メルカリと東大、「価値交換工学」を共同研究
メルカリと東京大学は19日「価値交換工学」について共同で研究を始めたと発表した。価値交換に関わるテクノロジーを幅広く研究し、公平でスムーズに価値交換できる社会の実現を目指すという。専用の研究部門を東大内に1月から2024年末まで設置し、メルカリが研究費用として計10億円を投じる計画だ。
価値交換工学では物品の購入や物々交換、サービスの対価で金銭を得るといった幅広い行為を既存の学問の枠にとらわれず研究する。同日に東大で開いた記者会見でメルカリの山田進太郎社長は「5年間で10億円をコミットする。東大の社会連携研究の中で、民間企業としてはトップの拠出額になる」と述べた。
今回は東大が19年に設立したインクルーシブ工学連携研究機構(RIISE)と、メルカリが17年に設立した組織メルカリR4Dが連携した。
メルカリR4Dは人工知能(AI)やブロックチェーン、量子コンピューティングなどの技術を研究している。これまでも東大とは共同研究を進めてきた。「今回は価値交換をテーマとして包括的に、これまでとは違うスケールで研究できる」と山田社長は話す。
東大の五神真総長は会見で、大学機関として研究を進める上で「新たな財源の確保が不可欠で、民間企業との提携が重要」と語った。RIISEの機構長の川原圭博教授は今回の研究部門設立について「研究だけでなく学生の教育にもつなげることができるのがポイント」と強調している。
従来の企業との共同研究では成果を出すことが目的となり、授業などに活用できないことも多かった。「この取り組みをモデルケースにしていきたい」(川原教授)。今回の取り組みでは価値交換工学という学問を作ることも目指す。3月末まで特任の教員も募集し、研究の幅を広げる。
(桜井芳野)
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