本気度高め。ビットフライヤーと住友商事が手がける不動産ブロックチェーン

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ビットフライヤー・ブロックチェーンの加納裕三社長。

撮影:小島寛明

暗号資産(仮想通貨)交換所bitFlyer(ビットフライヤー)の創業者・加納裕三氏らが立ち上げたbitFlyer Blockchain(ビットフライヤー・ブロックチェーン、以下bFBC)が住友商事と組み、不動産のプロジェクトをはじめた。

両社が2019年7月23日、業務提携を発表した。

改ざんがほぼ不可能とされるブロックチェーン技術を使って、マンションや家の賃貸契約を結ぶ際の手続きを、スマホで完結できるようにするという。

bFBCと住友商事は、2020年中に一般のユーザー向けのサービスを始める予定だ。

ブロックチェーンにフォーカスした新会社

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住友商事とbFBCが連名で配信したプレスリリース(タップするとPDFが開きます)。

出典:bitFlyer Blockchain

不動産プロジェクトの前にまず、新会社bFBCの位置づけから説明する必要がある。

加納氏らが2014年1月に立ち上げた会社が、仮想通貨の交換所ビットフライヤーだ。同社は2018年6月、内部管理態勢が整備されていないなどとして金融庁の業務改善を受けた。

業務の改善を進める中で、ガバナンスの強化などを目的に、持株会社化するなどして会社の組織を大幅に変えた。

創業者の加納氏らは、ビットフライヤーの役員を退くことになった。

現在の会社の立て付けをおおざっぱに整理すると次のようになる。

親会社
  • bitFlyer Holdings(ビットフライヤー・ホールディングス)=持株会社

子会社

  • ビットフライヤー=暗号資産交換所
  • ビットフライヤー・ブロックチェーン=ブロックチェーン関連の研究開発など

交換所の経営からは完全に離れることになった加納氏は、非金融領域でブロックチェーンの活用を目指すbFBCの社長に就任。ビットフライヤーの共同創業者・小宮山峰史氏もbFBCの取締役になった。

約1カ月前の6月28日、ビットフライヤーに対する業務改善命令は解除された。

スマホで家を借りる

miyabiのデモ

ビットフライヤーが開発したオリジナルのブロックチェーンmiyabiのデモ

撮影:小島寛明

「ブロックチェーンを使えば、不動産の賃貸借プロセスが大幅に簡略化できる。スマホで家が借りられるようにしたい」

23日に新たなプロジェクトを発表した加納氏は、開発中のサービスをこう説明する。

bFBCと住友商事が指摘するように、賃貸住宅を借りるのは、けっこう大変な作業だ。

例えばマンションの部屋を借りたい人はまず、まちの不動産業者に行って、気になる部屋を見て回る。不動産業者の世界では「内見」と呼ばれる手続きだ。

気に入った物件があれば、身分証明書のコピーなどの本人確認書類を含む申込書類を提出する。

仲介会社や不動産管理会社、オーナーらは、申込書類などを基に、貸すことができるか、貸していい相手かどうかを審査する。

審査を通過した後は、契約だ。紙の契約書が郵送で関係者の間を巡り、手続きに時間がかかる原因にもなっている。

一連の手続きには2週間から1カ月半ほどの時間がかかるという。

不動産業者の事務負担は削減できるか

住友商事の中本昭人部長

ビットフライヤーブロックチェーンとの業務提携を発表する、住友商事の中本昭人・不動産投資開発事業部長。

撮影:小島寛明

今回のプロジェクトは、内見から申込、審査、契約に至るまでの手続きにブロックチェーンを取り入れ、賃貸契約のプラットフォームを開発する。

運転免許証などユーザーの本人確認書類、源泉徴収票など審査に必要な書類は、スマホで撮影してアプリでプラットフォーム側に送ってもらう。

そのうえで、貸主側はユーザーから送られてきた文書を審査する。現状では紙ベースの手続きで、ファクスや郵送がいまも多用されている。

契約は紙にハンコをつかず、アプリ上で完結させる。契約書に電子署名をして、ブロックチェーン上に記録する。

現状の一般的な不動産契約では、家を借りたい人は、最初の相談、内見、カギの受け渡しなど複数回、不動産業者の店舗に足を運ぶことになる。

住友商事の中本昭人・不動産投資開発事業部長は「店舗を何度も訪れるのが難しい人でも、スムーズに不動産を探せるようになる」と話す。

最初に店を訪れてから契約完了までの時間を大幅に短縮し、仲介会社や管理会社の事務負担も削減することを目指すという。

「目に見えるものを提供したい」

今後は、「月々の家賃の支払をアプリを使って効率化していく」(中本氏)との考えだ。

ただ、現時点では仮想通貨との連携についての言及はなかった。

ブロックチェーンは、さまざまな分野への応用が期待されているものの、ビジネスとして成り立つプロジェクトは、ほとんど登場していない現状がある。

加納氏は「目に見えるものを提供しない限り、肌触り感をもって、これで世界が変わったんだなって実感してもらえない」と話す。

(文、写真・小島寛明)

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