あと10年? 銀行業務を代替するDeFiに金融機関はどう取り組むべきか(1/3 ページ)

» 2020年11月24日 11時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 DeFi、分散型金融は2020年のホットトピックだ。一般には認知度が低いDeFiだが、海外ではサービスが大きく伸長し、日進月歩の進化を遂げている。「金融機関はビジネスモデルを大きく変えることが必要になる。トークンベースになってくる、仲介業者がいらなくなってくる」。DeFiの長期的な影響をこう話すのは、あずさ監査法人でDeFiに詳しい保木健次氏(金融事業部 ディレクター)だ。

 Fintech協会が11月18日に行ったイベント「FINTECH JAPAN 2020」のセッション「DEFI IN NEW NORMAL」のディスカッションから。

DiFiのサービス例(FINTECH JAPAN 2020 auフィナンシャルホールディングスの藤井達人氏資料より)

ビットコインはDeFiの走り

 DeFiとは、これまで銀行などの金融機関が仲介して行ってきた業務を、ブロックチェーン上で動くプログラムで代替するものだ。ブロックチェーンであるため、特定のサーバで動作するわけではなく、また明示的なサービスの管理者もいない。そのため取引のスピードが速く、コストも小さいのが特徴だ。

 ではどんな金融業務が実現しているのか。保木氏はいわゆる銀行が行ってきた業務が、どんどんDeFiの機能に置き換えられる可能性が高まっていると言う。

 例えば、資金をある人から別の人へ移動させる為替取引は、銀行の代表的な業務の1つだが、これはビットコインが既に実現している。さらに、「預金」と「貸付」についても、昨今のDeFiで実現してきた。いわゆるレンディングサービスと呼ばれるもので、預金したい人はDeFiサービスに手持ちの暗号資産を預けると金利を得ることができる。また、借りたい人は一定の担保を差し出すことで、金利を払い、暗号資産を借りることができる。

 「レンディングと呼ばれているが、貸し出しているほうは預けているイメージ。これはまさに預金を代替している。これを銀行なしでできるようになってきた。貸付も、預担貸付に近いことが銀行なしでできるようになった。金融機関がいらない世界が広がってくる。そこに金融機関は留意すべき」(保木氏)

銀行の業務は次々とブロックチェーン上のサービスに置き換えられていく(FINTECH JAPAN 2020 あずさ監査法人の保木健次氏資料より)

 現時点では、借りたい場合は別の暗号資産を担保にする必要があるが、別途広がり始めたセキュリティートークン(有価証券トークン)を使えば、現実の貸付に近いことも可能になる。セキュリティトークンとは、有価証券や土地、各種権利などを裏付けとして発行されるブロックチェーン上のトークンだ。国内でも法改正によって、こうしたセキュリティトークンの発行や流通が可能になった。

 債券や株式、土地などを裏付けとしたセキュリティトークンが広まれば、これを担保としてDeFi上で貸付を受けることも可能になる。ブロックチェーンハブの増田剛COOは、その可能性をこう話した。

 「DeFiのサービスは、基本的には暗号資産を担保にしている。セキュリティートークンが担保として使えるようになってくると、お互いがつながり、機関投資家が入ってくる。セキュリティートークンを担保としてDeFiを使えるようになってくる」

債券や不動産などもトークン化される中で、DeFiの一般化が進む(FINTECH JAPAN 2020 ブロックチェーンハブの増田剛氏資料より)
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