トルコで仮想通貨業者が相次ぎ閉鎖 当局は規制導入へ
【イスタンブール=木寺もも子】トルコで暗号資産(仮想通貨)業者の閉鎖や取引停止が相次いでいる。同国通貨の下落で仮想通貨投資が拡大する中、一部で詐欺の疑いが浮上し、換金を求める利用者の急増に対応できなくなったようだ。規制が未整備との指摘もあり、当局は対応に乗り出している。
トルコの捜査当局は23日、仮想通貨交換業者「トデックス」を詐欺などの疑いで捜査し、関係者60人超を拘束した。21日ごろから換金ができなくなったとして利用者が告訴していた。顧客資産を持って国外に出国したという創業者は国際指名手配された。
アナトリア通信によると、24日には同じく取引を停止した交換業者「ウェビットコイン」の4人が拘束された。別の1社は23日、不当な風評被害を受けたなどとしてオンラインの取引を停止した。利用者の換金要求にはメールで応じるとしている。
トルコ中央銀行は16日、仮想通貨による支払いを禁止すると発表していた。不安が高まったところに一部業者の詐欺疑惑が浮上し、利用者が換金に殺到したもようだ。大手取引業者の利用者からも、換金に時間がかかっているとの声が上がる。
トルコでは通貨リラが年初から1割下落。直近のインフレ率は前年同月比で16%台に達しており、資産防衛や投資の手段として仮想通貨人気が高まった。バフチェシェヒル大のボラ・エルダマル氏は、同国での1日の取引量は20億ドル(約2100億円)程度とみる。AFP通信は2021年3月の仮想通貨購入量は20年11月の10倍に増加したと報じた。
トルコには日本のように交換業者を登録制にするなどの利用者保護の規制がなく、十分な資本のない小規模業者が乱立していたもようだ。事件を受け、当局は今後2週間で広範な規制を導入すると表明した。全面的な禁止は否定しており、交換業者への一定の資本を求めるほか、課税も検討しているもようだ。
エルダマル氏は、一連の騒動がブームの過熱に冷や水を浴びせたとする一方、「適切な規制で健全な市場を育成するための過渡期に入った」と話している。