米当局、ドル裏付けの仮想通貨に銀行並み規制も 米報道
【ニューヨーク=大島有美子】バイデン米政権が、ドルなどの法定通貨などを裏付けに価値を安定させている暗号資産(仮想通貨)「ステーブルコイン」を発行する企業に対し、銀行並みの厳しい規制を課すことを検討していることが1日、分かった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)が報じた。金融当局が仮想通貨企業をより監督しやすいような仕組みを検討する。
具体的な規制の内容は明らかになっていないが、ステーブルコインの発行企業に対して金融機関としての登録を求め、厳しく監督できるような法案を検討するよう議会に働きかけるという。財務省の部会が10月下旬にもまとめる報告書に盛り込む見通しだ。
同部会にはイエレン財務長官のほか、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が参加している。
ステーブルコインはビットコインなどの一般的な仮想通貨と異なり、米ドルなどに裏付けされて価値が安定している。仮想通貨の売買など取引に使われる。最大手はテザーが発行しドルを裏付けとする「テザー(USDT)」で、サークルが発行する「USDコイン(USDC)」などが続く。
仮想通貨の値上がりや取引拡大を受け、ステーブルコインの発行も増加している。仮想通貨の動向に詳しいザ・ブロックによると、発行されているステーブルコインの時価総額は9月末時点で1264億ドル(約14兆円)に達する。年初と比べ4倍超に増えた。
ステーブルコインの利用拡大に伴い、米当局者からは金融安定性に及ぼす影響を懸念する声が上がっていた。テザーが開示した6月末時点の裏付け資産627億ドルのうち、半分はコマーシャルペーパー(CP)が占めていた。裏付け資産の価値に市場で疑念が生じればステーブルコインの価格が下落し、他の資産にも売りが波及するとの指摘もある。
これとは別に、イエレン財務長官が議長を務め、各規制当局を束ねる米金融安定監視評議会(FSOC)はステーブルコインの金融システムに与える影響を評価し、その取引活動がシステム上重要なものとして指定するかを検討している。重要と位置づけられれば、FRBがより厳しいリスク管理基準を制定する可能性がある。
SECのゲンスラー氏はステーブルコインについて「おおいに有価証券となりうる」と述べ、投資家保護のためSECによる監督を強化すべきだとの認識を示している。バイデン氏が金融機関を監督する米通貨監督庁(OCC)の長官の候補者に指名したコーネル大のソーレ・オマロバ教授は論文で、仮想通貨が金融システムにもたらすリスクを指摘してきた。