「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第8回)議事録

平成30年11月1日(木)


【神田座長】  
 おはようございます。若干、数十秒早いかもしれませんけれども、皆様方、おそろいでございますので、始めさせていただきます。仮想通貨交換業等に関する研究会の第8回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 
 前々回、第6回目と、前回、第7回目の会合において、仮想通貨をめぐる諸問題のうち、仮想通貨交換業者に係る規制のあり方、それから、仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引に係る規制のあり方、これらを主要な議題として、具体的な制度的対応の方向性についてのご議論をいただきました。
 
 そこで、本日でございますけれども、もう一つの主要課題とでも言えるのでしょうか、ICOに係る規制のあり方について検討をしたいと思います。
 
 事務局のほうで、討議のたたき台として、お手元の資料2と資料3を用意していただいておりますので、まずこれについてご説明をいただきます。
 
 続きまして、説明内容を踏まえて、メンバーの皆様方にご議論、ご審議をいただければと存じます。
 
 それでは、早速ですけど、まず事務局から資料2と資料3についての説明をお願いいたします。
 
【小森市場課長】 
 それでは、資料2につきまして、横のスライドの資料3も用いながら、ご説明をさせていただきます。
 
 座長からもございましたように、本日は、ICOに係る規制のあり方について討議を行っていただくものでございます。ICOに関して明確な定義があるわけではございませんけれども、一般に、ICOとは、企業等が電子的にトークンを発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するものとされているところだと承知しております。
 
 まずICOの現状でございます。ICOによる資金調達額に関する公的なデータは存在しておりませんけれども、民間情報会社の公表するデータによりますと、2017年の全世界でのICOによる資金調達額は約55億ドル。今年の1月から7月末までで約143億ドルとなっているところでございます。
 
 ご参考までに、昨年1年間の全世界でのIPO、新規株式公開による資金調達額は、約1,880億ドルであったということでございます。
 
 国内におきまして、ICOの事例はあまり多く見られないところでございますけれども、世界的には、これまでに様々なICOの事例が見られるところでございます。
 
 横の資料の3ページに、ICOによる調達額が大きかったプロジェクトの一覧が出ております。昨年から今年にかけて大変規模の大きなICOが行われているといったところでございます。
 
 それから、横の資料の次のページ、4ページに、ICOに関する主な事例として、The DAOでありますとか、22X Token、Ethereum、Telegram、EOSといったようなものにつきまして、調達の額ですとか発行体、トークンの内容、プロジェクトの概要などについて、事務局のほうでまとめさせていただいたものがございます。これらも後ほどの討議の具体的な内容にも関わってくると思いますので、時間の関係で説明は割愛いたしますけれども、ご覧いただければと存じます。
 
 縦の資料に戻っていただきまして、ICOにより発行するトークンについては、値上がりを期待した投機目的で購入されているとの指摘があるほか、利用者保護上のリスクも指摘されているところでございまして、トークンの価格が下落したり、約束されたサービス等が実際には提供されない。ICOに関する権利内容が曖昧である。ずさんな事業計画や詐欺的な事案も多いといったところでございます。外国などにおきましても、研究機関などがこのようなことについて報告をまとめたりしております。
 
 続きまして、各国の規制動向でございます。横の紙の5ページもご覧いただきながらご説明をしたいと思います。
 
 各国の対応状況、おおむね3つに分類をしておりますけれども、まず1つ目は、中国ですとか韓国。こちらはICO禁止、あるいはまたその旨を表明している国でございます。
 
 2つ目の分類といたしましては、アメリカですとかEU、イギリス、スイスなどといった国でございますけれども、特定のICOトークンが既存の証券規制の適用対象となり得る旨を明確化し、また、注意喚起を実施している国や地域というのがございます。
 
 例えばアメリカでございますけれども、昨年7月に、証券取引委員会が個別のICO案件。これは先ほど見ていただいたThe DAOでございますけれども、このトークンが「有価証券」(securities)に該当し、証券規制が適用されるといった旨を公表しているところでございます。
 
 3つ目の分類として、この2つ目の分類の国がとっている措置に加えまして、ICOに特化した規制を検討している国がございます。ここではフランスとマルタについてご紹介をしております。それぞれICOに関する法律案を提出したりですとか、あるいはICOを含む法律について成立をさせているといった国でございます。
 
 続きまして、縦の紙に戻っていきまして、2ページ目、国内の規制動向でございます。当研究会でもこれまでの審議の中でご報告をさせていただいておりますけれども、昨年10月に金融庁がICOについての注意喚起文書を公表し、利用者に対し、ICOのリスクについて注意を促すとともに、事業者に対し、ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法の規制対象になる旨の注意喚起を行っているところでございます。
 
 少しおさらいのようになりますけれども、再度申し述べさせていただきますと、資金決済法との関係では、ICOにおいて発行されるトークンが不特定の者に対する代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できること。または、不特定の者を相手に仮想通貨と相互に交換できること。これらの場合については、当該トークンは、資金決済法上の仮想通貨に該当し、売買またはその仮想通貨との交換等を業として行うことは、仮想通貨交換業に該当すると考えられるところでございます。
 
 続きまして、金融商品取引法との関係では、ICOが、投資としての性格を持つ場合、かつ、法定通貨で購入されること、または、仮想通貨で購入されるが、実質的には、法定通貨で購入されるものと同視されることを満たす場合につきましては、金商法の規制対象になると考えられるところでございます。
 
 2ポツのICOの類型について申し上げます。
 
 ICOの設計に係る自由度は高く、様々なものがあると言われているが、どのように整理すべきか。金融の機能を有するもので、かつ、何らかの制度的な対応が必要なものはどのようなものか。
 
 ICOにおいて発行されるトークンを仮想通貨又は法定通貨を用いて購入する者の視点に立った場合、その見返りとして何を期待しているか。例えば、①発行者からの直接的な見返りは求めないケース、②発行者からの物品・サービス等の供与を見返りとして求めるケース、③事業収益の分配などキャッシュに相当する経済的価値の受け取りを期待するケースなどが考えられるか。
 
 3ページ目に、注でございますけれども、スイスの金融監査機関であるFINMAでございますけれども、FINMAが今年の2月に公表したICOに関するガイドラインでは、こうした様々なICOトークンを以下の3つのカテゴリーに分類をしているところでございます。
 
 1つ目が、Payment tokens、決済用トークンということで、決済手段として用いるトークン。2つ目が、Utility tokens、特定のデバイスやサービスの利用に必要なトークン。3つ目がAsset tokens、企業や何らかの資金源に根差した資産に相当するトークンや、保有していると配当や利子を得られるトークンでございます。
 
 注2でございます。ICOに関して、「権利」と称されているものについてでございます。こうした権利は、通常、発行者が公表するホワイトペーパーと呼ばれる概要書に記載され、トークン保有者は契約に基づく債権的な権利を有することとなるとされているところでございます。ただし、具体的な根拠法、例えば株式でいえば会社法でございますけれども、こうしたものはなく、また、権利の内容が曖昧な場合も多いとの指摘もあるところでございます。
 
 利用者が一定の見返りを期待し、かつ、その見返りの権利性が高いと考えられる場合、そのうち一定のものについては、金融規制の対象として制度的な対応の検討が必要と考えられるが、どうか。
 
 3ポツ、金融の機能と規制の要否についてでございます。
 
 1つ目の丸は、これまでの討議において、金融規制の要否を検討していくに当たっての視点でございますけれども、繰り返しになりますので、本日の説明は割愛させていただきます。
 ケースを2つに分けておりまして、1つは、投資に関する金融規制を要しないと考えられるケースからでございます。トークンの購入に伴い、何らの権利も付与されていない、又は購入者・保有者に提供される物品・サービス等とトークン購入時の対価に明確な関係性が認められるものであれば、投資商品の購入・投資サービスの契約の締結という性格は有しておらず、この観点からは金融の機能を有しないと考えられるが、どうか、といったところでございます。先ほどの各国の規制動向にもございましたように、一部の国を除きましては、これらの類型のICOトークンを規制の対象にはしていないところでございます。
 
 なお、これらのトークンが、例えば、様々な物品・サービス等の対価の支払手段や仮想通貨との交換手段として用いられるなど、支払・決済手段としての性格を有する場合もあり得る。その場合に現行の決済法制に加えて必要な対応があるかどうかについては、決済法制全体のあるべき体系を検討していく中で、必要に応じて議論されるべきものと考えられる。
 
 注でございますけれども、日本仮想通貨交換業協会は、ICOに関する自主規制規則として、資金決済法上の仮想通貨に該当するICOトークンについて、類型の如何を問わず、対象事業の適格性、実現可能性の審査義務、販売開始時、販売終了時点、販売終了後の継続的な情報提供の義務等を規定することを検討しているところでございます。
 
 2つ目のケースとして、今度は、投資に関する金融規制を要すると考えられるケースでございます。将来的に事業収益の分配を受けるなど、投資商品・投資サービスとしての性格を有するものであれば、それによる資金調達は金融の機能を有すると捉えることが適当と考えられるが、どうか。
 
 なお、その際、主として事業に対する共感やイノベーションを企図する実験への賛同等からトークン購入を通じた出資を行うケースや、そうではなく主として運用目的での出資から広く資金調達を行うケースなど、様々なものがあり得るところ、これらの実態を踏まえて、どのような対応が望ましいと考えられるか。
 
 注でございますけれども、金や古切手の購入が金融とされないように、単に転売の期待を有しているだけでは、金融の機能を有しているとは言いがたいか。
 
 以上、それから、ICOにつきまして、足許で以下の指摘等があることを踏まえた上で、その社会的意義や害悪の有無について、どのように考えるべきか。金融規制の導入が期待されると考えられるか。
 
 将来的に事業収益の分配を受けるような性質を有するICOトークンの購入に金銭を用いる場合には、金商法上の集団投資スキーム持分として現行法上も規制対象となること。
 
 ずさんな事業計画や詐欺的な事案が多く、既存の規制では利用者保護が不十分との指摘がなされていること。
 
 株主や他の債権者等、他の利害関係者との関係も含め、トークンの権利内容に曖昧な点も多いとの指摘がなされていること。
 
 一方で、既存の資金調達手段にアクセスできないスタートアップ企業の資金調達手段としての有効性等の利点も指摘されていること。
 
 注でございますけれども、先ほどご覧いただきましたように、諸外国においては、特定のトークンを証券規制の対象とする国・地域が大勢であるところでございます。
 
 仮に、現状の規制のまま状況を注視するのではなく、規制の導入が期待されると考えられる場合、諸外国におきましては、ICOを禁止する、既存の証券規制の対象とする、ICOに特化した規制を検討するなどの対応がなされているが、我が国においてどのような対応が適当と考えられるか。
 
 仮に、ICOを禁止するのではなく、一定の規制を設けた上で、利用者保護や適正な取引の確保等を図っていく場合、その前提として、少なくともトークンの権利内容の明確化を含め、必要な規律を検討していくべきと考えられるが、どうか。
 
