「サトシ」はあの日本人? 仮想通貨生んだ天才を追った

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渡辺淳基
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シンギュラリティーにっぽん

 昨年4月、出張先の欧州でこんな質問を受けた。「サトシ・ナカモトって、日本語でどんな意味?」

 サトシとは、世界初の仮想通貨(暗号資産)ビットコインの生みの親と言われる謎の天才技術者だ。2008年10月、「ビットコイン」という9ページの英語の論文をネット上に投稿。そこで提唱したのが、仮想通貨を可能にした理論、ブロックチェーンだった。

シンギュラリティー:人工知能(AI)が人間を超えるまで技術が進むタイミング。技術的特異点と訳される。そこから派生して、社会が加速度的な変化を遂げるときにもこの言葉が使われ始めている。

 ブロックチェーンは、世界各地のコンピューターが対等につながるピア・ツー・ピア(P2P)と呼ばれる分散型の仕組みで、その中で暗号化された記録の連鎖(チェーン)が取引を記録・保証する。国家や中央銀行などの「中央」が介在する余地はない。技術者の間で少しずつ話題になり、翌年、ビットコインの運用が始まった。

 サトシの正体をめぐっては今も、繰り返し論争になっている。日本人ではないとの見方も強いが、その名の響きから、世界的なミステリーを解くカギが日本にあると考える人もいる。

既存の金融システムにうかがわれる不信感

 論文にヒントを探したが、日本に関連する記述はない。参考文献に挙げていたのも、米欧の先行研究ばかり。内容から読み取れたのは、既存の金融システムに対する強い不信感だった。

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 リーマン・ショックに端を発する金融危機のさなかに登場し、当初はビットコインの運営に自らも関わったサトシ。しかしその後はネット上から姿を消し、運営方法をめぐり賛同者が分裂する事態になっても意見を言うことはなかった。まるで、発明者として「中央」に立つことを拒否するように。

 サトシを探すのはやめたほう…

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