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 日本政府が毎年6月ごろにまとめる経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」。FinTech関連では2021年は、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の推進が注目された。2022年は、ブロックチェーン上でデジタルコンテンツを唯一のものとして扱えるNFT(非代替性トークン)が目玉となりそうだ。

 2022年3月末、自由民主党デジタル社会推進本部のNFT政策検討PT(プロジェクトチーム)が「NFTホワイトペーパー(案)Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」を公表した。同案は、NFTビジネスの推進における課題や提言を整理したもの。今後、自民党で正式決定され、骨太の方針で閣議決定すれば、来年(2023)度の予算や法改正につながっていくとみられる。「新しい資本主義の成長戦略の柱に据える姿勢を明確に打ち出す」「Web3.0担当大臣の設置」といった提言も含んでいる。

 自民党が早くからNFTを推進する背景には、いま勃興しつつあるWeb3.0の時代にはWeb2.0のときのように日本が乗り遅れないようにしたいとの思いがあるようだ。

 Web2.0はGAFAといった特定の企業に集中する中央集権的なものであるのに対し、Web3.0は分散型で参加者によって成り立つ非中央集権的なもの。インターネット上でデータの所有や移転を可能にする点が特徴で、その鍵がNFTとなる。

ビジネスの場、高額なアートから身近なコンテンツに

 利用者としてNFTビジネスでどのようなイノベーションが起こるかは気になる。一体どんなものになり得るか。

 NFTアートが約75億円で購入されるなど投機的取引での利用は、NFTブームに火をつけた。だが、今後のNFTビジネスとして継続的な成長は期待できないだろう。

 NFTは、出品したブロックチェーン上で唯一のコンテンツであることが保証され、希少性があり、かつ何らかのストーリー性があるものが高額で取引されている。しかしNFTを購入しても、多くの場合はコンテンツの著作権が得られるわけではなく、ただ「保有して楽しむもの」にすぎない。いまは初物のご祝儀相場でさまざまなコンテンツに高値がついているが、この状況は早晩落ち着くとみられる。

 今、NFTを売買できるマーケットプレースを楽天グループやLINEグループ、メルカリなど大手ネット関連企業が相次いで立ち上げ、誰でも手軽に購入できる下地が整ってきている。パシフィックリーグマーケティングがメルカリと、パシフィック・リーグ6球団の試合映像における名場面の動画を数量限定で販売する事業を始めるなど、これまでの高額なアートから身近なコンテンツにビジネスの場が移ってきた。