 4ポツ、投資に関する金融規制を要するICOについての主な検討対象事項でございます。
 
 まず、これらを考える前提として、既に存在している資金調達の手段や、それに関する規制についてご紹介を申し上げます。
 
 一般の投資家から資金調達を行うケースとして、株式等によるIPOの例がある。ICOについても、資本性資金の調達と同等ないし類似の経済的機能やリスクが認められるのであれば、同じ規制を課すことが基本と考えられるところ。株式のIPOをはじめとする既存の資金調達手段において求められる規律を参考にしつつ、ICOの実態に即した制度を考えることが適当と考えられるが、どうか、ということでございまして、横紙の8ページに、既存の資金調達手段において求められる規律をまとめたものがございます。
 
 この中に、例えば事務取扱者・販売者、流通の場の提供者、事業・財務状況の精査、スクリーニング、発行価格の設定、発行開示等、流通の場を通じた規律、不公正取引規制、継続開示等といった形で、IPOなどの既存の資金調達手段においてはこうした規律が求められるといったことをまとめております。
 
 また、その下に、開示などの規制違反に対しては、課徴金制度や刑事罰等のエンフォースメント手段が存在しておりますし、また、そもそもの下支えする制度的な枠組みとして、会社法を含めた民事法に基づくガバナンス等、監査のための会計基準、資金調達に係る税制といったような制度も存在している状況にあるところでございます。
 
 縦の紙、6ページに戻っていただきまして、下のところでございます。これらを踏まえた上で、検討が必要として考えられる主な事項としては、以下のようなものが考えられるが、どうか、といったところでございます。
 
 横紙の9ページから11ページにかけましても、本文の記述と重なる形で表を整理しております。
 
 9ページについて、少しだけつくりを申し上げますと、左の上のほうから、例えば株式のIPOに伴う募集、プロ向け市場上場に伴う特定投資家私募、株式投資型クラウドファンディング、集団投資スキームの募集といった既存の資金調達手段それぞれについて、例えば投資対象ですとか販売先がどうなっているか。あるいは事務取扱者・販売者がどうなっているかといったことをまとめたものでございます。
 
 下のほうには、対応する形で、ICOの現状や、今後、主な検討を行う対象となると考えられるような論点について記載をさせていただいております。
 
 本文に戻りまして、ご説明を申し上げます。事務取扱者・販売者ということで、本文7ページの上のほうからご説明を申し上げます。
 
 IPOの場合は、第一種金商業者である主幹事証券会社。プロ向け市場上場の場合は、取引所からの業務の受託者であるJ-Adviser、株式投資型クラウドファンディングの場合は、第一種少額電子募集取扱者であるクラウドファンディング仲介業者が販売・勧誘等にそれぞれ関与をしているところでございます。
 
 集団投資スキーム持分につきましては、発行者自身が募集を行う場合もありますけれども、そうした場合につきましては、当該発行者は第二種金商業者の登録を受ける必要があるところでございます。
 
 ICOの場合、ICOプラットフォームによる取扱いの例もございますけれども、発行者自身が募集を行うことが多いといった現状にあるところでございまして、これを受けまして、以下の点を検討することが考えられるが、これらを含めまして、どのような点を検討する必要があるか。
 
 トークンの販売・勧誘行為について、何らかの方策が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような業規制が考えられるか。
 
 発行者自身が募集を行う場合も、何らかの業規制が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 業規制を行う場合、自主規制団体に一定の役割を求めることも考えられるが、どうか。その場合、どのような役割が考えられるか。
 
 (2)流通の場の提供者。IPOやプロ向け市場上場の場合は、証券取引所が中心となって、流通の場が提供されております。株式投資型クラウドファンディングでは、証券会社は店頭取引の形で流通の場を提供し得るところでございますけれども、非上場株式であるため勧誘が禁止されており、ほとんど流通することはございません。また、集団投資スキーム持分は、通常は流通しないものでございます。
 
 ICOの場合は、ICOのプラットフォーム、あるいはトークンの交換所が流通の場を提供しているところでございまして、これを受けて、以下の点を検討することが考えられるが、これを含め、どのような点を検討する必要があるか。
 
 流通の場を提供する役割を果たす者としてふさわしいと考えられるものはどの主体か。
 
 (3)事業・財務状況の精査、スクリーニングでございます。
 
 IPOやプロ向け市場上場の場合は、幹事会社またはJ-Adviserによる審査のほか、取引所による審査及び公認会計士・監査法人による財務諸表等監査が行われます。
 
 また、株式投資型クラウドファンディングの場合は、インターネットを通じて行われる資金調達は詐欺的な行為に悪用されやすいことも踏まえまして、発行者に対して最低限のチェックを行う必要性が高いことから、クラウドファンディング仲介業者によって、発行者や事業の実在性、事業計画の妥当性等の点につきましても、審査が行われているところでございます。
 
 ICOの現状でございますけれども、発行者自身による募集である場合には、具体的な規律は存在しておらず、第三者審査は通常行われておりません。他方、ICOトークンの設計の高い自由度が、既存の資金調達手段にアクセスできないスタートアップ企業の資金調達に資するなど、イノベーションに寄与しているという指摘もあるところでございます。
 
 これらを受け、以下の点を検討することが考えられるが、どのような点を検討する必要があるか。
 
 詐欺的な行為や権利内容が曖昧なトークンの発行・流通の防止、キャッシュフローの裏付けとなる事業の実現可能性の確認等のため、ICOトークンの発行者の事業・財務状況の精査、スクリーニングを実施する第三者が必要か。どのような方策が考えられるか。
 
 トークンの内容が、株式などと異なり非定型的であることに伴い、どのような点が問題となり得るか。スクリーニングの内容について、既存の資金調達手段による場合と比べて異なる点はあるか。権利内容やその移転方法、既存の株主等、トークン保有者以外の者との利害調整等、あらかじめ明確化を求めるべき点はないか。
 
 (4)発行価格の設定でございます。IPOの場合は、通常、主幹事証券会社において仮条件を定めた上で、ブックビルディングにより需給を反映した公募価格が決定される。プロ向け市場上場の場合は、発行者が取引所に対して評価額算定書を提出することにより取引所のチェックが及び、一定の客観性が保たれる。株式投資型クラウドファンディングの場合は、インターネットを通じて行われる資金調達が詐欺的な行為に悪用されやすいことを踏まえると、発行者に対して最低限のチェックを行う必要性が高いことから、クラウドファンディング発行業者において目標募集額が発行者の事業に照らして適当であることなどが審査されているところであります。
 
 ICOの場合、キャッシュフローの裏づけとなる事業が存在し、トークンの権利内容が明確であれば、客観的な価値の算定は不可能ではないと考えられるが、具体的な規律はなく、通常、投資単価は発行者により独自に決定され、客観的な価値の算定は行われていないところであり、調達の総額は需給によって決定されます。
 
 こうした状況を受け、以下の点を検討することが考えられるが、これを含め、どのような点を検討する必要があるか。
 
 ICOトークンの発行に際し、公正な条件決定のための何らかの対応が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 (5)発行開示等でございます。IPOの場合、発行者により提出された有価証券届出書がEDINETによって公衆縦覧に供され、プロ向け市場上場の場合、特定証券情報が公表される。また、株式投資型クラウドファンディングの場合、仲介業者のウェブページにおいて投資家の投資判断に重要な影響を与える事項が公表されます。
 
 これに対し、集団投資スキーム持分の募集の場合につきましては、一定の場合を除き、公衆縦覧型の開示はございません。
 
 ICOの場合、これらに関して具体的な規律はなく、通常はプロジェクトの内容や資金使途等を記載したホワイトペーパーが発行時に公表されるが、その内容や作成プロセスは標準化されていない。
 
 これを受け、以下の点を検討することが考えられるが、これを含め、どのような点を検討する必要があるか。
 
 利用者への情報提供のため、ICOトークンに係る発行開示等について、何らかの対応が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 (6)流通の場を通じた規律・不公正取引規制でございます。前記のとおり、既存の資金調達手段のうち流通が想定される株式の流通の場は、IPOの場合は免許制でございます金融商品取引所や、認可制であるPTS、プロ向け市場上場の場合は、免許制であるプロ向け市場に限られ、これらの者を通じて規制の適切な適用が図られております。
 
 また、不公正取引規制として、流通性が高くないものも含め、不正行為の禁止や風説の流布の禁止等が適用されるが、これに加えて、IPOやプロ向け市場の上場に関しては、相場操縦の禁止、インサイダー取引規制も適用されます。
 
 ICOトークンの持つ、流通性の高さ等を踏まえた上で、どのような点に留意すべきか。以下のような着眼点の例が考えられるが、これらを含め、どのような点を検討する必要があるか。
 
 ICOトークンの流通性の高さを考慮した場合、その取引の公正や流通の円滑化のため、何らかの取引ルールが必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 少なくとも一般の投資家へのICOトークンの販売は抑止すべきとの指摘もあるが、これについてどのように考えるか。
 
 注でございますが、米国では、証券取引委員会が厳格に証券規制を適用していることから、開示規制のかからない「認定投資家」に対して発行され、その範囲でのみ流通するICOトークンが設計されるようになってきているとの指摘がございます。
 
 この「認定投資家」該当者でございますけれども、直近2年の年収が20万ドルを超える個人を含むなど、我が国の金商法上の適格機関投資家と比べますと幅広いものとなっているところでございます。
 
 (7)継続開示等でございます。IPOの場合、発行者により提出された有価証券報告書等がEDINET等において公衆縦覧に供され、取引所規則に基づくTDnetにおける適時開示や、決算短信の公表が行われております。プロ向け市場上場の場合は、発行者情報が公表されるほか、IPOと同様に適時開示が行われます。
 
 株式投資型クラウドファンディングの場合は、発行者が投資家に対して事業状況の定期的な情報提供を確保するための措置を、仲介業者が講じることとされております。
 
 ICOの場合については、これらに関する具体的な規律はなく、プロジェクトの進捗状況等について継続的な開示が積極的に行われている例は少ないところであります。
 
 これを受け、以下の点を検討することが考えられるが、これを含め、どのような点を検討する必要があるか。
 
 利用者への情報提供のため、ICOトークンに係る継続開示等について、何らかの対応が必要とも考えられるが、どうか。その場合、どのような方策が考えられるか。
 
 最後に、(8)その他でございます。上記の(1)から(7)を含め、ICOについて、既存の資金調達手段と異なる規律を求めるべき事項はあるか。経済的機能やリスクの点で、既存の資金調達手段とICOとの間で異なる規律を求める合理的な理由はあるか。
 
 上記(1)から(7)までのほか、比較検討すべき点はあるか。
 
 説明は以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、今ご説明いただきました内容を踏まえて、資料2と資料3につきまして、メンバーの皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思います。どなたからでも、どの点についても結構でございます。いかがでしょうか。
 
 楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 非常に丁寧なご説明をありがとうございました。多分なかなか手が挙がらなかったのは、私も含めてまだわからないことが多いなというところが正直なところでございまして、今の説明だと、外形的に見ると、今ある様々な資金調達手段とICOの本質的な違いが何かというのはちょっとわからないなという印象を持ちました。
 
 例えばゴルフ会員権であったりとか、あるいは預託商法であったりとか、別にブロックチェーンが出てくる前からいろんな資金調達というのはあったわけですよね。おそらく、今、日本で行われている多くのICOというのは、いわゆる株式型ではなくて、ユーティリティ型であったりとか、あるいは何ら保証していないものが多い。その中で、ディスクロージャーとかも十分ではないし、詐欺的なものというのも少なくないように言われていると。
 
