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「社長やらない?」とカリスマからバトン、マネックス証に女性社長

  • 地銀との連携拡大や仮想通貨の取り扱いなどで競合上位を追撃へ
  • 創業者・松本会長への依存度を引き下げ、一人一人の意見引き出す

「ここから攻めます。これからが楽しみな時期です」。威勢のいい言葉が次々と飛び出す。1日付でマネックスグループ傘下のマネックス証券社長に就任した清明祐子氏(41)は、国内の5大インターネット専業証券で初の女性社長となった。

Monex Inc. President Interview

清明・マネックス証券社長

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  新社長に託された課題はなかなか難問だ。ネット証券の中で、同社は口座数、預かり資産残高ともに後発のSBI証券、楽天証券に大きく水をあけられている。清明氏はこの事実を率直に認め、これまでともすれば自社内でサービスを完結させたがっていた姿勢を改め、他社との提携などを通じて顧客基盤を拡大することで、先行する2社を追撃する方針を示した。

オンライン競合の背中を追う

マネックス証は個人株式委託売買代金シェア獲得で苦戦

出所:SBIホールディングス

備考:2018年4-12月期。その他は対面証券の合計

  柱の一つは地銀との連携だ。今年2月に荘内銀行、北都銀行の顧客向けに金融商品の仲介サービスの提供を開始。資本関係のない地銀向け仲介サービスは初めてとなる。競合のSBI証券はこれまでに約30行の地銀と連携するなど先行するが、清明氏は、個人向けセミナーを年約200回開催するなど「投資教育にはどこよりも力を入れている」と述べ、そうしたノウハウの提供で独自性をアピールしていくとした。

  また、1月に金融庁から仮想通貨交換業者として認定されたマネックスG傘下のコインチェックとの連携を本格化させる。コインチェックの顧客層は20ー30代が中心と、40-50代のマネックス証と重ならない。マネックス顧客に仮想通貨を売り込むなど相互に商品を紹介して顧客の選択肢を広げる戦略だという。数値目標などは今後検討するとした。

カリスマ依存を軽減

  清明氏がマネックスGの傘下の投資銀行マネックス・ハンブレクト(当時)に入社したのは09年。リーマン危機を受けて勤務先のプライベート・エクイティファンドが運用ファンドを解散することになり、偶然見つけた転職先だった。33歳で同社の社長となり、グループ内の出世街道を駆け上がった。

  マネックスGには役員の個室がない。松本大・マネックス証会長とは席が隣同士。社長就任の打診も特に重々しいものではなく「ちょっと社長やらない?」とサラッと言われたという。荷が重いと思ったが「ここで引き受けないと次につながっていかない」と一歩踏み出した。後進の女性たちに「取れるチャンスはありがたく取り、まずやってみること。女性だからと心無い言葉をかけてくる人もいると思うが、真の評価でない評価で傷つくことやキャリアを曲げるのは損です」とハッパをかける。

  マネックス証創業者の松本氏から受け取るバトン。清明氏は「松本はカリスマであり顧客にファンも多い」とし、松本氏の路線を基本的に継承する意向だ。一方で、この機会に松本氏への依存を減らし、ほかの社員の顔も見えるマネックス証にしたいと思っている。「これまで松本頼みになっていたところを、もっと一人一人の意見を引き出し、経営に反映させていきたい。皆で作っていくマネックスにできたらいいですね」

  ●清明祐子(せいめい・ゆうこ)1977年9月生まれ、大阪府出身。2001年に京都大学経済学部を卒業し、三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。PEファンドを経て09年2月、マネックス・ハンブレクト(現マネックス証券)入社。19年4月、マネックス証社長に就任。マネックスG常務執行役を兼ねる。趣味は登山で日本の百名山踏破を目標にすでに44の山に登った。独身。

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