが関与しているところでございます。

 上の方の黄色の部分、仮想通貨の考案者・開発者につきましては、一般には、新たな仮想通貨について、取引の即時性や安定性などを確保するためにどのような技術を用いるのか、そして、発行量の決定・調整のメカニズムをどのようにするのかなどの仕様を検討・決定しているということでございます。また、仕様につきましては、仮想通貨の公開後も開発者等により随時変更されることがあるようでございます。

 図の真ん中あたりをご覧いただきたいのですが、仮想通貨の取引に関するデータ等は、一般にはインターネットなどのPeer to Peer、P2Pのネットワークにおいてオープンにやりとり・処理・保管がなされています。

 例えば、各ネットワークの参加者が仮想通貨を送る、これをここでは「送金」と記載してございますが、送金するためには、まずは送金先や送金額など、行おうとする取引についての情報をネットワーク上に公開します。そして、ネットワーク上で仮想通貨の取引記録を確定する、あるいは一般に「承認する」という言葉が使われることもありますが、そうしたことをするために必要な計算を行うのが、左側の緑色のマイナーと呼ばれる参加者でございます。マイナーは、膨大なコンピューターリソースを費やしてこの計算を行っており、その活動を通じて、仮想通貨の取引が重複して執行されることや、取引履歴が不正改竄されることを防止するという役割を担っています。

 仮想通貨をネットワークで送金したり受領したりするためには、「ウォレット」と呼ばれる、仮想通貨のいわば保管場所のようなものが必要になりますが、一般の利用者向けのサービスとしてウォレットを提供している事業者もあるということで、図の右の上に記載を枠囲いでしております。ただ、日本国内では現状、その多くが仮想通貨交換業を兼ねているというふうにも考えられます。

 また、一般の利用者が、例えば小売店等での支払いに仮想通貨を利用したいといった場合に、そのためのサービスを仮想通貨交換業者が提供しているといったようなことが我が国でもございますので、右下、それから左下に記載をしております。

 なお、お示しをしている図は、赤書きの部分にもありますように、Bitcoinのケースをモデルとしたようなイメージ図でございます。記載したプレイヤーは主だったもののみであること、また図の左の米印にありますが、プレイヤーの構成や役割は仮想通貨ごとに異なるということを申し添えておきます。

 3ページをご覧ください。まず、先ほどの図の黄色の部分にありました、仮想通貨の考案者・開発者に関しまして、主な5通貨の表で見ますと、例えば一番上のBitcoinのように、個人が考案者・開発者になっているような場合もあれば、2番目のEtherや3番目のRippleのように財団や企業が関与する場合もございます。

 一番上のBitcoinにつきましては、サトシ・ナカモトという名前で関連する論文が最初に書かれておりまして考案者とされていますが、Bitcoinの仕様については、現在ではプログラムコードの開発を行うような技術者たちによって維持されていると言われており、インターネット上等では様々な改善提案が議論されているようでございます。

 また、仮想通貨の考案・開発の目的も様々でございまして、2番目のEtherのように、特徴のところに記載がございますが、特定の技術的プラットフォームにおいてスマート・コントラクトを実行する際の手数料等のように使える仮想通貨として創設されたものもございます。なお、スマート・コントラクト、あえて大雑把に申し上げますと、ある契約の実行に当たって、実行に必要な条件が満たされた場合に、プログラムによりその実行が自動的に行われるようなものでございまして、仮想通貨のEtherに関連して申し上げますと、イーサリアムと呼ばれる技術的なプラットフォームの上でスマート・コントラクトを構築することが可能となっているということでございます。

 さらに、例えば3番目のRippleについてですが、取引記録を確定させるためのプロセスとして、いわゆるマイナーを存在させておらず、リップル社が現在管理しているリストに記載された特定の者が取引記録の確定のための作業を行っているとされています。

 そのほか、4番目のBitcoin Cashのように、Bitcoinの技術的な課題を解決すること等を目的として、Bitcoinから派生するかたちで登場したような仮想通貨もございます。このように、仮想通貨といいましても、目的や技術、その他の特徴が様々でございます。

 続きまして4ページをご覧ください。仮想通貨取引と仮想通貨交換業者についてですが、左の円グラフ、第1回の日本仮想通貨交換業協会の奥山会長の説明資料にも同様のものがございましたが、民間ウェブサイトの情報に基づきまして、主な仮想通貨について、通貨別取引シェアを記載したものです。グローバルに見ますと、米国ドルまたは米国ドルにペッグしたデジタル通貨でありますTetherが多くを占めています。また、日本円はBitcoinの取引では大きなシェアを占めていると見られますが、他の仮想通貨では必ずしもその限りではございません。

 次に、仮想通貨交換業者の取引額を、別の民間ウェブサイトから入手した情報に基づき作成したのが図表3でございます。各事業者の拠点につきましては、各事業者のウェブサイトを通じて私どもが調べたのですが、調べた範囲で各事業者のウェブサイト上で確認できなかったものもございまして、それらについてはバーを引いてございます。大規模な仮想通貨交換業者の中には、香港などアジアに拠点を有するものが多いと見られます。

 なお、図表2、3、ともに5月17日時点、作成時点ですが、各民間ウェブサイトが公表している24時間分のデータをもとに作成されているものでございます。シェア、順位は時々刻々変化するもののようでございまして、図表3の順位については、他のウェブサイトではこれと異なる順位になっているものもあるということ、また取引額の集計対象となる取引の累計の範囲が必ずしも確認できないことといった留意点がございます。そのようなものとしてご理解いただけますと幸いです。

 5ページをご覧ください。膨大なコンピューターリソースを費やして、仮想通貨の取引記録を確定するための計算を行うマイナーについてです。Bitcoinなどにおいては、必要となる計算を最も早く完了した者が仮想通貨の新規発行分や送金手数料を受け取ることができるため、マイナー同士の競争が生じてございます。

 右側の図表5をご覧ください。民間ウェブサイトの情報に基づき作成されたグラフを見る限り、Bitcoinのマイナー全体による1秒間の計算回数をあらわす指標でありますハッシュレートが上昇を続けておりまして、マイニング競争に新規参入する者がいたり、競争に対応するため計算能力を強化するマイナーがいたりした結果として、マイナー全体の計算能力が高まってきていると見られます。

 こうした中、図表4に抜粋した研究機関作成のレポートによりますと、マイナーによるマイニング設備の設置場所についてですが、低コストの電力が得られるかどうか、十分に高速なインターネット接続が確保されているかどうか、低気温かどうかといったような要因に基づき決定されると言われているようでございます。なお、同レポートが作成された2017年時点では、中国、米国あたりがマイニングプールの拠点があるところとされておりますが、実際に運営者たるマイニングプールと、マイニング作業を行っているマイナーの所在は、必ずしも同じとは限らないとのことでございます。

 関連する情報として、図表6は民間のウェブサイトをもとに、足下のマイニングプールのシェアをグラフ化したものです。これを見る限りでは、大手6位までで4分の3強のシェアを占めていること、アジアにサーバーを設置していると見られるものが目立つほか、欧州、米国にもサーバーを設置しているものもあるということがうかがえます。

 以上、仮想通貨・仮想通貨取引をめぐるプレイヤーについて、説明をさせていただきました。

 続きまして、仮想通貨やそれに関連する技術に関して、各国当局者等がその可能性や課題についてどのような指摘をしているかについてご説明を申し上げます。6ページをご覧ください。

 まず、英国中央銀行総裁でもあります金融安定理事会(FSB)のカーニー議長です。カーニー議長は、本年3月2日の講演におきまして、暗号通貨の現状評価について、端的な答えとして、貨幣としての役割を果たしていないと言っています。

 また、一番下の丸ですが、3月13日のFSB議長名の公開書簡におきましては、暗号資産は不正活動の隠蔽、マネーロンダリングやテロリストの資金調達への利用、消費者・投資者の保護に関する多くの問題を引き起こすといった点を指摘しています。

 他方、将来性に関してですが、暗号資産の根底にある分散型台帳技術等の可能性について、同ページの中ほどにある丸ですが、データ管理の効率性を増大させるとか、複数の参加者が複製されたデータや機能を共有することで、システムの中の一箇所に障害が発生した場合でも、システム全体が機能停止することを回避し、障害からの回復力を向上させるという点、それから取引記録の透明性を強化する。そして、いわゆるスマート・コントラクトを含め、一連の事務処理を人の手を介さずシステム上で自動的に行うプロセスの利用範囲を広げる、といった可能性を指摘しています。

 また、3月13日の一番下の公開書簡では、これらの技術について、金融システムと経済、両方の効率性、それから包摂性を改善する可能性を有しているとも指摘しています。

 7ページをご覧ください。こちらはIMFのラガルド専務理事が、本年3月と4月にIMFのウェブサイト上のブログに記載したものの抜粋でございます。

 まず、仮想通貨等の将来性に関しましては、1つ目の丸において、暗号資産の裏側にあるブロックチェーン等の技術について、低所得国での活用を念頭に、銀行口座を持っていない人々に新しい低コストの支払手段を提供することにより、金融包摂の原動力になるかもしれないと指摘しています。

 また、少し飛びまして4つ目の丸におきまして、暗号資産は現金の利便性の一部を提供しながら、迅速かつ低コストの金融取引を可能とする。またその下の5つ目の丸におきまして、分散型台帳技術は金融市場の機能が一層効率的になることに資するかもしれないと指摘してございます。

 他方、2つ目の丸ですが、暗号資産の取引は現金の取引とよく似た匿名性の様相を帯びることになる結果、マネーロンダリングやテロリストの資金調達のための新しい主要な手段となる可能性があると指摘しています。さらに、暗号資産の急速な拡大、取引価格の極端に大きな変動、ボラティリティ、そして従来型の金融の世界とどう繋がっているのかが不明確であることを、新たな脆弱性として指摘しています。

 8ページをご覧ください。上段の3ですが、シンガポールの金融当局でありますシンガポール金融管理局のメノン長官は、昨年と本年の2回の講演におきまして、プラスの面として分散型台帳技術は多くの産業や経済活動を転換する可能性を有していると指摘する一方で、残念ながら暗号トークンの匿名性がそれらを違法取引の促進に適したものにしていると、また、暗号トークンが世界中で投機熱に火をつけたと指摘してございます。

 その下、4、ドラギ欧州中央銀行総裁ですが、デジタル通貨について、ユーロ地域ではその利用が実体経済に与える影響が依然として非常に限定的と指摘しているほか、2つ目の丸ですが、仮想通貨は高いボラティリティにさらされて価格は投機的である。銀行はデジタル通貨を自身のポートフォリオにおいて保有することのリスクを適切に計測すべきと言っています。

 他方で、1つ目の丸の後段ですが、デジタル技術や分散型台帳技術等については興味を引くべき進展であると評価しているところでございます。

 9ページをご覧ください。世界銀行グループに属し、途上国の民間セクター支援を行う国際金融公社ですが、この国際金融公社は、新興国・途上国の経済開発に関する喫緊の課題に関して、民間セクターの取組みがどのように寄与し得るのかという観点から、様々な調査等を外部の専門家と協働して行っております。そしてその結果を各種レポートとしてウェブサイトに公表しているのですが、先ほど、カーニーFSB議長とラガルドIMF専務理事が、金融包摂の観点からブロックチェーンなどの技術が持つ可能性について言及している旨のご紹介を申し上げたのですが、そのテーマに関連するレポートを国際金融公社が2017年にウェブサイトに掲載しております。執筆者は民間の専門の方ということなのですが、その抜粋をここでご紹介させていただきます。

 1つ目の丸ですが、レポートでは、新興市場はブロックチェーン技術や分散型台帳技術を活用した金融のエコシステムの採用に適しているように見える。具体的には、ブロックチェーン技術によるデジタルウォレットやモバイルペイメントがもたらす金融包摂に注目していると、レポートでは指摘してございます。

 その上で地域的には、その下の丸ですが、サブサハラ・アフリカにおいては頻繁に生じる政治的動乱の歴史、自国通貨の価格変動等のリスク、資本規制といった背景がある中で、人口の70%が銀行口座を有していないと言われておりまして、ブロックチェーンに基づくソリューションを導入する大きな潜在的可能性を有しているとされております。

