Libraの2つの顔 超国家企業連合か、暗号通貨の「伝統」か(1/6 ページ)

» 2019年06月30日 23時40分 公開
[星暁雄ITmedia]

 2019年6月18日、米Facebookは同社が準備中とうわさされていた暗号通貨(注)Libra(リブラ)を発表した。Libraの構想や設計を記した文書「Libraホワイトペーパー」と、ソフトウェア環境のプロトタイプを公開したのである。それと同時に、Libraは大きな反響を巻き起こした。一言でいうと、世界の金融当局が警戒色に染まったのだ。

2つの顔を持つLibra

 発表の直後、米下院の有力議員であるマキシン・ウォーターズ氏(民主党、下院金融サービス委員会の委員長)は、Facebookに対してLibraの開発中止を求めた。膨大な個人データを保有するFacebookの影響力拡大を懸念したものだ。6月25日には、FSB(金融安定理事会)が各国の首脳に書簡を送り、事実上Libraを名指しした規制を求めた。これも巨大なユーザー数を抱えるFacebookの影響力を懸念した動きといえる。そのほか、各国の金融当局や議会からもLibraを警戒する発言が相次いだ。

Libraはなぜ警戒されるのか

 Libraへの警戒が強い理由は大きく3点ある。

 1点目は、なんといってもLibraの潜在的なインパクトが巨大だからだ。Facebookをはじめとする巨大IT企業(BigTech、あるいはGAFA)は、今や大銀行をしのぐ時価総額と知名度、ユーザー数を抱えている。Facebookの各サービスだけで世界中に27億人といわれているユーザーを抱えている。専門家は、彼らが金融システムに参入するなら影響は大きいと予想していた。

 Libraはグローバルな企業連合により推進する構想である。スイスに本拠地を置く「Libra協会」のメンバーとして、28の企業、団体の名前が発表されている。それぞれが1000万ドル以上の資金を供出する仕組みだ。

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