リブラ、当局承認まで発行せず FB幹部が議会証言へ
【シリコンバレー=白石武志】フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」の構想に関して米上院が16日に開く公聴会での同社幹部の冒頭証言の要旨が15日、明らかになった。規制当局の承認を受けるまでリブラを使った金融サービスを提供しないと明言する内容だ。米金融当局は同構想の審査に1年以上かかるとの見通しを示しており、同社が2020年前半とするサービス開始は遅れる可能性が強まった。
公聴会に先立ち、米上院銀行委員会がフェイスブック幹部のデビッド・マーカス氏による冒頭証言の要旨を公表した。米議員らはプライバシー保護などのリスクを慎重に審査する必要があるとしている。マーカス氏は要旨の中で「規制上の懸念を解消し、適切な承認を受けるまでリブラを提供しない」と表明し、規制当局側の意向に従う姿勢を示した。
国境を越えて流通することを目指すリブラの意義について、マーカス氏は従来の決済や送金サービスに比べ「より効率的で低コスト、安全な代替案になると信じている」と説明。IT(情報技術)産業の育成に力を入れる中国を念頭に「我々が行動に失敗した場合、価値観が劇的に異なる人々によってデジタル通貨が支配されることになるだろう」とも指摘している。
フェイスブックは世界で27億人に上るSNS(交流サイト)の利用者を基盤にリブラを普及させる計画で、米議会ではドルなどの法定通貨を超えた影響力を持つことへの警戒感も広がる。マーカス氏はこの点について「いかなる法定通貨とも競争する意図はない」と述べ、従来の金融政策を妨げることがないよう「米連邦準備理事会(FRB)や他の中央銀行と連携する」と説明した。
ただ、国境をまたいだ資金移動は資金洗浄などの温床となるリスクも抱えるだけに、米金融当局側の警戒感は根強い。FRBのパウエル議長は11日の米上院での証言でリブラの構想について「リスクを極めて慎重に審査する必要があり、それが1年以内に完了するとは思わない」と指摘している。
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