 そこだけから見ると、これを何のために法律上、位置づけなきゃいけないのかというところというのは、非常にわからないんですけれども、一方で、アメリカ等、ほか、世界を見ても、これだけICOによって、現に資金調達が行われているという実態があって、そこには社会的なニーズが仮にあるのであれば、それを法でもって禁じることによって、経済にとって何らかの影響はあるのかと。
 
 ただ、こうした議論というのは、じゃあ、なぜ既存の資金調達手段ではなくて、ICOなり、STOといった資金調達手段が選ばれているのか。ここのところをしっかりと理解をしないと、そのために何をしなきゃいけないのかという議論は極めて難しいなと。なかなかそこまでまだ踏み込めていないなというような印象を持ちましたというのが1点と、もう1点なんですけれども、いわゆる金融規制の枠組みで考えた場合、投資型のものに関しては金融規制の対象であるけれども、ユーティリティであったり、無保証型のものというのは、いわゆる金融規制ではない。
 
 これは一つの法律から外形的に導き出される議論としてはあり得るべしと思うんですけれども、一方で、国全体で考えたならば、おそらく今後、消費者問題が起きてくるのは、まさに無保証型であったりとか、ユーティリティトークンが現に日本では発行されていて、おそらく消費者庁に来ている問い合わせ等も含めて、そっちのほうが多いんじゃないかと思っていまして、仮にそこを金融規制の射程に含めないということをここで方向として決めていくならば、ただし、それは別に何ら規制しないでいいということではなくて、たまたま所掌が異なるのであって、国としてはきちっとどこかしらで議論すべきであるということは、ここの中できちっと明確にしたほうがいいんじゃないかと。それがほったらかしになるということは非常に問題があるんじゃないかというふうに感じました。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 福田先生、どうぞ。
 
【福田メンバー】 
 ありがとうございました。今ご指摘にあったように、ICOは、コストとベネフィット両面あるというふうに基本的には考えるべきです。コストのみというわけじゃなくて、それを生かしたいろんな可能性というのを持っているものだとは思います。
 
 ただ、経済学でよく知られているものとして、グレシャムの法則というのがあって、「悪貨は良貨を駆逐する」というふうな言われ方をしています。これは今の枠組みで言うならば、良い業者と悪い業者が共存しているようなときに、悪い業者が支配的になってしまう可能性があるということでありまして、本来は良い業者も少なからずあるんだけれども、悪いICOが存在していると、それが非常に支配的になってしまって、良い業者が立ち行かなくなってしまうというような可能性がある。それはやはり規制すべきだという観点は大事で、悪い業者が良い業者を駆逐しないような制度設計というのを基本的にはつくるべきだという観点というのは、大事なんだろうとは思います。
 
 もちろんベネフィットは少なからずあって、特にスタートアップ、事務局の資料にもありましたけれども、スタートアップ企業の資金調達というのは、日本では大きな課題になっていて、いろいろと金融庁もこれまでいろんな形で工夫しているけれども、なかなかうまく行っていない。実際、日本のベンチャー投資というのは国際的に見ても非常に少ないという問題はあって、そういういわゆる死の谷のような問題を、一つの鍵にはなり得る可能性を持っているものだとは思います。
 
 機能面での類似という点では、やはり私はICOはクラウドファンディングに相対的には似ているとは思っていて、寄附型、購入型、投資型というものがあるという意味でも、非常に似ている面というのはあるとは思います。
 
 ただ、一番大きく違うのは、おそらく事務局の資料のどこかにもありましたけれども、流通市場というのがクラウドファンディングにはないんだけれども、ICOに関しては流通市場を通じて売買可能な面というのもあって、そういう意味では、クラウドファンディングともかなり違う面はあるとは思います。けれども、発想としてはかなり似ていて、そういう意味では、投資型でもあるけれども、寄附型の側面を持って投資をする。クラウドファンディングなんかでも、例えば酒屋さんが新しい銘柄のお酒を出すときに、それに対して投資はするんだけれども、その酒屋さんを応援したいという気持ちもあって、投資するというような事例なんかも非常に幅広く観察されています。本来であればなかなか投資してもらえないんだけれども、そういう寄附型的な、あるいは応援したいという側面で資金が普通以上に集まりやすくなって、事業をやりやすくなるという面もあります。そういう面というのはできるだけ生かしながらも、しかしながら、先ほども申し上げましたように、悪質な業者というものは極力そういうことから排除できるような仕組みづくりというのは大事なんだろうなとは思います。
 
 そういった観点から立ったときに、やはりリスクの大小といいますか、あるいはリスクのわかりやすさという点というのは大事で、まず少額であれば、あんまり大きな問題じゃない。クラウドファンディングでもそうなのかもしれませんけれども、大きな金額になれば、それはかなり別の観点というのが必要です。けれども、そもそもこういうものは、基本的には少額の投資をたくさん幅広く集めるという意味で適していると思いますので、金額が少なければ比較的規制は少なくてもいいかもしれないという観点は、この場合でもあり得るんじゃないかと思います。
 
 ただ、もう一つの重要な観点は、リスクのわかりやすさというのも大事で、例えば通常の金融商品であれば、どういう形で価格が変動するかというのは、大体我々はわかっている。しかし、こういう新しい分野では、予想もしなかったようなリスクがしばしば最近は発生している点はあって、やっぱり投資家が金額の大小にかかわらず、「こんなことも起こるの?」みたいなことが起こるのは避けるべきです。そういう意味ではどういうリスクがあるかということがはっきりしているということは次の問題としても大事で、そういう点も十分留意する必要があるということだとは思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 では、井上メンバー、どうぞ。
 
【井上メンバー】 
 先ほどはどうもご説明ありがとうございました。現在の規制との比較も含めて、網羅的にご説明いただいたと思うのですけれども、当初のご説明にもありましたように、ICOについては、発行されるICOトークンには様々なものがあるということですので、やはりひとまとめに議論はできないんだろうと思います。
 
 1つには、発行者に対して収益の分配、または利息の支払いを求めることができるような、アセットトークンと先ほどご説明いただいたものとほぼ重なるものもあれば、2つには、発行者に対して商品やサービスの提供を求めることができるというユーティリティトークンと呼ばれるものもあれば、3つには、そもそも発行体が何も義務を負わないというような、トークンの転売によってのみ投資を回収できるといったタイプのものがあって、大まかにこの3つに分けて議論するのが適切じゃないかと思います。
 
 そのうち1つ目の類型のトークンについては、発行者にとって資金調達手段になるというのみならず、投資家にとっては発行者から一定の収益なり、利息なりを受け取る関係に立ちますので、基本的にこれはもう有価証券と言っていい実質があるわけでして、自己募集に係る行為規制を発行者に課すことは適切だと思いますし、それに加えて発行開示あるいは継続開示のルールに従って、投資家のリスクテイクを支えていかないといけないのではないかなと思いますし、そういった資金調達行為にかかわる業者についていえば、引受規制や募集又は私募の取扱いに関する規制も必要になってくると思います。
 
 ただ、先ほどのご説明にもあったと思いますけれど、現状では、金銭の払い込みと同視できないという、ある意味技術的な理由で、金商法の対象とならないということだったと思いますけれども、実質的に見れば、イーサリアムとかビットコインとか、流通性・換金性の高いもので払い込まれているのであれば、現行法の解釈としても、金銭の払込みとかなり近いと思いますし、その点が不明確であるとすれば、立法措置によって金商法のルールを適用すべきではないかと思います。
 
 その意味で、このタイプのICOについては、比較的明確に有価証券に関する規律が及ぶということでよいのではないかなと思いますけれども、ただ、逆に、この類型のトークンを単純に金商法上の集団投資スキーム持分に取り込めば済むかというと、それでは二項有価証券にとどまりますので、その流通性に鑑みますと、現在の二項有価証券に関する開示規制や業規制に修正を加えるか、あるいは流通性の高い集団投資スキーム持分というようなカテゴリーを、一項有価証券に格上げするか、そういった手当が必要になるのではないかと思います。
 
 現在、金融庁がお示しになった解釈によって、ICOはかなりの部分、現行法でいえば、資金決済法上の仮想通貨交換業規制の適用になるということで、無法地帯ではないということだとは思いますが、ただ、仮想通貨交換業規制は販売業者規制であって、発行開示、継続開示といった市場規制が伴わないものですので、現状ではやはり全くもって不十分ではないかと考えます。
 
 それに対して、2つ目のユーティリティトークンと言われるような類型については、発行者に対して商品やサービスを要求できる権利ですので、その保有者の置かれた状況は、商品やサービスを前払いで買ったという状況と、それほど異ならないと思われますから、それだけであれば、前払式の支払手段と似たような規制を及ぼせばよい話であって、有価証券に対する投資者の保護とはやや違った問題なのかなと思います。
 
 ただ、流通性が伴い、仮想通貨としての定義にも当てはまるのであれば、その販売業務は、あわせて仮想通貨交換業、その他の業規制に服するべきだと思いますが、有価証券の取扱いとは違ってくるのではないかと思います。
 
 最後の3つ目の類型のトークンは、先ほどの楠メンバーのお話からすると、かなりたくさんICOが行われているということのようで、ある意味、何の権利も与えられていないものにどうしてそんなにお金が集まるのか、私にはよくわからないんですけれども、これは発行者にとっては確かに資金調達の手段になるのかもしれませんが、その保有者には何の権利も付与されないわけです。いわば転売狙いということになりますので、言ってみれば、暗号技術を使って複製できないデジタルキャラクターカードをつくって、売っているのに近いと思います。
 
 私の世代であれば仮面ライダーカードのようなものと言ってもよいかもしれません。こういったもののうち、非常にレアなものが高値で取引されることはもちろんあり得るところです。その際に詐欺的な販売が行われれば、もちろん取り締まる必要がありますし、実際、現に被害が出ているのであれば、先ほどの楠メンバーのご意見にもありましたように、放置できない問題であって何らかの規制が必要だと思いますが、ただ、それが有価証券規制かと言われると、それは違うのではないかと思います。仮にそれが金融的な色彩を帯びるとすれば、むしろ仮想通貨の定義に入ってくるものについて、現在の仮想通貨交換業の規制を充実させるとか、その他の販売規制・取引規制で対処すべき問題であって、発行体がその後、何らの義務も負わない以上、継続開示などの問題にはならないのではないかと考えております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 ほかに。森下さん、どうぞ。
 
【森下メンバー】 
 ありがとうございます。大変難しい問題だと思うのですけれども、先ほどからお話がありましたように、ICOにどのような可能性があって、ICOでないとできないようなこと。あるいは、ICOが既存の調達手段にない価値をどれだけ社会、あるいはビジネスに提供してくれるのかというような部分がまずもって非常に重要なのかなと思います。実際、国際的にもそれなりに用いられているというような現状を見ますと、やはりそれなりの何らかの価値はあるのではないか。例えばスピーディーに、グローバルに資金調達ができるですとか、あるいは中小企業が比較的コストをかけずにスピーディーに資金調達できるですとか、あるいは資金調達とサービスの提供などを比較的リンクさせた形で提供できるですとか、何かいろいろそういうようなメリットがあるのかなというふうな気がいたします。そうしますと、今の時点でやっぱり完全に封じてしまうということには若干ちゅうちょを覚えると。
 