 また、その下、ラテンアメリカにおきましても、似たような背景事情から銀行口座を有していない人口比率が、サブサハラ・アフリカよりは低いものの相当な割合になっているとしておりまして、ブロックチェーンに基づくソリューションの可能性が示唆されていると思われます。

 本日の資料、ここには抜粋をつけておりませんが、元のレポートにおきましては、実際にアフリカやラテンアメリカにおいて仮想通貨を用いた支払送金サービスを始めているスタートアップ企業があるということが紹介されておりました。

 最後に10ページをご覧ください。これは今回のテーマというよりは前回の研究会でご質問をいただいた、仮想通貨交換業者の分別管理の内容に関するものでございます。監督上の着眼点ということで、前回は口頭のみでの回答になったことから、今回、当方の事務ガイドラインの中から、こうした着眼点をお示しさせていただいているものでございます。

 特に仮想通貨自体の管理につきましては、1つ目の丸のうちの2つ目のハイフンから以下3つでございますが、書いてあることとしましては、帳簿上の利用者財産の残高とブロックチェーン等のネットワーク上の有高との毎営業日ごとの照合が求められていますほか、3つ目のハイフンにおきましては、利用者の仮想通貨を管理・処分するために必要な暗号鍵等を事業者自身の仮想通貨の暗号鍵等と明確に区分して保管すること。さらに、4つ目のハイフンにおきましては、可能な限り、利用者の仮想通貨の暗号鍵等をインターネット等の外部のネットワークに接続されていない環境で管理することといったことが書かれているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、メンバーの三宅さんからご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【三宅メンバー】
 改めまして、みずほ総合研究所の三宅でございます。本日はこのような機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。

 ご説明に先立ちまして、私自身、過去2回の会合におきましてメンバーの皆様方から色々なご意見を拝聴させていただきましたが、仮想通貨に関しましては実に様々な、かつ難しい問題が存在するということを改めて認識致しました。もともと仮想通貨につきましては、決済手段としての可能性等も踏まえ資金決済法という枠組みの中で法整備を行ってきたわけですが、残念ながら、足下では専ら投機対象として使用されているというのが実情かと思っています。そこで本日は、決済での活用という当初の想定に立ち返るといった観点から、お手元の資料3のタイトルにもございますように、我が国におけるリテール決済、あるいはブロックチェーン技術の動向等につきまして、改めて整理、ご説明を申し上げたいと思っております。

 本日ご説明させていただく内容ですが、1ページの目次をご覧ください。まず、我が国におけるリテール決済の現状をご説明致します。それからⅡ章、Ⅲ章において金融機関等による新たな決済サービス、あるいはブロックチェーンの活用に向けた取組み等をご紹介させていただき、最後のⅣ章で、今後の展望等について私見を申し上げたいと思っています。なお、この資料は、各種公表資料等をベースに作成しておりますが、事例紹介等に関しましては、構想段階あるいは実証実験段階のものも含まれており、詳細な開示がなされていないケースもございます。したがいまして、ご説明の内容がやや限定的になっている部分もあろうかと思います。ただ、本日は全体感、大まかなイメージといったものをご説明させていただくことが趣旨かと思いますので、その点につきましてはご容赦いただきたいと思っております。

 それでは、3ページをご覧ください。まずはキャッシュレス決済手段の概観についてご説明させていただきます。

 基本的には決済のタイミングによって、下の表の一番左側にありますように、後払い、即時払い、前払い、その他という4つに分けさせていただいた上で、それぞれ代表的な決済手段、準拠法、特徴等々についてまとめております。

 クレジットカード等々の代表的な決済手段につきましては、次のページ以降で改めてご説明申し上げますが、ご覧いただいてお分かりの通り、一口にキャッシュレス決済と申し上げましても、実に多様な手段が存在致しますし、加えて準拠法も異なっていることが確認できるかと思います。ただ、この法規制につきましては、現在金融審議会「金融制度スタディ・グループ」におきまして、機能別・横断的な法体系の検討が進められていると認識しておりますので、以下では、具体的なサービス内容といった実務の面から、現状や課題をご説明申し上げたいと思います。

 4ページにお進みください。ここではキャッシュレス決済比率についてご説明しております。

 下の表をご覧下さい。右側に青の棒グラフがございますが、これは民間最終消費支出です。その左側に、少し分かりにくいのですがクレジットカード、デビットカード、資金移動サービス、電子マネーと、4つの棒グラフを積み重ねたものをお示ししております。

 キャッシュレス決済比率は折れ線となりまして、基本的には増加傾向にあるといえますが、右軸をご覧いただければお分かりのように、足下での比率は約20%といった水準に留まっております。後ほど、国際比較等を別途お示しする予定ですが、この水準は諸外国対比でも劣後しております。こうした状況を踏まえまして、既にご案内の通りかと思いますが、「未来投資戦略2017」では、10年後、2027年までにこの比率を4割程度とすることがKPIとして設定されておりますし、本年4月に経産省さんから公表されました「キャッシュレス・ビジョン」におきましては、それを2年前倒しするといったことが打ち出されていると認識しております。

 ただ、米印として付記しておりますが、実態面をみる上で、このキャッシュレス決済比率には、日本で比較的広く普及しております銀行振込あるいは口座振替等が含まれていないという点については、一定の留意が必要かと思われます。銀行振込・口座振替の具体的な金額につきましては、資金の使途やリテール、ホールセールの切分けが難しいため、あくまでもご参考ということで申し上げますと、総額は、2016年度で約2900兆円となっております。なお、注にも書いてございますが、データの制約上、暦年と年度のデータが混在しております点につきましても、ご留意いただければと思います。

 続きまして5ページからは、各決済手段についてご説明申し上げます。

 まずクレジットカードでございます。右側のグラフの通りですが、決済額は2008年の約33兆円から、足下の2017年には約58兆円とほぼ倍増しております。日本におけるキャッシュレス決済額全体の約9割を占める、まさに代表格と言えるかと思います。eコマースの拡大やスマホの普及、それに伴うアップルやグーグルを始めとするプラットフォームビジネスの拡大等々に伴い、クレジットカードを利用する機会が増加しておりますので、こうした傾向は今後も続くと見られております。

 続きまして6ページはデビットカードでございます。これは商品等の購入代金を預金口座から直接即時払いするサービスでございます。日本では主に2種類ございまして、1つは銀行キャッシュカードを用いるJ-Debit、もう1つがVISAあるいはマスターカードといった国際ブランドのネットワークを用いる、いわゆるブランドデビットとなります。

 右のグラフは、この2種類のデビットカードのそれぞれの決済額並びに件数の推移を示しております。ご覧いただきますと、J-Debit、棒グラフでいうと青ですが、これは2000年前後のサービス開始以降、なかなか知名度が高まらなかったということもございまして、決済額・件数ともに、基本的には減少傾向になっております。一方、赤のブランドデビットにつきましては、近年、銀行によるカード発行の事例が進んでいることもございまして、決済額・件数ともに増加しております。その結果、デビットカード全体としても拡大傾向と言えるかと思いますが、それでも2016年度の決済額は約0.9兆円ということで、先ほどのクレジットカードに比べましても、その規模はかなり小さい状況となっております。

 続きまして7ページでは資金移動サービスについてご説明申し上げます。これもご案内の通り、2010年4月に資金決済法が施行され、少額、現行では100万円相当以下ということになりますが、こうした少額の為替取引につきましては、登録制の下で、銀行以外の事業者が業として営むことが可能となった経緯がございます。

 左の図の通り、資金移動業は大まかに3つの類型に分けることができます。1つ目の営業店型ですが、依頼人であるAさんが店舗Xで送金手続を行った後で、受取人であるBさんに対して、その金額や受取先といった必要な情報を連絡致します。一方、受取人のBさんは、依頼人のAさんからの情報に基づいて、店舗Yで資金を受領するといった流れになっておりまして、具体的には海外送金等々のサービスが提供されております。

 2つ目のインターネット・モバイル型は、インターネット上に開設したアカウントを介して送金を行うものであります。具体的な例を申し上げますと、LINEさんや、携帯電話会社さんが提供している送金サービスをイメージしていただければよろしいのではないかと思います。

 3つ目の証書(マネーオーダー)型ですが、これは資金移動業者が発行する証書を用いるもので、少し古いイメージがあるかもしれませんが、いわゆる銀行振出小切手のようなものをイメージしていただければよろしいのではないかと思います。

 右のグラフをご覧ください。取扱額あるいは件数、その下に登録業者数といったものの推移を示しております。基本的には増加基調ということではあるものの、やはりこれも取扱額は0.8兆円弱ということで、規模は依然として小さい状況となっております。

 続いて8ページは、前払式支払手段についてご説明申し上げます。こちらも、前のページと同様、左側に3つの類型を提示させていただいております。

 それぞれにつきまして、代表的なサービスを申し上げますと一番上の紙型につきましては商品券、その次のカード型ですと、Suicaや楽天Edyといったような、いわゆる電子マネーが該当します。一番下のサーバー型につきましては、カード型では残高情報をカードの本体、すなわちICチップや磁気ストライプに書き込むわけですが、それとは異なり、事業者が提供するサーバー上で情報を管理するといったものでございます。代表的なもので申し上げますとアマゾン、アップル、グーグル等々が発行しております自社プラットフォームで利用可能なギフトカードといったものが該当致します。

 日本におきましては、2000年台に非接触ICカードの登場を契機としまして電子マネーの利用が拡大しており、これは右のグラフをご覧いただいてもお分かりになるかと思います。しかしながら、普及が一巡してきたということもございまして、足下では伸び率がやや鈍化している状況にあります。グラフでは、年度のデータということで上手くお示しできなかったのですが、暦年ベースですと2017年は、前年対比の伸び率がプラス1%に留まっており、実際にかなり鈍化していると言えるのではないかと思います。また、電子マネー等々は少額決済が中心ということもございますので、こちらも全体での決済額は約5兆円ということで、クレジットカードと比べるとあまり大きくないということが言えるかと思います。

 続いて9ページをご覧ください。今回お示ししたキャッシュレス決済比率に直接効いてくるわけではないのですが、ご参考として「ペイジー」についてご紹介させていただきます。

 ペイジーのサービス内容ですが、左の図にも書いてございますように、インターネットバンキング、あるいはATM等のチャンネルで、請求書等に記載されております収納機関番号等々を入力することにより、24時間365日キャッシュレス決済が可能になるといったサービスでございます。

 右のグラフが分野別の利用額・件数の推移を示したものであります。ご覧いただきますと、青の国庫金などをはじめとする、税金あるいは公共料金での利用が拡大傾向にあります。しかしながら、薄い緑で示してあります民間につきましては、利用があまり伸びていないといったことが言えるのではないかと思います。

 続きまして10ページ、仮想通貨になります。仮想通貨につきましては、これまでの会合におきましても詳細なご説明がされておりますので、ここでは決済手段としての課題という点に限定しまして、5点ほど申し上げたいと思います。

 まず価格のボラティリティが挙げられます。これは従前からご指摘されている通りであります。

 それからスケーラビリティ、処理速度ということでございます。先ほど廣川様からマイニングの話がございましたが、例えば、Bitcoinでは1秒間に最大で7取引分の情報しか処理することができないといったことが課題となっております。

 3点目が消費者保護ということで、これは昨今の色々な事例でも明らかになりましたが、秘密鍵の紛失・盗難等のリスク、あるいはブロックチェーンの持つ不可逆性によって取引の取消しがそもそもできないといった点、さらには、これまでの会合でもご意見がございましたが、権利関係や執行関係が不明瞭といった点が、消費者保護に関する課題ということで挙げられるかと思います。

 それからマネロン・テロ資金供与等への対応、そして最後に、利用可能店舗数が比較的少ないといった課題が挙げられるかと思います。

 こうした点を踏まえますと、通貨に求められる3機能、すなわち交換手段、価値尺度、価値保存といったものを、仮想通貨は現時点では充足できていないということになるかと思います。

