日本で不足、「セキュリティ人材」どう育てる 国内の大学では学べない現場で使えるスキル

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イギリス・ウェールズの大学では、実践的なサイバーセキュリティのスキルを学べる学位のプログラムが豊富だ(写真:Cardiff University)

仮想通貨取引所のコインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出。SNS世界最大手の米フェイスブックから数千万人規模の個人情報が流出していたことが相次ぎ発覚。スマートフォン決済アプリ「ペイペイ」でクレジットカードの不正利用が噴出――。2018年だけでも、サイバーセキュリティを揺るがす問題が数多く起きた。

今、日本にはセキュリティに携われる人材が足りない。経済産業省の試算によれば、2018年時点で国内に約32万人いるが、16万人が不足。2020年には約20万人が不足する計算になっている。今年はラグビーのW杯、来年には東京オリンピック・パラリンピックも控えており、日本に注目が集まる機会が増える。サイバー攻撃のリスクも高まる一方だ。

経産省の調査によると、量的な要因としては「本業の忙しさ」、質的な要因としては「教育や研修を行う余裕がない」を挙げる企業が多いという。中でも中小企業は、そもそもセキュリティ担当者がいないケースが過半数に上る。総務省はセキュリティ人材育成対策に関する検討会を開き、今春に報告書を取りまとめる方針だ。

セキュリティ専門家の危機感

「日本にはテロ対策までできるセキュリティの専門家がいない。国際感覚ももっと必要だ」。そう指摘するのは、警察庁サイバーフォース訓練主任講師を務めるセキュリティの専門家・草場英仁氏。ハッカーの国際会議「デフコン」のコンテストでさまざまな入賞経験もある同氏は今、企業の人材や学生を、ある“セキュリティ先進国”に送り込む育成プログラムを企画中だ。

その国とは、イギリス。中でも南西部に位置するウェールズには、セキュリティの最先端研究が行われている大学が集積している。実は2015年のフランス・パリ同時多発テロ事件で犯人のアジトを突き止めたのは、ウェールズにあるスウォンジー大学の研究チームだった。

また、サウスウェールズ大学の研究機関は、デジタルフォレンジクス(コンピュータに残された法的証拠を探すための分析手法)の世界的権威として知られ、イギリス政府の諜報機関「政府通信本部(GCHQ)」とも密接に連携している。2017年にはウェールズ政府と共同で、国立サイバーセキュリティアカデミーを創設。産学で人材育成に取り組む。

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