LINEの仮想通貨・ブロックチェーン関連子会社、LVC社社長の林仁奎(イム ・インギュ)氏。
撮影:西山里緒
LINEの仮想通貨(暗号資産)関連・ブロックチェーン事業を統括する子会社・LVC社は、4月13日からNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」を開始する。3月23日、LVC社が発表した。
ローンチ時から吉本興業やテレビ朝日などとも連携し、エンターテインメントやスポーツ、ゲームを含む7ジャンル、100種類以上のNFTの販売を決定しているという。
LINE NFTで何ができるのか?他のサービスとは何が違うのか?ポイントをまとめた。
LINE NFTとは?
LINEがNFTマーケットプレイスを本格的に始動する。
撮影:西山里緒
LINE NFTとは、LVC社が提供するNFTの売買サービス(マーケットプレイス)。同サービス上でNFTを購入したり、ユーザー同士でNFTを送り合ったり、後述するが、ユーザー同士が売買する二次流通での販売もできる。
LINE NFTは、LINE IDを使って登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」と連携しており、自分でウォレットを用意しなくとも簡単にNFTを購入し、保管できるのが特徴だ。
すでに2021年6月から「NFTマーケットβ」というサービスはスタートしており、今回はその正式版とも言える。
NFTマーケットβでは、同社が開発する仮想通貨「LINK」のみの対応だったが、新たに開始するLINE NFTではLINE Payを通じた日本円での決済が可能になった。
なお、「LINE BITMAX Wallet」のウォレット数はすでに100万を突破しているという。
なにが買える?
現状でも「資産性ミリオンアーサー」などのNFTの売買はできる。
撮影:西山里緒
NFT販売の第1弾として発表したのは、エンターテインメントやスポーツ、ゲーム、アーティスト、アニメ、キャラクター、イベントの7ジャンルにおける、100種類以上のNFTコンテンツだ。
そのなかには、スクウェア・エニックスによるNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」も含まれている。同シールはNFTマーケットβでもすでに売買されているが、シーズン2の制作が3月23日、明らかになった。
そのほかにも、吉本興業の人気芸人のネタの限定NFT動画や、歌手や俳優として活躍するNissy(西島隆弘)さんのLINEスタンプのNFTなども販売される予定だという。
今後NFT展開が予定されているパートナー企業。
撮影:西山里緒
またソフトバンクとの提携も発表しており、同社が配信する国内男子プロバスケットボール・Bリーグなどの動画配信サービス「バスケットLIVE」から、動画NFTの取り扱いも予定している。
今後どのようなNFTを増やしていくのか? Business Insider Japanの質問に対し、同社ブロックチェーン事業部事業部長の上遠野(かどおの)大輔氏は、広くパートナーと協業したいとした上で、
「2022年に入り、CMS(※)を使えば企業が簡単に販売できるというサービスになった。より多くの企業に使っていただける環境が整ってきた」
と語った。
※CMS(Contents Management System):ブログサービスのように管理しやすいUIをもった入稿システムのこと。多くのコンテンツ制作者の利用を促進する意図がある
他のサービスとの比較、ユーザー間で販売する「二次流通」は?
LINEは、ブロックチェーンに関連するサービスを「一気通貫で」開発・運営していることを強みとする。
撮影:西山里緒
LINE NFTの強みはなんといっても、LINEアプリの基盤を活かして、NFTの購入から二次流通までを手軽に実現できることだろう。特に二次流通に関しては、以下のような仕様になっている。
- LINE NFTでは4月13日のサービス開始当初から、二次流通(購入したNFTを、ユーザー自身が売買すること)もできる
- 決済手段はLINE Pay(日本円)、もしくはLINE BITMAX Wallet上の独自仮想通貨LINK
- ただし、外部のブロックチェーンとの連携は現状ナシ(後述)
二次流通に関しては、他の大手サービスとは「独自のプラットフォームに閉じている」という点で違いがある。
例えば、コインチェックが運営する「Coincheck NFT(β版)」や、GMOが運営する「Adam byGMO」など国内の主要なNFTサービスでは、MetaMask(メタマスク)などの「外部ウォレット」に接続する必要がある。
こうした手続きにまずハードルがある上に、ウォレット上でハッキングや盗難の被害に遭っても救済措置がないため、セキュリティ面でも(仮想通貨での取引同様に)ユーザーは細心の注意を払わなければならない。
LINE NFTでは、ウォレットを自社で持っているため、本人認証のステップなどを通じてハッキングのリスクをある程度下げられると考えられる。また、LINE IDがあれば簡単にウォレットが開設できるというのも大きな強みだろう。
今後の話で言えば、ソフトバンクやZホールディングスなどのグループ企業との協業も大きな強みになりうる。例えば、NFT購入時の決済手段として「PayPay」の導入も検討しているという(時期は未定)。
なお、従来は2021年中には「ヤフオク!」でのNFTの二次流通が可能になると発表されていたが、ヤフオク!連携については、現時点も準備中で、実質的な延期になっている状態だ。
他ブロックチェーンとの連携は「まだ早い」
NFTの革新性といえば、複数のサービスをまたいで同じデジタルコンテンツをやりとりできるようになったことだ。これは、NFTの仕様が共通規格として定められていることによる。
例えば、「Coincheck NFT(β版)」などで購入したNFTは、Metamaskを通じて「OpenSea」など他のNFTマーケットプレイスでも販売することができる。「NFTはデジタル上で(物理的なモノのように)モノが持てるようになった」と言われるのもそうした仕組みによる。
一方で、LINEが運用するブロックチェーンは、同社が独自に開発した「プライベートチェーン」であり、まだ外部のブロックチェーンとの互換性はない。
すでにイーサリアムなどの他のブロックチェーンとの互換性を持たせるとの「構想」自体はあるものの、発表ではその具体的な計画は明らかにされなかった。
LVC社社長の林仁奎(イム ・インギュ)氏は、その理由についてこう話した。
「日本国内のNFTのユーザー数を考えると、まだまだ海外のブロックチェーンとの相互運用というのは早いのではないか。まずは日本のお客様に簡単なNFT体験を提供していく。海外チェーンとの相互運用はその次のステージだ」
(取材・文、西山里緒)