OKI、新興国向けにビットコイン連動のATM
OKIは海外向けにビットコインとの連動が可能なATMを開発した。ビットコイン専用の電子財布「ウォレット」と連動して、現地通貨として引き出せるようになる。価格の変動が大きいビットコインを現金としていつでも引き出して利用することが可能になる。中国など新興国を中心にビットコインの市場が拡大しており、実際の決済への利用の増加に対応する。
OKIは5月中に発売する海外向けの新型ATM「リサイクラーG8」のオプション機能に、開発したビットコインとの連動機能を初めて搭載する。ビットコインの市場価格にあわせて、現金で引き出せるほか、逆に、現金をビットコインにして「ウォレット」の残高を増やすこともできる。
ビットコインの取引の多くを占めている中国向けのほか、主に新興国での利用を見込んでいる。各国で電子通貨の普及も進んでいることから、電子通貨へのチャージにも対応する。また、スマートフォン(スマホ)に送られてきた請求書への決済ができる機能などもATMに追加できるようにした。各国の電子通貨の普及状況や銀行のサービスなどに合わせて、機能を追加できるようにする。ビットコインについて国内金融機関からの需要はまだ多くないとして、国内展開は未定だ。
新興国では治安の懸念のある国も多いことから、セキュリティー機能も拡大する。ATMが破壊された際に、紙幣に特殊なインクをかけて流通できなくすることができる。サイバー攻撃などが頻発していることから、カード情報を盗むコンピューターウイルスへの対応力も高め、新種のウイルスに素早く対応できるようにした。
また、紙幣の識別機能も高める。複数の国の紙幣を1度に入れても識別して数えられるようにした。また、従来機種の1.5倍となる、1秒間に12枚を数えられるように、紙送りなどの機構部分の確実性を高めた。
英国リテール・バンキング・リサーチ(RBR)社の調査では、世界のATM稼働台数は、2016年に330万台。そのうち、OKIが今回発売する、利用者が入金した紙幣を別の利用者が引き出す時に利用できる「紙幣還流型」と呼ばれるタイプは約3割にとどまる。割高だが紙幣補充などの手間が少ない還流型は今後、中国やインドなどで増えるとみられている。市場が拡大するビットコインへの対応で先行することで、新興国でのATMの置き換えニーズを掘り起こしたい考えだ。
時価総額が2兆円を超える巨大マーケットになっているが、取引の大半は中国が占めるとされている。日本でも利用者は増加しているものの、悪質業者による利用被害が問題になったこともある。金融庁は4月から国内の取引所に登録制を導入した。
(企業報道部 小河愛実)
[日経産業新聞 2017年5月23日付]