 次に11ページにお進みください。ここではキャッシュレス化の国際比較を行っております。図表は、左側がキャッシュレス決済比率、右側が名目GDP対比の現金流通残高になっておりますが、ともに国際的には見劣りする水準ということが言えるかと思います。日本で現金が幅広く利用される理由は幾つか挙げることができます。例えばATMの設置台数が多く、比較的容易に現金が入手できる。あるいは治安が良く、窃盗等の被害に遭う可能性が少ない。さらには、偽札の発生割合が低く、現金に対する信認が厚いといったものが該当しますが、これは国家としては、むしろ喜ばしい内容と言えるのではないかと思います。しかしながら、キャッシュレス化には大きなメリットも秘められているのではないかと思います。例えば、利用者における現金入手コスト、これはATM手数料等も含みますが、こうした利用者におけるコスト、あるいは金融機関における現金輸送コストやATMの維持管理コスト、さらには外食等をはじめとする小売店等の一般事業者における現金取扱いコストが挙げられ、色々推計はありますが、数兆円単位でコストが発生しているとも言われており、キャッシュレス化によって、社会全体のコスト削減に繋げられる可能性があるということでございます。さらには、決済データの利活用によって、利便性の高い新たなサービスを創出できる可能性もあるということでございます。

 次の12ページは、日本の現状並びに課題につきまして、利用者、金融機関・決済事業者、加盟店という3つの立場から、それぞれまとめたものでございます。これまで見てまいりましたように、日本では各主体が創意工夫を凝らした形で、実に様々な決済サービスが展開されてきました。こうしたことは、競争の促進という観点では一定のメリットがあったと言えますが、一方で複数の決済手段、決済サービスが併存する形になってしまったため、利便性やコスト、さらにはデータ利活用といった面で大きなデメリットも生じているのではないかということでございます。加えまして、利便性という観点に立ちますと、認証手法1つをとっても、例えば指紋や手のひら静脈、さらには顔認証、声紋など、色々規格が乱立した状況にありまして、こうした面でも統一がなかなか図られていない状況にあります。

 こうした課題に対する対応の方向性につきましては最後に申し上げる予定ですが、理想としましてはこうしたサービスや規格を完全に一本化することが望まれます。しかしながら、既に確立されたサービスとして提供されているものが多数存在するといった現状に鑑みますと、より現実的な解を模索していく必要があるのではないかと考えているところでございます。

 次の13ページからは、新たなリテール決済手段の動向といたしまして、金融機関や一般事業会社によるデジタル通貨の取組みについてご紹介させていただければと思います。

 14ページをご覧ください。まず銀行によるデジタル通貨の発行に向けた取組み状況についてご説明申し上げます。ここでは、手前ども、みずほのJ-Coin、それからMUFGさんのMUFGコイン、さらには飛騨信用組合さんのさるぼぼコインを事例として挙げさせていただいております。なお、下の注でも記載してございますが、特にJ-CoinやMUFGコインに関しましては、現在構想段階のものでございます。またさるぼぼコインに関しましても、サービスの提供は既に昨年末から開始されておりますが、別途、ブロックチェーンの活用等々につきましても色々な検討がなされているものと認識しております。冒頭にも申し上げましたが、ここでは公表資料等々をベースに、主な特徴あるいは仕組みについてイメージを整理するといった形で資料をまとめておりますので、その点はご容赦いただければと思います。

 こうした前提を踏まえまして、改めて14ページをご覧下さい。ここでは3つのサービスを表にまとめておりますが、これらに共通する事項としましては、例えばブロックチェーン技術等の新たな技術を活用し、スマホ等のデバイスを通じて、利便性の高い、安価な決済サービスを提供する取組みということが言えるのではないかと思います。

 また、銀行あるいは銀行の関与する事業者が発行するということもございまして、その価値を担保する。すなわち、1コインの価値を法定通貨1円の価値と可能な限りペッグさせる仕組みとしていることも特徴と言えるのではないかと思います。一方で、それぞれの取組みには若干の違いもございます。例えば目的、あるいは目指す姿という点で見ますと、J-Coinは複数の金融機関や加盟店が利用可能な共通決済基盤の構築を目指す取組みですが、MUFGコインでは、現金に代わる金融インフラの実現を目指すとされており、基本的には自社のサービスの高度化を目指す方向ではないかと認識しております。さらに、さるぼぼコインにつきましては、地域限定のデジタル通貨として、地域経済の活性化を通じた地方創生ということが主目的ではないかと認識しております。

 次のページからは、それぞれの仕組みについてご説明してまいりたいと思います。

 まず15ページ、J-Coinになります。具体的なスキーム案のイメージは下の図の通りですが、従来の決済サービスでは、加盟店は、銀行あるいは事業者が提供するプラットフォーム、決済基盤を選択・利用していたわけでございます。したがいまして、追加で新たな決済サービスを導入する場合には、改めて加盟店契約等々が必要になりましたし、また、各サービスの決済時の規格が異なりますと、そのための専用のデバイスを別途用意する必要もございましたので、導入のハードルやコストが高かったと言えます。さらに、データという点では、各加盟店は自らの決済データしか得ることができない一方、プラットフォーマーは各加盟店における決済データを独占する形となっておりました。ただ、プラットフォーマーによるデータの独占といいましても、基本的には、そのプラットフォームの規模、すなわち加盟店の数や利用頻度に依拠する形になりますので、日本においては本格的なデータの利活用を推進していく上では規模的に若干物足りないものであったことも事実かと思います。

 こうした状況を改善する観点から、J-Coinでは加盟銀行と加盟店が共通決済基盤を用いるとともに、決済時には共通規格としてQRコードを利用することで、利用者あるいは加盟店にとって利便性が高く、かつ低コストな決済システムの実現を目指しております。さらに、こうした共通決済基盤で得られた決済データにつきましては、従来のように特定のプラットフォーマーが独占するのではなく、データを匿名化した上で、加盟銀行あるいは加盟店においてマーケティングなどに幅広く利活用していくことが想定されております。

 続きまして16ページをご覧ください。次はMUFGコインになります。こちらは、ブロックチェーン技術を用いることによって、低コストで利便性の高いデジタル通貨であるMUFGコインを現金に代わる新たな金融インフラとして提供することによって、日本のキャッシュレス化の促進を後押しすることを目指しております。

 公開情報や報道等を参考に、仕組みをイメージしたものが左の図となります。仮称として、MUFG取引所と書いておりますが、MUFGさんが運営する取引所がコインを交換するハブとなり、利用者あるいは加盟店の間でコインを送金・支払いすることが可能な仕組みとなっております。

 なお、この図は、MUFGコインが仮想通貨として発行されることを前提として作成しておりますが、実際に仮想通貨として発行されるかも含め、明確にはなっていないと認識しておりますので、改めてお含み置きいただければと思います。

 現在想定されている主な機能は右の表の通りで、日本円とMUFGコインの等価での交換や送金といった基本的な機能のほか、その他の欄に書いてございますが、例えば0.1円といった小数点以下での決済機能であるマイクロペイメントや、コインを目的ごとに分けて管理する機能、あるいは複数人で1つのアカウントを管理するグループ口座機能等の実装が検討されているようです。

 報道等によりますと、これまでの実証実験としましては、MUFGさんの社員の皆様が参加をされて、社員間でのコインのやりとり、あるいは実店舗における支払いといった利用が行われていると認識しております。

 次に17ページをご覧ください。さるぼぼコインは飛騨信組さんが発行する、岐阜県高山市、飛騨市等々の加盟店で使える地域限定の電子通貨になります。基本的には、預金取扱金融機関である飛騨信組さんが直接電子マネーを発行しているというようにイメージしていただければよろしいかと思います。この地域は世界遺産ということもございますので、キャッシュレス化への対応を行うことで、地元経済の活性化、あるいはインバウンドへの対応に繋げ、地方創生に貢献していくことが目的と考えられます。

 これにつきましても、同じく公表情報等をもとに仕組みをイメージしたのが下の図になります。さるぼぼコインのチャージは、飛騨信組さんの窓口での現金支払い、あるいは口座振替が中心になるとのことですが、今後はクレジットカードの利用も可能になるとされております。また、チャージ金額に応じてポイントも付与される仕組みとなっております。こうしてチャージされたコインは、地域の加盟店で利用が可能になりますが、基本的には換金は不可とされております。加盟店での支払いに関しては、QRコード決済が採用されているため、加盟店はQRコードを設置するだけでよく、専用の機器等は不要となることから、初期コストは非常に安く済むということになります。また、一般的なクレジットカード等の決済手段と比べますと手数料体系が少し安価に設定されているということであり、こうした面をみましても加盟店にとって導入しやすい工夫がなされているのではないかと思われます。

 なお、この図ではブロックチェーンと一体となった形で描かれております。飛騨信組さんにおかれましてはブロックチェーン技術につきましても色々と実証実験を行っていると認識しておりますが、現時点で、さるぼぼコインとブロックチェーンが一体となっているかについては確認できておりません。しかしながら、恐らく最終形はこのようなイメージになるのではないかと考えております。

 次の18ページは、銀行以外によるデジタル通貨の取組みでございます。銀行以外でも、様々な主体によるデジタル通貨の発行に関する実証実験が行われており、ここはユーシーカードさんによるUC台場コイン、それから近鉄グループホールディングスさんによる近鉄ハルカスコインについてご紹介したいと思います。これも先ほどのご説明と同じですが、スマホをデバイスとして活用する、あるいはブロックチェーンを活用する。さらにはプリペイド型の地域通貨として、基本的には特定の地域、UC台場コインであればユーシーカードさんの本社のある台場、近鉄ハルカスコインであれば近鉄グループさんの事業の本拠地である、阿倍野や伊勢志摩周辺の地域の活性化に貢献していくということが目的となっております。最近では、銀行だけでなく、一般事業会社、あるいは地方自治体等々も一体となって、こうした取組みが加速しているということが言えるかと思います。

 続きまして、仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーン/分散型台帳技術の可能性についてご説明させていただきます。

 まず20ページです。技術の有用性・可能性について3点ほどご説明申し上げたいと思います。

 1点目、まず、コスト削減効果が挙げられます。ネットワークの各参加者がデータを共有していることから、中央集権的なシステムにおいて必要とされるようなデータのバックアップ、あるいはシステム障害対策といったものは不要になるということでございます。

 2点目は、取引の処理速度です。銀行の海外送金等を例に挙げますと、スイフトによる送金指示とコルレス銀行等を介した資金決済は直接リンクしておりませんが、仮にブロックチェーンを採用した場合には、そういった処理を単一の台帳で完結させることが可能となりますので、処理速度が上がる可能性があると言えます。

 最後は安全性・信頼性ということで、これはまさにブロックチェーンの特性としてよく挙げられているのではないかと思います。

 ただし、これらはあくまでも可能性ということでありまして、今現在全てが実現されているわけではありません。したがいまして、取引の形態、あるいはブロックチェーンの活用の仕方によっては、必ずしも効果が十分発揮できない場合もあるという点につきましては、改めて付言させていただきたいと思います。

 続きまして21ページでは、具体的な活用事例を挙げさせていただいております。

 米印として付記してございますが、スマート・コントラクト等々の機能を使うことによって、金融のみならず幅広い分野で活用できる可能性が指摘されております。

 一番左側の金融分野につきましては、仮想通貨だけではなく、議決権行使、証券決済、送金、シンジケートローン等、色々な検討が行われているということでございます。ただ、これらに使用されるブロックチェーン技術の特徴としまして、単独もしくは複数の管理者が存在し、また参加者も限定されているといった点が挙げられ、こうした点では、誰でも参加が可能なパブリック型とは異なっているということでございます。

 また右側、金融以外の分野でも、様々な潜在的利用が見込まれております。その中で1つだけ、公的分野における取組みとして、エストニアの事例を申し上げますと、ブロックチェーン技術を用いて、各省庁あるいは民間のデータベースをインターネット経由で相互に参照可能とするようなプラットフォームを構築することによって、世界最先端レベルの電子政府を実現しているといった状況でございます。

 次の22ページからは、インフラとしての活用に向けた動向として、具体的な取組みを3つほどご紹介いたします。

 最初の事例はみずほにおけるブロックチェーンを活用した世界第1号となる貿易金融の実取引になります。

 左側の現行スキームという図をご覧いただければと思いますが、一般的に、貿易取引においては数多くの関係者の間で様々な書類が飛び交うといったことが通例でございます。したがいまして、世界全体で多大な事務作業、あるいはコストが発生しているといった状況にございます。この取組みは、日本とオーストラリア間の実際の貿易取引において実行されたわけですが、一連の業務を、ブロックチェーン技術を活用したアプリケーション上で行うということによって、時間が大幅に短縮されており、具体的には、従来、数日を要していたものが、2時間で完了したと公表されております。加えてコストの削減、さらには、関係者全員に情報が共有されることによる取引情報の見える化といった、様々な効果が確認されているということでございます。

