エヌビディアに逆風 仮想通貨バブルはじけ中国減速
【シリコンバレー=佐藤浩実】半導体業界で急成長した米エヌビディアが逆風にさらされている。中国経済の急減速を受けてゲーム用パソコンやデータセンターで使われる画像処理半導体(GPU)が振るわず、2018年11月~19年1月の売上高を2割下方修正した。仮想通貨バブルがはじけたあおりも受け、華やかなイメージと裏腹に業績の十分な支え役がいない状況があらわになった。

エヌビディアはゲーム用GPUの事業が主体だったが、人工知能(AI)の発展の波に乗って急成長した。膨大な計算を速くおこなうGPUの特性が、最新のAIである深層学習(ディープラーニング)の計算に適していたためだ。株価は18年10月に過去最高値の289ドル(約3万1600円)となるまで、3年間で11倍に膨らんだ。
そのエヌビディアが今月28日に発表した18年11月~19年1月の売上高見通しは、前年同期より24%低い22億ドルだった。
「異常な変化がいくつも起きた大変な四半期だった」。ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は業績修正と同時に投資家に書簡を出し、市場の異変を説明した。
ファン氏は1月上旬、米ラスベガスの家電・技術見本市「CES」で、18年は中国でゲーム用パソコンがかつてなく売れたと話した。そこから状況は一変。パソコンに取り付けて映像を滑らかにするGPUの購入を消費者が控えているという。同社は売上高の2割を中国で稼いできた。
さらに、サーバーを置くデータセンターへの投資がしぼんだ。年明け以降、商談はあるが、成約に至らない事例が増えている。ファン氏は「経済の不確実性が増し、顧客がますます注意深くなっている」と指摘する。
米アップルや米キャタピラーなど、中国経済の影響が及ぶ企業は当然他にもある。エヌビディアにとってそれが他社以上に悩ましい理由は、仮想通貨バブルがはじけた影響も受けているからだ。
18年1月に起きた仮想通貨交換大手、コインチェックによる巨額流出事件の1カ月ほど前、ビットコインは2万ドル近い価格を付けていた。現在の相場は当時の5分の1に落ち込み、取引市場は急速に縮んでいる。
エヌビディアのGPUは、コンピューターを膨大に活用して仮想通貨を得る「採掘(マイニング)」と呼ぶ作業にも使われる。一時は需要が急増したものの過剰在庫へ一変しており、同社は在庫一掃のためちょうど出荷を抑え始めたところだった。

QUICK・ファクトセットによると、エヌビディアの時価総額は3つの逆風を受け、18年10月の1759億ドル(約20兆円)から、直近の841億ドルまで5割減った。
逆風はエヌビディアの実態を浮き彫りにした。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンなどとの協業を矢継ぎ早に発表し、自動運転を支える旗手というイメージを築いていたが、自動車向け売上高は全体の5%ほど。メーカーの開発の現場に入りこんでいるものの、まだ量産に至らない。
ファン氏は1月上旬、ビジネスの現状について「仮想通貨のうたげの二日酔いの状態。冷めれば通常に戻る」と語ったが、むしろ悪化している。
同社は今月、グラフィックの表現力を高めた新しいGPUを手ごろな価格の349ドルで発売した。世界に数百万人いるゲーマーの需要喚起を狙う。停滞を乗り切る上で十分かどうかはわからない。ただ、手を打ち続けなければ、目を見張る成長をみせてきたエヌビディアの衰退につながりかねない。
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