イベントレポート

ステーブルコイン「Zen」をグローバル通貨に

BCCC新設部会が各国主要通貨連動コイン発行の仕組みを策定。半年後めど

ブロックチェーン推進協会(BCCC)は、新たに「ステーブルコイン部会」を立ち上げる。2月3日より活動を開始、半年後をメドに日本円および各国の主要通貨に連動するステーブルコインを発行する仕組みを策定する。その後実装期間を経て、最大30社での企業間決済実験を実施する計画。1月22日に開催した年次イベント「第4回 BCCC Collaborative Day」に先だって行われた記者会見の席上で発表した。

BCCCステーブルコイン部会の部会長にはカレンシーポート代表取締役CEOの杉井靖典氏、副部会長としてマネーパートナーズソリューションズ代表取締役社長の小西啓太氏が就任する。発起企業としてアステリア、カイカ、カレンシーポート、さくらインターネット、マネーパートナーズソリューションズ、PwCあらた有限責任監査法人などが名前を連ねている。

BCCCは、2017年7月に価格が安定した仮想通貨(暗号資産)「Zen」の社会実験の第1フェーズを実施している(報告書)。Ethereumブロックチェーン上のERC-20トークンとして新たな仮想通貨Zenを発行し、仮想通貨交換所で同一価格の買い注文を入れ続けることで価格を安定させる手法を実証した。8億5000万円程度のZenを発行し、「一部のオペレーションが間に合わず20%ほど価格が動いた事があった」(ステーブルコイン部会長に就任予定の杉井靖典氏)ものの、それ以外はほぼ1円を維持できた。この実験ではZenは仮想通貨交換所Zaifで取引できる形とした。つまり、いわゆる金融庁のホワイトリストに掲載された形となっている。

2017年7月にZen Phase1社会実験を実施し、価格安定の手法を試した

ステーブルコイン部会では、このZen社会実験の第1フェーズの成果を踏まえ、各国通貨に連動するステーブルコインの仕組みを策定していく。ステーブルコインを発行する法的な根拠については、日本の場合は仮想通貨(暗号資産)、前払式支払手段、資金移動業、銀行業などが考えられるが、Zenでは仮想通貨としてステーブルコインを発行、運用するやり方を想定している。

Zenの第2フェーズでは日本円と連動したステーブルコイン「JPYZ」を作る。それだけでなく、米ドル、ユーロ、人民元のような各国通貨と連動したステーブルコインを各国の法律に合わせて発行していく。

これら各国通貨に連動するステーブルコインをブロックチェーン上でロック(拘束)し、それを担保として通貨バスケットによるグローバルステーブルコイン「ZENX」(ZEN NEXT)を発行する構想である。ブロックチェーン上で確認できる「拘束された資金の額」と「流通総数」に基づき、計算式によりZENXの価格を決定する。発行量もアルゴリズム(方程式)により決定する。

複数通貨のステーブルコインを担保として通貨バスケット型のZENX(ZEN NEXT)を発行する
価格決定と発行量決定はアルゴリズム(方程式)による行う

ZENXは、国際取引や、銀行口座を保有しない人々の利用を想定する。まずはステーブルコイン発行の技術的な可能性を追求することを狙うとしている。

具体的な発行時期や発行主体、ZENX発行インセンティブ設計の詳細などは、今後ステーブルコイン部会の活動で詰める。発行主体として、各国で「ZENコンソーシアム」を立ち上げる方向である。

星 暁雄

フリーランスITジャーナリスト。最近はブロックチェーン技術と暗号通貨/仮想通貨分野に物書きとして関心を持つ。書いてきた分野はUNIX、半導体、オブジェクト指向言語、Javaテクノロジー、エンタープライズシステム、Android、クラウドサービスなど。イノベーティブなテクノロジーの取材が好物。