 先ほどフランスの例として、ホワイトリストをつくって、何かこれを政府が保証するというのは大変、非常に勇気のある施策なのかなとは思うのですけれども、ただ、そのいいものを伸ばしていこうというような考え方というのは、今、私が申し上げたようなICOの持っている可能性ということを考えると、一つ、基本的な考え方としてあり得るのではないかなと思います。
 
 他方で、ルールに関しては、私は井上先生と比較的同じような考え方を持っておりまして、ICOであるからといって、何か特別なルールをつくるというのは、機能とリスクに応じたルールを適用していこうという基本的な考え方とも相入れないように思いますし、あとはICOという、これはいわば道具、あるいは技術だと思うのですけれども、その技術によってルールが大きく変わってくるということはあまり適切ではないのかなというふうに思います。
 
 技術が変わってきた部分によって、若干修正したり、あるいは規定を読みかえるという部分は必要だと思います。先ほど、例えば金銭の払込みでなければ金商法の適用の対象にならないというのは、どちらかというと、その技術的な読みかえと言うんですかね。その道具として用いられるもの、ある価値の振込みに使われる道具として、従来の法定通貨以外のものが出てきたというぐらいの読みかえとして、やはり是正されるべきものなのかなと思いますけれども、基本的には機能に応じて、既存のルールを適用していくということでないと、ちょっと道具が変わったり、ストラクチャーが変わるたびに、また新しいルールを考えていかないといけないというのは非常に大変なのかなというふうに思います。
 
 そういう意味からしますと、先ほど既存の規制を4つの分類にしていただいて、それぞれ規制が異なるというようなお話だったと思いますけれども、ICOをどれか一つの枠に当てはめる必要はなくて、それぞれの規模ですとか、それぞれの対応に応じて、既存の規制を使い分けていくということが望ましく、かつ、現実的なのかなというような印象を抱いております。
 
 ただ、最後に1点、難しいのは、これも井上先生おっしゃられたような気がするのですが、ユーティリティトークンですとか、そのような既存の規制の対象にはなっていないけれども、実はICOというテクノロジーを、仕組みを使うことによって、非常に流通性が高まって、一見、投資の対象ではないようなものであったとしても、あたかも投資の対象のようなものとして非常に過熱する可能性を持っているというようなものがあるときに、そのもとが単なるサービスの提供だとか、あるいは、もとがあんまり期待できないものだから、それでいいんじゃないかというと、どうも本当にそう割り切っていいのかというようなところが規制のあり方を考える際に難しい点なのかなというふうに思います。
 
 あともう1点は、流通性が高いという点を、その可能性を、規制のあり方を考える際にどこまで重視するのかということで、その流通性の高さということを大変意識しますと、規制のグレードというのがどんどん上がっていくというようなことになろうかと思いますけれども、その流通性の高さが持っているリスクというものを、例えば技術的にある程度軽減することは可能なのか。あるいは約束をしてもらった上で、事後的なサンクションなので、対処することはできないのかとか。そもそも流通性の高さというところをあまりこう、ちょっとそこは難しいところで、流通性の高さということをどこまで厳重に評価するかというところが今後の規制のあり方を考える上で重要なところ。ここはむしろ、例えば技術ですとか、あるいは実務の方などに何らかのお知恵があるのであれば、ぜひお伺いしたいというようなところでございます。ありがとうございました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 坂メンバー、神作メンバー、翁メンバー、三宅メンバーの順でお願いできればと思います。坂メンバー、どうぞ。
 
【坂メンバー】 
 ありがとうございます。ICO、非常に難しい問題かというふうに思っておりますけれども、事務局資料の3ページから4ページにありますとおり、ICOの類型化に際しては、対価関係が何であるかという視点が重要と考えております。3ページの物品・サービス等と対価関係が認められるものについては、利用者との関係では物品・サービス等の確実な履行が実現されるべき利益ということになるんだろうと思います。
 
 4ページの1つ目の丸は支払・決済手段の提供ということなので、利用者との関係では、支払・決済手段としてきちんと利用できるということが実現されるべき利益ということになるんだろうと。現行法上は、法定通貨建ての場合は、前払式支払手段等の規制、法定通貨建てでない場合は仮想通貨としての規制が問題になると思います。
 
 ただ、この後者の仮想通貨の場合については、これは仮想通貨の発行が行われるということになるんだろうと思うんですが、この点については、2つの前提的な点について考え方の整理が必要と思っております。
 
 一つは、現行の銀行を中心とした制度の枠外で、新たにその支払・決済手段が生み出されるということをどう考えるかと。いま一つは、新たに決済手段を生み出すに際して、発行者は、ある種の通貨発行益を得ることができると。かかる利益がかなり大きなものとなる場合には、社会的相当性の観点からも議論があり得るところかと思われます。
 
 この点に関しては、注の記載に関係しますけれども、対象事業の適格性や実現可能性の審査がどのような意味を持って、具体的にどのような審査が行われるべきかは、慎重な検討が必要かと思います。
 
 それから、次に、4ページ目の2つ目の丸。将来的にその事業収益の分配を受けるなど、投資商品・投資サービスとしての性格を有するものを金融規制の対象とすると。これは適切と考えられます。
 
 この点、事業収益の分配を受けるICOについては、金商法の集団投資スキームの規制との親和性があるので、集団投資スキームの払込手段として仮想通貨を追加するということが考えられるところかと思います。最も投資に関する金融規制の対象とすべき範囲については、少なくとも2つ検討すべき点があるのではないかと思います。
 
 一つは、収益の分配はされないけれども、ホワイトペーパーを出して、事業資金として仮想通貨を集めるような場合。先ほど出たお話ですと、転売益を狙うというような場合は、この類型に該当するかと思いますけれども、こういった場合については、収益の分配がないので、現行の金商法の集団投資スキームの枠組みにはおさまらないということになるかと思います。けれども、事業目的の購買力の融通が行われていると。こういう購買力の移転が適切な先に流れる必要がある。あるいは不適切な先に流れないようにする必要があるという観点からしますと、これは金融法制に取り込むことも、必要性はあり得るところと思います。
 
 もっともトークンの値上がり期待に合理的根拠ないし実体があるかは非常に疑問でして、収益の分配のないICOというのは、投資目的には、基本的には適してない、既存のものとの関係でいいますと、株式投資型クラウドファンディングにおける非上場株式への出資に類似する面があるんじゃないかと思います。
 
 ちなみに、非上場株式は、評価や換金が難しく、投資目的の購入には向かないことから、出資額の上限が50万というふうに制限されていますし、投資目的というよりはむしろ共感や支援の趣旨で購入すべきというふうにされているところかと思います。規制対応としては相応の留意が必要と思います。
 
 また、収益分配のないICOは、株式や匿名組合等、他の出資と異なり、ガバナンスの仕組みは存在しないという点が重要かと思います。要するに、事業実現を担保する仕組みが存しないというところも言えるかと思います。この点も検討課題として置いておくべきところかと思います。
 
 それから、投資に関する金融規制の範囲について、検討すべきいま一つの点は、将来、支払手段として利用を予定しているトークン、あるいは、将来、ユーティリティとして利用を予定しているトークンを発行する場合も、そういった利用可能な状態として用いるまでに一定の事業活動が必要であって、当該事業活動の成就によって初めて利用可能となるといった、こういった場合です。
 
 この場合、ICOによる払込みは、実質的に事業資金の提供であって、また、トークンが利用可能となることは収益の分配としての実質を有すると見ることも可能かと思います。
 
 現行の集団投資スキームにおいても、収益の分配は、金銭のほか、現物で行われる場合も含まれており、この点に鑑みても、このような場合を集団投資スキームの一形態として金融規制の対象とすることは考えられるところかと思います。
 
 間違えていればご指摘いただきたいと思いますけれども、3ページに挙げられておりますスイスにおいても、似たような考え方がとられているのではないかと思います。
 
 なお、トークンの値上がりが見込めるなどとしてICOを行うということは、これは基本的には厳に禁止されるべきであろうと思います。投資取引という観点からいいますと、断定的判断の提供に該当する行為ということになりますし、また、収益の分配を伴なわない取引では、実質的に虚偽説明に該当するような場合も出てこようかと思いますので、この点は留意が必要か思います。
 
 それから、5ページ以下の具体的な規制の枠組みについてですけれども、この点については、私は基本的には想定する投資家の範囲と、それから、規制枠組みの厳格さというのは、これは相関関係にあるので、その観点からの検討が必要というふうに思っております。
 
 個人的には、かねて申し上げておりますとおり、投資家の範囲というのは限定すべきで、一般の個人等への販売は認めないこととすべきではないかというふうに考えております。一応その点は留保した上で、その規制枠組みに関する意義ですけれども、基本的には投資判断のための情報提供は、ある程度規格化されたほうが投資判断がしやすい面がありますし、また、相応の規制枠組みがあることは、投資判断に対して検討すべき事項を減らすということもあろうかと思います。
 
 こうしたことは、プロ-プロの取引であっても、ある程度意義のあることでしょうし、また、不正な取引を抑止することは、プロ-プロの取引であっても必要なことで、現行法制もそのようになっていると思います。
 
 したがって、こういった枠組みをつくるということが一つかと思いますし、また、適切な資金、あるいは購買力の移転を実現するという観点からは、出資に際して、対象事業の適格性や実現性に関する審査がきちんと何らかの形で行われる。それから、事業の遂行過程において、適切な継続的なモニタリングが行われるということが重要かというふうに思います。
 
 この点に関しては、一つ参考となるのは、投資型クラウドファンディング、これは株式型と、それから、むしろどちらかというとファンド型のほうが参考になる点があるのではないかと思いますけれども、こちらにおいて審査の枠組みができております。そうしたことを参考とするということも一つの視点かというふうに思います。
 
 もっとも、指摘されておりますとおり、こちらの投資型クラウドファンディングは、流通性を前提としておりませんので、ICOトークンの場合には、継続的な情報提供については公衆縦覧型の開示という方向で検討すべきというふうには思います。
 
 それから、どういった者がこういった事業に関係することが適切かという点については、基本的にスキームとしてファンドに似たところがあるので、ファンド規制を下敷きにするというのが一つの考え方かというふうに思います。そういう観点からすると、発行者や販売業者について、二種業者ですとか、あるいはそうした形の登録を求めるということが考えられるところと思いますし、また、流通の場の提供者として、二種業者等を想定する、二種業的な規制を想定するということは、考えられるところではないかというふうに思います。
 
 それから、発行価格の設定についても論点として上がっておりますけれども、適正な価格をどう設定するかというのは、これはちょっと難しい問題かと思いますけれども、少なくとも収益を分配する形のものは、基本的にリターンの内容との比較において、ある程度、経済価値を検討するということが可能かと思われますので、そういった観点からの検討というのがあり得るところではないかと思います。
 
 もっとも新しいものですので、ある程度、事案と経験の蓄積を見る必要はあるかもしれませんし、当面はある程度幅のあるものを許容せざるを得ない面もあろうかと思います。基本的にはこういった適正な価格の実現というのは、相応の基準ないし、考え方を前提として、適切な審査と適切な情報開示、それから、不公正な価格設定に対する対応と、複合的な取組によって実現を図るべきものというふうに思っております。
 
