株安・円高で損が出た 「損益通算」使って税還付
確定申告のポイント(1)
2018年分の所得税の確定申告の期間は2月18日から3月15日だ。確定申告のポイントを解説する。連載の第1回は金融商品への課税。株式と公社債などの損益通算や損失繰り越しを上手に使えば、節税につながる。
相殺処理で利益圧縮
会社員の多くは勤務先で年末調整をしていれば確定申告は不要だが、中には確定申告が必要だったり、確定申告で節税できたりする人がいる(表A)。資産運用をしている人も同様だ。
18年は日経平均株価が1年間で12%下落。資産運用の環境は総じて個人には厳しかった。相場が乱高下し、慌てて損切りに走った投資家もいるだろう。
売却損が出た商品があるなら、損益通算ができないか検討してみよう。損益通算とは損失と利益を相殺処理すること。金融商品の中には損益通算ができる組み合わせがある(図B)。
特定口座は自動で
例えば、18年に比較的好調だった国内不動産投資信託(REIT)の運用で得た分配金や売却益などが30万円、上場株式の売却損が20万円あるとする。損益通算をすることで課税対象となる利益を10万円に圧縮できる。
源泉徴収ありの特定口座を利用しているなら、同一口座内の損益は自動的に相殺され、申告しなくても課税は終了する。複数の口座で運用しているなら、損益通算をするためには確定申告が必要だ。「1月下旬ごろに金融機関から届く特定口座年間取引報告書を保管し、売却損の金額をチェックしよう」(角田壮平税理士)
損益通算をしても損失が残るなら、確定申告をして損失を翌年以降に繰り越す制度を活用したい。18年分の所得税には影響しないが、向こう3年間繰り越し、その年の利益と相殺できる(図C)。
損失の繰り越しは毎年申告
18年に100万円の損失が出て、確定申告をして翌年に繰り越すとする。19年、20年に利益が出ても、前年から繰り越した損失を差し引けるため課税されない。21年に損益差し引き後の利益20万円に対してのみ、課税される。
SMBC日興証券の税制・制度調査課長、植村繁氏は「損失を繰り越すには初年度だけでなく毎年、確定申告をする必要がある」と助言する。損失の繰り越しについては、源泉徴収ありの特定口座で運用していても、確定申告が必要なので注意したい。
外国為替証拠金取引(FX)の損益は、日経225ミニ先物など先物商品と損益通算できる。FXなど先物取引についても株式と同様、損失を3年間繰り越せる。
ビットコインも損益通算
17年に人気が沸騰した仮想通貨は18年に大きく下落。主要通貨ビットコインの下落率は8割近くになった。仮想通貨の売却損は、外貨預金の為替差益や公的年金、副収入など他の雑所得と損益を通算できる。やはり、確定申告をすれば節税につながる。
仮想通貨については国税庁が18年11月から、同庁のウェブサイトで「仮想通貨の計算書」という表計算ソフトを公開している。取引業者から送られてくる年間取引報告書を基に、この計算書に数字を入力すれば、所得金額を簡単に把握できる。
(南毅)
[日本経済新聞朝刊2019年1月19日付]