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米国と中国が相次いで暗号資産(仮想通貨)に対する規制強化に乗り出した。代表格のビットコインは、米電気自動車(EV)大手テスラが決済での利用を停止すると表明し、一時、4月中旬のピークから半値以下に急落した。投機的で乱高下する相場は、株式市場にも影響を与えている。
米国や中国は金融システムの安定を脅かすリスクを重視するほか、暗号資産が脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されるのを警戒する。
米財務省は20日、1万ドル(約110万円)相当以上の暗号資産を送金する場合、内国歳入庁への報告を義務づける方針を発表。「脱税などの違法行為を助長しており、重大な問題だ」と指摘した。暗号資産の時価総額は「すでに2兆ドルに達した」との見方も示した。
中国銀行業協会なども18日、金融機関に対し、暗号資産の関連業務を禁じる通知を出した。通知では、暗号資産は「実際の資産の裏付けがなく、価格が操作されやすい」と警告した。
日本では、銀行や保険会社に対し、暗号資産の保有を必要最小限とするよう求める金融庁の指針がある。欧州の金融当局も規制強化を検討している。
コロナ禍の昨春以降、ビットコインの価格は急上昇してきた。世界的な金融緩和で国債の利回りが低下し、市場にあふれた投機マネーが流れ込んだ。
これまでの取引は個人投資家が中心だったが、資産運用大手が相次いで投資を表明。テスラなどが決済への利用を始めると公表するとビットコイン価格(単位BTC)は急騰し、4月14日に1BTC=6万4863ドルの最高値をつけた。
しかし、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は5月12日、一転して決済利用を一時停止すると表明。これが下落の契機となり、中国の規制強化を受けて19日には一時、約3万ドルにまで値下がりした。相場急落で投資家心理が悪化し、同日のニューヨーク株式市場ではダウ平均株価(30種)の下げ幅が一時、580ドルを超えた。
マスク氏が一変したのは、ビットコインを新たに生み出すために電力を大量に使うのを問題視したためだ。高い演算能力を持つコンピューターで複雑な計算を処理する「マイニング」と呼ばれる作業で電力を使う。英ケンブリッジ大によると、年間電力消費量はノルウェー一国に匹敵するという。
暗号資産価格の乱高下は、レバレッジ取引が一因となっている。借り入れを活用して手元にある金額以上の取引が可能となり、利益も損失も多額になりやすい。日本では上限2倍に規制されているが、海外では数十倍の取引が行われている。資産の裏付けがないデジタル上の取引は、「バブル」の様相を呈している。
19日の急落時には、国内の大手交換業者ビットフライヤーなどで障害が発生した。アクセスの集中が原因と見られ、市場のもろさも指摘されている。