 みずほでは、このほかにもシンジケートローン、国際証券決済、サプライチェーン管理といった実証実験を行っておりまして、情報の一元化や時間の短縮、コストの削減といった面で大きな可能性を模索しているところでございます。

 続きまして23ページは、昨年、金融庁さんに設置されましたFinTech実証実験ハブの第1号案件である、本人確認高度化プラットフォームの構築に向けた取組みについてご紹介しております。

 本人確認につきましては、国際的にも規制が強化されているということもございまして、国内においても手続が厳格化される傾向にあります。本件は、改竄しにくい、あるいはシステムダウンが起こりにくいといったブロックチェーンの特徴を活用しまして、金融機関が共通利用できるインフラを整備することによって、本人確認の効率化、あるいは高度化を進めていくものでございます。利用者の立場からしますと、コンソーシアムを経由して本人確認資料等の提出を一旦行いますと、複数の金融機関と取引が行えるようになることから、利便性が大幅に向上することになります。

 次に24ページをご覧ください。ブロックチェーン技術等々を決済サービスに活用する取組みとして、内外為替一元化コンソーシアムをご紹介いたします。

 このコンソーシアムはSBI Ripple Asiaさんが主導する形で、ブロックチェーン等の活用を通じて内国為替並びに外国為替を一元化した、24時間リアルタイムでの送金インフラを構築するといったことが目標とされております。これにつきましても公表情報等に基づきまして、コンソーシアムの仕組みをイメージしたものが左の図となります。まず内国為替につきましては、下の点線で囲っている部分になりますが、参加銀行向けに提供されるRCクラウド、これはクラウド上に実装された共通プラットフォームになりますが、これを介して行われる仕組みとなっております。さらに外国為替については、図では上の部分に示しておりますように、リップル社が別途提供するネットワークを介して、外国銀行と接続する形になります。先ほども若干申し上げましたが、現状、内国為替は全銀システムや日銀ネット、また外国為替につきましてはスイフトやコルレスといったように、完全に別のシステムを使っているわけですが、この取組みはまさに内外の為替取引を一元化するものと言えるのではないかと思います。本コンソーシアムは、2018年3月時点で3メガバンクやゆうちょ銀行等を含む国内61行が参加しております。右側のこれまでの取組み等というところに書いておりますが、2017年12月には日韓の海外送金の実験ということで邦銀は37行が参加しておりますし、その下のポツには国内送金ということで、Money Tapの提供開始が公表されており、銀行口座番号のみならず、携帯電話番号を用いた送金やQRコード決済、指紋による生体認証等の機能を有するスマホ向け送金アプリの試験運用等の取組みが行われているところでございます。

 このうち、携帯電話番号を使った送金につきましては、決済高度化官民推進会議におけるフォローアップ項目の1つにも掲げられており、これまでフィンテック企業等が既にサービスを提供していると認識しておりますが、このMoney Tapによるサービス提供が実現しますと、複数の銀行が主体的に提供するサービスということでは、本邦初の取組みということになります。

 最後の26ページですが、まとめとしまして、今後の展望等について私見を申し上げたいと思います。

 これまでご説明してまいりましたように、日本では実に様々なリテール決済手段が生み出されております。ただ、これが逆にキャッシュレス化の進展を妨げるという皮肉な結果になっているのではないかと思われます。

 一方で、こうしたリテール決済手段があまり普及してこなかった中国では、ご案内の通り、アリペイあるいはWeChat Payといったように、スマホをデバイスとしてQRコードで決済を行う電子マネーが急速に普及するとともに、こうしたプラットフォーマーによるデータの寡占化も懸念されております。QRコード決済は専用端末が不要であるといったコスト面のメリット等々もございますので、日本におきましてもこうしたグローバルな動向を踏まえ、足下では取組みが加速しておりますが、ここで重要になるのが、先ほども申し上げましたように規格の統一ということになるかと思います。これはQRコードに限った話ではなく、認証方法や決済に使用するデバイス等の規格を、利用者利便、あるいはコスト削減といった観点から、グローバルスタンダードに即した形でオールジャパンとして統一していくことが1つの方向性ではないかと思います。

 加えて、データの利活用をさらに進めていくという観点では、既に存在している様々なサービスへの対応も必要になります。先ほど、理想としては1つに集約するのが望ましいと申し上げましたが、現実的には難しい面もございますので、これは下の図のインフラというところに示しておりますが、ブロックチェーン等を活用することによって、新たな共通プラットフォーム上で、それぞれのサービスをシームレスに連携させるといったことも考えられるのではないかと思います。

 今後、日本では少子高齢化等々も進行しまして、深刻な労働力不足が懸念されます。したがいまして、グローバルスタンダードを意識しながら、オールジャパンとしてキャッシュレス化、あるいはデータ利活用といったものをさらに進めていくことによりまして、社会全体のコストを削減し労働力を捻出する、さらにはデータ利活用を通じてより効率的な社会、あるいはより付加価値の高いビジネスといったものを模索していくことが求められるのではないかと考えております。

 すみません、少し長くなりましたが、私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今ご説明をいただきました内容を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いしたいと思います。お手元に資料4、討議いただきたい事項というのがございますので、これを適宜参照しながらご発言をいただければありがたく存じます。それでは、どなたからでも、ご質問、ご意見をお願いしたいと思います。

 岩下メンバー、どうぞ。

【岩下メンバー】
 今日は事務局及び三宅メンバーからの大変整理された資料を見て、大変参考になりましたし、考えを整理するのに大変有用だと思います。私としては、この2つの資料にそれぞれ即しまして、若干気のついた点などを申し述べた上で、若干の意見を、この討議するべき事項に基づいて出させていただきたいと思います。

 まず資料2です。2ページの中で、仮想通貨・仮想通貨取引をめぐるプレイヤーについての詳細な説明があります。これは大変よく整理された資料で、ぜひ、学生向けの教科書に載せたいなと思うほどです。ただ、若干注意を要する点といたしましては、現在、インターネットなどのPeer to Peerネットワークというのが真ん中にありまして、これにBitcoinの例でいいますとノードが繋がっているというのは仰る通りです。この繋がったノードは、全世界で約1万2000ございます。そのうち日本にあるのは約200です。2%弱ということになります。金額ベースでは、日本の取引が、全Bitcoinの取引の6割を占めると言われる中で、このノードが実は2%しかないということは、これは特筆すべき状況かと思います。これは何故かといえば、日本はBitcoinに対するレイトカマーであった。すなわち、海外では2013年以前から様々な、いわゆるギーク(パソコンマニア)と呼ばれる人たちが、Bitcoinを使った実験を、まだ全く価値のないうちから繰り広げていたのに対して、日本ではそういったことはほとんど行われていなかったわけです。多くの日本人は、取引所が整備されて、一般の人々が取引所で購入できるようになった、多分2015年あたりから買い始めて、2016年、17年と大きな取引をするようになったのだろうと思います。

 その意味でいきますと、2ページの右側の上にあるウォレットの提供という概念と、その下の両方の赤い箱の中にある、「ウォレット(事業者)」と書いてある部分については、注意が必要です。というのは、ここで使っている2つの「ウォレット」の意味が微妙に違うように思うからです。NEMの盗難事件でわかった通り、26万人から預かっていたNEMは、たった1つのアカウント、「NC3」で始まるコインチェック社のアカウントによって整理されておりました。このアカウントに対応するウォレットは1個しかなかったわけです。これは、業者のものも利用者のものも合わせて1個だったと考えられます。したがって、ここでいう「ウォレット」というのは、秘密鍵を格納するものという意味で一般的には使います。何となれば、Bitcoinあるいはその他仮想通貨そのものを格納するウォレットというものは存在しないわけです。Bitcoinあるいはその他の仮想通貨というものの本質は、このノードに格納された全てのブロックチェーンの中に書かれている情報全体であると考えられますので、何かのデバイスの中にしまっておけるものではないからです。ウォレットの中にしまってあるのは、あくまでも秘密鍵だけだとすれば、秘密鍵を果たして利用者が持っているのか、あるいは業者が持っているのかというのは、結構本質的な問題です。多分、日本で延べ350万人いると言われる仮想通貨のホルダーのほとんどは、秘密鍵も公開鍵も持っていません。その意味では、このBitcoinの秘密鍵及び公開鍵によって、こういう形で運用されるというのは、あくまでもノードに接続された、日本でいえば200程度の参加者の話であって――もちろん、それ以外に、フルノードというのは200ですが、それ以外に例えばハードウエアウォレットのような、これも秘密鍵と公開鍵を生成するものが若干ありますが、そういうところで保管されているものだけであって、それ以外の一般的な利用者は、全て仮想通貨業者のもとにぶら下がっている存在です。銀行の預金をインターネットバンキングで引き出しているのと同じような位置づけであって、少なくとも仮想通貨そのものについては指一本触れない人たちであると、私は思うわけであります。

 そう考えると、一番下の部分で、「小売店等」という箱があって、そこに「支払い」というものがございます。これが若干誤解を呼ぶ部分でありまして、今、例えば新聞報道等では、Bitcoinのときに必ず枕言葉として「日本国内の様々な店舗で使える仮想通貨Bitcoin」という言葉が使われますが、残念ながら日本国内の様々な店舗ではBitcoinは使われておりません。ここは大変大きな誤解がありまして、Bitcoinが使えるお店といわれるもののうち、支払いでBitcoinを受け取っているお店というのはほとんどないわけです。NEMのユーザー同士がNEMを交換しているお店というのは、時々デモンストレーションとして存在します。ただ、それはデモンストレーションであって、実際に使えるというお店のほとんどは、後で仮想通貨業者が銀行振込で円資金を払っている。実際に使われているのは銀行の円預金が決済に使われているに過ぎないわけです。仮想通貨は、あくまでも仮想通貨業者のシステムに対して、この仮想通貨を換金して欲しいと要請するときに提示されるに過ぎない。そこでは顧客のスマートフォンが提示されて、お店のスマートフォンで読み取った上で、確かにこれはこの人のものだから、じゃあ後で、翌日とかに、その仮想通貨業者から、例えば当該家電量販店に円預金の振替で支払うということがなされます。

 そもそも仮想通貨は価格変動が激しくて通貨として使えないのですが、それ以前の問題として、そもそも仮想通貨の交換自体がなされていないという事実を、多分多くの人が誤解しているような気がいたします。その意味では、ちょっとここの部分について意識を合わせる必要があります。それから「ウォレット」という言葉の意味ですね、それをどう使うかということについての認識をきちんとしておく必要があるだろうと思います。

 多分、ウォレットの中には、一部の海外のユーザーのように、きちんとフルノード的な意味での、秘密鍵を格納する形でのウォレットを自分で持って利用している人というのも、中には存在するでしょう。ただ、それは秘密鍵を自分で管理するということが必要なので、これは実は非常に難しいことです。コインチェック社と同じように、もしもそれが盗まれてしまえば、その表象している価値が盗まれてしまうのだとすれば、非常に重い責任を持つわけです。残念ながら、現在の350万人の全ての一人一人がその責任を負っているとは思えません。彼らは単に取引所に依存して、取引所の提供するサービスを使っているエンドユーザーなのであるという認識が必要であろうと思います。

 それから3ページ、これも大変よくまとまったものでありますが、上から2段目のイーサリアムについては、いわゆるスマート・コントラクトの基盤であるというお話がありましたが、今現在、イーサリアムは何になっているかというと、事実上のICOの基盤になっているというところが、多分一番の、まさにイーサリアムが今成功している、非常に大きな交換価値、流通総額を持っているというところの、非常に大きなポイントであろうかと思います。

