明暗わかれた仮想通貨各社。テックビューロは廃業へ、背後で「そろりと攻勢」の2社

TIMA0680

撮影:今村拓馬

お盆明けから、仮想通貨(暗号通貨)業界の動きがあわただしくなってきた。

2019年8月20日には、大手暗号資産交換業者bitFlyer(ビットフライヤー)が、ビットコインとTポイントを交換できるサービスを発表。22日には、コインチェックが、取引所が主体となって企業などのトークンによる資金調達を支援する事業を検討するとの方針を明らかにした。

一方、テックビューロはこの日、利用者への返金などの手続きが完了し次第、完全に廃業する方針を発表した。

この3社は、いくつかの共通点がある。

ビットフライヤーは2014年1月、テックビューロは2014年6月に創業。コインチェックの創業は数年早いが、3社ともに、近い時期に仮想通貨の取引所の事業を始めている。

いずれも、証券会社などの傘下ではなく、数名の個人がスタートアップ企業として立ち上げた点も共通する。

厳しい1年半

和田晃一良氏

コインチェックの創業者・和田晃一良氏(右)、勝屋敏彦社長(左)

撮影:小島寛明

3社はこの1年半ほど、厳しい時期にあった。

2018年1月にコインチェックが580億円相当の仮想通貨を盗み出され、同4月にネット証券大手マネックスグループの傘下に入った。

テックビューロとビットフライヤーも、社内の管理態勢の不備などを問われ、相次いで金融庁の業務改善命令を受けた。

さらに、2018年9月には、テックビューロがハッキングを受け67億円相当の仮想通貨が流出。この事件の影響で、テックビューロは運営していた取引所「Zaif」をフィスコ仮想通貨取引所に譲渡した。

今回、テックビューロが廃業を発表したのは、フィスコへの事業譲渡に伴うものだ。正式な廃業の時期は未定だという。

一方、マネックス傘下で態勢整備を進めていたコインチェックは、2019年1月に金融庁への交換業者としての登録が認められた。ビットフライヤーが大幅な組織改編を経て、金融庁の業務改善命令を解除されたのは、6月のことだ。

この間、3社の創業者たちは、いずれも経営トップの座を退いた。テックビューロの朝山貴生氏とビットフライヤーの加納裕三氏は取引所の運営から離れ、コインチェックを立ち上げた和田晃一良氏は現在、同社の上級執行役員を務めている。

6月ごろから始まった「再始動」

ビットフライヤーの業務改善命令が解除された6月ごろから、加納氏とコインチェックの和田氏は少しずつ、公の場に顔を見せるようになってきた。

コインチェックが22日に発表したのは、「IEO(Initial Exchange Offering)」の事業化の検討開始だ。

2017年ごろから、トークンと呼ばれる仮想通貨の一種で資金を集めるICO(Initial Coin Offering)が話題を集めた。ただ、実現性の低いプロジェクトに多額の資金が集まり、詐欺まがいのICOも相次いだ。

こうしたICOの課題解決を目指す仕組みがIEOだ。

資金を集めたい企業や団体は、取引所にIEOを委託。取引所はIEOの実施主体にプロジェクトの実施能力があるか、プロジェクトに実現性があるかなどを審査する。

IEOやICOをめぐっては、2020年4月に施行される改正資金決済法が影響する。現在、金融庁などが、法改正の内容に基づく具体的な制度設計の詳細を詰めている。

コインチェック側は「具体的な制度設計がまだはっきりしない」として、監督当局による制度設計の行方を見極めつつ、IEOの事業化を進めたい考えだ。

仮想通貨で「ポイント投資」

加納裕三氏

ビットフライヤーの創業者・加納裕三氏。

撮影:小島寛明

ビットフライヤーが8月20日に発表したのは、Tポイント・ジャパンとの提携だ。ビットフライヤーのユーザーは200万人超。一方、Tポイントの会員数は6961万人(2019年7月末現在)にのぼる。

Tポイント100ポイントに対して、85円相当のビットコインと交換できる。証券会社なども導入している「ポイント投資」と呼ばれる仕組みだ。

ポイントで手軽に投資を始めてもらうことを通じて、新たなユーザーを獲得する狙いがある。

一方、テックビューロの朝山氏の動向はこのところ、あまり聞こえてこない。

金融庁は、仮想通貨業界に対する厳しい監督姿勢を崩していない。

交換業者の幹部は「慎重に慎重に動かざるをえない状況は変わっておらず、“謹慎期間”が終わったとは思えない」と話す。

(文、写真・小島寛明)

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み