 このこととの関係で不公正取引に関する規制についても、少なくともその基本的な考え方はある程度整備する必要はあると思いますし、最終的な法執行権限は行政が確保する必要があると思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 では、神作メンバー、どうぞ。
 
【神作メンバー】 
 ありがとうございます。資料2の2ページで、ICOの類型化がなされております。資料2ページの③、一番下に書いてあります事業収益の分配など、キャッシュに相当する経済的価値の受取りを期待する類型からコメントさせていただきたいと思います。③類型のICOは、金融商品取引法が定めている集団投資スキーム持分に、少なくともその趣旨としては非常に合致するものであり、それに相当するものであると考えられます。
 
 したがって、③類型に相当するICOがきちんと集団投資スキーム持分の定義中に入るような現行法の解釈論を工夫し、それが難しい場合には、きちんと立法的な手当をすべきだと思います。
 
 出資が、金銭以外である場合に、ICOに用いられる仮想通貨等を「金銭」による出資を迂回しているだけであり「金銭」と解釈するという余地はあると思いますけれども、入口のところだけではなく、出口すなわち収益の分配も仮想通貨等で行われる場合もカバーする必要があると思います。収益の分配が仮想通貨で行われるという場合についても、現行法でカバーするのは難しいと思いますので、そのような部分もあわせて手当てする必要があるのではないかと思います。
 
 ③類型については、今、申し上げたような集団投資スキーム持分に位置づけた上で、金融商品取引法がこういった第二項有価証券を規律してきた経験と様々な知恵を生かして、基本的には集団投資スキーム持分に対する規制を適用するということになると思われますけれども、福田メンバーもご指摘されていましたように、現在の集団投資スキーム持分の規制では、やや適切ではないと思われる点があるように思います。
 
 言葉を換えて申しますと、ICOについて、やはりやや特徴的であると思われる点がありますので、その点についてはまた特段の手当てを考えていくことが必要になると思います。
 
 具体的には、第一に、開示規制の適用でございます。第二項有価証券については、原則として開示規制の適用がないということに現行法はなっていますけれども、ICOについては、その流通性に鑑みるならば、有価証券についての開示規制、それから、発行体についての開示規制が非常に重要であると思います。
 
 特に先ほど申しましたように、入口も出口も、例えば仮想通貨トークンであるというようなとき、現行法の下ではこれは少なくとも社債には当たらないと、債券には当たらないと考えられます。と申しますのは、金銭債権を表章するものではないからです。そうすると、この種の証券は一体何を表章しているのかについて、きちんと開示するとともに、③類型は、事業収益の分配が投資の対象、目的であるわけですから、発行体についての開示規制も必要であるということになると思います。
 
 第2に、不公正取引規制につきましても、上場されていない有価証券については、現行の金商法の下では、インサイダー取引規制や相場操縦の規制の適用がないと理解しておりますけれども、ICOについては、インサイダー取引ですとか相場操縦のおそれがあると思われますので、規制をする必要があると考えます。
 
 ただ、インサイダー取引規制は、例えば内部者の定義や重要事実の範囲をどのように考えるのか等、規制を適用する場合には検討すべき多くの論点が出てくると思います。
 
 第3に、業規制については、基本的には、第二項有価証券についての規制を適用するとともに、これも福田メンバーがご指摘された点であると思いますけれども、クラウドファンディングに似ているという側面があります。そうすると、少額電子募集取扱業者についての規律も参考にしながら、ただ、他方で、ICOとクラウドファンディングとの違いもありますから、相違点にも十分に留意しながら、場合によっては自主規制に期待をするということも考えられ、法律で規制するところと自主規制で規制するところの役割分担についても考えていく必要があるかと思います。
 
 それから、順番をさかのぼっていく形で恐縮ですけれども、2ページの②類型、発行者からの物品・サービス等の供与を見返りとして求めるケースというのは、金融規制の中に位置づけるとすると、サービスや物品の決済をトークンで行っている、あるいは仮想通貨で行うということになりますので、資金決済法の適用が一応問題になり得ます。先ほど坂メンバーもご指摘されていましたし、井上メンバーもご指摘されていたと思いますけれども、前払式証票の規制が適用される場合もあり得ると思います。②類型を金融規制として位置づける場合には、決済の法規制の中に位置づけていくということになるのではないかと思います。
 
 最後に①類型でございますけれども、無保証型と言うのでしょうか、このタイプのものについては、そもそも権利性というのがないのではないか。一体、何を売っているのかということについて、内容をきちんと開示するということが最低限必要であると思います。
 
 これは単にそれを購入したりそのために出資をしたりする人のためだけに必要なのではなくて、どのような内容のものかということが第三者に影響を与える可能性もありますので、一体①類型に属するものの内容がどのようなものであるのか、開示が必要であると思います。
 
 ただ、開示だけで済むかというと、①のケースについては金融規制の枠を超えるかもしれませんけれども、追加的な消費者保護を考える必要があるかと思います。第1は、今日のプレゼンテーションの前半でも、詐欺的なものが少なくないということでございましたけれども、その実態として、詐欺的なものがどのぐらいの割合のものがあるのかということについて数字を示すなどして、単なる抽象的な警告ではなくて、もっと具体的な警告を行う必要性があるようにも思いますし、場合によってはさらに踏み込んで、民事的な規律として、取消権のようなものを与える、クーリングオフ、あるいはもっと一般的に取消権を与えるという追加的な消費者保護というのも考えられると思います。
 
 しかし、私は、いずれの類型についても、全面的に禁止するというのではなく、それぞれの類型に応じた適切な規制を行うことによって、健全に発展していくような法的な枠組みを自主規制などのソフトローをも視野に入れて構築することが適切であると思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、翁メンバー、どうぞ。
 
【翁メンバー】 
 今、神作先生が最後におっしゃった、このICOに対する対応姿勢は、私も同じでございまして、禁止するということではなく、一定の規制を設けた上で、また、その機能やリスクに応じて考えていくというスタンスで臨むのが適切ではないかというふうに思っております。
 
 その意味で、今日、3ページの上に示していただいたICOトークンのカテゴリー別の分類というのは、考える際に有益でございまして、特にアセットトークンなどにつきましては、今日、整理していただいたような方向で考えていくということが適切ではないかというように思っております。
 
 私がやはり一番このICOのところで注目しているのは、ICOにおいて発行されるトークンの価値を裏づけるものは何なのか、ということだと思っておりまして、もしこれが本当に、このアセットトークンのように何らかの資金源に根差した資産やキャッシュフローが当然に入ってくるというようなものであるのであれば、基本的には現在ある法律の中で考えていけばいいと思っておりますが、何人もの先生方がご指摘になったように、そこが必ずしもはっきりしていないということが非常に大きい問題でございます。、その意味では、仮想通貨のビットコインなんかでももちろんボラティリティはありますけれども、一番最初のところに、マイニングのコストというものがありますので、そこの裏づけすら、このトークンというのはよくわからないというところがございます。
 
 そういう意味で、わかりにくいものについてはやはり投資家保護の視点から対応を考えていく必要があるというふうに思いますし、発行するサイドにとりましても、だんだん海外ではいろんなルールが入ってきておりますけれども、今までは非常に簡単にICOで資金調達ができる状況になっておりまして、本来、企業であれば、経済学の視点では、企業組織が存在することによって、そこから企業活動が開始していくわけでございますが、全くそういった企業という形をとらないようなところが、安易にスタートアップの資金を調達できるということで企業活動が開始できるというわけでもないというふうに思っております。
 
 その意味で、こういった、もちろんほかのThe DAOとか、企業とは違う形態でやっているものも多くございますけれども、スタートアップなどについては、そういった視点も重要な論点になるかなというふうに思っております。
 
 この後のところにつきまして、特にアセット型のトークンにつきまして、いろいろな論点が示されておりますが、検討事項について、6ページ、7ページ以降にいろいろ書いてございますが、例えば7ページの流通の場を提供する役割を果たすものとしてふさわしいと考えられるものは誰かというような投げかけがございますが、非常に難しい投げかけであるかと思っております。
 
 実は、私は本当にわずかな事例しか見ておりませんけれども、エストニアのファンダービーム社というところがございまして、そこはまさにそういったスタートアップの企業の資金を集める取引所のような役割をしたいというようなことで、ブロックチェーンを使って、スタートアップ企業の資金を提供する役割を果たそうという企業なのですが、その企業にヒアリングをしたことがございます。
 
 そこはまさにビジネスとしてこういうことをやっていこうとスタートしたわけですが、一方で、そういった企業が全ての流通の場の役割を果たすわけでもありません。ただ、スタートアップに投資した資金というのは通常、流動性がないわけでございますけれども、その企業にヒアリングをしたときには、スタートアップ企業の資金に、流動性がないところにブロックチェーンを使って流動性をつけたところに意味があるんだというふうに言っておられまして、今あるスタートアップの企業の資金調達の難しさみたいなことをどうやってクリアしようかということで考えられているスキームなんだというふうに感じました。 だから、その意味では、現行の金融マーケットの課題をそういったICOという手法でクリアしようとする考え方なのかなというふうに感じた次第なんですが、いずれにせよ、そういった企業も存在しているということでございます。
 
一方で、ここでご指摘になっているように、発行体がどういう発行体であるかとか、それから、どういう事業を営んでいこうとするのかということについて、やっぱり今、神作先生もおっしゃいましたけれども、ここの透明性が圧倒的に足りておりませんので、そこをどうやって開示していって、透明性をこの分野に広げていくかということが非常に重要だというふうに思っております。そういったことに注意を払うことが必要であるというふうに思っております。
 
 第三者がこれを審査してはどうかという投げかけが7ページなどでございますけれども、今、神作先生は、これは自主規制でやるということを考えていってはどうかというご趣旨でご指摘になったと思います。これも私、非常に重要な視点だと思いますが、このエンフォースメントというか、どういうふうに数多くのICOを、第三者的に、客観的に審査したり、開示をさせていくか。開示をさせていくことは当然なんですけれども、それをどういうふうに審査していくかということについて、相当な知恵を絞る必要があるのではないかなというふうに思っています。エンフォースメントをどう担保しながらこういったルールを考えていくかということも同時に考えながら健全な形でICOができるようにしていくということを検討していく必要性があると思っております。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 では、三宅メンバー、どうぞ。
 
【三宅メンバー】 
 本日は大変わかりやすいご説明をいただきまして、ありがとうございました。私からは、ICOの類型の3番目、いわゆる収益分配型のものについて、幾つかコメントさせて頂きたいと思います。
 
 金融規制の要否を検討するに当たりましては、まず収益分配型ICOの社会的意義を考えなくてはいけないということになりますが、既に他のメンバーからもご指摘がありましたように、意義を見出すことは非常に難しいというのが率直な感想であります。
 
 まずメリットとしましては、資料にも書かれてございますように、設計の自由度あるいはスタートアップ企業の資金調達手段といったものが挙げられます。
 
 その一方で、課題としましては、こちらもご説明がありましたように、規律が全く機能していないということであり、この結果として、事業者側からすれば、資金の調達さえできればよい、また、一方で、投資家側からすれば、トークンの売却益さえ得られればよいといったような、ある種のモラルハザードが非常に生じやすい仕組みだと思っております。
 
