ベネズエラ経済改革 最低賃金4倍、仮想通貨を義務化
【サンパウロ=外山尚之】南米ベネズエラのマドゥロ大統領は14日、最低賃金の大幅引き上げや独自仮想通貨の利用義務化を柱とした経済改革案を発表した。ハイパーインフレが止まらず崩壊状態の経済を立て直したい考えだが、米国の経済制裁が続く中、効果は限定的となりそうだ。
10日に2期目が始まったばかりのマドゥロ氏は「労働者のため、国民の最低賃金を1万8000ボリバルソベラノ(Bs)に引き上げる」と表明した。従来の水準から4倍となったが、一般市民が利用する闇市場での実勢レートでは月額6.8ドル(約735円)にすぎない。
独自の仮想通貨「ペトロ」普及のため、主要な国営企業に対し、売上高のうち15%をペトロで販売するよう命じた。ペトロは昨年2月に発行したが、ほとんど流通していない。
年率170万%近い物価上昇が続く中、マドゥロ政権は毎月のように最低賃金を引き上げているが、引き上げがさらなるインフレ要因となる悪循環が続いている。仮想通貨ペトロを流通させることで物価抑制を狙う政策についても、効果は不透明だ。
今回の発表では「1ペトロ=3万6000Bs」としているが、昨年8月に設定した1ペトロ=3600Bsから価値が10分の1に下落している。米国の経済制裁による外貨と物資の不足が解決されずインフレが続いているためだ。
マドゥロ氏を巡っては米国や欧州連合(EU)のほか、主要な周辺国が昨年5月の野党指導者を排除した大統領選が無効だとして、大統領と認めないと表明している。野党が多数派を占める国会のフアン・グアイド議長はマドゥロ政権が憲法違反だとして「暫定大統領」に就任したと宣言したが、13日に治安部隊に一時拘束されるなど、政権は野党勢力への圧力を強めている。