米仮想通貨コインベース、採用一時停止 相場下落で逆風
【ニューヨーク=大島有美子】暗号資産(仮想通貨)交換業者大手のコインベース・グローバルは3日までに、新規や中途採用を当面取りやめ、内定の一部を取り消すと発表した。同業のジェミニも従業員を約10%減らすと明らかにした。仮想通貨の相場が下落し、業績に逆風が吹くなか、コスト削減を余儀なくされている。
コインベースで人事を統括するL・J・ブロック氏は公式ブログで「当面の間、新規及び中途採用を停止する」と明らかにした。事業環境と照らして「従業員数の増加を抑える必要がある」と判断した。入社を控えた者の内定も一部取り消す。ただしセキュリティーやコンプライアンス(法令順守)で必要な人材は採用を継続する。
コインベースの2022年1~3月期の売上高は前年同期比の35%減の11億6600万ドル(約1500億円)で、最終損益は4億2900万ドルの赤字だった。ブロック氏は「(採用停止は)軽々しく決めたことではないが、市況を考慮すればまともな判断だ」とつづった。「仮想通貨の相場の不安定さは、経済的な動きとともに、我々を新たな形で試すだろう」と先行きへの警戒も示した。
米ジェミニは2日、創業者のウィンクルボス兄弟が連名で公式ブログに投稿し、約10%の人員削減を明らかにした。現状について「マクロ経済や地政学的な混乱によって、我々の業界は『仮想通貨の冬』と呼ばれる静止期にある」と説明した。
米商品先物取引委員会(CFTC)は同日、ジェミニがビットコインの先物商品の認証に関して誤解を招く説明をしたとして、ニューヨーク州の連邦地裁に同社を提訴した。CFTCは罰金などを求めており、訴えが認められれば収益にはさらなる逆風となる。
仮想通貨の相場は軟調が続く。ビットコイン価格は3日、2万9000ドル台でほぼ推移した。年明けの価格(約4万6000ドル)と比べて約4割下落したままだ。
米国を中心に、世界の新興テクノロジー企業では、株式相場の下落を受けた資金調達環境の悪化を受け、人員削減を加速させている。仮想通貨企業も例外ではない。米ブルームバーグ通信によると中東の交換業者レイン・ファイナンシャルは数十人を解雇した。アルゼンチンの交換業者ブエンビットも5月下旬、事業を維持するため人員削減を始めるとフェデリコ・オグ最高経営責任者(CEO)がツイッターで明らかにした。