ブロックチェーン新興投資が停滞、19年は3割減
未公開市場でのブロックチェーン企業の歩みが鈍くなっている。19年には、投資家の意欲を示す一つの基準であるエクイティファイナンス(新規株式発行を伴う資金調達)の額は前年比で3割減った。上場企業が決算発表でブロックチェーンについて言及した数も減少した。
こうした低調の一因は、多くの商品・サービスがなお「プロダクト・マーケット・フィット(顧客を満足させる商品を適した市場に提供している状態)」に達していないからだ。
起業家はサプライチェーン(供給網)の追跡から金融資産の決済に至るまでブロックチェーンを活用した様々な商品・サービスを売り込んでいるが、今のところ広く採用されているのは仮想通貨の生成と取引に関するものだけだ。仮想通貨のビットコインはなおこの分野を支配しており、仮想通貨市場の時価総額の65%以上を占める。
それでもなお、投資家の活動はブロックチェーン部門にはその動向を追い続けるのにふさわしい潜在力があることを示している。今回のリポートではCBインサイツのデータを使い、19年10~12月期のブロックチェーンの投資トレンドを分析した。
19年10~12月期の資金調達額、前年同期比で大幅減
19年通年のドルベースでの資金調達額は過去最高だった前年の43億ドルから28%減少した。調達件数はほぼ横ばいだった。
18年に最も多くの資金を調達したのは中国の仮想通貨採掘(マイニング)装置大手ビットメイン(Bitmain)、2位は米仮想通貨交換会社コインベース(Coinbase)で、投資家が誰でも自由に取引に参加できるパブリック型の仮想通貨に注目していることを示していた。ビットメインの調達額は4億ドル、コインベースは3億2100万ドルで、ともに18年の調達合計額の急増に貢献した。
19年10~12月期のブロックチェーン企業による資金調達件数は164件、資金調達額は7億8500万ドルと前年同期比36%減だった。調達額は18年10~12月期を下回ったが、19年1~3月期と同4~6月期よりは多かった。投資家の関心は法人向け商品・サービスに向きつつある。
19年10~12月期に最も調達額が多かったのは、企業向け決済ネットワークの米リップル(Ripple)だった。同社はシリーズCのラウンド(増資)でSBIグループ、テトラゴン・ファイナンシャル・グループ、米ルート66ベンチャーズから2億ドルを調達し、企業価値は100億ドルになった。調達資金は人員増加や海外オフィスの開設、財務の柔軟性向上に充てる。
リップルは決済プラットフォーム「リップルネット」を海外送金市場や銀行向け送金システムの既存の枠組みを壊す技術として売り込んでいる。
大型資金調達ラウンド、法人向け用途への関心が明らかに
リップルのメガラウンド(資金調達額が1億ドル以上の増資)に続く資金調達上位4社のうち3社は、いずれもビジネスプロセスの合理化を手がける企業だった。例外は米レイヤーワン(Layer 1)だった。
米フィギュア・テクノロジーズ(Figure Technologies)はブロックチェーンを活用したプラットフォーム「プロベナンス(Provenance)」をさらに向上させるために1億300万ドルを調達した。同社はこのプラットフォームを活用し、最短5分の審査で住宅担保ローンを提供する。
米デジタルアセット(Digital Asset)は3500万ドルを調達した。金融資産の決済を迅速化するために使うオープンソースのプログラミング言語「デジタル・アセット・モデリング・ランゲージ(DAML)」をサポートする開発者コミュニティーの取り組みに資金を供給するほか、このテクノロジーを使った商品・サービスを拡充する。
米ピアノバ(PeerNova)は市場拡大と商品・サービス開発のために3100万ドルを調達した。同社のテクノロジーを活用すれば、金融機関はデータのワークフローをより効率的に管理できる。
一方、レイヤーワンはブロックチェーンのプロトコル(手順)やインフラの構築、資金提供を手がける。19年10~12月期には5000万ドルを調達した。テキサス州西部に太陽光発電と風力発電で電源を賄うビットコイン採掘施設を建設する計画で、その資金に充てる。