 それから4ページ目でございますが、Tetherの話がたくさん出てきましたので、Tetherについて若干の説明をしたほうがいいと思います。この米ドルにペッグした仮想通貨は、Bitfinex社、この右側の上から5番目にありますが、この会社の関連会社が発行していると言われています。正式に認められているわけではありませんが、その会社は発行した仮想通貨と同額の資金を、米ドル建て預金で伝統的な銀行(香港上海銀行と台湾の銀行の2つの銀行)に預けていると説明されています。このため、1Tether(1USDT)が1米ドルと同じ価値を持つのだとされています。この仮想通貨は、一時的な資金の退避場所として利用されているようです。これのウエートがかなり高いというのは、どこの国の投資家かは分からないけれど、投資資金を一時的にTetherに移行して投資機会をうかがい、その後、その他の仮想通貨に投資するという人たちが多いということを示しているのだと思います。

 それから5ページのマイナーの話ですが、ハッシュレートの話が出てきました。この点で1つだけ、私が追加させていただきたいのは、Bitcoinのマイニングに要している電力という話題です。これは最近よく出てくる話題なのですが、Bitcoinのマイナーがこれだけのハッシュレートを出すためには、例えばビットメイン社のS9のような、最新のASICチップが必要になります。主要なマイナーがこのS9クラスのチップに完全に移行したとすれば、全地球の電力消費の0.5%をBitcoinのマイニングのために浪費しているという計算になります。Bitcoinの相場は最近若干下がっていますが、数千ドルになった程度では、この電力消費の上昇は収まりません。何故かというと、もう一旦投資してしまったASICチップは、これを未来永劫動かし続けることの方が経済合理性があるからです。つまり、電力料金の変動費よりも、それによって得られるマイニング報酬の期待値の方が大きいのです。この状況は、Bitcoinの価格が相当低下しなければ変化しないと思われます。この状況をこのまま放置しておくと、事態は益々深刻化すると感じているところでございます。

 以上が資料2に関するコメントでございます。

 続きまして資料3についてです。今回の資料3はキャッシュレス化に視点を当てた分析のように思われまして、これは大変、タイムリーでもありますし、重要なテーマであると思います。別途、キャッシュレス化について経済産業省さんで議論を行っていることは承知しておりますが、そのキャッシュレス・ビジョン等も拝見しつつ、この場においてもやはりキャッシュレスの議論をすることは非常に意味があると思います。

 まさにこの4ページにある通り、日本の場合、圧倒的に、キャッシュレス化というとクレジットカードの話になります。それ以外のものがほとんど出てこない。クレジットカードの比率がこれだけ高いというのは、実は国際比較をしてみると日本だけの特殊な状況です。国際的に見ると、多分デビットカードとクレジットカードと両方が提供されていて、デビットカードの方が優勢です。

 日本が何故そうなってしまっているのかということについては、過去におけるJ-Debitの失敗があったわけでありまして、これについてはまさに6ページに書いてあるところであります。J-Debitとブランドデビットの金額と数量の両方が書いてございます。J-Debitは取引件数がほぼ横ばいから若干減少傾向ですが、金額もほぼそれに比例しています。ところがブランドデビットの方は、2010年頃、ブランドデビットの決済金額のウエートが小さいときから、決済件数はほぼ同水準なのです。これはどういう意味かというと、ブランドデビットは少額でも使われている。J-Debitは極めて高額でしか使われていない。端的に言うと家電量販店の大きな買い物をするときだけ使われています。これは何故かというと、そもそもJ-Debitが使えるお店が非常に少ない。加えてJ-Debitは、家電量販店等で使うと現金と類似とみなされるので、ポイントがクレジットカードのときよりたくさんつく。そういう経緯から、こういう特殊な現象が起こっているわけです。海外では、デビットカードはクレジットを供与しないので、その分だけコストが安く、加盟店手数料が安くなる。あるいは利用者の負担も、例えばリボルビング払い等を導入しないので安くなるから、デビットカードの方が好まれてウエートが上がっているという実態があります。これと比べると、日本の状況は海外とは違う現象が起こっているように思われます。

 もう1つ言えるのは、このように数量と金額とで分析することには重要な意味があるわけですが、残念ながら今日示された図表のうちの5ページ、クレジットカードの決済額についてのみは、取引件数の統計はございません。BISのCPMIが出しているレッドブックという統計がございまして、この中で国際的な比較をするときに、日本だけが常にこの統計がnot availableになってしまうという実態があります。ずっと前から、大変日本として恥ずかしいなと思っていたのですが、日本クレジットカード協会さんが、クレジットカードの取引件数統計を作っておられないのです。他のデータは全て件数と金額なのですが、これだけ件数がない。これからキャッシュレスの分析をしていこうというときに、そもそも基盤となるデータがないのです。カードの発行枚数の統計についても随分大きな間違いがあったという報道がありました。もっというと、先ほどあったダイレクトデビット、いわゆる自動引落しについても、これは多分、全銀協さんが検討すべきことだと思いますが、こちらも統計が作られていません。こちらは金額も件数も出てこないわけです。

 11ページに、国際比較をするときに、日本よりも下のキャッシュレス比率であるところにドイツがあります。ご存じのように、ドイツはプリオーソライズド・ダイレクトデビットによる決済が非常に盛んな国でありまして、ドイツ人は比較的現金を好む傾向はありますが、そうした自動引落系のサービスをキャッシュレス決済に含めていないので、こういう結論になるのだと思います。

 そういう意味では、キャッシュレス化を巡る議論においては、統計の整備が遅れていて、実態がどうなっているか分からない。それは何故かと考えると、私自身は、クレジットカードが経済産業省の所管で割販法で規制され、その他の決済手段が銀行法及び資金決済法であって金融庁の所管であるために、全体の司令塔に当たるものが存在しないというところに、大きな問題があると思います。

 三宅メンバーがご指摘の通り、これから日本は少子高齢化社会で労働力が下がります。その中で、第3次産業の生産性を上げていくためには、もはや現在のような高い現金決済比率を続けていくことは難しいと考えます。お釣りを用意したり、内部不正を防止したり現金輸送の警備をしたり、そういうことのために割いている人的余力はないはずです。そのためにキャッシュレス・ビジョンに書かれたことをどんどん進めていくべきですが、一元的にこの決済方法に統一しようと強制すると、皆が納得しないでしょうから、もうちょっと現実的な話をするべきだと思います。その意味では、この分野はとりあえず、まず統計を整備して、実態を詳しく調べることが非常に大事だということを指摘させていただいて、コメントとさせていただきます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それではほかにいかがでしょうか。楠さん、どうぞ。

【楠メンバー】
 大分もう、岩下メンバーからお話があったと思うのですが、資料2の2ページ目と、あと資料4をもとにお話をさせていただければと思います。

 大体、資料2の2ページ目で非常に重要なプレイヤーというのはおおむね出ていると思うのですが、何点か補足をさせていただきますと、恐らくここにおける仮想通貨交換業者の役割というのは、もうちょっと腑分けして議論をしていく必要があるのかなと考えております。

 例えば、いわゆる販売業者という、消費者に対して販売するケースと、あとFXのように証拠金取引を提供するという場合で大きく異なってまいりますし、あと、株式の取引であれば、取引所と証券会社と銀行の役割というのは大きく異なるわけですが、こういったことがまだ未分化でして、実は先週、ロンドンでISOのTC307というブロックチェーンの委員会がございました。ここの中でも、コインチェックの事件を踏まえて、やはり仮想通貨交換業者のセキュリティについてきちっと標準化をすべきではないかという提案を日本から行ったのですが、じゃああの事故というのは一体何だったんだというところで議論になりまして、当初、日本からの提案では、security of cryptocurrency exchangeという形で出てきたのですが、これが各国との議論を経ていく中で、最終的にはsecurity of digital asset custodiansというふうに変わりまして、この場合、NEMの事件に関していいますと、秘密鍵の管理と、それによって現物の仮想通貨が漏れたという話になってまいりますので、これは証券におけるカストディアンのリスクじゃないかと。

 恐らく、cryptocurrency exchangeというと、もっと色々なリスクのアスペクトがあって、板の中で色々な不正が行われるケースであったり、不当に値段をつり上げて資金移動を行うみたいなリスクや、非常に幅広いものがありますので、ここをきちっと、仮想通貨交換業者の役割というのを分解していって、それぞれにおいてリスクの洗い出しをしていく必要があるのではないかということで、コインチェック事案と関連した文脈でいいますとデジタルアセット・カストディアンという形で議論をするというふうになった経緯がございます。

 あと、プラスアルファで申しますと、先ほど岩下メンバーからもご指摘がありましたが、例えば今、小売店で、色々な形でBitcoinを受け入れますと言っているところの多くは、実際には受入れを行っているだけで、後ろに仮想通貨交換業者がいて、そこで現金、日本円なりにリアルタイムで変換をして入金している場合が多いわけですが、恐らく今後、仮想通貨のリスクを考えていく上で、いわゆる仮想通貨ネイティブの取引というのをきちっと見ていく必要があるように思います。

 これは例えば、ICOに対してイーサリアムで払い込むみたいなケースであったり、あるいはディストリビューテッド・エクスチェンジと呼ばれているような、いわゆるスマート・コントラクトを用いて、現物の仮想通貨を別の仮想通貨に変換していく場合だとか、そのほか、仮想通貨建てで、仮想通貨の中で完結した取引がどういったことに使われているのかというところが、社会的にその仮想通貨を認めていることによって一体何が起こるのかというところで、非常に大きな役割、社会への影響に関わってまいりますので、ここをしっかりと着目をしていく必要があるのではないかと思っております。

 あと、資料4に関しまして、若干話をさせていただきますと、そういった点も踏まえまして、リスクというのは主に仮想通貨のハンドリングにおいてどのような不正が起こる可能性があるか、ここに関しては特に、一度行った取引というのを巻き戻すことができないということで、これまでのクレジットカードや銀行の振込で行われてきた様々な調整というのが、そのままでは機能しないということがどのような意味を持つのかということをしっかりと考えていく必要がある。

 同時に、2の(2)で、リスクの発生・伝播に関しましては、一方で、今のところレンディング等が行われていない、あくまで現物の取引になってくるので、そうすると、システミックリスクみたいなものは現時点ではあまり考えなくてもよいのかなと。あくまで危機というのは伝播をしないで、その中で閉じているのが現時点ではあると思うのですが、今後、例えば仮想通貨の価値がもっともっと上がっていって、それを担保にした別の取引等が増えてくれば、状況が変わってくる可能性はないとはいえないのですが、現時点ではマクロ経済に対する大きな影響というのはないのではないかと考えております。

 最後に、岩下メンバーから問題提起がありました、いわゆる日本での仮想通貨の取引が非常に多いのに対して、フルノードが少ないという問題提起がありましたが、この点に関しては、私はちょっと違う意見を持っておりまして、日本は決して仮想通貨において後進国ではないと考えております。世界で初めてBitcoinを使った物の取引が行われたのは、2010年5月にピザの取引が行われたと言われていますが、日本で仮想通貨の最初の取引所が立ち上がったのは2010年7月のMTGOXになりますので、世界でもかなり早い時期に取引所が立ち上がっている。

 一方で、マイニングのシェアは非常に低いというのは、一番大きな理由は電気代が高いからでありまして、私も何人か、日本でマイニングをしている方にお会いしたことがあるのですが、1人はオーストリアの方で、ご実家が水力発電所をやっていて、電気が余っているときはリモートでオーストリアの発電所の横で採掘をしていると仰っていましたので、やはり日本だと、他の国と比べると採掘の採算がとりにくいということが大きな理由かなというのと、もう1個は、ネットワークが非常に日本だと良好な状態にありまして、フルノードを立てる目的というのは承認数を確保したい場合や、素早く取引の不正を検知するという目的が多いのですが、そういったフラグメントや、ブロックチェーンの不正な書込みというのは、ネットワークの状態が悪ければ悪いほど起こりやすいので、例えば中国のように、非常に回線が細かったり遅延が大きい場合には、フルノードを立てるインセンティブというのは大きいのですが、日本のように回線の状態が良い場合には、なかなか立てにくい、立てる必要がないということがあるのかなと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは森下さん、どうぞ。

【森下メンバー】
 ありがとうございます。仮想通貨やブロックチェーンの技術の可能性ということについてどう考えるかという宿題をいただいておりますが、法学者が技術の可能性について語るというのはなかなか難しいところはあるのかなと思います。

