ウォーレン・バフェット
Paul Morigi/Getty Images for Fortune/Time Inc
- ピーター・ティールはビットコイン普及の大きな障害として、ウォーレン・バフェットを挙げた。
- ビットコインの価格を上げるには、バフェットらの抵抗と戦わなければならないという。
- バフェットはビットコインを「殺鼠剤を2乗したようなもの」と呼び、価値のない妄想だと切り捨てている。
PayPalとPalantirの共同創設者で億万長者のピーター・ティール(Peter Thiel)が、2022年4月7日にフロリダ州マイアミで開催された「Bitcoin 2022」で基調講演を行い、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のウォーレン・バフェット(Warren Buffett)CEOをやり玉にあげた。ティールによると、バフェットの痛烈な批判により仮想通貨の普及が遅れ、価格の上昇を妨げているという。
ティールはバフェットをビットコイン愛好家にとっての「最大の敵」と非難し、「オマハ出身のソシオパスな爺さん」と呼んだ。
またティールは「金融における長老支配」のあと2人のメンバーとして、JPモルガンのジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)CEOとBlackRockのラリー・フィンク(Larry Fink)CEOを加え、彼らがビットコインの背後にある「革命的な若者の活動」と真っ向から対立していると指摘した。
「ビットコインがここから10倍、100倍になるには、彼らと戦わなければならない」とティールは述べている。彼は個人としてだけでなく、自身のFounders Fundからも暗号資産(仮想通貨)に投資してきた。ビットコインの価格は、2020年初頭は8000ドル(約100万円)以下だったが、現在はその5倍以上の約4万4000ドル(約550万円)になっている。
InsiderはバークシャーとPalantirにコメントを求めたが、まだ返答は得られていない。JPモルガンはコメントを控えた。BlackRockはフィンクによる最新の株主向け書簡を紹介した。彼はその中で「グローバルなデジタル決済システムは、マネーロンダリングや汚職のリスクを軽減しながら、国際的な取引の決済を強化することができるよう慎重に設計されている。加えて、デジタル決済システムは国境を越えた決済のコストを引き下げるのにも役立つ」と述べている。
ティールがバフェットをターゲットにしたのは、彼がビットコインやその他の仮想通貨をあまりにも率直にこき下ろすことで有名だからだ。
バフェットはビットコインを「価値のない妄想」、「殺鼠剤を2乗したようなもの」と呼び、暗号資産ブームを17世紀に起きたオランダのチューリップバブルに例えて、悪い結果になると予言している。さらにバークシャーは決して仮想通貨を所有しないと誓っている。
ただし、ここ2年ほどバフェットは暗号資産を批判しておらず、多くの熱狂的な愛好家を怒らせるのを警戒するようになったことは、注目すべき点だ。
ティールは4月7日の講演で、バフェットや他の金融関係者がデジタルコインを批判するのは、彼らが既存の通貨システムで既得権益を持っているからだと非難した。彼らは投資をすることがビットコインを買うよりも複雑であるかのように見せかけたいのであり、そうでなければ彼らのサービスは必要とされなくなるだろうと述べた。
フェイスブック(Facebook)の初期投資家であり、誇り高きリバタリアンであるティールは、機関投資家はビットコインを保有しないことで「深い政治的選択」をしていると主張した。
ティールは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の基準が「覚醒した企業」を優遇し、そうでない企業を名指しで貶める「憎悪工場」として機能していると憤る。彼は、ビットコインをマイニングする際の環境コストを理由に保有を拒否しているファンドについて言及したと思われる。
2013年に公開されたドキュメンタリーで、ティールはバフェットの投資手法を「問題がある」「まさにフェイクだ」と非難している。そして、バフェットがテクノロジー企業を避け、強力なブランドとシンプルな製品を売る昔ながらの企業を所有することを好むことは、イノベーションの促進につながらず、社会を前進させないと主張した。
ドキュメンタリーの中で、ティールは「マース(火星)を目指す宇宙船会社に投資するのと、マースキャンディバーに投資するのと、どっちがいいだろうか」と問いかけた。
ティールは、バフェットなら「宇宙船会社は移り変っていくものだが、マースバーは人類が火星に移住しても、ずっと欲しがるものだ。だからマースバーに投資する」と答えるだろうと語った。
「たとえ、バフェット自身はそれを実現できるとしても、誰もがバフェットになることはできない」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)