業界はFacebookの仮想通貨「Libra」をどう見ているのか

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  • author Patrick Howell O'Neill - Gizmodo US
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  • Kaori Myatt
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業界はFacebookの仮想通貨「Libra」をどう見ているのか
Image: Chip Somodevilla/Gettyiamges

脱ドル決済か世界統一通貨か。

ザッカーバーグ帝国もすごい構想を練りますね。ネット決済がようやく浸透し始めて、キャッシュレスも進みつつあるこのご時世。暗号通貨とどうちがうんでしょうね。暗号通貨にも手が出せてない人にとっては慎重にならざるをえないような新たな独自通貨「Libra」とは...? これって普通のお金とどう違うんでしょう。

細かいことはおいおい誰かが掘り下げてくれるとして、業界でどんなことがささやかれているのかを、米ギズモードのPatrick Howell O'Neillがまとめてくれました。


今回のデジタル通貨の発表でFacebookが得た収穫は...とりあえず、スポットライトを浴びたってことくらいかな。

アメリカヨーロッパ両方の規制機関は、愚かにも見守り姿勢にはいってますが、米ではマクシン・ウォーターズ下院議員が計画の中止を要請するようさっそく呼びかけており、新聞という新聞、そしてテック企業というテック企業、そして世界各地のあちらこちらの政府が、こぞってこのFacebook通貨の行く末を凝視しております。そしていろんな疑問がふつふつと沸き出ているのですよね。

「Facebookは巨大で力を持ちすぎている。傲慢になりすぎたあまりに、プライバシーに配慮することなく、ユーザーのデータを蹂躙し続けています」

米上院議員シェロッド・ブラウンは 「Facebookにリスク満載の暗号通貨をスイス銀行から発行するようなマネをさせてはならない」としています。「金融関係者らにユーザー保護は万全か、綿密に調査させているところです」とも。

それじゃ暗号通貨業界ではこれについてどう思われているのでしょう? これはテクノロジーという衣装を身にまとった道化師が、曲芸しながら仮想銀行を経営するようなもんです。暗号通貨の世界ではどうかというと、ザッカーバーグのこの新しいデジタル通貨のお遊びに、やはり注目しているんです。ポジティブで楽観的な人たちもいれば、「テクノポカリプス」(シンギュラリティによる世界の破滅)がついにやってきたと恐れおののく人たちもいます。怖いですね。

それではまとめてみましょう。

1. 明るく捉えるべきだよ派

アメリカで影響力を持つ、ビットコイン提唱者のエリック・ボールヒーズは、楽観視している人のひとり。Facebookの暗号通貨の参入はブロックチェーン業界全体で明るく捉えるべきとの見方。

ボールヒーズは「よく考えたら、これは(暗号通貨)業界にとってすごいこと」とツイートしています。「世界最大の企業が暗号通貨を立ち上げるなんて。爆発的だ

と、いったんはそのすごさを讃えておきながら、その後Libraのプライバシー問題についてもふれています。

Libraが「ピュアな暗号通貨ではない」のは明らか。使うんだったら、最初からプライバシーなんか気にしちゃいけないってことです。ボーダーレスな暗号通貨なんてそもそも期待するほうがおかしいんです。たとえば、Libraは制裁のあるイランでは絶対に使えるようにはならないしね。 暗号通貨はずっとすぐれています。でも現実問題として、Facebookが抑止できないようなだいそれたコインを作り出すなんてありえないんです(まあ少なくともこの初期段階ではね)。

暗号通貨ウォレットBRDのヴァイスプレジデント、スペンサー・チェンも楽観視しているひとり。「これでブロックチェーンが一般に浸透してくれれば。こういう加速がブロックチェーンには必要だった」とつぶやいています。

2. Redditは揶揄しまくり

面白いじゃないですか。それではReddit界隈ではどんな話がささやかれているのでしょうか。まず、プロパガンダスタイルのポスターやコメントがちらほらです。

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ザッカーバーグが見ている。ひとつの世界。ひとつの通貨。
Image: Reddit /r/CryptoCurrency

Redditらしいですね。

/r/CryptoCurrency や /r/Bitcoin などのサブRedditは、Libraをもっと掘り下げていて、Libraについての揶揄が展開されています。一元化管理、ビッグブラザー、不換紙幣...などなど。言いたい放題です。また業界をあげて興奮している人たちもいるんですね。

3. 世界を変革させる可能性があるよ派

ジェリー・ブリトロは調査NPOのCoinCenterのエグゼクティブディレクター。Libraの将来について重要な発言をしています。

Libraについてだけど、公共ブロックチェーンといっていいね。公に認識されるから公共といっていいし、アプリケーションレイヤーもオープンだし。バックアップされているステーブルコインともいえる。普通のブロックチェーンとは違いがある。

暗号通貨業界以外で特に、この計画についての疑問が寄せられていますが、暗号通貨業界では世界を変革させる可能性が注目されているのです。これがいい方向へ転ぶか、悪い方に転じるかは別として。まあ、この業界の人たちはおおげさで誇張するのが常ということを考慮にいれて割り引いて考えてもいいのかもしれませんが。

暗号通貨取引のBinanceのCEOジャオ・チャンポンは、Facebookには「決済業界を変革するチャンスを手にしている」としています。「世界の脱ドル化をすすめるきっかけ」とも。

4. 暗黒面が気になるよ派

ジョンズ・ホプキンズ大学の暗号通貨スペシャリストマシュー・グリーンは、暗黒面をみつめている人のひとり。

いつもどおり、Facebookが考えるLibraのプライバシーの優先度は一番後ろの後ろ。

いずれにしても、Libraの立ち上げに向け、来年にはこれらの疑問に答えていただかねばなりません。実際の通貨の流通は、2020年の前半には間に合わない可能性が高くなっています。

これをお読みのあなたがどちらの側にいるのかはわかりませんが、歴史上もっともパワフルでもっとも巨大の企業が、お金のあり方を変えようとしています。期待に胸膨らませていようが、ディストピアに恐れを抱いていようが、ザッカーバーグ帝国の動きは、これからもっと見逃せなくなりますよ。

で、さしあたった、あなたのリアクションはこれかも?