 しかしながら、国際的にこれだけやはり注目されていて、また色々な取組みもなされているものですので、上手く付き合っていくことが必要であると考えますし、現時点で日本がそういった仮想通貨やブロックチェーンについて過度に警戒感を持つということではなく、積極的に色々な取組みを行っていくのがよいのではないかと考えております。特に、今までのお話をお伺いしておりますと、多数の主体が情報を共有して、同時に記録にアクセスできるようなことが望ましい、そうすることによって価値を向上できるような場面や、あるいは、これは日本では当てはまらないのかもしれませんが、信頼できる中央管理者というものがなかなか見つけられないような国々や、そういったところにおいては非常に価値があるのではないかと感じております。要するに、多様な各国通貨や、多様なブロックチェーンがあると思いますが、上手く節度を持って使っていくことが大事なのではないかと感じております。

 他方でリスクに関してですが、法律を専門とする者の観点からしますと、ブロックチェーンに本当にどのようなリスクがあるのかということが、必ずしもはっきりせず、リスクがはっきりしないと、法的にどういうふうに対処していいのかが必ずしもはっきりしないというようなところが、少し不安と申しますか、懸念を持つところでございます。

 このような技術が、例えばブロックチェーンが本当に効率的なのか、本当に改竄ができないものなのか、本当にどういうリスクがあるのかということが、しっかりと分析されて、情報公開されていくことが重要なのではないかと感じております。

 特にパブリックタイプのブロックチェーンなどにつきましては、リスクの一例としまして、何か、例えばハッキングをされて仮想通貨がなくなってしまったというような場合に、法や裁判所がなかなか手を出せないというような事態が、先日のコインチェックのケースでもあったかと思います。そういうリスクも踏まえて、このような技術とどう付き合っていくのかということをしっかりと考えていく必要があるのではないかと考えております。コインチェックの事案のときにも、あのような仮想通貨については自己責任ではないかというような意見も聞かれました。しかしながら、再三お話にも出ておりますように、ああいった仮想通貨に実際に投資をしている、あるいは取引をしている人の多くが、実際にブロックチェーンにアクセスして自分を守ることができないような方々であったり、また、十分な知識のない多くの方々が取引ができるような状況になっているということを考えますと、自己責任というだけで済ませられるかというのは疑問な点でございます。

 あとは、ブロックチェーンあるいは仮想通貨が、例えば過剰な投機や詐欺的な投資勧誘、マネーロンダリングをより容易にするシステムだとしますと、それについてはやはり対処が必要なのではないかと思います。ブロックチェーンや仮想通貨それ自体が悪いというよりも、その使い方によって、そういったリスクを高めるのであれば、それに対応する手当てが必要なのではないかと思います。

 いただいた資料4の3番のところで、従来、仮想通貨交換業に着目して制度的な対応をしてきているかという点がございます。この点については、先ほど来、岩下メンバーなどからもご紹介されていますように、多くの取引が交換業者を介して、インダイレクトな形でなされてきた。そういう意味では、交換業者に色々なリスクが溜まり得るような構造になっているといった実態を考えますと、必然的というか、それはそれで、いいことなのではないかと思います。また、交換業者が果たす役割が多様なものであって、例えば保管するという局面、あるいは売買やマーケットメイクといった様々な局面に応じて、異なるリスクがあり得るのではないかというのは、先ほど楠メンバーもご指摘くださった点だと思います。ですから、この点についてしっかりと注意していくというのは重要なことかなと思います。

 ただ、同時に、仮想通貨も多様であって、例えば発行者があるようなもの、あるいは中央管理者がいるようなものとなりますと、そのような方たちが何らかの規制の対象となり得ないのかというのは、少し別に考えていいのではないかと思っております。ある程度、やはりパブリックな性格を持つ――パブリックというのは、公的な部門、公的な仕組みにブロックチェーンなどを用いていく場合には、やはりそのシステムの運営に責任を持ってくださるような方に、例えば必要なコンタクトができるとか、良くないことが起こったときに何らかの対応をしてもらうというような仕組みを盛り込んでおかないと、少し危なくて使えないということがあるのではないかと思います。

 最後に、クロスボーダーという点についてでございます。やはりインターネットを介して容易に取引ができるという仕組み上、クロスボーダーの広がりが非常に容易であり、外国の事業者が日本の顧客に簡単にアクセスできるということは、もう避けられないと思います。そうなってきますと、やはり今後は、ルールメイクをするに当たっても、あとはエンフォースメントをするに当たっても、国際的な協力というのは欠くことはできないと思います。例えば他の領域でも、監督当局間のエンフォースメントなども含めた協定というものができている分野が、例えば独禁分野などにおいても、執行などに関する協力も含めた協定などもできていると思いますが、こういった分野についても、エンフォースメントなども含めた当局間の協定などを考えていく必要が、今後出てくるのではないか。日本がそういった枠組みの中で重要な役割を果たすことが望ましいのではないかと感じております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは加藤メンバー、井上メンバーの順で、その後、坂メンバーということで。加藤先生、どうぞ。

【加藤メンバー】
 ありがとうございます。資料4に即して意見を述べさせていただきます。

 最初に、仮想通貨とブロックチェーン技術との関係についてですが、これについては三宅メンバーの説明資料3の22ページの図が、重要であると思います、つまり、ブロックチェーンを活用したスキームにおいて、資金決済だけはブロックチェーンで行われていないということなのです。つまり、仮に現在の貿易金融の実務の全てをブロックチェーンだけで完結できるようにすることに非常に意味があると考えるのであれば、ブロックチェーンで完結する決済の仕組みがあったほうが良いということになります。そうすると、仮想通貨とブロックチェーンを一般的に峻別するというよりは、ビジネスモデルごとに考えるのが良いと思います。そういった意味では、資料4の1で仮想通貨というように検討対象を設定するのは広過ぎるのではないかなと、感じました。

 次に、資料4の2で、リスクの発生や伝播ということについて、既にご指摘があった意見と重なるのですが、現時点での話と将来の話を区別する必要があると思います。例えば現時点の話、もしくは近い将来の話を考える際には、実際に仮想通貨交換業者が今どういったことを行っているのかということが非常に重要であると思います。

 その点で少し気になりますのが、直近のコインチェックの事件で明らかになった問題の1つは、顧客が仮想通貨を引き出すことができなかったということだったと思います。顧客にとって仮想通貨を引き出すというのは、恐らく、イメージとしては仮想通貨を返してもらうのではなくて、仮想通貨を換金して現金を返してもらうということであった気がします。このようなイメージは、私の知っている仮想通貨交換業者の例なので一般化できないかもしれませんが、預かっている仮想通貨の額を仮想通貨の単位で示すのではなく、円換算して示していることに対応しているように思います。しかし、仮想通貨交換業者の利用規約などを見ますと、このような意味で仮想通貨を引き出すためには、結局仮想通貨を買い取ってもらって現金を引き出すわけであって、この点は銀行とは大きく違います。すなわち、顧客の期待している仮想通貨の引出しと、実際に仮想通貨交換業者がビジネスとして行っていることにずれがあるように思います。こういったずれを、放置しておいていいのか。しかし、これを例えば顧客の期待の方に実態を合わせると、それは仮想通貨について銀行と同じようなことを交換業者にやっていただくことになるので、それはリスクを増やす可能性が出てくると思います。まとめると、現在、仮想通貨交換業者がビジネスとして行っていることと、利用者が期待していることが本当に一致しているのか少し懸念を持っており、ここを上手く調整するようなことも必要であるように感じました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 井上メンバー、どうぞ。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。本日も大変分かりやすいご説明をいただきまして、少し理解が深まったように思います。2点申しあげます。

 資料4の2の(2)に関わりますが、岩下メンバーからご指摘、ご説明がありましたように、実際は業者のウォレットで管理されている秘密鍵に結びついている取引がほとんどで、多くの投資家あるいは個人顧客はそこにぶら下がっているということだったと思います。そういう保有・取引形態を前提とすると、その取引所あるいは交換業者と呼ばれる人たちの名義で保有されているといいますか、そのウォレットに格納されている秘密鍵に結びついた仮想通貨がたまっていきますから、それが仮想通貨交換業者の信用リスクに晒されることになります。のみならず、銀行あるいは証券・保険等の金融機関が顧客から受け取った資金を同じような保有形態で仮想通貨に投資なり運用なりするようになると、そこにもリスクの溜まりができます。このように、仮想通貨交換業者が典型的ですが、自分の名義で仮想通貨のポジションをとり始めると、そこにリスクの溜まりができるという問題は、確認しておく必要があると思いました。

 それに関連して、私は前回欠席してしまったものですから、そこでの議論を必ずしも十分に把握できていませんが、資料2の10ページで、事務ガイドライン上の着眼点が挙げられています。この下から3つ目、上から2つ目のハイフンのところに書かれているのは、リコンサイルをちゃんとやるということだと思いますが、これは従業員による横領や過失による紛失等のオペレーション上のリスクを低下させることに関しては意味があると思います。また、その次のハイフンのところにある、暗号鍵、秘密鍵の保管の仕方についても、同じようにオペレーショナルリスクに関しては有用ですし、これについてはハッキングのリスクとの関係でも意味があるのだと思います。また、一番下の、インターネットなどの外部ネットワークに接続されていない環境で管理するというのも、言うまでもなくハッキングのリスク軽減には大きな意味があると思うわけですが、これらはいずれも、業者の倒産リスクとの関係で十分な意味があるかといえば、かなり限界があるのではないかと思っておりまして、先ほど申し上げたように、業者が自己ポジションをとるような状況が今後も継続・進展していき、あるいはそれ以外の金融機関が自己ポジションで仮想通貨のようなボラティリティの高い資産を持つような事態が進んでいくことになると、その結果として、これらの金融業者にリスクの溜まりが生じてしまいます。そのようなリスクへの対処としては、現在、着眼点として指摘されている点は、必ずしも十分ではないのではないかという気がしています。それについては、証券業務における顧客分別金信託のような信託保全が1つの方法だと思いますが、何らかの方法で、顧客利益を業者の倒産リスクから保全することも重要になってくるというのが1点目でございます。

 もう1点は、資料4の3になりますが、まさに今申し上げた観点から、このまま放っておくとリスクの溜まりができてしまうのではないかと思われる仮想通貨交換業者に着目して、制度的な対応を進めることについては、全くその通りだと思うのですが、先ほど森下メンバーからもご指摘がありましたように、それ以外にも着目すべき点があるのではないかと思います。

 例えばICOにおいてトークンを発行して仮想通貨を調達するという場合には、トークンの発行者がいるわけで、そういう場合の情報開示をどうするのかといったことは、交換業者に対する規制とは別に問題になってくると思いました。

 ただ、交換業者に対する業者規制についても、このICOに関する開示規制についても、今は規制が追いついていないことから、規制を何とか強化しなければ、あるいは足りないところを補わなければというところに目が向いているのは確かだと思いますが、長期的には、こういった投資者あるいは利用者保護と、イノベーションの促進とのバランスをとりながら検討する必要があり、規制のみならず、これらの技術をどうやって生かしていくのかという観点を常に意識することが、当たり前のことですが必要だと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは坂メンバー、福田メンバーの順で、坂メンバー、どうぞ。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。資料4の論点に沿って意見を述べさせていただければと思います。

 まず1つ目の論点についてですが、(3)のところで示唆されております通り、仮想通貨とブロックチェーン技術については、分けて考えるべきではないかと思います。特に仮想通貨と、法定通貨建てのデジタル通貨、これは分けて考える必要があるのではないかと思います。

 その上で、仮想通貨についてですが、指摘されております通り、金融のインフラが必ずしも整っていない途上国では、送金・決済手段として有用性を認め得るのだろうと思っておりますが、金融のインフラが相当整備された先進国では、決済手段としてあまり使われていない反面、投機の対象として広がっているということを見ますと、現状、プラスの面というのはかなり限定的ということなのではないかという印象を受けています。将来的にも、価格変動が大きい限りということになろうかとは思いますが、特に先進国において仮想通貨自体に今以上のプラスの可能性を生み出すということは、かなり難しいのではないかという印象を持っています。

 他方で、仮想通貨のリスクですが、前回の行政処分例やこの間の報道等に鑑みますと、かなり大きいものがあるのではないかという印象を持っております。

 リスクの可能性について4点ですが、まず1つ目、現状、仮想通貨自体が、ハッキングによる盗取や、あるいは仮想通貨等にもよるかと思いますが、プログラムの完成度や継続可能性等の観点から、依然として軽視できないリスクを抱えていて、現状のまま利用が拡大することは、それ自体リスクの拡散となりかねない面があるということは、一応見ておく必要があるのではないでしょうか。

