ビットコイン・マイニングはエネルギーの無駄遣いなのか…3人の暗号通貨の専門家に聞いた

ビットコインの採掘には膨大な電力が使われる。

ビットコインの採掘には膨大な電力が使われる。

Olga Maltseva/Getty Images

  • 最近のビットコイン価格の上昇は、莫大なエネルギーが必要なマイニングが環境に有害であるという懸念を再燃させた。
  • しかし、暗号通貨の専門家は、ビットコインのエネルギー消費に関する懸念は的外れだと主張している。
  • マイナーたちは、自然エネルギーの利用に向けた動きを進めているというが、それを裏付けるデータはない。

2020年のビットコインの高騰は、暗号通貨のマイニングが大量のエネルギーを消費し、環境に害を及ぼしているという懸念を再燃させた。

マイニングとは、ブロックチェーン技術によるビットコインの台帳上の取引を、中央機関に頼らずに検証するプロセスだ。新しい取引を検証するためにマイニング用のコンピュータが非常に複雑な計算を行い、その際に膨大なエネルギーが必要になる。ビットコインの採掘者(マイナー)が計算を行って新しい取引を検証し終わると、新たなビットコインが生成されて報酬として支払われる。

ビットコイン・ネットワークがどれだけのエネルギーを消費しているかは、異なる意見がある。ケンブリッジ大学の試算では、その年間総電力消費量は127.70TWh(テラワットアワー)だが、Digiconomistの試算では79.63TWhで、これはチリの電力消費量に匹敵するという。

一つの国全体と同じ量のエネルギーを消費するというと驚くかもしれないが、暗号通貨取引所Krakenの成長責任者であるダン・ヘルド(Dan Held)は、ビットコイン・ネットワークは、そのエネルギー消費を問題視する人々によって不当に標的にされてきたのだと主張している。

「結局のところ、彼らがビットコインのエネルギー消費を攻撃する理由は、単にビットコインが嫌いということだけだ」とヘルドは言う。

「暗号通貨に反対する人々は、ビットコインのエネルギー消費は無駄だと考えている」

ヘルドは、世界のあらゆるものはエネルギーを必要としており、技術が進歩すれば、その技術を動かすのに必要なエネルギーの量は必然的に増えると強調した。また、既存の銀行システムは推定で年間650TWh以上のエネルギーを消費していると指摘している。

しかし、ビットコイン・ネットワークと既存の金融システムの両方のエネルギー消費量を試算するのは難しい。それぞれのネットワークを支えるすべての要素を計算することが難しいからだ。銀行の支店の空調機器の電力を金融システム全体のエネルギー消費に加えるならば、ビットコイン取引業者の携帯電話に使用される電力は、ビットコインのエネルギー消費量を計算する際に考慮されるべきであると主張することもできる。

さらに、アメリカ最大のマイニング関連企業BlockwareのCEO、メイソン・ジャッパ(Mason Jappa)によると、ビットコイン・マイナーは可能な限り安価な電力で操業することが利益につながるため、無駄になっていたであろうエネルギーを使用している場合があるという。

ジャッパがInsiderに語ったところによると、アメリカのマイニング施設の中には「ガスフレア・リキャプチャリング」と呼ばれるプロセスで電力を得ているところもあるという。天然ガスや原油を採掘するとき、ガスの一部が空中に放出される。ビットコイン・マイナーが、それを捕獲してエネルギーとして利用しするのだ。

しかし、ビットコイン・マイニングなどのコンピューティングのニーズに応えるためのインフラを開発・運営しているNorthern DataのCEO、アルーシュ・チライナサン(Aroosh Thillainathan)は、安価なエネルギーを求めるがゆえに、マイナーの多くは今現在も世界の多くの地域で最も安価なエネルギー源である石炭に依存していると指摘している。

ビットコイン・ネットワークで使用される再生可能エネルギーとそれ以外のエネルギーの割合を正確に示すデータはないが、チライナサンは、マイニングの約50%は中国で行われていて、その大部分は石炭が使われていると推定している。

彼はInsiderに対し、ビットコイン・ネットワークが成長し、マイニングの収益性が高まるにつれ、より多くのエネルギーを使うことになるだろうと述べた。そしてマイニング事業者は環境に対して責任を持つべきだと付け加えた。ノルウェー、スウェーデン、カナダにあるNorthern Dataのハイパフォーマンス・コンピューティング・センターでは、再生可能エネルギーのみを使用しているという。

彼は、ビットコインの価格が上昇し、マイニングの収益性が上がるつれて、マイナーがオペレーションを再考し、持続可能エネルギーの利用に向かうことを期待しているという。

「私はビットコインに大きな期待を抱いている」と彼はInsiderに語った。

「ビットコインはあなたの富を保管するためのすばらしい方法だ。しかし、我々には(マイニングの)インフラの供給者として、できるだけ環境に優しい方向に進んでいく義務がある」

彼は「環境によくないエネルギー」を使ったマイニングは長期的には持続可能ではなく、いつか各国の政府が石炭火力発電所を厳しく制限するようになるだろうと述べた。

[原文:3 bitcoin-mining experts explain why concerns around the cryptocurrency's massive energy consumption are overblown

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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