日本の暗号資産オンチェーン取引、1年間で倍増──DEXの利用者、DeFi取引が急増:Chainalysis

日本の投資家やトレーダーが行う暗号資産(仮想通貨)のオンチェーン取引額が1年間で倍以上に増え、中国や韓国を含む東アジアの中では最大の伸び率を記録した。ブロックチェーンデータの分析サービスを手がける米チェイナリシス(Chainalysis)が、直近の報告書で明らかにした。

チェイナリシスの調査によると、2021年7月~2022年6月までの1年間で記録した日本のオンチェーン取引額は、前年同期から113.2%増加。韓国の伸び率は同期間で13.2%、台湾が31.5%で、日本市場は年間の成長ペースとしては東アジアでは最大となった。

急拡大の背景には、日本国内におけるDeFi(分散型金融)取引の増加があると、チェイナリシスは指摘する。

日本のDeFi取引額が韓国の2倍

同報告書によると、日本の暗号資産市場は、全体としては依然小規模なものの、DeFi取引額は同期間で567億ドルで、韓国の約2倍にまで拡大し、中国の676億ドルに迫る勢いだという。

チェイナリシスの日本法人に所属する重川隼飛氏は、「分散型取引所(DEX=Decentralized Exchange)の取引は、日本で非常に人気が高まっているようだ」とコメント。

DEXは、より分散的な組織運営を行う暗号資産の取引所で、その多くが顧客資産の保管・管理を行わない「ノンカストディアル」の取引サービスを展開している。Uniswapはイーサリアムブロックチェーンを基盤とする最大規模のDEXで知られるが、dYdXも注目を集めるDEXの1つ。

それに対して、CEX(Centralized Exchange)は中央集権型取引所のことで、米国市場ではコインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)が代表的なCEXとなる。日本国内では、金融庁に暗号資産交換業者として登録されているbitFlyerやコインチェックなどが、CEXのカテゴリーに含まれる。

暗号資産のグローバル市場では、DEXとCEXのシェア争いが注目を集めている。米銀大手のシティグループは、9月にまとめた顧客向けレポートの中で、DEXの事業成長が今後、CEXを上回る可能性があるとも述べている。

日本でも強めるDEXの存在感

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が定期的に発表するオフチェーンのスポット取引のデータを見ると、同様の成長が見られない中央集権型のサービスの取引を、DEX 取引が侵食している可能性があると考えられると、チェイナリシスは分析する。

JVCEAのデータによると、日本の取引所における取引額は、2020年と2021年よりも低下しており、新規口座開設の対前年比は、ほとんどの月で30%から40%の間に留まっている。

取引がCEXからDEXにシフトしている理由の1つとして、DEXが提供できる資産の数の多さが考えられると、チェイナリシスは述べる。

重川氏は、「日本の中央集権型の取引所は、約60の暗号資産をサポートしているが、新しい通貨の上場プロセスには規制があり、慎重なプロセスと時間がかかっている」と述べた上で、現状では上場可能な暗号資産の中に、法定通貨に連動する暗号資産であるステーブルコインが含まれていないことも指摘。

日本におけるDeFiの利用が今後、規制の進化によってどう変化していくかが注目点となる(報告書)。

|編集:佐藤茂
|テキスト内の画像:Chainalysisのレポートより/トップ画像:Shutterstock.com