 2つ目ですが、仮想通貨の悪用。マネーロンダリングや資産隠し等への悪用が既に行われているようですし、またその拡大が心配されるところと思います。

 3つ目、情報や交渉力の格差のもとで、事業者や一部の保有者に多額の利益がもたらされる一方で、必ずしもリスク把握や対応力が十分でない一般の利用者に、過大なリスクや損失が負わされるということになるとすれば、これは一般利用者から、事業者や一部の保有者への不適切な資産移転が起こるということになるのではないかと思います。

 4つ目ですが、投機的な利用が拡大することによって、金融の機能・役割への認識や、資産形成のあり方について、不適切な認識や姿勢が広がることにならないか。特に若い人たちにおいて、金融知識が不十分なまま投機的認識が広がることについては、心配されるところであります。

 こうしたリスクの多くは、仮想通貨が法定通貨とは独立した価値を持つということの性格に基づくところがあって、こうしたところをよく見ておく必要があると思います。
これに対してブロックチェーン技術は、今後様々な分野での活用が考えられるところと思いますし、特に金融の分野では、法定通貨建てのデジタル通貨への活用という点を含めて、今後の展開が期待されるところではないかと思います。

 それから、1の(3)の後段の点についてですが、現状、仮想通貨に関係する人々によって、ブロックチェーン技術に関する開発等が進められていること、あるいはこういった開発が利潤の獲得という動機に導かれたものであって、相応の推進力を持っているということは確かなのではないかと思います。もっとも、獲得された利潤が技術の開発等に生かされているのか、あるいはその開発の方向性が適切なものとなっているのかどうかは、慎重な見極めが必要ではないかと思います。

 他方で、仮想通貨以外の分野において、ブロックチェーン技術の開発・改善の努力というものがそれなりに広がってきているようです。私個人的な意見としては、こういった動きを強めていくといいますか、促進することが望まれるのではないかと感じております。

 次に、2の論点についてですが、仮想通貨のネットワークやプレイヤーに関して、発展の可能性と、リスクの発生・伝播の可能性と2つ挙げられておりますが、これはいずれもあり得るのだろうと思います。どういった方向に今後発展するか、展開するかは、業者のあり方、あるいは市場参加者のあり方、これらに影響を受ける技術展開の方向性によって左右される面があるのだろうと思います。良質な業者によって、金融に求められる機能に応える利用、適切な利用が拡大すれば、良い方向に発展する可能性もあろうかと思いますが、これに対して、悪質な業者による供給、マネーロンダリングや資産隠しによる利用が拡大するとか、あるいは利用者を顧みない使われ方が拡大していくということになりますと、リスクの発生や伝播が拡大していくということになるのだろうと思います。現状を見ますと、楽観できない状況にあるのではないかと思います。仮想通貨のリスクを抑えて、適切な方向への展開を促す観点から、実態解明は引き続き重要と思いますし、参入規制のあり方を含めて、市場や規制によるコントロールを適切に強めていく必要があるのではないかと思います。

 それから、国際的な技術の標準化の動きに関しては、公的な機関や規制が果たす役割というのがあるのではないかと思っております。技術の標準化については、市場の選択に委ねるという考え方もあるかもしれませんが、技術が市場参加者に分かりにくい面があることや、あるいは分かりにくい部分の技術も重要であるということに鑑みますと、市場の選択のみによることは限界があり、規制による規律や行政監督を通じた検証等が一定の効果を果たし得るのではないかと思います。また、業者間の関係が、例えば希薄であるとか、あるいは競争・意見対立が激しいという状況にありますと、技術の標準化というのはなかなか進みにくいのではないかと思います。したがって、このような場合にも、公的な機関や規制が標準化のための場を設定したり、あるいは大枠の方向づけを行うなど、適切な役割を果たすことが期待されるのではないかと思います。なお、技術の標準化については、仮想通貨よりも法定通貨建てのデジタル通貨の方が健全な方向への発展を促しやすい面があるのではないかという印象を持っております。

 それから、3番目の論点についてですが、これについては2点です。仮想通貨交換業あるいは仮想通貨交換業者に着目をして規制するということは必要不可欠ですし、極めて重要だと思いますが、指摘がありました通り、国際的な規制の網をきちんとかけていくという観点から、国際的な協調ということも非常に重要な課題かと思います。もっとも、国際的に規制の網をかけるということは、相応に困難を伴う面もあることから、規制や協調の確保はもとよりですが、技術的な対応や、あるいは技術的な対応と規制の工夫を組み合わせるといったことが、何らかの形で模索できないかと考えます。

 あと、業者の規制、あるいは規制のあり方について、先ほど来、機能に応じた様々な観点からの検討が必要だというご指摘がありましたが、それはその通りだと思います。

 1点だけ申し上げますと、ウォレットの提供だけを行う業者というのは、現在、日本ではあまり多くなってはいない状況かと思いますが、これが広がることはあり得ますし、拡大し始めますと速いテンポで拡大するということもあり得るかと思います。利用者保護の観点からは、ハッキング等による仮想通貨の流出は、ウォレットの提供だけを行う業者のもとでも起こり得ることでありますので、これは対応が必要かと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では福田先生、どうぞ。

【福田メンバー】
 ありがとうございます。大変有益な議論を聞かせていただいて、むしろ勉強させていただいているという状況でございますが、いくつか意見表明をさせていただきます。まず一般論として、イノベーションというものに対する考え方に関して、経済学者ですので意見を述べさせていただきますと、多くのイノベーションというのは、必ずしも当初予定していた通りには起こらなくて、当初予定していたものとはかなり違うものが実は便利だということが色々分かって利用されるということは、多くのイノベーションではあるということだと思います。

 仮想通貨に関しても、当初は、事務局の資料の2ページ目にあるような、真ん中のP2Pの取引で使われるのだろうと、みんな思っていたのが、必ずしもそうではないところで発展を見せている。その結果、三宅委員からもご指摘がありましたように、仮想通貨は、現状では貨幣が本来持っている3つの機能というのはほとんど満たされていないような状況にはなっている。

 ただ、そのことをもって、そのイノベーションが失敗したとかおかしいとかいうのは、もともとのイノベーションの考え方からするとあまり適切な評価とはいえない。何故なら、多くのイノベーションは当初の予定とは全然違うところで便利さが発見されて、その後発達していくということは、一般論としてはあるということで、仮想通貨もそのような観点から見るほうがいいかもしれないと思います。
ただ現状では、多くの方が仰ったように、色々な意味でのリスクというのが顕在化しているし、それに関しては危惧しなければいけないということだとは思います。

 ただ、リスクと言った場合でも、観点として重要なのは、やはり金融が特殊だということにまつわるリスクと、一般的なリスクはかなり区別しなければいけない問題だと思います。世の中には色々なリスクがあって、これは金融の取引に限らず色々なリスクはあります。色々なテクノロジーに関しては、フィンテック以外にも色々なテクノロジーがあるわけですが、そういったものでもリスクはないわけではなくて、色々なリスクはあるわけです。ただ、そうは言いつつも、金融というのは、他の業種にはない、かなり特殊なリスクがあり、だからこそ色々な意味で、民間の事業者がやる場合でも、普通の状況以上に色々な配慮が必要だと考えられてきました。そういう意味では、リスクと言った場合でも、金融に固有のリスクというものにとりたてて注意しなければいけないということだと思います。

 その場合に、金融に固有のリスクとして、通常言われるのは、もちろん利用者の保護ということでしょうし、あるいはシステミックリスクというものなのだろうと思います。ただ、仮想通貨に関しては、やはりマネーロンダリングやテロ資金に関する問題というのが、通常の金融のリスクよりはウエートはかなり大きく存在している。むしろ、システミックリスクというのは、現状ではそんなに、恐らく大きくない。また、利用者の保護に関しても、自己責任と言っていいかどうかはわかりませんが、利用者は儲けているときは儲けているわけで、損したときだけ保護するというのはアンフェアな面もあるわけです。そういう意味では、金融の特殊リスクだけれど、通常の我々が議論してきた金融のリスク以上に、非合法的な取引に使われるリスクというのが、仮想通貨では大きいリスクなのではないかなと思います。

 ただ、イノベーションというのはどういう形で発展していくかというのは、なかなか読めないところが難しいところなのだろうと思います。シュンペーターが、イノベーションとは何かというのを定義しているのですが、もちろん、科学技術的な技術もイノベーションなのだけれど、それをどう利用しやすくするかという、ある意味では文化系的な発想の転換みたいなものも含めてイノベーションと考えるべきだということがあって、技術的な進歩がこれからどういうふうに起こるのかは、簡単に予測できるものではありません。利用の可能性みたいなものに対するイノベーションというのは、まだまだ色々な形で起こってくる可能性があって、現状、仮想通貨はリスクの方が大きいけれど、ブロックチェーンの方はプラスの面の方が大きいという評価は一般的だとは思いますが、これが今後どうなのかということに関しては、決め打ちは必ずしも適切ではないのではないかとは考えております。

 それから、交換業者を規制するというのが今、主流になってきているということはその通りだと思いますし、それは現状の取引が、法定通貨が圧倒的に依然として主で、仮想通貨、eカレンシーというのが非常に補助的だということが大前提になっている社会、現状では致し方ない面があります。法定通貨との交換というのが、最終的には行われるという前提条件のもとでは、まさにそういう規制のあり方というのが主にならざるを得ないということなのだと思います。しかし、今後、事務局の2ページ目にあるような真ん中の世界がどうなっていくのかはわかりません。場合によってはもう法定通貨は要らないよという世界に、もしかしたら発展していったときにどうなのかということまで見据えて、色々なビジョンは描いていく必要はあると思います。また、私の個人的な意見は、やはり規制というのはバランスのいい規制というのが必要で、特定の業者のみを過度に規制するというのは、色々な弊害がある可能性はあるだろうということだと思います。

 最後に、技術の標準化という問題は、極めて経済学的には大事なのですが、ただ、国によっても色々な特性というのはやはりあるという視点も重要なのだろうとは思うんです。国の取引慣習とか、色々な取引形態とか。例えば、読み取り機能でQRコードというのが今、かなりキャッシュレス社会では主流ですが、じゃあ地下鉄に乗るときにQRコードで乗るのがいいかというと、やっぱりちょっと反応が遅過ぎますよね。フェリカの方が圧倒的に便利なわけで、どういう取引をするか、あるいはどういう取引が国の中で主流なのかということも含めて、色々な工夫をしていく必要がある。現状では、QRコードが主流になりつつあるとは思いますが、日本発のイノベーションというのを考えたときには、そういうことまで考えた色々な戦略を考えていくということは必要なのではないかなと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは三宅メンバー、永沢メンバー、翁メンバー、神作メンバーの順で、三宅メンバー、どうぞ。

【三宅メンバー】
 私からは、資料4に沿いまして簡単にコメントさせていただければと思います。

 資料4の1と2につきましては、基本的には仮想通貨やブロックチェーンに関するプロコン、すなわちプラス面とマイナス面をどのように考えるのかということがご趣旨かと思います。

 ブロックチェーンのメリット等々につきましては先ほどご説明さし上げた通りであります。一方、仮想通貨につきましては、多くのデメリットが指摘されている状況ですが、例えばBtoBやCtoCでの送金、あるいは法定通貨に対する信認の低い国における活用といったように、プラスの面も確かに存在することも否定できないのではないかと思われます。

 ブロックチェーンと仮想通貨を分けて考えるか否かといった切り口もあるかと思いますが、仮に仮想通貨を悪として、縮退させるような措置を講じたとしても、仮想通貨に代わる新たな手段が出現してくる可能性もございますし、既に仮想通貨のビジネスがある程度でき上がっているということもございますので、それを完全になくしていくのは、正直に申し上げますとなかなか難しいのではないかと、個人的には思っています。したがいまして、これは皆様からもご意見がございましたが、いま一度、リスクがどこにあるのかという点を丹念に精査し、それに対する手当てをしていくことが必要かと思います。

