「最近、新聞やウェブのニュースでよく目にする言葉、ビジネスの場でよく耳にする言葉は何か?」と問われたとき、皆さんはどんな言葉を思い浮かべるだろうか? 少し前であればビッグデータ、今であれば人工知能(AI)というところか。IoTを挙げる方もいるかもしれない。仮想通貨やブロックチェーンといった言葉を挙げる場合もあるだろう。

 そういった言葉を捉えるとき、悩ましいのは、単なるはやり言葉(ここでは「バズワード」とする)であるのか、今後のビジネス環境を大きく変えるような「キーワード」であるのかを、どのように見極めるかではないだろうか。

 あまたある「バズワード」の中から、いち早く「キーワード」を見つけ出し、事業の舵を切り、投資のアクセルを踏めば、ライバル企業に先行できる。ただし、見つけるだけでは十分ではない。AIやIoTといった昨今のキーワードは多様な業種が関わることが多く、従来のバリューチェーンの範疇に収まらない企業間の協業がそこかしこで起こっている。バズワードの中から早期にキーワードを見極め、キーワードの価値を最も高く評価する業界や企業を見つけ出すことができれば、企業戦略としては「向かうところ敵なし」になるはずだ。

 こうした見極めは、新たなビジネスチャンスを狙うビジネスパーソンや企業にとって腕が試されるところ。そして、常に頭が痛いところだ。こうした見極めに活用できる術がある。本稿では、日経BP総研が持つ術について少しだけ紹介してみる。

記事閲覧状況から「気になる言葉」のフェーズを推定

 キーポイントは、日経BP社の専門記者が執筆する記事と、日経BP社のニュースサイトなどに会員登録いただいている読者の閲覧履歴である。専門記者がキャッチした最新情報や本質に迫った詳細情報の記事が、どのような属性(職種や業種、役職など)の読者層に閲覧されているのかを見ると、記事で取り上げられた「言葉」を取り巻くビジネス状況が見えてくるのだ。

 例えば、調査対象の言葉(AI、ブロックチェーンなど)に関わる記事を閲覧した読者の分布を属性別に見たとき、実用化が近づくほど、ある傾向が顕著になる。それは、職種の属性にある「研究・開発」の読者比率が低下し、その一方で調査対象の言葉が適用されるであろう分野の読者の比率が高まるというもの。昨今のキーワードはテクノロジー系であり、「研究・開発」の読者比率が相対的に落ちてくるということは、テクノロジーの使い手が興味を持ち始めることを意味している。つまり、実用化に近づいたといえる。さらにこうした傾向がどのくらい続くかで、一瞬の話題に終わるのか、継続的な話題となってキーワードとなるかが推測できる。

 どのような業種での関心度が高いかを見ることで、潜在的な市場の広さや、新た市場創出につなげられる時期かどうかを推定できる。「電気、電子機器」といった特定の業種にとどまらず、「自動車、輸送機器」「機械、重電」といった他のモノづくり系業界でも関心度が高いか、「金融・証券・保険」「不動産」「医療」「エネルギー」などサービス系の業種にまで広がっているかを見ると、調査対象の言葉が関わる潜在的な市場の広さが見えてくる。さらに、関心度がモノづくり系の業界だけでなくサービス系の業界にまで広がっていれば、モノの作り手から使い手までつながり、市場創出の時期が迫っているといえる。