分散型金融で仮想通貨660億円流出か 過去最大規模
【ニューヨーク=宮本岳則】分散型金融(DeFi、ディーファイ)を手がけるポリ・ネットワークは10日、不正アクセスによって暗号資産(仮想通貨)が流出したと発表した。複数の専門メディアによると流出額は6億ドル(約660億円)に達したもようだ。2018年に日本の仮想通貨交換所コインチェックから不正流出した580億円を上回り、過去最大規模になる可能性がある。
ポリ・ネットワークは同日、ツイッター上で被害を公表した。同社はすでに不正送金先のアドレスを特定している。仮想通貨のマイニング(採掘)業者や仮想通貨交換業者に対し、同アドレスから送られてきたトークン(デジタル権利証)をブラックリストに入れるよう呼びかけた。さらに「予備的な調査で(ハッカーが悪用した)脆弱性の原因を特定した」と明かした。
DeFiとは仮想通貨の売買や貸し借りなどを第三者を介さずに実施する市場だ。イーサリアムなどブロックチェーン(分散型台帳)上で運営する。サービスの土台となる資産プール額は総額で約800億ドル(DeFiパルス調べ、8月時点)。匿名性や使い勝手の良さが利用者に受け入れられている。ポリは中国のブロックチェーン・プロジェクト「Neo(ネオ)」の創業者が立ち上げたとされる。
DeFi関連のハッキング事件は増えている。米セキュリティー関連企業サイファートレースによると21年1~7月の被害額は3億6100万ドルに達し、20年の通年記録(1億2900万ドル)を大きく上回っていた。ポリ・ネットワークの不正流出事件によって安全性の問題が改めて浮き彫りになった。