スマートフォンによる実店舗決済サービスの元祖とも言える米スクエア(Square)。POS(販売時点情報管理)レジから営業支援、データ分析と中小小売店向けのサービス拡充を急ぐ。2019年3月にはクレジットカードに加えてApple Payなど非接触ICによる決済が使える製品を日本で投入した。日本でQRコード決済が急速に広がるなか、あえて非接触IC決済を選んだ理由は何なのか。創業者でCEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー氏に聞いた。
スマートフォン決済の先駆けとして知られるスクエアですが、中小企業向けのPOSレジや営業支援システムなど事業を拡大しています。
当社が目指しているのは様々な企業がシンプルな方法で経済活動に参加できるようにすることです。特に焦点を当てているのは中小企業。手数料が高いなどの問題でクレジットカード決済を導入できなかった、中小規模の事業者です。
2009年の設立以来、私たちは中小企業に向けたサービスやAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の開発を通じて、彼らがITを活用したビジネスを営むためのエコシステム(生態系)を構築してきました。
中小企業のフリクションポイント(困りごと)をITで解消するという、創業当初のビジョンに変わりはないというわけですね。
まさにその通りです。スマホ決済は当社が提供する中小企業向けサービスの1つにすぎません。現金を取り扱わずにスムーズに決済できるキャッシュレス決済からPOSレジ、顧客や販売実績といったデータの分析、請求書の管理や発行まで、小売店をはじめとする中小の事業者が成長するうえで必要なサービスを提供します。
機材が高価なため導入のハードルになっているのか、あるいはテクノロジーが十分に成熟しておらず使いづらいのかなど、中小企業にとってハードルになっていることを明らかにして取り除いていきたいと考えています。結果、シンプルでエレガントなデザイン、安価で使いやすい機能の製品やサービスを提供する。これを徹底している点が、当社の差異化点になっていると思います。
今では中小企業から大企業へと、当社のサービス対象企業を拡大しています。レガシーな決済システムを利用している大企業でも、スクエアのAPIを使えば既存システムを生かしたまま新しい決済機能を柔軟に使いこなせます。
スマホによる実店舗決済は日本をはじめ世界で急速に広がっています。先駆者として意義や可能性をどうみますか。
iPhoneやiPadなどの機器にはクレジットカードを読み取る機能がなく、そのままでは決済用の端末としては使えませんでした。当社がシンプルな読み取り装置とソフトウエアを加えたことで、iPhoneなどの機器を非常にパワフルな決済用端末に変えました。デジタル化された経済活動が世界的に広がるなか、中小企業にも参加する道を開きました。この広がりは今も続いていますし、今後もさらに広がるとみています。