近鉄グループホールディングス(HD)が、独自の「仮想通貨」発行に向け実証実験を9月に始める。ビットコインに代表される仮想通貨による支払いを受け付ける小売店は増えているが、実験は近鉄グループの企業が集まる「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)を中心に行い、規模は国内最大という。使える場所を近鉄沿線にも広げ「近鉄経済圏」確立を目指す。(阿部佐知子)
大盤振る舞い
近鉄グループHDが導入する仮想通貨は「近鉄ハルカスコイン」。ビットコインなどと違って固定相場とし、1コイン=1円を保証する。実験参加者は5000円支払うと、ハルカスコインを1万コイン(1万円分)を受け取れる。
コインは、あべのハルカス内にある近鉄百貨店や美術館、展望台などで約1カ月の期間限定で使える。利用者は専用のアプリをスマートフォンにダウンロード。店側のタブレット端末に表示される商品の値段をスマホで読み取るだけで、支払いができる。
現金払いのような釣り銭のやり取りはなく、クレジットカードのようなサインや暗証番号の入力といった手間も不要。カード会社への手数料支払いなども発生しない。同社の吉田昌功社長は「他の決済手段と比べてコストが抑えられる」と話す。