 ただ、ICOが既にグローバルに活用されているということもありますし、今後、トークンエコノミーが拡大していくことも踏まえますと、やはりICOは、それなりの可能性といいますか、それなりの機能を持っているのであろうと感じておりますので、ICO自体を無くしていくのではなく、適切な形で育てていくというのが基本的な方向感ではないかと思います。
 
 ただ、先ほど申し上げましたように、ICOの利点として、設計の自由度や、資金調達のしやすさというのが挙げられますけれども、それが本当にICOの機能の高さによってもたらされているものなのか、あるいは単に規律が機能していない、すなわち、規制アービトラージに起因するものなのか、果たしてどちらによるものなのかという点はしっかり考える必要があると思います。
 
 また、スタートアップ企業ということであれば、本来、投資家によるエンゲージメントは非常に重要なはずであります。ところが、ICOにおいては、投資家がトークンを売り抜けてしまうことによって、そういった十分なエンゲージメントが果たされていないという傾向がございますので、そもそもスタートアップ企業に対する資金提供の手法として、本当にこれで良いのかという問題意識も持っております。
 
 さらに、調達額という面でも、先ほどご説明のありましたEOS等のように、4桁億円に届くような非常に高額な案件もありましたけれども、そもそも株主や他の債権者等との利害関係も含め、トークンの権利内容自体がまだはっきりしていない中で、これは企業規模にもよりますけれども、ICOを用いて、多額の資金調達を行うということは後々大きな問題をはらむことになるのではないかという懸念も持っております。また、仮にスタートアップ企業の場合ですと、ICOを使っていきなり数十億円あるいは数百億円といった資金が本当に必要なのかといったことも考えなくてはいけないと思います。
 
 いろいろ申し上げましたけれども、ICOに対する金融規制の要否を考える上では、そもそもICOの社会的意義、経済的機能がどういったものであるべきなのか、こういった点をまず整理する必要があるのではないかと思います。その上で、資料3の9ページに挙げられております、4つの既存の資金調達手段との関係をどのように位置づけるのかといったことを考える必要がありますし、そういった関係性が整理できれば、それに応じた規制というのがおのずと決まってくるのではないかと思います。
 
 先ほど、そもそもICOでなければ発揮できない機能が何なのかという点を、まず考えなくてはいけないと申し上げましたが、仮にですが、単に既存の資金調達手段の使い勝手が悪いがために、ICOと同等の機能が提供できていないというようなことがあるのであれば、既存の資金調達手段に対する規制を緩和していくといったアプローチもあるのではないかと思います。
 
 現状、我が国におけるICOの規制は、資料で挙げられている3つのアプローチの中の2つ目、すなわち既存の証券規制の適用対象となり得る旨を明確化し、注意喚起等を実施というものに該当すると認識しておりますが、資料3の5ページにあります諸外国の事例等々を拝見しますと、同じ2つ目のアプローチとされている国でも、例えば刑事告発、取り締まり、警告といった対応をとっている国が多いということがわかりました。
 
 我が国においても、新たな法的な枠組みをICOのためだけに整備するという形ではなく、例えば個別のICOの事案に対して、資金決済法や金融商品取引法等への該当可否をより柔軟、かつ厳格に判定した上で、違反があればしかるべき対応をとるといったような、現状の延長線上のアプローチのほうが現実的ではないかと思います。
 
 一方で、現状では規律が全く機能していないということですので、何らかの対応が必要になるわけですが、ご説明いただいたように求められる規律とのギャップはかなり大きく、おそらく、これを全て埋めていくには非常に時間がかかるということが予想されます。また、そもそもトークン自体の権利内容といったように、法的な面で十分担保されていない部分もございますので、最終形に至るまでの、いわば移行期間として、当面はICOトークンを一般投資家に大々的に販売するということは抑制したほうがよいのではないかと思います。
 
 こうした観点で、先ほど米国の事例として、年収20万ドル超の個人を「認定投資家」とするといったご説明もございましたけれども、投資家に対する基準でありますとか、あるいは株式投資型のクラウドファンディングのように1人当たりの出資額や調達総額に制限を設けるといったことも考えられると思います。また、先日、ご説明いただいた自主規制案では、対象事業の適格性や情報提供、実現可能性の審査といった点で様々な規定を整備するとのことでしたので、まずは発行段階をしっかり規制していくことが当面の対応としては必要なのではないかと思いました。
 
 私からは以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 名札を立てていただいた順番と若干違うかもしれませんが、1巡目の方に先にご発言いただければと思います。中島メンバー、永沢メンバー、それで、楠メンバーの順にお願いできますでしょうか。中島さん、どうぞ。
 
【中島メンバー】 
 ICOへの規制の有無を論じるときには、ICOに対してどういうイメージを持っているかということによってかなり違ってくると思うんですよね。それで、遠くから見ていると、何か新しい資金調達手段だし、イノベーションなんだからやらせれば? という感じになると思いますが、だんだん近くに寄って中身を見ていくと、かなり問題含みの事例が多い。「ひどい実態」と言ってもいいと思いますが、結局、規制がなく誰もチェックしていないので、もうやりたい放題やっているという実態がありますので、そういう実態をだんだん近くに寄って見ると、これはやはりちゃんと規制したほうがいいのではないかというふうに思われるようになります。まず、ICOに対するイメージをどういうふうに持つかということで、規制の議論が違ってくるということだと思います。
 
 それで、討議資料の中に、「ICOは金融機能を有するのか」という問いかけがありました。この点については、一方に、事業を行うために資金調達をしたいという主体がいて、その人がトークンを発行している。一方で、有利な運用をしたいと思っている投資家がいて、そこが投資というか、投機を行っているということで、そういう意味では、表面的に見ると、資金余剰主体から資金不足の主体に資金が移動しているという意味では、教科書的に言うと、一種の金融機能を果たしているものと思われます。外形的に見るとそういうふうに思われる。ただし、この金融機能は、あまり健全な金融機能ではないように思われます。
 
 一つは、詐欺的な事例が非常に多いということで、これは以前から指摘されておりましたし、討議資料にもありますけれども、最近、ICOのアドバイザリー会社が行った調査によりますと、2017年中に行われた世界のICOのうち、約8割が詐欺(scam)であったという報告がなされております。
 
 どういう意味で詐欺だったかというと、「初めから約束したプロジェクトを実現する意図がなかった」という意味で、詐欺であったということであります。この8割というのは驚くべき数字です。つまり、ICOの市場のうち、大半がそういう、あわよくば、うまく資金を調達してやろうという思惑で行われているということになります。まず出発点として、こうした点を認識したうえで、規制の必要があるかどうかを議論しないといけないと思います。
 
 それから、2つ目は、トークンが表章する権利については、実は2次的な意味しか持っていないということであります。ユーティリティ型とか、アセット型とか、いろいろありますけれども、実は発行体は、トークンを発行して、資金調達さえできればいいという感じでやっておりますし、一方で、投資家のほうは、あわよくばそれを買って、数千倍とか数万倍とかに値上がりするのではないかという期待で買っています。
 
 したがって、先ほど権利がないのにどうして買うのかという話がありましたけれども、権利がなくたって、それが市場で注目されて、値上がりすれば儲かるから、その権利がなくても買うわけで、投資家は、実は権利なんか見てないんですよ。それが値上がりするかどうかだけを見て買っているというのが実態でありまして、こういう、投機をあおっているという側面が強いと思いますから、こういうものを、バラ色のすばらしい、新しい資金調達手段として保護していかなくてはいけないのかというところはちょっと、甚だ疑問に感じております。
 
 それから、3つ目の問題として、ICOの内容をチェックする主体がないということで、討議資料にもありましたけれども、ホワイトペーパーというプロジェクトの計画書を書いて、それを発表すれば資金が調達できるということになっています。そのホワイトペーパー自体もかなりいいかげんなものが多くて、ほかのICOの案件からカット・アンド・ペーストしてそのまま使っているというような案件も結構あるみたいで、かなりいいかげんなものが多いということです。また、その内容をチェックする主体もありませんので、実際にそのプロジェクトがそのとおり行われるという保証はどこにもないわけですね。それから、発行体についても全くオブリゲーションがありません。いつまでに何をやらなくてはいけないというオブリゲーションはありませんから、通常は、ICOで数億円とか数十億円をもらってしまえば、それで遊んで暮らせるわけですから、一生懸命事業をやろうというインセンティブは全くないということになります。そういうチェックする主体がないということが、先ほどの詐欺的な事例が横行するというところにつながっています。
 
以上から、資金調達の機能を果たしているのかといえば、一応果たしているものと思いますけれども、本当に必要な人が必要な資金を調達しているかというと、あまりそうなってはいないということでありまして、こういう8割の事例が詐欺的なものであるというような市場を育成していくというスタンスで、我々は臨む必要があるのか、あるいはむしろ規制を強化するという方向で見ていったほうがいいんじゃないかということがまず1点だと思います。
 
 そして、規制の必要性ということですが、類型に分けて述べますと、まず株式に類似したセキュリティトークンでありますけれども、これはスイスでは、アセットトークンと呼んでいるようです。これについては、同じ資金調達を行っても、株式として発行すると規制の対象になりますが、トークンですと言って発行すると、全く規制の対象にならないということで、規制のあり方としては非常にバランスがとれていない、釣合いがとれていない現状に今なっているということだと思います。したがって、「同じ機能には同じ規制を課す」というのが大原則、基本原則だろうと思われます。
 
 今は規制が全くありませんので、例えば売り出すトークンについての情報を、真偽を織りまぜて、何でも流すという、いわゆる「風説の流布」みたいなことがやりたい放題になっているということがあります。
 
 それから、ICOのトークン売り出しですけれども、何段階かのラウンドに分けて行われるというのが一般的でありまして、最初のほうに行われる「プリセール」というようなところでは、初めのほうのラウンドでは一部の関係者にかなり大幅なディスカウントで販売されるということがあります。だんだんその範囲が広がっていって、ディスカウント幅が少なくなっていって、最後に、一般の投資家が買うとき、「パブリックICO」と言いますが、パブリックICOの時点では、当初よりかなり高い額で提供されるということでありまして、この辺も公平性の観点から見ると問題ではないのかということがあります。株式のIPOでは、一部の人だけに安く売って、その後で市場で高く売り出すということはあり得ない、あってはならないことなんですが、実際はICOではそういうことが日常的に行われているということであります。
 
 規制の方法としてはいろいろあると思いますけれども、先ほどから話題になっております金融商品取引法の集団投資スキーム持分の話で言えば、現行では、「法定通貨で購入されること」が要件になっておりますけれども、ここに「仮想通貨で購入する場合」ということを含めれば、ICOの標準的なケースがここに含められるのではないかと考えております。
 
 それから、もう一つの類型でありますユーティリティトークンの方ですけれども、こちらは米国やEUでは、セキュリティトークンについては、証券類似のものということで規制を行う一方で、ユーティリティトークンについては、規制の対象にしないという対応をとっているようです。
 
 ただし、これは規制の必要がないということではなくて、むしろICOを既存の証券法制によって規制しようとしているために、セキュリティトークンしか規制できないという現状があります。どちらかというと、「既存の証券法制の限界」という面が露呈しているものと思います。
 
