仮想通貨税制、来年度は変わらず──申告分離課税、損益通算など持ち越し【2020年】

2020(令和2)年度の税制改正大綱(PDF)が12月12日、自民・公明両党により正式に決まり、仮想通貨・暗号資産関連では、暗号資産デリバティブ取引が、申告分離課税(20%)、損益通算、損金の繰越控除(3年)の対象外であることが明確となった。

仮想通貨のデリバティブ取引は総合課税で、最高税率は55%(所得税45%、住民税10%)。日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)と日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)がともに今夏、デリバティブ取引と現物取引ともに申告分離課税とするよう要望(PDF、JVCEAの要望書)を提出していた。適用されれば税率は20%(所得税15%、住民税5%)。

オープンイノベーション促進税制を創設

税制改正大綱は、毎年、与党の税制調査会を中心に、翌年度以降にどのように税制を変えるべきかを話し合って決められる。翌年度の予算案を決めるに先立ち、毎年11月ごろから、業界団体や各省庁の要望をふまえて協議が進められている。

金融庁が2019年8月末発表した、翌年度以降の税制改正に求める事項をまとめた「税制改正要望」には仮想通貨・暗号資産に関する記述はなかったため、来年度の税制改正については難しいと見られていた。

今回の税制改正大綱では、大企業がスタートアップに出資すると税優遇が受けられるオープンイノベーション促進税制が創設された。設立10年未満の非上場企業に1億円以上を出資した場合、出資額の25%相当が控除される。

またベンチャーに投資した個人投資家が税優遇を受けられるエンジェル税制の範囲を拡大、NISAの口座開設ができる期間も2023年から5年間延長されて2028年までになったほか、つみたてNISAも勘定設定期間を2042年12月31日まで5年延長されることになった。

与党は税制改正大綱の基本的な考え方として、「海外発の経済の下方リスクの顕在化には適切に備えつつ、Society5.0の実現に向けたイノベーションの促進など中長期的に成長する基盤を構築することが必要」「イノベーションを持続的・自律的に生み出していくためには、適切なコーポレートガバナンスの下、企業自身が、その保有する内部資金や技術を有効に活用することが求められ、税制においても、こうした企業の前向きな行動を後押ししていく必要がある」などとしており、全体的に産業育成、投資促進の色合いの強い内容となった。

文・編集:濱田 優
写真:Fotokon / Shutterstock.com