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 金融庁が行政手続きの完全電子化に乗り出した。2021年3月までにシステム開発にめどをつけ、2021年度中には約1800種類に上る申請や届け出全てについて、オンラインで受け付けられるようにする計画だ。書面や押印を不要にし、行政コストの削減や利用者の利便性向上につなげる狙いがある。

 「以前から検討していたことだが、コロナ禍によって加速した」。金融庁はこう説明する。同庁はこれまでも電子申請システムを運用してきたが、紙の書類による申請しか受け付けていない手続きが全体の約9割を占めていた。現行の電子申請システムを改修することで、完全電子化に対応する。

 例えば、許認可のための審査が必要な業登録などは書類の数も多く、民間企業にとって負担は重い。オンライン化すれば、書類の不備などがあっても迅速に再提出でき、手戻りに要する期間を短縮できる期待がある。地方からの申請なども受け付けやすくなるという。

件数では85%が電子化

 金融庁は、受付件数の多い手続きについて優先的に電子申請の仕組みを提供してきた。保険募集人や外務員の届け出が典型だ。2019年度の実績では、同庁が受け付けた申請や届け出は全体で約130万件。そのうちオンラインによるものが約110万件に上った。実に85%を占める計算だ。

 一方で、電子申請ができる手続きの種類が1割程度にとどまっているのは、意図的に絞り込んだという過去の経緯がある。具体的には、年間1万件以上の申請がある手続きをオンライン化の主な対象としているという。

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 理由はコストだ。従来は電子申請を受け付ける手続きの種類に応じて、維持費用が増える構造だった。めったにない手続きを電子化しても、費用対効果が悪かった。