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FATFの仮想通貨に関するガイダンスと解釈ノートとは?

「仮想通貨」と「仮想通貨サービスプロバイダー」の定義と国際的な規制基準

(Image: Shutterstock.com)

金融活動作業部会(FATF)は、マネーロンダリング(資金洗浄)およびテロ資金供与対策(AML/CFT)に対する国際的な勧告(FATF規制基準)の策定および見直しに取り組んでいる。

仮想通貨に対するガイダンスは2015年時点で出しているが、2018年10月の報告では、犯罪やテロに仮想資産が使用されることを防ぐために、すべての国が早急に協調措置を取る必要性を強調した。「仮想資産(virtual asset)」と「仮想資産サービスプロバイダー(virtual asset service providers)」の定義も新たに追加した。本稿においては混乱を避けるため、以後は「仮想資産」を「仮想通貨」と明記する。

FATFが定義する「仮想通貨」とは、デジタル方式で取引や移転が可能で、決済や投資目的で使用できるほか、交換手段、計算単位、価値貯蔵して機能するデジタル的な価値の表現とされる。国家が定める法定通貨とは異なる点をFATFは強調している。

「仮想通貨サービスプロバイダー」とは、取引所や特定種類のウォレット提供者、新規仮想通貨公開(ICO)向けの金融サービスなどを指す表現とされる。仮想通貨を扱う地域が、仮想通貨サービスプロバイダーを継続的に監視し、記録を保持し、疑わしい取引を報告するなどの顧客資産の調査活動を実施すべきとFATFは主張する。

FATFが2019年2月に発表した勧告15の解釈ノートでは、仮想通貨サービスプロバイダーの規制に関する草案が提案された。たとえば、仮想通貨サービスプロバイダーは国や地域で免許取得または登録が必要で、各国は必要な免許や登録なしに仮想通貨サービスプロバイダーの活動を行う個人または法人を特定して適切な制裁措置を適用すべきで、監督当局は必要に応じて免許や登録の撤回・制限・停止などの懲戒や金融制裁などを執行する権限を持つべきだという。

さらにFATFの解釈ノートでは、1,000ドル以上または1,000ユーロ以上に相当する仮想通貨の送受金には、仮想通貨交換所などの仮想通貨サービスプロバイダーに対して厳格な身元確認義務を要求する可能性に言及。取引相当額が1,000ドルまたは1,000ユーロを超えたりマネーロンダリングおよびテロ資金供与の疑いがある場合、仮想通貨の移転に必要な委託者と受益者の正確な情報を入手・保管し、要請に応じて当局が利用できるようにすべきであるというのだ。

なお、本稿執筆直前の2019年6月に福岡市で開かれていた主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議(G20サミット)では、FATFの改訂規制基準を適用するという強いコミットメントが再確認された。また、同会議ではFATFのガイダンスと解釈ノートにも言及があり、FATFが同月の会合でそれらを採択することを期待するというG20の立場が再表明されていることから、仮想通貨に関する国際的な規制基準はようやく今月にも明確になりそうだ。