Jose Cabezas/Reuters
- バンク・オブ・アメリカ(BofA)によると、エルサルバドルの経済は、ビットコインの導入によって海外送金の決済コストを下げることで活性化する可能性があるという。
- また、ビットコインによって経済のデジタル化が促進され、アメリカからの投資が増える可能性があるとも述べている。
- しかし、ビットコインは激しく乱高下するため、全体としては悲観的な見方を変えていない。
多くの金融機関と同様、バンク・オブ・アメリカ(BofA)も、エルサルバドルがビットコインを法定通貨として採用することは、潜在的な利益よりもリスクの方が大きいとしている。
しかし、同行のアナリストは7月下旬に発表したノートで、移民した人がエルサルバドルに送金しやすくなる、銀行業務のデジタル化に役立つ、アメリカとのビジネスが拡大するなど、多くの利点があると述べている。
「(ビットコインの法定通貨化に対し)市場は過度に悲観的になっており、利点が見落とされている。ただし、これらの利点は確かに不確実なものではある」と、ラテンアメリカのストラテジストのクラウディオ・イリゴエン(Claudio Irigoyen)らがノートで述べている。
海外からの送金手数料が安くなる
多くの発展途上国と同様に、エルサルバドルでも海外からの送金が、経済の大きな部分を占めている。国外で出稼ぎをしている労働者が本国に送金する額がGDPの24%を占めるほどだ。
ビットコインを利用すると、エルサルバドルへの送金コストが下がり、経済に貢献できる可能性があるとBofAは述べている。銀行を介した国際送金の平均的なコストは10%以上だが、ビットコインを使用すればもっと安くなる可能性がある。しかし、ビットコインはボラティリティが高く、取引手数料も大きく変動するかもしれない。
経済のデジタル化に役立つ
BofAによるとエルサルバドルの成人の70%以上が銀行口座を持っていないという。しかし、デジタルマネーの一種であるビットコインはスマートフォンのアプリなどで簡単に利用できる。
「そのため、ビットコインを通じて電子決済へのアクセスを民主化することは、革新的な取り組みだといえる」とBofAのアナリストは述べている。
アメリカ企業とのビジネス拡大につながる
アメリカは暗号資産の中心的な存在であり、エルサルバドルがビットコインを導入すると、その変化の恩恵を受けようとアメリカ企業が進出し、エルサルバドルに投資する可能性がある。
「ストライク(Strike:送金アプリの開発企業)やビットコイン採掘業者、ATMメーカーなどから(直接投資が)あるかもしれない」とBofAは述べている。
例えば、ビットコイン・マイナー(採掘事業者)は、エルサルバドルの火山から得られる地熱エネルギーの利用に魅力を感じるだろう。しかし、全体的な電気代は比較的高く、大規模なマイニングは望めないと考えられる。
ビットコイン導入は全体的にはマイナス
結局のところ、BofAはエルサルバドルがビットコインを法定通貨として採用することに積極的に賛同しているわけではない。これは主にビットコインのボラティリティの高さによるものだ。ビットコインは世界で最も普及している暗号資産だが、1日で10%変動したり、数週間で50%急落したりすることで知られている。
ボラティリティの高いビットコインでの納税を認めることが特に懸念されており、価格が暴落した場合には税収が激減する可能性があると、BofAは述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)