 その手当ての仕方も幾つかあると考えておりまして、例えば技術的な面での対応ということもあるでしょうし、ブロックチェーンの設計の仕方、パブリックかプライベートかといった設計の仕方というのも考えられると思います。あるいは消費者保護等々を中心に法令対応が求められる部分もあるかもしれませんし、さらには事後のモニタリング、あるいはそれを踏まえた行政処分といった形で対応する必要もあると思います。したがいまして、いま一度リスクについて丹念に精査をした上で、それぞれについてどのような対処が適切なのかを議論していく必要があると思います。

 それと3番は、仮想通貨交換業者に対する規制の可否ということですが、私も基本的には賛成でございます。利用者個人に規制を適用するというのはおよそ現実的ではないと思いますので、こういった方向感でよろしいのかなと思います。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 永沢メンバー、どうぞ。

【永沢メンバー】
 ありがとうございます。私も本日、色々と勉強させていただきました。私ども一般個人の周りでも仮想通貨に対する関心は非常に高く、議論をさせていただいているところなのですが、今日の資料にもありましたように、金融包摂などの可能性を考えますと、頭からこれは悪とも決めてかかれないところがあり、その理念は非常に魅力的であるということは認めざるを得ないという意見があることは否定できません。

 一方、リスクについては、1の(2)になりますが、先ほど坂先生から幾つかご指摘がありましたが、私も大きく3つあると思っておりまして、1つはやはり犯罪に利用される可能性が否めなさそうだというところ、それから2番目は取引に情報の非対称性があり、公正な取引が確保できているのだろうかという懸念、そして3番目はセキュリティに対する不安というところでございます。

 特に、反社会的な勢力への資金提供などが行われるなど重大な犯罪に利用される可能性が仮想通貨にあるとするならば、たとえどんなに魅力的であっても、正当な地位は与えがたいということになると思います。仮想通貨というものに正当な地位を与えたいと思われる方々は、このリスクをどう防ぐのかということに最大限の力を注がれるべきではないかと私は考えます。

 それから1について、どれに属するか分からないのですが、今、仮想通貨が是か悪かという議論のところで、仮想通貨とブロックチェーンの技術を分けて議論するという話もあるわけですが、この(3)のところに記載されている「両者は密接不可分であり、仮想通貨を離れてブロックチェーン技術の発展は見込まれない」という意見があるということですが、そのように仰る理由がよく分からないというか、どうしてそのようなことを言われるのか、理由を伺ってみたいとも思います。

 それから、この点に関連するところですが、今問題になっているのは、仮想通貨そのものというよりも、交換所が体制を十分に整備できていないという問題と、それから利用者側の問題が大きいと感じています。多くのメンバーからご指摘がありましたが、本来期待した決済という機能よりも、投機というところに使われていること、加えて、その投機のあり方というのが、過去のオランダのチューリップのバブルのようなものを想起させ、日本人、こんなことをしていて本当にいいのかというところに問題としては行き着くのではないかと思っておりまして、結論として、私は技術とこれらの問題は分けて考えることができるならばそうすることが望ましいのではないかと思っております。

 最後に、本日、三宅メンバーから大変貴重な資料提供と分かりやすい説明をいただきまして、イノベーションによる利便性の向上というものがこれからも期待できることや、その促進のためにどのような課題があるのかということが理解できたと思いますが、その一方で、デジタル通貨と仮想通貨の違いが、私自身はよく分からなくなりました。

 また、技術の応用面について、その可能性が大きいことはよくわかったのですが、マイナーというものが必要不可欠ということですが、仮想通貨以外の分野でマイナーが積極的に関わって動いてくれるのだろうかと気になりました。他分野への利用の可能性には大きく期待したいところですが、現実にそんなに上手く行くのだろうかと、素人ながらに感じた次第です。

 簡単ではございますが、私からは以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは翁メンバー、どうぞ。

【翁メンバー】
 私も今日は大変勉強させていただきました。この資料4に沿って、少しコメントさせていただきたいと思いますが、ブロックチェーン技術につきましては、仮想通貨でまずスタートしたわけでございますが、色々な形で実証実験が行われたり、実用化が行われたりしておりまして、例えば、取引のトレーサビリティが価値を生む新しいビジネスモデルが金融以外のところでも出てきたり、また、先ほど貿易取引のことで三宅メンバーからご紹介がありましたが、多様な事業者が複雑な取引をして、そこでスマート・コントラクトを入れて効率化を図るというような、そういった期待とか、それはサプライチェーンとかシェアリングエコノミーとか、そういった分野について様々な応用可能性は、今、たくさんあるのではないかなと思っております。

 一方で、色々なリスクやコストがあるわけでございますが、もともとがパブリック型でスタートしていて、パブリック型については、スケーラビリティとか処理速度の問題とか、様々な課題が整理されて、今日ご紹介があったわけですが、今、多くの実証実験はコンソーシアム型で行われていて、まさに管理者を設けるようなタイプでやっていると思います。今、様々な実証実験が行われていますが、管理者のいるタイプでの新しい送金というのがどのぐらい、本当に低コストで、今までのものを凌駕するようなものになるのかということについては関心を持って見ていきたいと思っております。

 そういう意味では、ブロックチェーンといっても、先ほどエストニアについても三宅メンバーからご紹介がありましたが、あれは全部のノードが情報を共有しているわけではなくて、改竄検知の技術を使っていて、それをブロックチェーンと言っています。またコンソーシアムタイプでもブロックチェーンと言っていますように、ブロックチェーンと言いながら色々なタイプの技術が出てきているなと思っています。
でも、いずれにせよ、例えば国際送金などにしては、今まで時間がかかったり手数料が高いといったものを克服しようという動きだと思っていますので、色々なリスクやコストに気をつけながら、新しい取組みをしていくことについてはサポートしていくことが必要なのかなと思っております。

 それで、三宅メンバーからキャッシュレスについてご紹介があったのですが、私自身もキャッシュレスは重要だと思っておりまして、現金のハンドリングコストというのは、やはり中小企業にとってはそれなりに高いので、生産性向上に効果を発揮しますし、またインバウンドということを考えますと、キャッシュレスは当たり前と考えている訪日観光客がどんどん入ってくることを考えますと、そういった点では、キャッシュレス化を促進していくことは重要かなと思っております。

 一方で、スウェーデンなどでは、非常にキャッシュレスが進み過ぎて、決済のところが難しくなってきて、デジタル通貨を中央銀行が発行するというような議論にもなってきているということかと思うので、やはり技術革新によって様々なマネー、様々な通貨が発行されるようになってきているということを、念頭に議論していくことも重要かなと思います。今日もご紹介がありましたが、発行者、デジタルかどうか、トークンタイプかどうか、どういった人たちが使えるのか、こういったことも念頭に置きながら、デジタル通貨については幅広い視野を持って検討をしていくことが必要かなと思っております。

 2のところで、いわゆる仮想通貨について質問していただいているのですが、私も皆様と同じように、現時点では規模的にシステミックリスクに繋がる可能性は少ないかと思っております。ただ、将来的には、非常にレバレッジが大きいということで、何か大きなイベントがあったときなどにどんな動きをするのかということで、やはりボラティリティが大きいということも踏まえますと、しっかりとウオッチはしていく必要があると思っております。取引規模が大きくなっていきますと、法定通貨との関係でどういうふうに、同じような規制を考えていくのかというようなことも、もしかしたら検討事項になってくるかもしれないと思います。

 それから、3番のところで、業者について、仮想通貨交換業という業法だけで見ていくことについてどう考えるかということでございますが、私もグローバルにこういう動きである以上、エンフォースメントということを考えると、やはりこの流れに沿って考えていくことが重要かと思うのですが、一方で、ご指摘がありましたように、その業者だけを重点的に見ることによる弊害というのも出てくるだろうし、無登録の業者に対しても、全くそこについて利用者の自己責任だけで片づけられない問題も出てくるのではないかと思いますので、検討しておく必要はあるのではないかと思っております。

 あと、こういった仮想通貨やICOが出てくる背景としては、既存の金融システムに投げかけている問題もあるかなと思っていまして、例えばインクルージョン、金融排除の問題などは、日本ではあまり大きな問題にはなっておりませんが、そういった問題や、専門家がベンチャーに投資するための環境整備はどうなのかとか、あと、今はFXから来ているということで、そういったところとの関係とかも見ながら議論していく必要があるのではないかなと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 神作メンバー、どうぞ。

【神作メンバー】
 ありがとうございます。私は法律家でございますので、今日、資料を読んでいて、いただいた論点の大部分に適切にお答えする能力はないのですが、法的な観点から少しコメントをさせていただきたいと思います。

 まず、ブロックチェーン技術に限らず、技術自体というのは、これは法ではありませんので、技術自体を法で何かコントロールするということはできない、換言すれば法と技術の区別が必要であると思います。

 しかし、ブロックチェーン技術については、三宅メンバーの資料3の21ページ以下にございますように、様々な役割・機能を果たし得るということでございますので、例えばその技術の利用を、適切なイノベーションを促進するという観点から、規制のあり方についても考えるということが、まず基本的な方向として重要であると思います。

 ただ、その際に、例えばマネーロンダリングその他、現行の法制のもとで規制されていることが、これらの技術等を用いて、いわば潜脱されるということに対しては、規制を要すると思われますし、現行の法制のもとで一定の規制をしている、それと同様のリスクがある事項についても、やはり適切な規制をしていくことが望ましいと思われます。特に、仮想通貨やICOを念頭に置きますと、支払いあるいは支払サービスに関連して用いられる場合と、投資の対象として用いられる場合があって、現在の仮想通貨交換業の規制というのが必ずしも投資の対象として仮想通貨が用いられる場合の法的な規制の枠組みとして必ずしも十分ではないのではないかと思われます。

 いずれにしても、技術がどのような目的のもとで、実際にどのような機能を果たしているか、それに応じてどのようなリスクが生じているかということを、実態に照らして、法規制のあり方について考えていく。そういう意味では、法のあり方というのは、いわば後追いと申しますか、どうしても実態における利用を睨みつつ考えていくということにならざるを得ないのではないかと思います。

 ただ、ブロックチェーンの技術に関連して非常に興味深いと思っておりますのは、例えば仮想通貨やICOにしても、支払いや支払いサービス、あるいは投資対象といった、金融の機能以外の、非営利的と申しますか、営利目的以外の目的で使用される場合が含まれ得るという点であり、そのような営利性や金融の枠だけでは収まらない目的や機能があることは否定できないように思われます。そのような局面では、金融規制の枠組みでは上手く適合しない場面もあろうかと思います。このあたりは、いわば金融法を超えた一般的な消費者法の問題等が、どうしても出てこざるを得ないと思われます。

 法的な観点からは、例えばブロックチェーン技術の不可逆性に対応して、法律の世界でたとえば原状回復というのを一体どのように考えるのか。また、秘密鍵について強制執行その他、ブロックチェーン技術を用いた場合に固有の問題というのが幾つかあろうかと思いますので、そういった問題については個別に検討していく必要があると感じました。

 簡単ではございますが以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 あっという間に時間が、既に予定の時間を5分以上過ぎてしまいました。本日ご出席のメンバーの方、全員の方々からご意見を出していただきました。どうもありがとうございました。

 まだまだ追加でのご質問、ご意見があると思いますが、事務局の方へメールやお電話その他でご連絡いただければありがたく存じます。その他、オブザーバーの方々におかれましても、ご意見やご質問がおありかと思いますが、今日は時間がなくて申しわけありませんが、事務局の方へメールその他でご意見をお寄せいただければと思います。また次回以降、ご発言の機会も設けさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、この研究会を今後どうやって進めていったらいいのか、ちょっとなかなか、頭が痛いところで、私などは数年前には、まさかこの部屋でこのテーマについて議論が行われることになるとは、全く予想しておりませんでした。本日も大変活発なご意見をたくさんいただきましたので、本日いただきましたご説明や、皆様方からのご意見等を踏まえて、今後さらに議論を深めさせていただきたいと思っておりますので、もし、今後の進め方についても何かサジェスチョンがあれば、事務局の方までご連絡いただければありがたく存じます。

 それでは、最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。

【廣川信用制度企画室長】
 次回の研究会の日時につきましては、皆様のご都合を踏まえさせていただいた上で、後日事務局よりご案内をさせていただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは以上で散会いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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