インド政府、暗号資産を禁止する法案提出──緩和との予想を覆す

インド政府は、暗号資産(仮想通貨)をほぼ全面禁止とすることを依然として目指している。法案は今月末から始まる国会で審議される予定だ。

暗号資産をほぼ全面禁止

インド議会の公式サイト「Lok Sabha」に掲載された法案の概要を見ると、「The Cryptocurrency and Regulation of Official Digital Currency Bill, 2021」は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発のフレームワークを作ることを目的としている。

「法案はまた、インドにおけるすべての民間による暗号資産を禁止しようとしている。ただし、暗号資産の基盤技術とその用途を促進するために、一定の例外を認めている」と概要には書かれている。

法案が発表された後、インドでは暗号資産価格が下落した。ビットコイン(BTC)は暗号資産取引所WazirXで13%以上下落し、柴犬コイン(SHIB)とドージコイン(DOGE)は15%以上下落した。しかし、こうした値動きはインドに限られており、インド以外ではビットコインは下落していない。

今回の法案は、1月に提出されたものと基本的には同じと考えられているが、最新の法案はまだ公開されていないため、詳細は不明。だがこの数カ月、政府は暗号資産に対する姿勢を軟化させ、暗号資産を支払い手段ではなく資産として規制することを模索するのではないかとの期待が高まっていた。

「(新しい法案は)公開されていないのでミステリーだ」と約20万人のフォロワーを擁するYouTubeチャンネル「Crypto India」の共同設立者、アディティア・シン(Aditya Singh)氏は述べた。

一定の取引は許容か

シン氏は、法案の名称と概要を見ると、すべての民間暗号資産が禁止されるように思えるが、法案は以前のものから内容が変更されている可能性が「高い」と付け加えた。シン氏は、ニムララ・シタラマン(Nirmala Sitharaman)財務相が最近、暗号資産の全面禁止には踏み切らないと発言したことをその理由にあげた。

現地のニュース「India Today」によると、一定の要件を満たした暗号資産取引所から購入する限り、この法案の下でも暗号資産取引は継続されるようだ。法案は投資家保護が目的で、暗号資産の作成や発行を規制することに重点が置かれている可能性があるという。

インド準備銀行(RBI:中央銀行)は、暗号資産に保守的な姿勢を取っていることで知られている。インドの最高裁判所は2020年3月、RBIによる2年間の暗号資産取引禁止命令を覆したが、RBIは当初、この判決を不服として対抗する予定だった。先週、RBIのシャクティカンタ・ダス(Shaktikanta Das)総裁は、RBIは「マクロ経済と金融安定性の観点から深刻な懸念を抱いており」、ブロックチェーン技術は暗号資産がなくても発展させることができる述べた。

今回の取り組みは、RBIが発行するCBDCの可能性を切り開こうとするものだ。今月初め、地元メディアは、RBIは2022年にCBDCを試験導入する予定と報じた。

インドにとって「大きな瞬間」

今月初めにインド政府は暗号資産規制を緩和し、暗号資産に進歩的で前向きなアプローチを取ることを示した。だが先週、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は「すべての民主主義国が協力してこの問題に取り組み、若い世代に害を与えるような誤った方向に進まないようにすることが重要だ」と述べた。

懸念はあるものの、インドの大手暗号資産取引所WazirXの創業者兼CEO、ニシャル・シェティ(Nischal Shetty)氏は法案を進歩と捉え、インドにとって「大きな瞬間」と呼んでいる。

「2018年のRBIによる禁止措置から、この冬、国会に法案が提出されるまで。我国はこの3年間、長い道のりを歩んできた!」とシェッティ氏は声明で述べた。

YouTubeチャンネル「Crypto India」のシン氏の反応はもう少し控えめだ。同氏は、インドの暗号資産コミュニティは法案を「以前のものに比べて進歩的なものになるだろうが、どの程度のものになるかはわからない」と感じていると述べた。

インドの次の国会は今月末から開催される。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Indian Government Submits Bill to Ban Most Cryptocurrencies, Dashing Hopes for Friendlier Measure