 ただし、規制を考える上では、両者を区別する必要性は少ないものと考えております。1つは、セキュリティトークンとユーティリティトークンが、同じように使われていることがあります。発行者や投資家にとっては同じようにみられているということで、投資家にとっては、もう「ICOはICO」なので、その権利が何であろうと、あるいは権利が全くなかろうと、全く関係ないということで、このコインが値上がりしそうだと思ったら買うし、そうでなければ買わないということです。規制する側からは、そのトークンに既存の証券法制が及ぶか、及ばないかということで分けているわけですけれども、実は投資家側から見ると、どちらでも変わらないということになります。
 
 2つ目は、両者の区別が難しいということがあります。ICOで発行されるトークンの仕組みというのは非常に複雑で、バラエティがありまして、それをどちらのトークンであるかということを一つ一つ判断していくというのは、かなり困難な作業になるのではないかと思われます。
 
 それから、3つ目に規制対象外のトークンというものを作りますと、それが「規制の抜け穴」として使われる可能性があることです。実際、欧米では、規制の範囲内に入らないように注意深く設計されたトークンが最近増えてきております。つまり、実質的に規制回避の流れが出てきているということで、こういったことを防ぐためには、やはりなるべく広く規制の網をかけていくということが必要なのではないかと考えております。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 では、永沢さん、どうぞ。
 
【永沢メンバー】 
 ありがとうございます。
 
 まず私は、投資者保護の基本というのは、私なりに金融審議会にかかわってくる中で、情報開示というものが非常に重要なものであると考えてきました。個人投資家が投資に参加して損を被ったりということがあるわけで、その時に自己責任ということを求められるわけですが、そのためには、何といってもやはり情報開示の担保が大事だと思ってきましたし、行政も情報開示の拡充に動いてきていただいており、評価しているところですが、その動きと、今回のこのICOに関連して出てきている情報開示の緩和の話は大きく反するところがあるように感じており、私としては、実は正直なところ当惑しているというのが率直な意見でございます。
 
 スタートアップの企業が、厳しい情報開示が求められると、それが負担で資金調達が十分にできないという事情も理解できない訳ではありません。しかしながら、他のメンバーからもご指摘がありましたが、情報開示をあまりにも軽減すると資金調達者にモラルハザードが起きるのではないかということは私も気になります。他人様からお金を集める際に、事業計画を丁寧に正しく説明するということは基本中の基本ではないかと思うのですが、そこが確実に担保できるのかどうかというところが、お話を聞いていて不安になったところでございます。
 
 また、私は、ICOに法人が参加されるのだろうかということも、もう一つ気になっておりまして、資金調達に応じる相手は結局は一般個人ばかりなのではないかと気になっております。と言いますのも、トークン取得を企業の中で稟議して、それが承認されるのだろうかとも思うのです。トークンへの出資は難しいという企業が多いのではないかと思っております。
 
 店頭FXの規制に関する会議に参加させていただいた経験から、ICOから出てくるトークンは、投機の好きな個人にとって魅力のある投機の対象となりそうで、一般個人ができるとなると、個人の参加者はかなりの人数になるのではないかと心配をしております。
 
 ICOをどう規制するかについては、これまで様々な規制を考える機会に参加をしてきましたが、その中で参考にすべきものがあるとすれば、一つは、参加者を規制したプロ向けファンドのときの規制が一つあげられると思います。あのときは個人の参加者については厳しく規制をさせていただきました。プロ向けファンドについては、本来ならば、個人は参加させるべきではないという意見を申し上げましたが、あのときは資金調達をされる側であるベンチャー企業の方々から、創業者の知人や専門家については知見を出すだけでなく資金参加を認めることが望ましいという強い要望が出されましたので、あのような規制になったと記憶しております。今回のICOの議論では、資金調達をされたい側から特に意見が現時点では出ていないのですから、個人に参加を認める必要があるのだろうかと思っておるところです。
 
 もう一つは、クラウドファンディングの規制がございます。こちらは一般の個人から資金調達を行うことを前提としておりますので、全額失ってもいい金額は幾らかという観点から、金額の上限を設けたと記憶しております。それから、クラウドファンディングにはクーリングオフに準じた制度が導入されており、こちらでもそのような消費者保護的な仕組みというものの導入を検討されるべきではないかとも感じております。
 
 最後に、今回は投資型についての規制を主に議論することになるという認識でおりますが、楠委員から先ほど、ユーティリティ型の方が日本では広がっており、消費者から苦情が出はじめているというお話がございました。ユーティリティ型は金融庁の所管ではないかもしれませんが、先ほど中島メンバーもお話しされましたように、一般の方はどれが何型という区別の認識は難しいと思います。省庁の枠を超えて、ICOトークンに関わる規制について考えていただく必要があると思います。
 
 以上でございます。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 楠さん、どうぞ。
 
【楠メンバー】 
 ありがとうございます。様々な議論をお伺いしている中で、改めて、そもそもICOって何なんだろうというのをずっと悩んでおりました。そして、並行して、改めて、ちょうど今般6月に取りまとまった金融制度スタディグループの報告書なんかを読み直しながら見ていたんですけれども、本当に我々はここでICOという新しい縦割りをつくる必要があるのか。それとも、金融機能に着目して横割りの中で、それぞれの機能において、日本で資金調達の障壁になるものがあったときに、それを見直すきっかけとして考えるべきなのか。これはなかなか難しい問題だと思います。おそらく横割りで考えると、これまでの規制を引きずっていくところというのはひょっとしたらあるのかもしれないんですけれども、一方で、今ここで新しい縦割りをつくるということも、規制としての一貫性というのは非常に難しいんだろうなと。一旦は、じゃあ、横割りで考えてきたときに、ICOの機能というのは、既存のところにどうはまっていくのかというところで言うと、今日、皆さんメンバーからいろんなお話があった中で言うと、やはりクラウドファンディングに相当近い。その中でおそらくセキュリティトークンが出資型で、ユーティリティトークンが購入型で、ペイメントトークンを寄附型と呼んでよいのかというのは極めて難しいと思うんですけれども、よく似ていると。
 
 一方で、もうご指摘があったように、翁委員からご指摘があったように、特に大きく異なるのは、そこにおいて流動化を認める、二次流通を認めるかどうかというのは非常に大きな違いで、私はよく海外の購入型クラウドファンディングを使うものですから、よく中国の工場で新しい、こんな小さいコンピューターとか買うんですけども、3カ月たっても、半年たっても、全然送られてこないと。そうすると、もっといいものを買っちゃうので、この権利だけ転売できたらうれしいなと。二次流通できたら、これは大変ニーズはあるんじゃないかと、一消費者としては思うんですけれども、じゃあ、逆に、二次流通を認めるということが法律上の位置づけの中で変化があるのか、ないのかというと、実はこの二次流通を認めることによって、スタディグループではたしか金融機能について決済、資金供与、運用、リスク移転という4つの機能を整理されていたけれども、ひょっとすると、この二次流通を認めることで、この全ての4機能をクラウドファンディングの延長でありながら、持ってしまうかもしれない。
 
 そういう意味では、ひょっとすると、仮にICOにおけるユーティリティトークンやペイメントトークンが、金融の枠外であるのであれば、ほかの省庁も含めて、どこが見るべきかというのは考えていただきたいというお話をさせていただきましたけれども、一点ちょっと議論する必要があるなと思ったのは、もし仮に二次流通なり、流動化というものを認めたときに、それ自体が金融の役割を附帯させてしまわないかということは、考えなきゃいけない点なのかなと感じました。
 
 もう一つ、従来だと、寄附型、ペイメントトークンやユーティリティトークンについて、資金決済法上の縛りはかかっているわけですけれども、これで十分かというと、やっぱり難しいと思うのが、やはり今の改正資金決済法というのはビットコインを念頭に置いているところが大きいと思うんですけれども、当時、ビットコインというのはやはり運営者がいないということを前提にしていたと思うんですね。なので、適時開示みたいな考え方とか、インサイダーというのは考えずに済んだわけですけれども、おそらくICOは明確に資金募集する主体がいる話なので、これはやはり別の様々な規制すべき要素、ディスクロージャーもそうですし、考えていかないといけないんだろうというふうに思います。
 
 そういったことも含めて、やはりもうちょっと具体的な事例に基づく議論をしていかないと、実際にICOが社会的にどういう役割を果たしているのかというのを掘り下げていくことが難しいんじゃないかというふうに考えておりまして、特に調達額の大きかった国内と海外の何件かについては、具体的なケーススタディをしていく必要があるのではないか。
 
 例えば海外で言えば、EOS、Telegram、Huobiみたいな話ですとか、あと、私、以前、交換所のセーフティーネットのところで以前、ビットフィネックスの交換所が流出した額をICOでもって一旦補填をして、それでリカバリーしたようなケースを紹介させていただきましたけれども、ICOの具体的な役割というのを見ていく。それはもうちょっと具体的なケースに着目していく必要があるように思います。
 
 特に資料3の3ページで、上位20のプロジェクトが出ていますけれども、おそらくこの中で日本が関係しているのは、17位のCOMSAだけでして、COMSAの集めた100億円というのはどこに行ったんだろうというのは、私、あまり存じ上げないんですけれども。あと、もう一個、海外でのICOの事例でいいますと、一番気になっているのは、ドレッシングに利用されていないかという点です。
 
 つまり、これが何らかのオブリゲーションを持っている場合には、財務諸表上の負債の部に立てなきゃいけないわけですけれども、これが例えば資本ともつかない、何らオブリゲーションがないということになると、実際には資本にも負債にも載っていないけれども、キャッシュフローとしてのインカムはあるみたいな、そういう状況が起こり得ると。一応その近代会計原則においては、中央銀行も含めて発行した貨幣というのは、ちゃんと負債の部に立てていると。そういった中で、残念ながら我が国においても時価発行ICOの会計上の取扱いというのはまだはっきりしていないというふうに理解をしておりますので、この辺の、何のためにICOをしているのかということを具体的にきちっとケーススタディで掘り下げていくと、それが果たしている社会的役割というのを明確にしていけると思うので、ここはおそらく制度で何にはまるかという話だけではなく、具体的な事例にもうちょっと着目していく必要があるのかというふうに思います。
 
 以上です。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 福田さん、どうぞ。
 
【福田メンバー】 
 2回目になりますけれども、皆さんにいろいろとご意見を伺って、いろいろと参考になりました。もちろん皆さんのご指摘にあったように、杜撰な事業者、事業計画や詐欺的な事案の業者というのはけしからんというのは、もうそのとおりだとは思います。
 
 ただ、そこに投資している人は善人で、ともかくかわいそうな人たちだという発想は議論の余地があると思うんです。やっぱり投資家保護といったときに、もちろん預金者はともかく保護しなきゃいけない。それは預金がなければ、日常生活はできないわけです。あるいは通常の金融商品取引法で考えている商品でも、自分たちの資産形成を考えた場合には、ある程度は保護されなければいけないということだと思うんです。けれども、ICOに関しては、それに投資しなければ、生活ができないとかそういうレベルのものではないわけで、そこに投資している人が、しなくてもいいのに投資して、損した場合には、それはお気の毒かもしれませんけど、ただ、ともかくかわいそうで保護しなければいけない人たちなのかという観点は、やっぱり別途あるんだろうとは思います。
 
