ビットコインで世界は変わらないし、革命も起こせない

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  • author satomi
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ビットコインで世界は変わらないし、革命も起こせない
Image: Chris McGrath/Gettyimages

国家から通貨を奪えば人は自由になれる、戦費調達も不能になって戦争がなくなる、なんていうのは絵空事だったのか…。

ビットコイン誕生から11年。世界各地の反政府デモを見る限り、暗号通貨誕生前と状況は何ひとつ変わっていないようです。


香港

中国返還を前に旧宗主国つながりのバンクーバーにどっと移住が進んでホンクーバーになった1997年のように、長引く反政府デモを引き金に東南アジアへの移住希望者が増え、シンガポールなどに資産を移す動きも目立ってきていますが、それはあくまでも銀行口座経由であって暗号通貨の出番はほぼないようです。

クラウドファンディングを募って、反政府デモで逮捕された市民の訴訟・医療費用を支援していた非営利団体「星火同盟(Spark Alliance)」のThe Prime Management Service Ltd名義の口座も先日HSBCに凍結通告された模様です。「本来の目的と異なる用途」というのが銀行側が発表した正式理由。

Video: ReasonTV/YouTube

しょうがないので、HKMap LiveやHong Kong Free Pressはビットコインで寄付を集めているのですが、「反政府デモの地域ではネットがつながらない」ので、「当座引き出す必要のない、海外からの寄付集めぐらいにしか使えない」と市民運動の人はcoindeskにこぼしています。メッシュネットワークを使おうにも暴動では使いものにならないし、暗号通貨コミュと親和性の高い非中央集権的なロシア発の匿名メッセージアプリ「Telegram」(動画の2'00"~)も然りで、携帯データはまったくアテにできないんだそう。

香港では電柱でも監視網が張り巡らされており、香港政府は「中国本土とは無関係」と否定していますが、雨傘運動の断食メガネ男子ジョシュア・ウォンさんと学民の女神アグネス・チョウさん率いる香港衆志(デモシスト)が中を開けて調べたら、中国政府の監視システム提供元の部品が使われていて、イーサネットでちゃっかり本土直結だったりして(上の動画)、不信感が広まっています。

当局の監視の目を交わすため、デモ隊はクレカやオクトパスカード(八達通)を使うのもやめ、連絡にはBluetoothで100m圏内で交信して広域をつなぐアプリ「Bridgefy 」まで駆り出している模様。「オキュパイ(占拠)」だと全員捕まるので、ブルース・リーの名言「Be Water(水になれ)」を合言葉に長丁場の戦いを続けているそうです。

Telegramで「警官マスク着用、催涙ガスくる」など現況を教え合いながら、固まらないようにデモ行進。デモアプリはAppleに削除された
Video: Washington Post/YouTube
取材もすべてTelegram
Video: SBS Dateline/YouTube

イラン

ガソリン価格高騰で怒った市民が暴動。治安部隊のスナイパーらが銃を向け、140人余りが死亡しました。


・ウォレットはもちろん、Telegramなどのモバイルアプリも使えない状態が続いています。
・アメリカ政府の経済制裁もあって普段から離れ小島。
・イラン国内のノードは わずか6か所。
Blockstream衛星、メッシュネットワークも、ネットの離れ小島では使いものにならないとビットコイナーがcoindeskに嘆いています。

レバノン

財政難と汚職に市民が抗議デモ。要求を無視したと人間バリケードで国会を妨害し、警官隊と衝突しました。


・ビットコイン市場運営者がハッカーに侵入され、暗号通貨をごっそり盗まれました。
・電話会社Touchしか知りようのないWhatsAppやTelegramの匿名化メッセージもハックできたんだそう。
・ブラックマーケットは密偵されたら終わり。


国家統制が厳しいロシアと中国も、本を正せば革命国家で、イランでデモ隊脅してるのも革命防衛隊。「人民に力を」な~んて旗振り回していた国でも、守りに入るとやること同じで笑っちゃいますよね。中国人民解放軍は手柄をあげた軍人にビットコインを配る気満々だし、ふと気づけば習近平国家主席がビットコインの一番の旗振り役になっていて、「ビットコイン革命」で検索すると「詐欺に注意」という警告ばかりがヒットする今日この頃なのでした。

Sources: coindesk信報財経新聞BBC