アングル:週末に荒れるビットコイン相場、トレーダー不眠不休

アングル:週末に荒れるビットコイン相場、トレーダー不眠不休
 1月11日、ビットコインは眠らない──。年明け最初の土曜日となった1月2日はまだ、新年会の「二日酔い」が続いている人も多かった。しかし、暗号資産(仮想通貨)ビットコインは息抜きとは無縁で、初めて3万ドルの大台を突破した。写真はビットコインのイメージ。7日撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)
[ロンドン 11日 ロイター] - ビットコインは眠らない──。年明け最初の土曜日となった1月2日はまだ、新年会の「二日酔い」が続いている人も多かった。しかし、暗号資産(仮想通貨)ビットコインは息抜きとは無縁で、初めて3万ドルの大台を突破した。
ビットコインはこれまでにも何回か、週末や祝日の取引で1日の上昇率が10%を超えている。それも手伝い、昨年の12月初めから今年の1月初旬にかけて相場は7割近く上昇した。
調査会社・リプトコンペアのデータによると、6つの主要な暗号資産取引所ではこの期間中、週末の取引高が平日よりも10%多かった。それ以前の11カ月間は週末の取引高が通常の取引時間を13%下回っていたが、様変わりした。
週末に相場が荒れ始めたため、市場参加者は大手から中小まで、利益や損失につながる価格変動を見逃さないよう、従業員を通常の勤務時間以外に配置せざるを得なくなっている。
何が、こうした変化を引き起こしたのだろう。
暗号資産のブローカーやトレーダー5人以上に取材したところ、ヘッジファンドなど米大手投資家が活動を拡大させたこと、具体的にはこれら投資家によるアルゴリズム取引の活用が影響したという。ビットコインの急伸を主導したのは、こうした投資家だ。
ビットコインの投資家は通常、大きな相場変動を招かない小口売買でアルゴリズムを使う。しかし、暗号資産取引所・コインベースの昨年12月のブログによると、米ソフトウエア会社・マイクロストラテジーはこの手法で4億2500万ドル相当のビットコインを購入した。
米暗号資産取引所・ジェミニのブレア・ハリデー氏によると「以前は、トレーダーが特定のタイミングに特定の量を売買することを前提に取引が行われており、平日が普通だった」という。ところが「今では買う量が多過ぎて、取引がじわじわと週末に広がっている」と言う。
しかし、こうした取引手法は、商いが薄い週末に桁外れの価格変動を引き起こし得る。これに人が直接売買する取引や他のアルゴリズム取引が加わり、ボラティリティが一段と大きくなった。
米調査会社のコイン・メトリクスによると、主要暗号資産取引所の買い気配値と売り気配値のスプレッドはクリスマス休暇の期間中に拡大し、流動性の低下が浮き彫りになった。ボラティリティーも跳ね上がった。
<ファンドはボラ追求>
ビットコイン市場は以前から1日24時間、週7日いつでも取引されており、いつ予想外の時間に価格変動が起きてもおかしくない。ただ、これまでは小口のトレーダーやデイトレーダーが相場の変動を主導していた。
しかし、直近の相場急騰では、米国の大手投資家が中心となって価格変動が進行した。ビットコインは昨年初め以来価格が5倍以上になり、先週は4万2000ドルの過去最高値を付けた。
そして、ヘッジファンドその他の機関投資家が市場に参入したことで、アルゴリズム取引の役割が強まり、ビットコインは週末に大きく動くようになった。
暗号資産取引でアルゴリズムを駆使する投資家は、一般的な金融資産取引の場合と似た手法を用いている。
アルゴリズム取引には、特定の時間内の平均価格に近付くように取引を発注する「時間加重平均価格(TWAP)」や、売買高で加重平均した平均価格に近づくように取引を発注する「売買高加重平均価格(VWAP)」がある。
だが、こうした技術と実際に人が注文をやり取りする取引が、併存している。アルゴリズム取引の急増で週末の取引が増加し、自分で注文をさばくトレーダーも24時間働かなければならなくなっている。
暗号資産取引会社、OSLのフェルナンド・マルティネス氏は「ファンドは常に市場のチャンスに目を光らせ、ボラティリティを狙っている。そして、往々にしてボラティリティは商いが薄いときに高まる」と話す。
<眠れぬトレーダー>
ジブラルタル在住のデジタル・アセット・マネジメントの取引部門ヘッド、スコット・マッキム氏は、スペインで「公現祭」の祝日だった6日に5件、総額150万ユーロ(180万ドル)相当の取引を行った。ガールフレンドの家族がパーティーを開くかたわらで顧客からの売買注文を受け、手作業で取引した。「ビットコインは絶対に眠らないし、どうやら私も同じようだ」。マッキム氏はクリスマスにもエビ料理をかじりながら取引したという。
「需要があるから取引している。ビットコイン市場は1日24時間、週7日、1年365日取引が行われており、金曜の夜であろうと、日曜の朝であろうと、顧客が望めば応じることが可能だ」と言う。
オフィスにいない時間帯に相場を追う、最適な方法を検討しなければならない人もいそうだ。暗号資産取引所・LMAXデジタルのストラテジスト、ジョエル・クルーガー氏は、従来型の市場参加者が順応しやすいよう、取引デスクのやり方を調整していく必要があると述べた。
ただ、普通の金融商品と違って暗号資産に取引休止時間がないことは、週末や祝日の価格変動に素早く対応したい投資家にとっては利点だ。
シカゴの取引会社DRWの暗号資産部門、カンバーランドのグローバルヘッド、クリス・ズールケ氏は「週末のど真ん中に何か発生しても、暗号資産の市場参加者は即座にリスクをヘッジすることができる。これは市場にとって大きな強みだ」と指摘した。
(Tom Wilson記者 Anna Irrera記者)

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