 もちろんそこには、いろんなそういうことが起こる背景には、やっぱり新しい金融技術に対する誤解みたいなのがあって、仮想通貨も含めてかもしれませんが、ICOとかは、何か早く投資するとすごく儲かるような、打ち出の小槌的なものがあるんじゃないかみたいな誤解はあるのかもしれません。けれども、これは金融のあらゆるものに共通しているものですけれども、ノーフリーランチという言葉が金融では基本で、おいしいことは、基本的にはないという、効率市場仮説の問題はあらゆるところであって、そういう立場に立ったときに、本来、投資しなくてもいいような投資家に対して、どこまで保護すべきかという観点はあるかとは思います。
 
 このICOはいろんな、先ほど私自身も言いましたが、クラウドファンディングと多くの点で似ている点もあるけれども、実際の投資の事案というのはかなり違うような印象を、皆さんのお話を伺ってもしました。
 
 例えばクラウドファンディングで投資型、あるいは寄附型も含めたような形でお金を出す人たちは、投資先のことを全く知らないで投資している事例というのはないわけじゃないかもしれないけれども、少ないと思います。うまくいっている事例というのはかなりよく知っている人たちに投資しているという事例が多いと思います。
 
 例えば先ほど酒屋さんが新しいブランドのお酒を出すのに、クラウドファンディングで資金調達するというときに、投資している人たちというのは、基本的には酒屋さんで前からお酒を買っていて、それを飲んでおいしかったから、そこの酒屋さんが新しくブランド米を出したいので、お金を資金調達するときに、クラウドファンディングに投資する。そういうところに共感して、寄附的な意味も含めて投資する。そういうのがクラウドファンディングで比較的うまくいっている事例としてはあるとは思うんです。そういう意味では、クラウドファンディングでうまくいっているのは、もう全く見知らぬところに何か新しい技術だからともかく投資してというよりかは、事業計画が正確に開示されているかどうかというものとは違うレベルで、日ごろから会社に、その事業に、それぐらいになじみがあった人たちがクラウドファンディングで投資しているというところもあります。ICOでもそういう感じで投資されているのであれば、多分いいんじゃないかとは思うんですけれども、全くもう見も知らないんだけれども、何となく新しい技術で儲かりそうだからみたいな投資がはびこるというのは、やっぱり健全なものではない。あくまでもやっぱりスタートアップ企業、あるいはそれに相当するものを育てるということは、そういうものに対する知識がある程度あって投資するというのが本来は自然なもので、そういう投資を促進しながら、そうじゃない投資がはびこらないような仕組みづくりというものというのがやはり大事なんだろうなというふうには思いました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 森下さん、どうぞ。
 
【森下メンバー】 
 ありがとうございます。このICOは比較的、国境を越えて、容易にアクセスすることが可能だというふうに理解しておりますので、そうしますと、いろいろなルールを考えたとしましても、国際的な適用関係をどう考えるかというような点が大事になってくるのかと思います。
 
 今まで証券規制につきましては、マーケットにおいてこのルールを適用するかどうかという考え方があり得たと思うのですが、マーケットは、サイバースペースということになりますと、なかなか苦しいと。じゃあ、投資家の所在地で適否を考えるのかというと、それもどこまでいいのか、どこまでうまく機能するのかという問題もあろうかと思いますし、例えば日本の企業が外国でICOが合法化されているところの仕組みを使って発行しましたと。それが何らかの形で日本の投資家が投資できるような環境でありましたというようなことについて、例えば日本の規制が、それはけしからんというように言うのかどうかとか、いろいろ国際的な適用範囲というのも規制のあり方を考えていく上で非常に大事になってくるように思います。
 
 そういう意味では、やはり国際的な協調みたいなものが非常に重要で、何らかのグローバルなフレームワークで対処していく問題なのではないかという点が思います。
 
 あと、個人を守るという観点からすると、日本の方が積極的に打って出て、サイバースペースで自分で買うということを禁止するのかどうかというのは一つで、どうしても保護しようと思ったら、本当に危険なものでどうしても保護したいのであれば、個人の方が買うこと自体を違法にするというような考え方だってあるとは思うのですが、そこまで言う話なのかと。保護の仕方としてですね。そのようなこともあって、やっぱりグローバルに国境を越えると。そして、一国のレギュレーションでどう対処するかというのはなかなか難しい問題なので、詰めていく際に、グローバルな視点というのを忘れないようにしたいというふうに思います。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 井上さん、どうぞ。
 
【井上メンバー】 
 ありがとうございます。何人かのメンバーの方から類型ごとにトークンの規制を分けると、すき間ができるという問題があるので、区別せずに広く規制すべきではないかというご意見があって、確かにすき間が生ずるという問題はおっしゃるとおりだと思うのですけれども、私自身は、先ほども申し上げたように、やはりトークンには本当に様々なものがあるので、逆に、ひとまとめにすることには危険があると思っておりまして、やはり機能なり、リスクなりに応じて、規制を考えたほうがいいと考えます。その場合に、ある程度の類型化はやはり必要だろうと思います。
 
 その上で、それをどう類型化して規制していくかというときに、先ほど楠メンバーが、縦割りなのか、横割りなのかと表現されましたけれども、私は、先ほどは、既存の規制の枠組みに当てはめるような形で、こういう類型のものはこう、こういう類型のものはこうというように申し上げましたが、その方向性がわかりやすいといいますか、むしろすき間が生じにくくなるように思います。例えば仮想通貨法制を別途つくり上げてしまうよりも、そちらのほうがいいのではないかと考えております。
 
 先ほど、これも楠メンバーが、転売という機能を考えると、ユーティリティトークンやペイメントトークンであっても金融的な性格を帯びるのではないかというご指摘があって、私はまさにそのとおりだと思うのですけれども、それこそ仮想通貨交換業規制が、物品あるいはサービスの対価の弁済のために不特定の人に対して利用でき、かつ、法定通貨あるいは仮想通貨と換えられるものなどという形で、その対象としているわけです。ですので、そこの部分を金融的に捉えて規制を及ぼすとすれば、現在、既に資金決済法上の規制があるわけですから、それが足りないのであれば、それを充実させていくことが一つの考え方としてあり得ると思います。すなわち、ICOトークンの機能のうち、不特定の者との間で、法定通貨あるいは仮想通貨との交換がなされるという機能については、仮想通貨に対する規制の濃淡、あるいはすき間の問題として捉え、他方で、発行体からのキャッシュフローに着目して類型化したものの機能については、金商法の問題として捉えるということが考えられると思いました。
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございました。
 
 いろいろご意見いただきまして、大変ありがとうございます。私にはとてもそれをまとめたりする能力はないのですけれども、重要かなと思った点を感想として少し申し上げます。
 まず1点目は、今日、多くの方からご指摘ありましたように、ICOと一言で言っても、いろいろな使われ方をします。その類型化なり、分類というところについて、ある程度私どもで共通の認識を得られるかということはあるかと思います。一つがアセットトークンと呼ばれるもの。そして、2番目がユーティリティトークンと呼ばれるもの。3番目が何もないというか、この事務局の言葉で言えば、発行者から何も求めない、何もないトークン。スイスの類型を加えれば、4つ目がペイメントトークンというか、決済や支払の手段として使われるもの。一つのトークンが両方の機能を持つことも当然あり得ることなのですけれども、大体これらの4分類については、ほぼ皆さんの、私どもで共通の認識があるかと思います。
 
 それに応じて、アセットトークンは、従来の日本の法体系を前提とすれば、金商法的というか、そういうものを適用するのが普通の考え方ではないかということかと思います。ただ、ユーティリティトークンや、何もないトークンとかなっていきますと、よくわからなくなる。他方、ペイメントトークンは決済法、今、既に適用があると思いますけれども、という話ではないかと思います。
 
 2点目は、多くの方からご指摘いただいて、冒頭から楠さんが一貫して指摘しておられることで、最後、井上さんもおっしゃったことなのですけれども、金融と非金融という線引きをしようとすると、機能に応じて考えるのはいいとしても、結局、ゴルフ会員権とどこが違うんですかという話になるときに、適切な世界がつくれないのではないかということですね。ですから、金融、非金融という線引きをしようとすると、うまくいかないという問題を我々はどう考えたらいいのかというのもある程度共通の理解が得られていると思います。だから、具体的な、では、どこをどういうふうに行ったらいいのかということについては、さらに引き続き検討する必要があると思います。
 
 3点目は、やや細かいのですが、金商法で行こうとしたときに、集団投資スキームで行くのか、それとも、いわゆる一項有価証券で行くのかということがあると思います。ファンドというか、集団投資スキームで行くときには、現在のルールとの関係で言えば、金銭等を出資してという話になるわけですけれども、一項有価証券は法形式なので。原則としてですね。一項有価証券で行くとすれば、条文の場所としては、有価証券という紙はないので、場所で言えば、私は二項中段と呼んでいるのですけど、そういう場所に入るようになる。なぜ一項有価証券で行くかは流通性が高いということですね。これに着目しますと、二項ではなくて、現在の体系で行くと一項有価証券ですので、その辺を検討する必要があるということかと思います。
 
 もう1点、4点目として、これは翁さんがおっしゃったことを契機として、その後もご指摘いただいたのですが、そのICOとか、あるいは、翁さんはブロックチェーンという言葉でおっしゃったんですが、何か流通性をつくり出すような手品というか、この仕組みというところをどういうふうに捉えるのかというのが非常に難しくて、最後は楠さんのおっしゃるとおりかと思います。
 
 80年代、90年代に、金融の証券化・流動化というのがあったときに、当時、日本では、証券化・流動化手品論というのが非常にはやった。できないことも証券化・流動化を使うとできるようになるということでした。そこで言われていたのは流動性のないアセットに流動性をつけて、資本市場での投資対象にしていくような仕掛けなり、手品のことを当時は意味していたのですけれども。そのポイントとなっていたのは、技術というよりは、技術を背景とはしていましたけど、私の理解では格付けという仕組みですね。これが手品の、まあ、手品であるとすればですが、中心だったと思います。
 
 それが今はブロックチェーンですとか、そういう金融技術というものがいわば手品となって、流通性が付与され、流動性が付与され、そこにお金を出す人がいるというのは、あまりいい表現を私は思いつかないのですけれども、そういうものによってゲーム的な世界をつくり出すというか、ギャンブル的と言うと、やや語弊があるのですけれども、そういう世界をつくり出すことに成功しているように思います。
 
 そうすると、楠さんがおっしゃったように、機能に応じたアプローチという場合における全機能をカバーするということが、ごく簡単にそういう世界をゲーム的につくり出すことができる。表現は適切ではないかもしれませんけれども、そういったところについて、法制度が、どういうアプローチをするのかというのが課題かなと。
 
 この点についてもそれほどメンバーの間で異論があるわけではなくて、ただ、具体的にどういうふうな法制度の世界をつくっていくのかということについては、おそらくメンバーによって、認識や意見の違いはあるということではないかと思います。
 
 大体時間が来ましたけれども、今日はこのあたりとさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。
 
 今日も大変活発なご議論を、大変難しい問題について多数お出しいただきまして、どうもありがとうございました。本日いただきました説明やご意見等を踏まえ、今後、さらに議論を深めさせていただきたいと思います。もうしばらくおつき合いいただかないとゴールまで行きませんので、よろしくお願いいたします。
 
 なお、次回の研究会の日時につきましては、皆様方のご都合を踏まえた上で、後日、事務局からご案内させていただきます。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の研究会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 
―― 了 ――

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