米政府、仮想通貨送金に報告義務 1万ドル以上の取引
【ニューヨーク=後藤達也】米財務省は20日、1万ドル(約109万円)以上の暗号資産(仮想通貨)の送金を内国歳入庁(IRS)に報告することを義務付ける方針を発表した。暗号資産の取引は脱税などを助長していると指摘。暗号資産市場の取引や時価総額が急拡大しており、監視を強化する。この発表後にビットコインは価格が下落する場面があった。
財務省は20日公表の報告書で、暗号資産の取引による脱税を含む違法行為は「すでに重大な問題となっている」と強調した。従来の商取引や所得に比べ暗号資産の規模は依然として小さいものの「今後10年間で存在感が増していく」と指摘。暗号資産の取引口座や決済サービス口座をIRSへの報告対象に加えるとした。
報告書では「暗号資産の時価総額はすでに2兆ドルに達した」と具体的な規模にも言及した。昨年終盤からの暗号資産市場の急拡大が米財務省の警戒感を強めさせた面もある。イエレン財務長官はかねて、違法行為に利用される可能性や極端な値動き、取引上の環境負荷などの理由から暗号資産取引に懸念を示していた。
米証券取引委員会(SEC)も暗号資産の取引は「極めて投機的だ」と呼びかけている。ゲンスラー委員長は「詐欺や価格操作から投資家を守る規制がない」として、議会と協力し規制を強める考えを示している。金融規制緩和を進めてきたトランプ前政権と異なり、民主党では規制強化を訴える議員も多い。政権交代を機に暗号資産への当局の目は厳しくなっている。
財務省の発表前後でビットコインの価格は4万1000ドル台から3万8000ドル台へと下落する場面があった。19日には中国の取引規制強化を起点に価格が急落した。各国で規制の動きが強まっており、暗号資産への投資を敬遠する動きも広がりつつある。
暗号資産市場では極端な値動きへの警戒が一段と強まっている。米東部時間19日午前9時前後には短時間のうちにビットコインの価格が20%以上乱高下した。借り入れを活用して運用額を膨らますレバレッジ取引をしていた投資家の間で投げ売りの連鎖が広がったことが一因とみられている。
19日午前にはコインベースやバイナンス、日本のビットフライヤーといった主要な交換業者で一時取引ができない状態となった。買い注文と売り注文を効率的につけあわせられない状態で、混乱に拍車をかけた。乱高下時に自由に注文を出せないのは投資家にとって重大なリスクだ。インフラとしての金融市場のもろさも露呈したかたちで、業界は原因究明や改善が急務となっている。
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