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金融庁と経済産業省はスタートアップ(新興企業)の育成に向け、企業が資金調達のために発行する暗号資産(仮想通貨)のうち、自社で保有する分にかかる法人税の課税方法を見直す方針を固めた。創業まもない企業にとって負担が少ない形に改め、有望なスタートアップが海外に流出するのを防ぐ狙いだ。2023年度税制改正で議論する。
多くのスタートアップは資金調達や事業展開を目的に、独自に「トークン」と呼ばれる暗号資産を発行する。トークンは投資家らに売買するほか、議決権を確保するため自社で一定程度保有する場合が多い。
現在の税制では、自社保有分が期末の時価をもとに課税されるため、含み益に税金がかかる仕組みとなっている。創業まもない新興企業にとって資金繰り面で負担が大きいとの指摘が相次ぎ、規制の少ないシンガポールなどに拠点を移す例も出ていた。
金融庁などが検討する新たな仕組みでは、発行した企業が自ら保有する暗号資産については期末の時価評価の対象から外し、売却などで利益が生じた時点で初めて課税する形とする方向だ。スタートアップの成長を阻害しないよう配慮し、海外流出を防ぐ。
4月に開かれた政府のデジタル社会構想会議では楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「日本で起業するのはバカくさいからシンガポールに行くというのがほとんど」と述べ、税制見直しの必要性を訴えていた。
岸田首相は22年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、支援を強化する考えを示している。政府が6月にまとめた「新しい資本主義」の実行計画では、スタートアップの育成に向けて今年末に5か年計画を策定すると明記した。